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8月11日(木) 「政治を変える」ことと労働組合―参院選の結果をふまえて(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、勤労者通信大学の『団結と連帯③労働組合コース』に掲載されたものです。3回に分けてアップします。〕

2、政治を変えることの必要性

 明文改憲阻止のために

 参院選の結果、憲法改悪の危険が迫ってきたように見えます。実際、安倍首相はいつでも改憲発議ができる条件を手に入れました。しかし、首相は選挙戦の街頭演説では一言も触れず「改憲隠し選挙」に終始しました。国民が改憲に賛成していないことを知っており、選挙に不利になると考えたからです。
 投票直前の世論調査では、参院選で憲法改正の議論が深まったとする人はわずか20%で、深まっていないとする人が62%にも上り(『朝日新聞』7月4日付朝刊)、投票後の調査でも、議論が深まったという人は24%、深まらなかったという人は59%に上っています(『朝日新聞』7月14日付)。国民は改憲に賛成したわけでも、安倍首相に白紙委任したわけでもありません。
 何よりも、改憲勢力にとって頭の痛い問題は、最終的に国民投票での承認を得なければならないという関門があることです。安倍首相にすれば、念願の改憲を急ぎたいけれど、さりとて世論の反発を招いて国民投票で否決されるリスクは避けたいというところでしょう。
 いずれにしても、改憲をめぐる今後の動向を注視し、戦争法の発動による既成事実化を阻み、民進党内での改憲派の蠢動を抑えて立憲4党の共闘を維持することが必要です。同時に、憲法に対する国民の理解を深めて改憲勢力の狙いと危険性を周知していくことが極めて重要になっています。

 平和を守り安全を確保するために

 参院選の最中、とりわけ若者などから「日本が攻められたらどうするのか」という疑問の声が上がりました。北朝鮮の核開発やミサイル発射実験が相次ぎ、中国の海洋進出などの動きが伝えられたからです。
 しかし、ここではっきりさせておかなければならないのは、日本という国は攻められたら終わりだということです。日本は「戦えない国」ですから、「もし、攻められたら」という問いに対する答えはありません。そもそも「戦う」という選択肢はありませんから、攻められないような国際環境を作ることがただ一つの解決策なのです。
 その理由は、第1に、国土の特性にあります。狭くて集住化と都市化が進んでいる国に、逃げる場所はありません。第2に、北朝鮮には近すぎ、6~7分で着弾するミサイルを防ぐことは不可能で、ミサイル防衛(MD)は機能しません。第3に、日本海側には原発が並んでいて、腹を出して寝ているようなものです。強固に防備されている原子炉ではなく使用済み核燃料の保管庫をドローンなどで攻撃されればひとたまりもありません。
 最低限、これくらいのことを理解できる政治指導者が必要です。他国によって攻められないような関係を作るためのビジョンを持ち、軍事以外の選択肢を提起できる新しい政府を実現するためには政治を変えるしかありません。

 生活と労働を守るために

 選挙で与党が支持されたということは、「変えなくても良い」と考える人が多かったからです。低い投票率も、あえて投票することによって現状を変える必要性を感じなかったということを示しています。世界経済が不透明になって漠然とした不安が強まるもとで、政権の安定や生活の安全を優先する意識が働いたのかもしれません。
 今回の選挙で、安倍首相は経済政策こそが最大の争点だとしてまたもアベノミクスを前面に打ち出し、「この道を。力強く、前へ。」というスローガンを掲げました。アベノミクスは「道半ば」だというのです。始まってから3年半も経つというのに……。
 安倍首相が掲げている新旧の「3本の矢」は実行不可能で、黒田日銀のマイナス金利政策も破綻しています。為替市場は円高・株安に転じ、実質賃金は5年連続マイナスで消費や設備投資も低迷しています。だからこそ、消費増税を約束通り実施することができず、「新しい判断」によって先送りせざるを得なくなりました。
 すでに失敗した「道」を「力強く、前へ」進めても、日本社会のスラム化を強め、さらなる大失敗が待っているだけでしょう。必要なのは継続ではなく転換なのです。大型の財政出動や給付金バラマキなどの再分配政策によってもこの大失敗を挽回することはできません。生活と労働を守るためにも、政治を変えることが必要なのです。

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