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8月3日(水) 東京都知事選挙はどのような視点から総括されるべきか [選挙]

 都知事選挙の結果について、ネットなどで様々な意見や総括が飛び交っています。とりわけ野党共闘と市民が擁立した鳥越さんが直前の参院選で得た野党各党の合計票を大きく下回ったために、陣営内部での対立や紛糾が生じているように見えます。
 選挙の総括をめぐって事実認識や見解の相違が生ずるのはやむを得ないことですが、それが対立や分裂を生むことになっては困ります。この点を憂慮しつつ、都知事選挙はどのような視点から総括されるべきかについて、私見を述べさせていただきます。

 まず、基本的な視点です。今回の都知事選挙で有力3候補の1人を擁立して当選を目指し、カヤの外での独自の闘いを避けることができたことを評価したいと思います。
 それが可能だったのは、第1に、鳥越俊太郎という知名度のある素晴らしいジャーナリストが立候補を決断したからであり、第2に、民進党を含む野党と市民との共闘が実現して協力体制を組むことができたからであり、第3に、宇都宮さんの苦渋の決断によって分裂選挙を避けることができたからです。この3つの条件が揃わなかったら、野党共闘を成立させて当選を争う有力候補の一角に食い込むことは難しかったかもしれません。
 もちろん、選挙についてのきちんとした総括が必要であることは当然ですが、個人攻撃や誹謗・中傷にならないように十分に留意するべきです。あくまでも総括は団結を固めて前進するためになされるもので、団結を弱めて後退するような形になっては元も子もありません。

 第1に、今回の野党共闘と市民の統一候補となった鳥越さんは良く立候補したと思います。私も八王子市長選挙に立候補し、候補者活動がいかに過酷なものであるか、身をもって体験しましたから、その決断と勇気を高く評価したいと思いますし、これによって与野党相乗りや民進党の共闘からの離脱を防ぐことができました。
 惜しむらくは、年齢が高く健康面での不安を払しょくできなかったこと、出馬表明が遅かったために準備が不十分で、政策面で練られた対応を行えなかったことです。これらを含めてすさまじい個人攻撃の嵐が吹き荒れ、週刊誌による女性スキャンダルについての報道もありました。
 これらについての事実確認や対応の仕方についての検証は必要だと思います。しかし、その場合でも、より効果的に反撃し、ネガティブキャンペーンの選挙への影響を最小限に抑えるために何が必要だったのか、どう対応すればよかったのかという視点から総括されるべきではないでしょうか。
 
 第2に、野党と市民の共闘による知事選挙が実現したことの意義を高く評価しなければなりません。統一候補の擁立は1983年の社共統一候補だった松岡英夫さん以来のことでしたが、今回は民進党、日本共産党、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちの国政4野党に、東京・生活者ネットワーク、新社会党、緑の党グリーンズジャパンを加えた7党の共闘で、しかもこれに市民も結集したものでした。
 とりわけ、この共闘に民進党が加わり、国政レベルでの4野党共闘が維持されたことの意義は極めて大きなものがありました。それを実現するうえで発揮された岡田執行部のリーダーシップを高く評価したいと思います。
 惜しむらくは、連合東京が自由投票ということで組織として動かなかったこともあり、野党の総力が結集される形にはなりませんでした。この点でも問題点や不十分な点を検証することが必要ですが、互いに相手を非難するような総括は避け、より効果的に総力を結集するために何が必要だったのか、どうすれば良かったのかという視点を貫くべきではないでしょうか。

 第3に、宇都宮さんも立候補辞退を良く決断したと思います。立候補を表明したのは告示3日前というギリギリの時点で、その直後に鳥越さんの立候補表明をうけて辞退したために準備してきたポスターやビラなどすべてが無駄になり、多額の損失を出したにちがいありません。
 それにもかかわらず分裂を回避するための苦渋の決断を行ったことを高く評価したいと思います。悔しい思いもあったでしょうし、支援者を説得するのも大変だっただろうと思います。
 惜しむらくは、鳥越・宇都宮がタッグを組んで二人三脚で選挙を闘うことができず、宇都宮さんが最後まで鳥越さんの応援演説に立たなかったことであり、選挙が終わってから経過について微妙な発言を行っていることです。もちろん、すでに終わったことだから口をつぐめというわけではありませんし、宇都宮さんには当事者の一人として事実はどうであったのかを明らかにし、どこに問題があったのかを検証していただきたいと思います。
 その場合でも、鳥越さんの擁立に至る経過を宇都宮さんが「独裁」と発言しているのは残念ですし、橋下さんの番組にまで出て批判することが今後の運動にとっても、宇都宮さん自身にとってもプラスになるとは思えません。支援者間の非難合戦にならないように配慮しつつ、宇都宮さんの決断を生かすためにはどうするべきだったのか、鳥越勝利に貢献するために何をするべきだったのかという視点からの総括が大切なのではないでしょうか。

 これから事実を明らかにして問題点を検証する作業は本格化するでしょう。各方面から様々な意見が出されてくるに違いありません。
 しかし、鳥越さんは立候補するべきではなかった、野党は共闘するべきではなかった、宇都宮さんは辞退するべきではなかったなどという後ろ向きの意見には賛成できません。そのどれ一つが欠けても有力候補の一角を占めることはできなかったでしょうし、当選できると信じて選挙戦を戦うことは難しかったでしょう。
 革新都政の奪還は「夢」に終わりましたが、その「夢」を見せてくれたのは立候補を決断した鳥越さんであり、それを支援した野党と市民の共同であり、分裂を回避するための宇都宮さんの苦渋の決断でした。そのどれ一つが欠けても、「夢」を見ることは不可能だったのではないでしょうか。

 先の参院選での野党共闘は急いで建てた「プレハブ」のようなものでした。今回の野党共闘は突然訪れた嵐から緊急に避難するために建てた「掘っ立て小屋」のようなものだったかもしれません。
 それでも、暴風雨による雨露をしのぐことができました。それがなかったら、激しい雨に打たれて寒さに震え病気になっていたかもしれません。
 急いで建てたことに問題はなかったのですが、結局、グリーン・ポピュリズムの嵐によって吹き飛ばされてしまいました。問題は、もっと早くから準備をしてもっと頑丈な小屋を建てることができなかったという点にあります。

 選挙の総括によって教訓を引き出すことは必要ですが、それはあくまでも団結を強めて前進し勝利するためのものでなければなりません。分裂を引き起こして後退するようなことになれば、選挙での敗北に加えてさらにもう一度敗北することになります。
 選挙が終わっても、都民の手によって都民の手にクリーンな都政を取り戻すための闘いは続きます。選挙の総括はこのような闘いの一環であり、次に勝つための条件を探りそれを生み出すための作業でもあるということを忘れないようにしたいものです。

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