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8月21日(日) 「改憲」から「壊憲」を区別して批判を集中する新戦略の意義とメリット [憲法]

 安倍首相による改憲暴走が可能となった新たな情勢の下で、新しい戦略の提起が必要になりました。改憲に反対する野党が抵抗しても、それを無視して改憲に向けて突っ走ることができる議席を衆参両院で手に入れることに成功したからです。
 このような情勢の下で、いかにして安倍首相の暴走を阻むかが問われています。私の回答は、「改憲勢力」全体を敵とするのではなく「改憲」勢力を味方にして「壊憲」勢力に批判を集中するべきだというものです。

 この両者は憲法条文の書き換えである明文改憲を目指している点で共通しています。その意味では「改憲勢力」であることに間違いありません。
 しかし、この両者には根本的な差異があります。現行憲法の平和主義、基本的人権の尊重、国民主権という「三大原理」を前提するか否か、自由で民主的な平和国家という現在の国の形を破壊するか否かという点での違いです。
 現行憲法の原理や理念を前提に国の形を守るような憲法の書き換えには反対せず、それを破壊するような「壊憲」に対してだけ打撃を集中するというのが新しい「壊憲」阻止戦略の眼目です。具体的には日本会議を中心とした戦前(というより戦中)回帰の改憲構想を掲げている勢力です。

 これは一部の「改憲」を認めることになりますから、これまでの護憲運動からすれば一定の譲歩であり、後退を意味することになります。それが明文「壊憲」の呼び水になったり、そのために利用されたりする危険性も十分にあります。
 しかし、現行憲法の原理と理念を守り、国の形の破壊を許さないという原則については今まで以上に明確にされています。この点で柔軟で原則的な戦略になっていると、私は判断しています。
 確かに一定のリスクはありますが、それも覚悟のうえで「壊憲」反対勢力を拡大することが必要になっています。そうすることでしか、幅広い国民の合意と共感を得て安倍首相の改憲暴走を阻止することはできず、あるかもしれない国民投票で多数派を形成することはできないのではないでしょうか。

 「改憲」阻止から「壊憲」阻止への戦略的転換は、「護憲」勢力の結集から「立憲」勢力の結集へと憲法をめぐる共同の幅を拡大することになります。明文改憲を主張していても、それが憲法原理や国の形の破壊を目指すものでない限り、「立憲」勢力として手を結ぶことができるからです。
 また、憲法を「不磨の大典」とし金科玉条としてしまっているのではないか、憲法に指一本触れさせないということで良いのかという疑問や、96条という改憲条項があるのに全ての改憲を否定するのはおかしいではないか、「改憲」と聞くだけで条件反射的な反発をしているのではないかなどの批判が、これまで「護憲」勢力に対して寄せられていました。
 新たな戦略を掲げることによって、これらの疑問や批判に対しても簡単に応えることができるようになります。現行憲法の原理や理念、国の形を破壊するような「壊憲」でなければ、社会の変容に対応して憲法原理や理念を具体化したり、統治ルールを変更したりするような「改憲」であれば、憲法条文の書き換えには何の問題もないのだと。

 この戦略は、この間発展してきた市民と野党との共同を憲法の分野にも拡大しようとするものです。その対象には、これまでの民進、共産、社民、生活の野党4党に加え、公明や維新、さらには改憲派の無所属議員や自民党内の保守リベラル層をも巻き込んでいく幅広い「壊憲」反対勢力の結集を展望しています。そうしなければ、「壊憲」を目指す国民投票では勝てないでしょうから。
 これらの勢力を区分けする基準は「憲法の三大原理」と理念、国の形を破壊することには反対だということであり、安倍首相自身の言葉を借りれば「自由と民主主義、基本的人権、法の支配という共通の価値観」を擁護するということにあります。これに敵対し破壊しようとする条文の書き換えは「壊憲」であり、それは自民党の憲法草案が示しているような戦中の軍部独裁体制の再来やファシズム国家の誕生にほかならず、断固として阻止しなければなりません。
 そのためには、国民の理解と納得が得られ、幅広い支持を獲得できるような戦略を掲げ、味方を増やして敵を孤立させることが必要です。批判する相手を限定して分断し、「改憲勢力」を腑分けして最も危険な「壊憲」勢力を浮かび上がらせ、そこに打撃を集中することです。

 このような戦略は、当面の安倍改憲暴走への抵抗を意図しているだけでなく、あるかもしれない国民投票を考慮に入れつつ、解散・総選挙後に成立する可能性のある新しい連立政権をも展望しています。憲法についての最低限の共通認識を確立しなければ、連立を組むことは困難でしょうから。
 今回の私の提起は、そのための一つの「試論」にすぎません。これを材料に幅広い議論がなされ、新たな「壊憲」阻止戦略を掲げた「立憲」勢力の幅広い共同の輪が形作られることを望んでいます。

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