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9月16日(土) 戦後国際政治において失敗続きだったアメリカの後追いをしても失敗するだけだ [国際]

 安倍首相の9条改憲構想は、アメリカの尻馬に乗って日本を「戦争する国」「戦争できる国」にするためのひとつながりの「物語」の完結編を意味しています。日本を「戦争する国」「戦争できる国」にするためには、法律や制度などのシステム、戦闘部隊や軍備、基地などのハード、若者への教育やマスコミによる国民の意識や世論形成などのソフトという3つの領域での整備が必要になります。
 憲法を変えることは、このシステム変更の中核をなしています。この「物語」は起(特定秘密保護法)、承(安保法)、転(共謀罪法)、結(9条改憲)という形で、最後の段階を迎えつつあると言ってよいでしょう。

 このような「物語」は、多極化し世界の秩序維持をもはや一国では担えなくなったアメリカからの分担要請であるとともに、アメリカのような国になって世界の中心で活躍したいと願う安倍首相の個人的な野心も反映しています。それは憲法を変えた最初の首相として歴史に名を残したいという願望にも通ずるものです。
 その「モデル」はアメリカですが、安倍首相にとってはオバマのアメリカより以上にトランプのアメリカこそが、理想的なパートナーであるにちがいありません。「アメリカ第一」を掲げて排外主義と人種差別を公言するトランプ米大統領は、安倍首相のと「うり二つ」なのですから。
 しかし、日本がその後を追おうとしている第2次世界大戦後のアメリカは失敗の連続でした。成功しているならともかく、失敗ばかりしてきたアメリカの後を追っていけばやはり失敗するに決まっているではありませんか。

 戦後国際政治におけるアメリカは失敗の連続でした。主なものでもベトナム戦争、9.11の同時多発テロ、イラク戦争などがあります。いずれも、自国民の多くが犠牲になり、それをきっかけに国力を弱め、国際的な地位を低下させてきました。
 ただし、9.11同時多発テロでアメリカは被害者であって、テロを引き起こしたのは中東地域出身の犯人たちでした。とはいえ、何故あのような形でアメリカが狙われたのかと言えば、その背景にはアメリカによる中東政策の失敗がありました。
 戦後のアメリカは、中東だけでなくアジア、中南米、アフリカなど地球規模で、中央情報局(CIA)などを使った隠然とした工作や海兵隊などを用いた公然とした介入を行ってきました。このような工作や介入にたいする積年の恨みや怒りがあったからこそ、アメリカがテロの対象として狙われたのです。

 このように、多年にわたる「世界の憲兵」としてのアメリカの活動は感謝されるどころか激しい敵意と怨念を生み出してきたということを忘れてはなりません。しかも、この9.11同時多発テロ事件はブッシュ大統領による「対テロ戦争」を引き出し、さらに中東への介入を強めてアフガン戦争を泥沼化させました。
 そして、その後に始まったイラク戦争は、さらに大きな失敗を生み出すことになります。核や化学兵器などを開発して貯蔵しているという「濡れ衣」によってフセイン政権が攻撃され打倒されましたが、そのような「大量破壊兵器」は発見されませんでした。
 日本政府も支持したこの戦争によってフセイン政権は倒されましたが、それによって中東地域に平和と安定が訪れたというわけではありません。混乱がさらに拡大し、その結果、二つの大失敗がもたらされることになります。

 その一つは、「イスラム国(IS)」というモンスター(怪物)が誕生し、増大していったことです。その母体は「イラクの聖戦アルカイダ」だと言われるように、イラク戦争がなければおそらく誕生することのなかった怪物でした。
 もう一つは、北朝鮮の金正恩労働党委員長による核とミサイル開発への暴走です。イラクのフセイン政権やリビアのカダフィ政権などの崩壊を目の当たりにして恐怖を覚えた金正恩氏は、核兵器とその搭載が可能でアメリカに到達できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発によらなければ北朝鮮の体制維持は不可能だと思い込み、その開発に狂奔する決意を固めたにちがいありません。
 結局、イスラム国と金正恩氏は、戦後におけるアメリカの外交・軍事政策の失敗が生み出した二つの「怪物」だったのです。それを退治しようとしてアメリカと同様の外交・軍事政策を取れば、その失敗をさらに上塗りして問題の解決を遅らせるだけでしょう。

 安倍首相には、このような戦後国際政治に対する反省もアメリカの失敗についての認識もありません。あるのはアメリカに対する追従と中国への敵意だけです。
 アメリカの失敗の結果、世界が大きく変化し多極化してきており、これまでとは異なったアプローチが必要になってきているということも全く理解できていません。古めかしいアメリカの栄光の復活を夢見て、そのおこぼれにあずかろうとしているだけです。
 トランプ米大統領はアメリカの失敗から抜け出そうとして、その失敗を別の形で繰り返そうとしています。北朝鮮を口汚くののしって軍事的な圧力を強め、その尻馬に乗った安倍首相は圧力一本やりの強硬路線を主張するばかりです。

 出口のない緊張の高まりによって、偶発的な衝突の可能性が高まってきています。トランプ米大統領が核のボタンに手をかけないことを祈りつつ、一刻も早く対話路線に転換し、交渉による解決の糸口を見つけ出してもらいたいものです。
 このような非軍事的な解決策の模索こそが、戦後アメリカの失敗の歴史から抜け出す唯一の道なのです。アメリカの後追いではなく日本独自の立場から非軍事的な解決を促しその実現を目指すことこそ、憲法9条の平和主義を尊重し擁護すべき義務を有している日本の首相のとるべき態度ではないでしょうか。

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