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3月23日(水) オバマ米大統領のキューバ訪問が示した平和実現と安全確保への道 [国際]

 こうすれば、いいんじゃありませんか。もっと早く、そうすれば良かったんですよ。
 アメリカのオバマ大統領のキューバ訪問です。一触即発の危機にまで激化した対立でさえ、このような形で解決できるということ、これこそが平和実現と安全確保への道なのだということを示す好例になりました。

 オバマ米大統領は20日午後、現職の米大統領として88年ぶりにキューバの首都ハバナに到着し、ラウル・カストロ国家評議会議長との会談などを行いました。昨年7月に54年ぶりに国交回復した両国の新たな関係を切り開く「歴史的な訪問」です。
 現職米大統領のキューバ訪問は1928年にハバナでの国際会議に参加したクーリッジ元大統領以来のことになります。両国はキューバ革命後の1961年に国交を断絶し、翌62年には米国とソ連が核戦争の瀬戸際に立つ「キューバ危機」が勃発しました。
 しかし、オバマ大統領は歴史に名を残すことを欲して融和路線を採るようになり、国交を回復しました。人権問題など両国間にはまだ懸案事項が残されており、両国関係の改善も紆余曲折を辿るかもしれませんが、もはや両国が武力に訴えたり、戦争に突入したりすることはないでしょう。

 「キューバ危機」の時代を生きてきた私としては、大きな感慨を覚えます。あの時、子ども心にも地球滅亡の恐怖を実感として味わった記憶があるからです。
 そのようなアメリカとキューバが国交を回復してトップリーダーが笑顔で握手を交わす日が来るとは、あの時には想像もできませんでした。しかし、それから55年後の今、それは現実のものとなったのです。
 変わったのはアメリカの方です。力で抑えつけ封じ込めようとしてきた外交政策を転換したために、このような新たな展開を生み出すことができました。

 力の政策から対話の路線への転換こそが、平和を実現し安全を確保するための最善の道であるということが、今回もまた実証されたことになります。イランの核問題の解決やシリア内戦に関する和平協議なども、基本的にはこのような方向での解決の模索にほかなりません。
 ところが、北朝鮮問題では、全く逆の方向がめざされています。6カ国協議のような対話ではなく米韓軍事協力という力の政策によって、北朝鮮を屈服させようとしているからです。
 米韓合同軍事演習とそれを牽制する北朝鮮のミサイル発射の応酬によって、偶発的な衝突や先制攻撃の危険性が高まっています。集団的自衛権の行使容認による「抑止」効果どころか、かえってこのような対立の構図に日本も巻き込まれるリスクが高まりました。

 もちろん、北朝鮮のミサイル発射は断じて許されるものではなく、厳しく批判されなければなりません。しかし、それは米韓合同軍事演習に対する対抗措置としてなされていると考えられます。
 ミサイル発射を挑発というのであれば、それを挑発したのは「要人暗殺」の訓練や北への上陸演習を行っているアメリカと韓国です。相手の挑発を止めさせたいのであれば、こちらが挑発することも止めるべきでしょう。
 圧力をかければ反発し、牽制すれば威嚇するというのが、この間の経過でした。それによって平和は遠のき、安全は脅かされているのが実態です。

 イランやキューバとの関係を改善したと同様の政策転換が必要なのではないでしょうか。力による恫喝ではなく対話を可能とするような交渉へと北朝鮮をいざなうことによってしか解決の道は開けず、真の解決は新たな憎悪や紛争の種、混乱をまき散らすものであってはなりません。
 基本的には6カ国協議という枠組みの再開ですが、北朝鮮が同意しないのであれば5カ国協議でもやむを得ません。そのためには、北が望んでいる直接交渉をアメリカが受け入れることが必要です。
 その際には、いかなる条件も付けるべきではありません。無条件で、まず両国が対話のテーブルに付くことが最優先されなければならないでしょう。

 55年前には核戦争の瀬戸際まで悪化したアメリカとキューバとの危機でした。その両国は、今、私たちが目撃しているような形で関係を改善し、平和を実現しようとしています。
 同じようなことがいずれ朝鮮半島でも起きないと、いったい誰が断言できるでしょうか。いや、そのような形でしか、問題は解決できません。
 そのような未来を実現するために、今、何をするべきなのか。そのような未来からの発想に基づいて、現在の対応を選択することが求められているのではないでしょうか。

 今回のキューバとの国交回復は、任期が少なくなったオバマ大統領が歴史に名を遺す大きな業績を上げたいという個人的な願望に基づくものだと観測されています。もしそうであれば、米朝間の対立の激化ではなく対話の道を開くことこそ、歴史的業績の最たるものとなることでしょう。
 イラン、キューバに続いて北朝鮮との関係を改善し、国際社会への復帰を実現していただきたいものです。たとえそれがオバマ大統領の個人的な野心や願望の結果であったとしても、人類の歴史や極東の平和、日本の安全にとって、このうえない貢献となることは間違いないのですから……。

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