5月16日(月) 小林節さんが旗揚げした新政治団体「国民怒りの声」をどう見るか [参院選]
この間、安保法反対運動で大きな役割を果たしてきた憲法学者の小林節慶応大学名誉教授が新政治団体「国民怒りの声」(怒り新党)を旗揚げすると発表し、波紋を広げています。この動きをどう見たらよいのでしょうか。
これまで野党共闘を進めてきた勢力のなかには戸惑いの声が大きいように見えますが、評価し期待する声もないわけではありません。評価が分かれるのは、この「怒り新党」の登場にはデメリットとメリットの両方が考えられるからです。
報道によれば、小林さんは5月12日に政治団体としての届け出を総務省あてに提出したそうです。14日には設立報告会が開かれました。
ビデオメッセージであいさつした小林さんは「野党統一名簿を追求したが、時間切れになった。『反自民、嫌民進、共産未満』という人が3~4割いるが、このままでは棄権してしまう」と指摘し、無党派層を中心とした受け皿を作って「安倍政権の暴走を止めないといけない」と訴えたそうです。
そのうえで、自分を含めて10人の擁立をめざし、すでに5人は説得したということ、残る5人は18日以降インターネットで公募を始め、男女が半分ずつになるように選ぶ予定だということを明らかにしました。つまり、この「怒り新党」は、「反自民、嫌民進、共産未満」の「無党派層」の受け皿となるべき新たな仕掛けを意図しているということになります。
このような動きについては、安倍政権に対する批判票が分散して「死に票」が増え、結果的に与党を利することになりかねないとの危惧があります。候補者を立てるのは比例代表だけということですが、その票が割れて結果的に自民党を助けることになるという心配があるからです。
とりわけ、社民党や生活の党にとっては「反自民、嫌民進、共産未満」の「無党派層」の受け皿となる「新たな野党がもう一つ増えるだけ」(社民党幹部)ですから、この動きに不快感を示し危機感を高めるのも理解できます。早速、吉田党首は「怒り新党」の比例名簿に加えてもらえないかと打診したり、民進党との合流の可能性にも言及したりしましたが、いずれも実現は難しいようです。
生活の党と山本太郎となかまたちの小沢一郎代表も、「いずれ機会があればご本人におうかがいしないといけないが、現実に選挙戦を戦って国民の支持を得るというのはそう簡単な話じゃない。やはり(安倍政権打倒を掲げる)多くの皆さんと力を合わせ、思いを結集させないと国民は本気になってくれない。今後、どういう道筋で安倍政権を打倒するのか、わたしにはもう一つ具体的にわからないので、いまは論評することはできない」と述べて、戸惑いの色を示しています。一概に否定するわけにはいかないけれども、かといってもろ手を挙げて賛成というわけではないという複雑な心境がうかがえるような発言で、これは小林さんとともに安保法反対運動に加わって来た人々全体に共通する感情でしょう。
同時に、この「怒り新党」への期待や評価もないわけではありません。山尾志桜里民進党政調会長は「小林節さんは改憲論者でありながら、立憲主義の危機だと立ち上がり、全国をくまなく歩いて素晴らしい活動をされている先生だと存じ上げている。そういった方がついに政治家として手を挙げようとされていることは、私自身は非常に希望だなと率直に感じています」と述べて期待感を表明し、「(小林氏とは)安倍政権、安倍総理の憲法に対するあまりに破壊的な考え方にとにかくストップをかけなきゃなんないという点では一致していると思う。その目標を達成するために、共通の相手に向かってどういった戦いぶりを展開していくのがいいのか。それはこれからのことではないでしょうか」と指摘しています。
このような「希望」が感じられるのは、これまで関心を持たなかった無党派層にも参院選への興味や関心を呼び起こし、新たな支持層を開拓できる可能性があるからです。これが「怒り新党」ができることのメリットであり、小林さんの狙いもそこにあると思われます。
無党派層や政党支持なし層の中には、「自民党には反対だが民進党も信頼できないし、かといって共産党には抵抗がある」という人々がいます。小林さんが「『反自民、嫌民進、共産未満』という人が3~4割いるが、このままでは棄権してしまう」というのは、このような人々を意識しているからであり、このような人々に「反自民」の新たな選択肢を提起しようというのが、その狙いだと思われます。
「怒り新党」がこのような狙い通りの効果を生むかどうかは分かりませんが、すでに「賽は投げられた」というのも事実です。以上に見たように、メリットとデメリットに対する判断をめぐって賛否両論ありますが、八王子市長選挙で小林さんにも応援していただいた私としては、この試みが奏功して狙い通りの効果を生み、アベ政治を追い込む大きなうねりを生み出す契機になってもらいたいと願っています。
