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7月11日(月) 改憲勢力が3分の2を上回った参院選の結果をどう見るか [参院選]

 歴史の曲がり角として注目されていた参院選の投・開票が終了し、結果が出ました。今回の参院選での各党の議席は、以下の通りです。

 自民56、民進32、公明14、共産6、維新7、社民1、生活1、無所属4

 自民党は単独過半数となる57議席に1議席足りない56議席を獲得しました。公明党は14議席を得て、安倍首相が勝敗ラインに設定した与党の改選過半数である61議席を上回り、64議席になりました。
 自民・公明・おおさか維新の3党など改憲勢力の非改選議席は88議席で、参院で憲法改正の発議ができる3分の2(162議席)までには74議席が必要でした。今回の選挙で3党の議席はこれを上回る77議席に達したため、衆参両院で改憲発議が可能になっています。
 参院で27年ぶりに単独過半数を回復することはできませんでしたが、それ以外の目標を安倍首相は達成したことになります。私が注目していた「9年目のジンクス」は不発に終わり、自民党の大敗も首相の辞任も幻にすぎなくなりました。

 このような結果になった理由の一つは、「選挙隠し選挙」とも言うべき自民党の戦術が功を奏したことです。今回の参院選では、選挙についての報道が極めて少なく、選挙が行われていたこと自体、どれだけの国民に知られていたのか疑問に思われるほどです。
 特に、テレビ番組での取り上げ方はひどいものでした。安倍首相が断ったために選挙が公示されてからの党首討論はTBSでの一回しかなく、政策論争は言いっぱなしで深まることはありませんでした。
 選挙への関心も高まらず、2013年参院選から2.09ポイント回復したものの、最終的には54.70%で過去4番目の低さでした。このような投票率の低さは、参院選についてのテレビでの報道などの低調さを反映していると言えるでしょう。

 第2に、「争点隠し選挙」も与党の勝利に貢献しました。安倍首相は選挙前に必ず引き上げると約束していた前言を翻し、「新しい判断」だとして消費増税の先送りを表明しました。
 本来であれば最大の争点になっていたはずの消費再増税の是非という問題を消滅させてしまったわけです。また、改憲についても街頭演説では口を閉ざして争点化を避け、「改憲隠し選挙」を徹底しました。
 アベノミクスを煙幕に使って、国民に評判の悪い争点を「隠す、歪める、嘘をつく」という選挙戦術を駆使したわけですが、しかし、それでも隠し切れなかったところでは自民党が苦杯をなめています。TPPが問われた東北各県の1人区で、秋田を除いて野党共闘が勝利し、原発や震災復興が問われた福島県では現職の岩城光英法務大臣が落選、米軍基地のあり方や新基地建設が問われた沖縄でも現職の島尻安伊子内閣府特命担当相が落選しました。

 第3に、選挙直前の客観的な情勢も与党に有利に働いたように見えます。熊本地震の発生、イギリスのEU離脱をめぐる世界経済の不透明化、バングラデシュでの邦人テロ被害、北朝鮮のミサイル発射や中国の軍事活動など不穏な周辺情勢の推移などは、国民の不安を強めるものでした。
 国際情勢の不安定化の責任は、本来、戦争法の制定によって日米同盟の絆を強めてきた安倍首相自身が負うべきものであったにもかかわらず、ここでも「隠す、歪める、嘘をつく」という選挙戦術が駆使されました。そのために不安感を高めた有権者は事態の背景を理解できず、安心・安全を求めて政権党に対する依存心を強めたのではないでしょうか。
 安定を求めて変化を嫌った結果が、現状の維持を選択することになったと言うわけです。アベノミクスについても、不安定な経済情勢の下で有権者はもう少し様子を見ようという気になったのかもしれません。

 これに対して、野党は32ある1人区で共闘を実現し、改憲勢力の3分の2突破を阻止しようとしました。その結果は、11勝21敗というものです。
 この野党共闘は大きな成果を上げたと評価して良いでしょう。このような共闘がなければ選挙区での接戦は生じず、11の1人区で野党候補が当選することは難しかったでしょうから。
 参院選と同時に実施された鹿児島県知事選で元テレビ朝日コメンテーターの三反園訓候補が現職の伊藤祐一郎候補を破って初当選しましたが、これは参院選での野党統一候補として県連合事務局長が立候補する代わりに県労連事務局長が県知事選統一候補となった後、川内原発の一時稼働停止などの政策協定を三反園さんと結んで辞退した結果でした。このような形で事実上の野党統一候補となったために三反園さんは当選できたわけで、これからの都知事選や将来の衆院選でも生かされるべき重要な教訓です。

 この選挙の結果、安倍首相は改憲に向けての攻勢を開始するにちがいありません。すでに、憲法審査会での協議を始める意向を明らかにしています。
 いよいよ、憲法をめぐる本格的な対決が始まろうとしています。改憲に反対する野党4党の存在は重要であり、今回の選挙で改選議席を倍増させた共産党の役割はますます大きなものとなるにちがいありません。

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