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6月22日(月) 「戦争法案」における集団的自衛権の行使容認が想定するデタラメの数々 [戦争立法]

 むかし「事変」で、いま「事態」と言うべきでしょうか。国会で審議中の「戦争法案」に関連して、昨日のブログで指摘した「武力攻撃切迫事態」「存立危機事態」「重要影響事態」「国際平和共同対処事態」に加えて、「武力攻撃事態」や「武力攻撃予測事態」など、「事態」という言葉が乱発されています。
 かつて、「満州事変」や「上海事変」、「シナ事変」など、「事変」という言葉が乱発され、戦争であることが誤魔化された過去とよく似ています。言葉の言いかえや誤魔化しによって、ことの本質が曖昧にされ国民を戦争に引き込んでいくやり方は昔も今も変わりがないようです。

 むかし「満蒙は日本の生命線」、いま「ホルムズ海峡は日本の生命線」ということなのでしょうか。集団的自衛権行使容認についての唯一の具体例として安倍首相がたびたび言及している事例です。
 これも、かつての言い方とよく似ています。「満蒙」も「ホルムズ海峡」も、日本にとっては「生命線」であるとして戦争を正当化・合理化しようという「手口」において……。
 安倍首相は歴史的事実については無知でも、かつての侵略戦争に国民を引き込んでいった軍部の「手口」についてだけは、きちんと学んでいるようです。その教訓の活かし方は、全く逆ではありますが……。

 しかし、ホルムズ海峡での機雷封鎖などは、全くあり得ない荒唐無稽な空想の産物にすぎません。どうして、安倍首相がこのような空想にとらわれているのか、理解できる人がいるのでしょうか。
 これもすでに書いたことですが、ホルムズ海峡をめぐる国際環境は大きく改善されています。もし、封鎖するとすればイランですが、イランは欧米との関係改善を志向し、イスラム国(IS)と戦っているイラクを支援するなど、状況は大きく変化しました。
 イランから輸出される原油は100%この海峡を通りますから、封鎖して困るのはイラン自身です。それでもなお封鎖するかもしれないと言い張る根拠はどこにあるのか、ぜひ、国会での質問で安倍首相に問いただしていただきたいものです。

 荒唐無稽ということで言えば、集団的自衛権行使の例として言及された他の場合も同様です。ホルムズ海峡封鎖解除論以外に言及されたものの一つにミサイル発射準備期での敵基地攻撃論がありますが、これも空想の産物だと言うべきでしょう。
 北朝鮮でアメリカ本土に向かう大陸間弾道弾ミサイル(ICBM)は開発されていず、もし開発されて発射されても日本の上空は通りません。日本の方向に向かうミサイルは、在日米軍基地かグアムやハワイを狙うものだということになりますが、これらを標的としていることがどうして分かるのでしょうか。
 ミサイルに行き先が書いてあるはずもありませんから、発射前であればどこに向かうかは分からず、実戦なのか訓練なのかも不明です。ただ、発射準備をしているということだけでその基地を攻撃すれば、日本こそが先制攻撃を行った無法な国となって国際社会の非難を受けることになるでしょう。

 また、安倍首相はしばしば半島有事に際しての他国の領域や公海上での邦人を輸送する他国の軍艦の警護をしなくてよいのかと、問題を提起しています。集団的自衛権の行使容認は、このような事態での他国軍艦の警護を可能にするためのものだというのです。
 このような想定ほど、国民を馬鹿にしているものはありません。そもそも軍艦は民間人を輸送したりせず(輸送のためなら輸送船があるわけですから)、万に一つ、そのような例外があったとしても、それは逃げ遅れた場合の緊急避難として行われるにすぎません。
 安保法制懇の答申が出されたときや閣議決定がなされたとき、安倍首相は日本人の母親と子供が米軍艦で輸送されているパネルを出しましたが、それは事前の邦人避難が失敗したことを示しています。真っ先に避難させられなければならない女性と子供が逃げ遅れ、米軍艦によって緊急避難させられることを前提に安全保障政策を論ずるなどということがあってはならず、いかにして円滑・安全に避難させることができるかを論ずることこそ一国のトップリーダーとしての責任ある態度だと言うべきでしょう。

 さらに、「後方支援」についてもデタラメな説明が繰り返されています。これまでの国会論戦で、「後方支援」とは日本独自の概念(日本でしか通用しない誤魔化し)であり、国際的には「兵站」であること、それが狙われるのは軍事的な常識であり反撃すれば武力行使と一体化せざるをえないことなどが明らかになってきました。
 それでも政府は、弾薬を輸送することはあっても危険な場所には近寄らず、襲われる危険性はなく、自衛隊員の安全は確保されるかのように言い張っています。しかし、このような誤魔化しも通用しません。
 弾薬を輸送する必要性はそれが消費されて無くなるから生ずるわけで、無くなるのは発射されるからです。弾薬が発射されて消費されるのはどのような場所かと言えば、そここそが戦闘が行われている場所、つまり「戦闘現場」にほかなりません。

 このような「戦闘現場」でこそ、弾薬を補充する必要性が最も高まっているわけです。だから「すぐに弾薬を運んでほしい」と要請されたときに、「そこは危ないから、近寄れない、安全なところまで取りに来てほしい」と答えるのでしょうか。
 安全だと思ったところまで運んで、弾薬を渡そうとした時に襲われることがあるかもしれません。当然、一緒になって反撃するでしょう。
 そのような時でも、「武力行使と一体化してしまうので、我々だけ戦闘を停止して退却する」などと言えるのでしょうか。「後方支援」のために弾薬を運搬していても戦闘現場まで行かないというのは、建設資材を運んでいるのに建設現場まで行くことはないというのと同じで、まことに奇妙奇天烈な説明だというしかありません。

 もう、こんなデタラメを繰り返すことはやめにするべきでしょう。国会の会期を延長すればするほど、このような説明の誤魔化しや荒唐無稽さが明らかになるだけです。
 安倍首相の思い入れだけが強く、空虚で根拠のない答弁が繰り返されている国会の姿は、日本の政治の劣化と衰退を示しています。それを克服するためにも、会期通りに国会を閉じてデタラメばかりの「戦争法案」をとっとと廃案にするべきでしょう。


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