その成否を決めるカギは投票率にあります。有権者やマスコミの注目を集めて参院選への興味・関心がドンドン盛り上がっていき、それまで投票に行くつもりがなかった有権者の足を投票所に向かわせることができ、その結果、投票率が上がればメリットの方が大きくなり、逆に下がって票の奪い合いとなればデメリットの方が大きくなるでしょう。
「怒り新党」が野党共闘の「遊軍」としての役割を担い、「別に進んで共に撃つ」という形で安倍政権打倒の一翼を担い、選挙区での野党共闘候補の得票の底上げや野党全体の得票増に結びついてもらいたいものです。そのためには、批判しあうのではなく互いにエールを送りあいながら集票を競うことで相乗効果を生み出し、無党派層や保守層を含めて反アベ票を掘り起こす必要があります。
選挙への関心や注目度を高め「今度は何とかなるかしれない」という期待感を呼び起こして、これまで「どうせ変わりはしないから」と諦めてしまった人々の足を投票所に運ばせることに成功すれば、大きな「革命的」な変化を生み出すことができるにちがいありません。そうなってもらいたいし、そうしなければ新たな「希望」は生まれないのです。
夏の選挙は、衆参同日選挙どころか、東京では都知事選も含めて「トリプル選挙」になるかもしれません。その政治的な意義は極めて大きく、まさに「政治決戦」というにふさわしい様相を帯びてきています。
「勝つためには何でもやる」という覚悟が問われています。その「何でも」の中には、新たな「遊軍」の登場という奇策も含まれるということかもしれません。
このようななかで、小林さんと私とのトークイヴェントが、下記のような形で開催されます。これは八王子市長選挙での応援に対するお礼の意味を込めて企画されたもので、小林さんによる「怒り新党」の立ち上げとは無関係でした。
しかし、このような情勢の下でのトークですから、この問題に全く触れないというわけにもいかないでしょう。「怒り新党」が「夏の選挙と日本の未来」にどう関わってくるかは、私にとっても大いに関心があります。
というわけで、今回の旗揚げに際しての小林節さんの思い、その真意や狙いをじっくり伺うことにしたいと思っています。沢山の方に足を運んでいただければ幸いです。
トークイヴェント「夏の選挙と日本の未来」
5月20日(金) 18時開場 18時半開会 資料代500円
八王子労政会館小ホール・第1会議室
お話し:小林節 五十嵐仁
司会進行:白神優理子弁護士
これまで野党共闘を進めてきた勢力のなかには戸惑いの声が大きいように見えますが、評価し期待する声もないわけではありません。評価が分かれるのは、この「怒り新党」の登場にはデメリットとメリットの両方が考えられるからです。
報道によれば、小林さんは5月12日に政治団体としての届け出を総務省あてに提出したそうです。14日には設立報告会が開かれました。
ビデオメッセージであいさつした小林さんは「野党統一名簿を追求したが、時間切れになった。『反自民、嫌民進、共産未満』という人が3~4割いるが、このままでは棄権してしまう」と指摘し、無党派層を中心とした受け皿を作って「安倍政権の暴走を止めないといけない」と訴えたそうです。
そのうえで、自分を含めて10人の擁立をめざし、すでに5人は説得したということ、残る5人は18日以降インターネットで公募を始め、男女が半分ずつになるように選ぶ予定だということを明らかにしました。つまり、この「怒り新党」は、「反自民、嫌民進、共産未満」の「無党派層」の受け皿となるべき新たな仕掛けを意図しているということになります。
このような動きについては、安倍政権に対する批判票が分散して「死に票」が増え、結果的に与党を利することになりかねないとの危惧があります。候補者を立てるのは比例代表だけということですが、その票が割れて結果的に自民党を助けることになるという心配があるからです。
とりわけ、社民党や生活の党にとっては「反自民、嫌民進、共産未満」の「無党派層」の受け皿となる「新たな野党がもう一つ増えるだけ」(社民党幹部)ですから、この動きに不快感を示し危機感を高めるのも理解できます。早速、吉田党首は「怒り新党」の比例名簿に加えてもらえないかと打診したり、民進党との合流の可能性にも言及したりしましたが、いずれも実現は難しいようです。
生活の党と山本太郎となかまたちの小沢一郎代表も、「いずれ機会があればご本人におうかがいしないといけないが、現実に選挙戦を戦って国民の支持を得るというのはそう簡単な話じゃない。やはり(安倍政権打倒を掲げる)多くの皆さんと力を合わせ、思いを結集させないと国民は本気になってくれない。今後、どういう道筋で安倍政権を打倒するのか、わたしにはもう一つ具体的にわからないので、いまは論評することはできない」と述べて、戸惑いの色を示しています。一概に否定するわけにはいかないけれども、かといってもろ手を挙げて賛成というわけではないという複雑な心境がうかがえるような発言で、これは小林さんとともに安保法反対運動に加わって来た人々全体に共通する感情でしょう。
