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8月8日(月) 野党共闘の成果と安保法廃止に向けた課題(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、全農協労連の機関誌『労農のなかま』7月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

 与党の勝利をどう見るか

 注目の参院選が終了しました。選挙結果を伝える新聞の一面には「3分の2」という数字が躍っています。
 『朝日新聞』には「改憲4党3分の2に迫る」。『毎日新聞』では「改憲勢力3分の2超す」。そして、どちらにも「自公、改選過半数」という見出しが出ていました。
 『朝日新聞』の主語は「改憲4党」ですから「迫る」となり、『毎日新聞』では「改憲勢力」として「4党」以外の4人の改憲派無所属議員を含んでいるために「超す」となっていました。いずれにしても、衆院に次いで参院も改憲発議可能な「危険水域」に入ったことは明らかです。
 選挙での勝敗ということで言えば、自民党56議席、公明党14議席で、合計70議席となり、安倍首相が目標としていた与党で改選議席の過半数(61議席)を越えました。目標が低すぎたとしても、達成したわけですから与党の勝利だと言えるでしょう。
 しかし、自民党は非改選議席と合わせて121議席となり、単独で参院の過半数(122議席)を越えることができませんでした。また、改選議席を6議席上回ったとはいえ、3年前の前回2013年参院選での獲得議席65を9下回っています。比例代表では1議席増となったものの、選挙区で10議席減らしたからです。
 安倍首相は国会内と自民党内で圧倒的な強さを持ち、「ダブル一強」だとされていますが、今回の参院選での実績はその陰りを示しています。衆院でも前回2014年の総選挙で2議席減らし、陰りが生じていました。基本的には現在も「ダブル一強」であることに変わりありませんが、衆院では2012年総選挙、参院では2013年選挙が議席のピークで、その後の2014年総選挙以降は下り坂になり、今回の参院選でもその傾向が続いていたことになります。
 公明党は前回の13年参院選より3議席増となりました。増えたのは愛知・兵庫・福岡で、いずれも定数増となった選挙区です。比例代表での当選者数は7議席で3年前と変わらず、得票もわずか4900票の増加にすぎません。つまり、今回の公明党の健闘は定数増の恩恵によるもので、必ずしも党勢が強まった結果だとは言えないのです。

 新たな希望としての野党共闘

 安倍首相の「ダブル一強」に対して、野党は選挙共闘によって対抗しました。全国で32ある1人区で野党統一候補を擁立し、与党との一騎打ちという構図を作ったのです。これは基本的に成功し、一定の盛り返しを実現できたと言えます。今後の野党共闘に向けても明るい展望を生みました。
 議席の面では11勝21敗という戦績で、その内訳は民進党7人、無所属4人となっています。3年前は野党系の当選者がたった2議席にすぎず、民主党は議席を獲得できませんでした。これに比べれば大きな前進です。
 また、28の選挙区では比例代表での各党の合計得票を上回り、投票率も26の選挙区で上昇しています。支持政党以外からの得票もあり、出口調査では無党派層の8割が野党統一候補に投票していました。自民党支持者の3割、公明党支持者の24%からも得票したといいますから、他党支持者から流入した票もかなりあったということになります。
 
 野党各党への恩恵と成果

 このような野党共闘は共闘に加わった各政党にとっても恩恵を及ぼすことになりました。紆余曲折の末、民進党は野党共闘の主力となったことで民主党時代の裏切りの記憶や汚れたイメージを部分的に払拭できたのではないでしょうか。議席の面では改選43議席をかなり下回りましたが、17議席にとどまった3年前の民主党時代からほぼ倍増し、32議席となっています。
 いち早く野党共闘の方針を打ち出して推進力となった共産党も、今回は1人区で議席に関わる選挙に取り組むことができるようになり、改選3議席を倍増させました。カヤの外で「独自のたたかい」を強いられてきたこれまでの選挙とは様変わりしています
 しかし、3年前の8議席には2議席届きませんでした。その原因は色々とあるでしょうが、自衛隊についての藤野前政策委員会責任者の失言による失速、執拗に繰り返された反共攻撃、北朝鮮の核実験やミサイル発射、尖閣諸島や南シナ海周辺での中国の不穏な動きが報じられたことなどが考えられます。1人区で候補者を下したために影が薄くなったかもしれませんが、これは共闘実現のための代償で「覚悟のうえ」だったでしょう。これらがボディブローのように効いたのではないかと思われます。
 改選2議席を1議席に減らしてしまった社民党への恩恵はなかったように見えますが、それでも比例代表の得票を前回より28万票増やしています。
 生活の党と山本太郎と仲間たちも比例区で1議席を獲得し、岩手選挙区と新潟選挙区では党籍のある候補者を当選させました。小沢党首は野党共闘実現に向けて大きな役割を果たしましたが、それが評価されたためではないでしょうか。


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