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11月4日(金) 参議院選挙後の情勢と国民運動の課題(その2) [論攷]

〔下記の論攷は、『建設労働のひろば』No.100、2016年10月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

 *野党共闘をめぐる民進党内での議論

 野党共闘は民進党の代表選挙でも大きな争点になりましたが、立候補した3人は参院選での野党共闘については一定の評価をしていました。共闘したから負けたというのではなく勝ったわけですから、真っ向から否定するわけにいかないのは当然でしょう。問題は衆院選での共闘と共産党との連立です。新しい代表に選出された蓮舫さんは「衆院選で綱領や政策が異なる政党と政権を目指すことはない」と否定していました。
 しかし、これは理論的にも実践的にも間違っています。理論的に言えば、綱領や政策が異なっているからこそ、一致できる部分に限って行動を統一するわけです。この統一戦線論の基本が理解されていません。連合政権にしても同じです。別の政党ですから綱領や政策が異なっているのは当たり前ですが、そのような政党が共通の目標や一致する政策の実現を目指して手を結ぶのが連合政権ではありませんか。
 蓮舫さんのように言ったら単独政権しかあり得ず、連立政権は存在できなくなってしまいます。しかし、2009年に発足した鳩山連立政権は綱領や政策が異なった民主党・社民党・国民新党によるもので、今の安倍政権だって綱領や政策の異なる自民党と公明党による連立政権です。このような連立政権は世界では当たり前のことです。
 「別の政党だから」「綱領や政策が違うから」などといって政党間の選挙共闘や政権連合を否定するのは、連合政権の理論についても実態についても無知であることを告白するに等しいものです。「違うのは当たり前」「でも力を合わせなければ勝てない」「だから一致点を探して共闘する」というのが、基本の「キ」なのですから。
 念のために付け加えておけば、民進党と共産党など野党との間には政策的な共通点が存在しています。だからこそ参院選での共闘が実現したのです。2月の「5党合意」、選挙前の通常国会に野党共同で提出された15本の法案、6月の市民連合と野党4党との合意、1人区での選挙協定や確認事項などによって積み重ねられた一致点は、政権を共にすることによってこそ実現できるものではありませんか。
 自民党最大派閥の細田派(清和政策研究会)は9月4日、長野県軽井沢町で研修会を開きました。そこで会長の細田博之総務会長は民進党が今後も共産党との選挙協力を続けると予想したうえで、前回衆院選の選挙区での得票率が5割未満だった自民党の現職議員は次回当選が困難になると強調し、「漫然と戦ったら大変なことになる」と活を入れたそうです。
 また、細田総務会長は埼玉県新座市であった自民党衆院議員の国政報告会でもあいさつし、「小選挙区では(得票率)5割以上を目指さないといけない。もし、共産党と民進党が協力し、(統一候補を)擁立した場合、非常に危ない。我が党は簡単に解散・総選挙をするよりは、候補者たちが頑張って、次の選挙で堂々たる勝利をおさめてもらってこそ安定政権が維持できる」とはっぱをかけています。自民党幹部にこれほどの危機感を生み出した野党共闘を、「衆院選だから」ということでやめようというのでしょうか。
 2014年の前回衆院選の結果をもとにした『東京新聞』の試算では、野党4党側の勝利は前回の43選挙区から2.1倍の91選挙区になるとされています(『東京新聞』9月4日付朝刊)。このように、野党共闘の効果は歴然としています。
 自民党の細田さんでさえ十分に理解している野党協力の威力を、民進党の代表が分かっていないというのでは困ります。蓮舫さんには、自ら先頭に立って野党共闘を引っ張る決意を示していただきたいと思います。このような形で力を合わせる以外に、自民党に勝って「一強多弱」の壁を突き崩せる妙案はなく、それ以外にアベ暴走政治をストップさせ、政権交代を実現して新しい連立政権を樹立する展望は開けてこないのですから。

 *共闘の継続と発展に向けて

 このような野党共闘を生み出す背景となった力は、昨年の安保法案に反対する国民的な運動の高揚でした。そこには、それまでとは異なる大きな特徴がありました。
 その一つは、SEALDsやママの会、市民連合など、従来になく若者や女性、学者、弁護士、市民が自主的に運動に加わってきたことです。平和フォーラムや全労連傘下の労働組合、9条の会など以前からの運動団体と新たに加わってきた運動団体が連携し、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会を中心に継続的な集会が開かれ、デモやパレードが展開されました。
 もう一つの特徴は、このような国会外での運動と国会内での議員の活動や委員会での質疑などが連動して運動を盛り上げたことです。国会前の集会には野党の議員が参加して決意を表明し、市民団体の関係者は委員会の参考人などとして意見を述べ、憲法審査会で「安保法案は憲法違反」だと断言した3人の憲法学者の証言は運動に大きな力を与えました。
 そして第3に、これらの市民運動は政党との連携を強め、選挙などにも深くかかわることになりました。政治や政党と一定の距離をとってきた従来の市民運動とはこの点で大きく異なり、市民や政党が連携して開いた集会やデモの中で「野党は共闘」という声が上がったのは自然な成り行きでした。
 安保法は昨年9月19日に成立しています。この日の午後、共産党は今後の方針を協議し、「国民連合政権」樹立を呼びかけました。安保法の廃止を可能にするような新しい政府を市民と野党との共同の力で樹立しようという呼びかけです。
 この時点から「2015年安保闘争」は新たな局面を迎えることになります。参院選に向けて野党共闘の成立をめざすという、これまでの国政選挙では経験したことのない新しい運動目標が提示されたからです。同時に、安保法廃止を目指す2000万署名運動も提起されました。市民と政党との共同は大衆運動と選挙闘争との連携という新たな運動領域を切り開くことになったのです。
 2016年2月19日、安保法成立から5ヵ月後に野党5党は国会内で党首会談に臨み、安保法の廃止と国政選挙での協力で合意しました。いわゆる「5党合意」です。これによって参院選での統一候補擁立が可能になりましたが、それを実現させたのは共産党による候補者の取り下げでした。
 こうして、まるで突貫工事での「プレハブ造り」のように野党共闘が成立しましたが、それは前述のように大きな成果を上げました。参院選の結果を見ても野党共闘の威力と効果は明瞭です。それを維持し、発展させていくことが今後の大きな課題だということになります


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