同時に、この「怒り新党」への期待や評価もないわけではありません。山尾志桜里民進党政調会長は「小林節さんは改憲論者でありながら、立憲主義の危機だと立ち上がり、全国をくまなく歩いて素晴らしい活動をされている先生だと存じ上げている。そういった方がついに政治家として手を挙げようとされていることは、私自身は非常に希望だなと率直に感じています」と述べて期待感を表明し、「(小林氏とは)安倍政権、安倍総理の憲法に対するあまりに破壊的な考え方にとにかくストップをかけなきゃなんないという点では一致していると思う。その目標を達成するために、共通の相手に向かってどういった戦いぶりを展開していくのがいいのか。それはこれからのことではないでしょうか」と指摘しています。
このような「希望」が感じられるのは、これまで関心を持たなかった無党派層にも参院選への興味や関心を呼び起こし、新たな支持層を開拓できる可能性があるからです。これが「怒り新党」ができることのメリットであり、小林さんの狙いもそこにあると思われます。
無党派層や政党支持なし層の中には、「自民党には反対だが民進党も信頼できないし、かといって共産党には抵抗がある」という人々がいます。小林さんが「『反自民、嫌民進、共産未満』という人が3~4割いるが、このままでは棄権してしまう」というのは、このような人々を意識しているからであり、このような人々に「反自民」の新たな選択肢を提起しようというのが、その狙いだと思われます。
「怒り新党」がこのような狙い通りの効果を生むかどうかは分かりませんが、すでに「賽は投げられた」というのも事実です。以上に見たように、メリットとデメリットに対する判断をめぐって賛否両論ありますが、八王子市長選挙で小林さんにも応援していただいた私としては、この試みが奏功して狙い通りの効果を生み、アベ政治を追い込む大きなうねりを生み出す契機になってもらいたいと願っています。
その成否を決めるカギは投票率にあります。有権者やマスコミの注目を集めて参院選への興味・関心がドンドン盛り上がっていき、それまで投票に行くつもりがなかった有権者の足を投票所に向かわせることができ、その結果、投票率が上がればメリットの方が大きくなり、逆に下がって票の奪い合いとなればデメリットの方が大きくなるでしょう。
「怒り新党」が野党共闘の「遊軍」としての役割を担い、「別に進んで共に撃つ」という形で安倍政権打倒の一翼を担い、選挙区での野党共闘候補の得票の底上げや野党全体の得票増に結びついてもらいたいものです。そのためには、批判しあうのではなく互いにエールを送りあいながら集票を競うことで相乗効果を生み出し、無党派層や保守層を含めて反アベ票を掘り起こす必要があります。
選挙への関心や注目度を高め「今度は何とかなるかしれない」という期待感を呼び起こして、これまで「どうせ変わりはしないから」と諦めてしまった人々の足を投票所に運ばせることに成功すれば、大きな「革命的」な変化を生み出すことができるにちがいありません。そうなってもらいたいし、そうしなければ新たな「希望」は生まれないのです。
夏の選挙は、衆参同日選挙どころか、東京では都知事選も含めて「トリプル選挙」になるかもしれません。その政治的な意義は極めて大きく、まさに「政治決戦」というにふさわしい様相を帯びてきています。
「勝つためには何でもやる」という覚悟が問われています。その「何でも」の中には、新たな「遊軍」の登場という奇策も含まれるということかもしれません。
このようななかで、小林さんと私とのトークイヴェントが、下記のような形で開催されます。これは八王子市長選挙での応援に対するお礼の意味を込めて企画されたもので、小林さんによる「怒り新党」の立ち上げとは無関係でした。
しかし、このような情勢の下でのトークですから、この問題に全く触れないというわけにもいかないでしょう。「怒り新党」が「夏の選挙と日本の未来」にどう関わってくるかは、私にとっても大いに関心があります。
というわけで、今回の旗揚げに際しての小林節さんの思い、その真意や狙いをじっくり伺うことにしたいと思っています。沢山の方に足を運んでいただければ幸いです。
トークイヴェント「夏の選挙と日本の未来」
5月20日(金) 18時開場 18時半開会 資料代500円
八王子労政会館小ホール・第1会議室
お話し:小林節 五十嵐仁
司会進行:白神優理子弁護士
2016-05-16 09:22
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