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8月10日(水) 「政治を変える」ことと労働組合―参院選の結果をふまえて(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、勤労者通信大学の『団結と連帯③労働組合コース』に掲載されたものです。3回に分けてアップします。〕

 はじめに

 注目の参院選が終わりました。その結果がどうなるかによって、日本の前途に大きな影響が及ぶと見られていた選挙です。まさに、歴史の分水嶺としての重大な意義をもつ政治決戦でした。
 果たして、選挙の結果はこれまでの政治を変えるような力を持ったのでしょうか。この選挙において、労働組合はどのような役割を果たしたのでしょうか。
 今回の参院選の結果を検討しながら、政治を変える必要性とそのために果たすべき労働組合の役割について考えてみることにしましょう。

1、参院選の結果をどう見るか

 与党は勝利したが自民党は不振だった

 今回の選挙に当たって、安倍首相は与党合計で改選議席の過半数である61議席を超えるという目標を掲げていました。選挙の結果、自民党は56議席、公明党は14議席を当選させ、与党は合計で70議席を確保しています。目標を突破したわけですから、与党が勝利したことは疑いありません。
 しかし、自民党は単独で参院の過半数である57議席を突破できませんでした。選挙後、無所属だった平野達男参院議員(岩手選挙区)が入党したために過半数を上回りましたが、選挙によって実現することはできなかったのです。この点では、必ずしも満足のいく結果ではなかったでしょう。
 また、自民党の議席は前々回の2010年参院選から13年参院選、そして今回の参院選にかけて51→65→56と変遷し、前回より9議席減らしています。この間、比例区での議席は16→18→19と増えていますが、選挙区では39→47→37となったからです。つまり、3年前の13年参院選と比較して自民党は9議席減少し、選挙区での当選者数も6年前の10年参院選を2議席下回っていたのです。

 改憲勢力は発議可能な3分の2を突破

 このように自民党の成績はあまりよくありませんでした。それでも非改選や改憲派の無所属議員も含めた改憲勢力の議席が参院の3分の2を超えたのは、公明党が9から14へと5議席増、おおさか維新の会が2から7に5議席増となったからです。
 しかし、公明党も3年前の13年参院選と比べれば、比例代表では7議席、757万票、14%から全く変化していません。3年前から新たに議席を獲得したのはいずれも定数が増えた選挙区でした。公明党の議席増は党勢の増大ではなく、定数増の恩恵を受けたものです。
 一昨年の総選挙によって、衆院ではすでに自公が3分の2以上の議席を上回りました。3分の2以上の議席があれば、衆参両院で改憲に向けての発議が可能になります。安倍首相は「憲法を変えたい」という積年の野望を実現できる手段を手に入れたということになります。

 威力を発揮した野党共闘

 他方、今回の参院選は野党と市民が力をあわせてたたかうという、これまでにない特徴を持つ選挙でした。野党共闘と市民は、戦争法の廃止や立憲主義の回復、個人の尊厳を守る政治の実現などを掲げ、全国32ある1人区のすべてで統一候補を擁立しました。
 そのうちの11の選挙区で野党統一候補が自民党候補に勝利し、沖縄と福島では、安倍内閣の現職閣僚を破り、野党統一候補が勝利を収めています。このような成果は野党共闘なしには不可能でした。改憲をめざして戦争する国づくりを進め、大企業や富裕層を優遇する安倍政治に対して、国民の意思が示されたものだったと言えます。
 このような野党共闘の効果は得票数の増加によっても示されています。野党4党の比例区での得票合計と選挙区での得票を比べると28選挙区で上回っており、最も多かった山形選挙区では比例区での得票の1.7倍になっています。また、無党派層の6割、自民党支持者の1割、公明党支持者の2割が野党共闘に投票していました。
 野党共闘は投票率の上昇にも寄与しています。合区の2選挙区を除く30選挙区のうち26選挙区で前回より投票率が上昇し、最も上昇幅が大きかった青森では前回と比べて9ポイントも伸びました。

 各党にもメリットがあった

 このような野党共闘は各政党にとってもメリットがありました。野党共闘の主力となった民進党は部分的にイメージチェンジに成功し、17議席にとどまった3年前の民主党時代よりほぼ倍増の32議席を獲得しています。
 共産党はカヤの外で「独自のたたかい」を強いられてきた1人区でも議席に関わる選挙に取り組めるようになり、6議席と倍増しました。ただし、前回03年参院選の8議席には及びませんでした。1人区で候補者を下したために影が薄くなったという野党共闘の代償、自衛隊についての藤野前政策委員会責任者の失言やこれを利用した執拗な反共攻撃、北朝鮮や中国の不穏な動きなどがボディブローのように効いたためでしょう。
 社民党は比例代表での2議席を維持できませんでしたが、それでも28万票増となりました。
 生活の党と山本太郎と仲間たちも比例区で1議席を獲得し、党籍のある候補者を岩手選挙区と新潟選挙区で当選させました。この間、野党共闘実現のうえで小沢党首は大きな役割を果たしましたが、それが評価されたためだと思われます。

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