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7月1日(金) 現代の多様な社会運動の意味(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』2016年7月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

2、今日における社会運動の特徴

 社会運動の再生と多様化

 最近では、社会運動の再生が顕著です。若者や女性、普通の市民など新たな参加者が様々な目標を掲げて運動に加わるようになってきました。国際的に見れば、ヨーロッパの反緊縮運動、アメリカの「オキュパイ運動」、香港の「雨傘革命」、台湾での「ひまわり運動」などがありました。このような運動の波が日本にも押し寄せてきています。
 04年には9条の会が発足し、08年には派遣村の運動が始まり、ワーキングプアや非正規労働問題に取り組む労働運動や反貧困運動が活性化しました。そして、11年の東日本大震災と福島での原発事故を画期に段階的な変化が始まります。
 脱原発運動、特定秘密保護法反対運動、沖縄・辺野古での新基地反対、環太平洋経済連携協定(TPP)反対、労働法制改悪反対などの運動、ヘイトスピーチへのカウンターデモ、消費税の増税阻止など「一点共闘」と言われる多様な社会運動が大きく前進してきました。
 その頂点となったのが昨年の「2015年安保闘争」と言われる戦争法反対闘争であり、そこでの国民的共同の前進でした。ここには、今日における社会運動の特徴が明瞭に示されています。

 3つの潮流の共同

 第1に、市民団体、全労連系、連合系という3つの潮流の共同によって担われたということです。その一つの到達点が、2016年5月3日に東京臨海広域防災公園で開かれ5万人が参加した集会でした。この集会では市民団体が結集した「解釈で憲法9条壊すな!実行委員会」の高田健さんが開会あいさつ、「戦争する国づくりストップ!憲法を守り生かす共同センター」の小田川義和さんがカンパのお願い、「戦争をさせない1000人委員会」の福山真劫さんが行動提起をしました。
 この3つの団体は、2014年12月5日に結成された「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の構成団体です。市民団体とともに異なる潮流の労働組合が戦争法反対闘争を支えていたわけで、とりわけ全労連は大きな役割を果たしました。このような実績を背景に、「連合系」と「全労連系」との初歩的な「共同」が実現するなど労働運動にも一定の前進的な影響が生じています。

 市民運動と政党との連携

 第2に、戦争法反対闘争では、市民運動が政党に積極的に働きかけ、国会内外での幅広い共同戦線ができあがりました。「野党は共闘」という市民の声に押されて、民進党・共産党・社民党・生活の党の野党4党の共同も大きく前進し、5月3日の憲法集会でも野党4党の党首があいさつして連帯を表明しています。
 戦争法成立後、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が結成され、夏の参院選に向けての野党共闘を推し進める大きな力になりました。その結果、32ある1人区の全てで野党共闘が実現する見通しとなっています。これまでの市民運動の多くは政治や政党と距離を置き、自ら選挙活動に積極的に取り組むことはありませんでした。この点でも、大きな変化が生じています。

 多様な運動の合流

 第3に、戦争法反対闘争だけでなく、多様な運動が合流してきているということです。5月3日の憲法集会では、高校生平和大使だった上智大学生、辺野古基金共同代表、100歳を超えて活躍中のジャーナリスト、市民連合の大学教授、シャンティ国際ボランティア会、沖縄・一坪反戦地主会、NPO法人原子力資料情報室、障がい者の生活と権利を守る全国連絡協議会、朝鮮高校の生徒、日本消費者連盟、子ども教科書全国ネット21、日本労働弁護団、NPO法人しんぐるまざーず・ふぉーらむ、自由と民主主義のための学生緊急行動(SEALDs)の関係者がスピーチしました。
 60年代に大きく発展した革新統一運動は80~90年代に「社公合意」による統一の分断に直面しました。その困難な時代から運動を担ってきた平和革新勢力の「敷布団」の上に、新しく運動に加わった市民運動の「掛け布団」(中野晃一さん)がかぶさり、その両者が手を結んだ象徴的な姿だったと言えるでしょう。

 垂直的な運動から水平的な運動へ

 第4に、戦争法反対闘争などの集会への参加者は組織によって動員されたのではなく自らの意思でやってきた人々でした。政党が主導して労働組合が動員をかけるような垂直型ではなく、政党も労働組合も一般の市民も対等平等で自発的に参加し共同する水平型の運動への変化を確認することができます。
 これまでの運動では、団体ぐるみで実行委員会に参加し、それぞれの団体に動員の数が割り当てられ、参加者には交通費や日当を出すというような姿がしばしば見受けられました。しかし、このような運動形態は過去のものとなりつつあります。その特徴は「無名」の主催者が中心となって、合法主義・非暴力主義に徹し、誰もが気軽に参加できる「普段着の運動」であったことです。

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