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4月14日(金) 共謀罪法案の審議が抱える3つの弱点と1つの壁 [国会]

 いよいよテロ等防止罪という形で「化粧直し」された共謀罪法案が国会に提出されます。自民党の「オウンゴール」続きで予定されていたスケジュールより大幅に遅れました。
 今日、衆院法務委員会で共謀罪の趣旨説明が行われることになっています。すでに3回も廃案になっていますから、与党からすれば「4度目の正直」を目指したいところでしょうが、その前途には「3つの弱点と1つの壁」が立ちはだかっており、そうは「問屋が卸さない」でしょう。

 3つの弱点のうちの一つは法案自体にあります。政府の説明は嘘ばかりで、全く説得力を持ちません。
 実際に罪を犯さなくても計画して準備したと認められれば、捕まえることが可能です。それを認めるのは取り締まる側で、その取り締まりは思想や内心にまで及び、このような法律を制定すれば近代刑法の基本が崩れ、市民や市民運動までが監視の対象となり、モノ言えぬ世の中、政府にとって邪魔なものを排除することのできる社会が出現することになります。
 組織犯罪防止条約の批准やテロ対策を名目にしていますが、組織犯罪とはマフィアなどの経済犯罪であってテロを対象としているわけではありません。この条約を批准しているからといってテロが防げるわけではなく、批准していない日本はすでに多くのテロ対策のための法律を持っていますから今世紀に入ってテロ事件などは起きていず、オリンピック招致の際に安倍首相が胸を張って言ったように、「東京は世界で最も安全な都市」になっています。

 2つめの弱点は、この法案を担当する法務省の金田法務大臣です。金田法相はこの法案の内容を全く理解していず、すでにこれまでの国会審議で明らかになったように、きちんとした説明をする能力を持っていません。
 金田法相は、まだ法案が出ていないからきちんとした説明ができないのだ、本格的な審議は法案が提出されるまで差し控えて欲しいという趣旨の文書を配ったという「前科」があります。大臣が立法府の審議に注文を付けるのかと批判され、撤回して謝罪しました。
 いよいよ法案が提出されるわけですから、本格的な審議が始まり「まだ法案が出ていないから」と逃げ回ることはできなくなります。この法案をめぐっては与党の「オウンゴール」が目立っていますが、本格的な審議が始まって金田法相にまともな答弁ができるのか、自民党執行部としてはヒヤヒヤものでしょう。

 第3の弱点は、与党の一角を占めている公明党です。公明党は国会に提出する以上は成立に全力を尽くすと言っていますが、内心ではそれほど積極的ではなく、腰が引けています。
 もともと、公明党は前の国会から継続審議中の民法改正案と性犯罪を厳罰化する刑法改正案の審議を優先すべきだという立場でしたから、この法案の優先順位は高くありません。そのために与党間の協議に手間どって閣議決定や国会提出が遅れてきたという経過があります。
 この共謀罪法案は「平成の治安維持法」とも言われていますが、その治安維持法によって公明党の支持団体は大きな被害を受けた過去があります。創価学会の創設者である牧口常三郎初代会長は治安維持法違反と不敬罪で逮捕され、獄中で死亡しました。この苦い過去からすれば、やがては創価学会も監視や取り締まりの対象にされてしまうのではないかとの懸念や危惧はぬぐい切れず、公明党支持者の間にも不安があります。

 以上の3つの弱点を強めているのが、通常国会直後に予定されている都議選という「壁」です。都議選の結果はその後の国政選挙に大きな影響を与えてきており、今回の選挙は「都民ファーストの会」を率いる小池都知事による旋風が巻き起こって大きな注目を集める政治イベントになろうとしています。
 共謀罪の成立を目指している与党にとっても、この選挙への影響は意識せざるを得ません。都議会への進出から政治の舞台に登場してきた公明党にとしては最も重視する選挙であり、「離党ドミノ」が止まらず苦戦が予想されている自民党にとっても死活をかけた選挙戦になることでしょう。
 その選挙の前に共謀罪成立に向けて遮二無二強行突破することは、自滅覚悟の「自爆路線」を選択するのでなければ難しいでしょう。この法案がそれほどの緊急性や必要性があるのかという声は、与党の中からも聞こえてきます。

 外交面でも、北朝鮮をめぐって危機的な状況が高まっています。安倍首相の約束と全く逆に、安保法成立以降も日本周辺の安全保障環境は改善せず、悪化を続けるばかりです。
 トランプ政権の樹立を歓迎していた安倍首相ですが、4月16日には東京で日米経済対話が始まります。2国間交渉の開始によってどのような要求が突き付けられるのか、予断を許しません。
 26日からは安倍首相のロシア訪問も予定されていましたが、シリア空爆への支持表明によって実現が危ぶまれています。行ったとしても、大きな成果は期待できないでしょう。

 内政外交ともに、八方ふさがりの状況が強まっています。アベ政治の「黄昏」が訪れてきているということでしょうか。
 このような閉塞状況の下で始まった共謀罪の国会審議です。その前途は決して容易ではなく、野党が結束して対応し、市民とともに手を携えて反対運動を強めていけば、廃案に追い込むことは十分に可能です。
 「2度あることは3度ある」と言うではありませんか。共謀罪を廃案にして、「3度あることは4度ある」ということを証明したいものです。

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