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2月8日(月) 北朝鮮による「事実上の長距離弾道ミサイル」発射をどう見るか [国際]

 「何と馬鹿なことを」と思った人は多かったでしょう。北朝鮮による長距離ロケットの発射です。
 機体は沖縄上空を通過して飛行し、その一部は宇宙空間で軌道に乗ったとみられています。1月6日の4回目の核実験を受けて高まった国際社会の非難を無視した形で、北朝鮮は今回の発射を強行しました。
 国連の安保理は「事実上の長距離弾道ミサイル」を用いたいかなる発射も北朝鮮に禁じる決議を上げています。今回の行動は、このような過去の国連決議に違反する蛮行であることは明白であり、断固として糾弾したいと思います。

 同時に、この発射を報ずるすべてのニュースが、「事実上の長距離弾道ミサイル」と連呼していることにも違和感を覚えます。今回の発射には「事実上の長距離弾道ミサイル」に転用可能な技術が用いられており、たとえ北朝鮮が発表しているように「地球観測衛星」の打ち上げであったとしても、それが長距離弾道ミサイルの開発につながることは明らかです。
 しかし、それはどの国のロケット技術でも同様であり、アメリカや日本で打ち上げられているロケットも「事実上の長距離弾道ミサイル」にほかなりません。核開発と同時並行で進められ、それを搭載するためのミサイル開発を目的とした発射であったとしても、アメリカやロシアの核・ミサイル開発とどこが違うのでしょうか。
 アメリカもロシアも(たぶん中国も)大陸間弾道弾(ICBM)に核を搭載して常に発射可能な形で待機させ、アメリカは朝鮮戦争やベトナム戦争で核を使用する意図を示した過去もあります。北朝鮮の「事実上の長距離弾道ミサイル」だけを問題視するのはダブル・スタンダードであり、他の国のロケット開発についても平和利用だけに限定せよと主張するべきではないでしょうか。

 この発射に対しては、国際的な批判が巻き起こっています。それも当然のことだと思います。
 しかし、北朝鮮に対する制裁の強化だけで問題は解決するのでしょうか。力で抑え込もうというやり方はこれまでも成功せず、かえって強い反発を生み、国際的に孤立することを覚悟した強硬路線を引き起こすという悪循環を招いてきました。
 おそらく今回も、そうなる可能性が高いと思います。安保法制の成立によって生まれると安倍首相が言ってきた「抑止」効果などは、全くの幻にすぎませんでした。

 制裁の強化によって「力ずくで」言うことを聞かせることには大きな限界があることは、これまでの経緯を見てもはっきりしています。問題の根本的な解決のためには、別のやり方も取らなければなりません。
 交渉と対話という手段を活用し、非核化と改革・開放を進めて経済や政治のあり方の現代化を進める方が、北朝鮮の政権にとっても国民にとってもベターだということを理解させることです。現体制の継続も中国の制裁強化による体制崩壊も、国際社会にとってのマイナスが大きく、その中間での「普通の国」へのソフトランディングを目指すべきでしょう。
 特に、拉致問題の解決という独特の問題を抱え、そのための独自のチャンネルを持っている日本の役割は大きいと思います。独自制裁の強化によってこのルートを閉ざすことなく、引き続き拉致問題の解決を求め、5カ国協議や6カ国協議の再開を目指しつつ米朝間の直接対話をアメリカに働きかけていかなければなりません。

 北朝鮮の国際社会への復帰には、アメリカとの直接対話が欠かせません。これについて、今日の『朝日新聞』で元日朝国交正常化交渉政府代表の美根慶樹さんが「米朝交渉 日本が後押しを」という表題で、次のように主張されています。

 「本質に立ち返り、北朝鮮の行動の根本にある問題にメスを入れる必要がある。具体的には1953年以来、休戦状態にある朝鮮戦争の終結について米国に北朝鮮との交渉を促すことだ。」
 「核を放棄すれば、北朝鮮という国を認めるかどうかの答えを出すという論理で迫る。」
 「こうした交渉をするには、米国が世界戦略を変える必要がある。」
 「核不拡散体制の維持を含め、交渉で得られる利益は莫大だと日本は米国に働きかけるべきだ。」

 この美根さんの提言に、私は賛成です。日本政府は、このような働きかけをアメリカに対してもっと強力に行うべきでしょう。
 しかし、それが安倍首相にできるのでしょうか。このような形での米政府への働きかけや、それを通じて北朝鮮問題を根本的に解決して日本周辺の安全保障環境を好転させるためにも、安倍内閣を打倒しなければ展望は開けてこないように思うのですが……。

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