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10月24日(火) 与野党の勢力関係は変わらなかったけれど野党の中身は質的に激変した [解散・総選挙]

 変わらなかったけれど変わった。今度の巣選挙の結果を一言で言えば、そういうことではないでしょうか。
 与野党間の勢力関係にはほとんど変化はありませんでした。しかし、野党内では劇的ともいえる質的な変化が生まれたからです。

 台風の影響で遅れていた開票作業が終わり、小選挙区289 、比例代表176 の全465 議席がようやく確定しました。自民党は追加公認を含めて公示前と同じ284議席となり、29議席の公明党と合わせた与党では313議席となって衆院の3分の2(310議席)を維持しました。
 与党の合計では改選前の318議席が313議席と5議席減になっています。定数が10議席減っていますから単純な比較はできませんが、ほぼ現状維持だと言って良いでしょう。
 自民党の有権者に対する得票割合(絶対得票率)も小選挙区で25.2%(前回24.5%)、比例代表で17.3%(同17.0%)となっており、こちらも大きな変化はなく、微増にとどまっています。自民党は圧勝したとされていますが、負けなかっただけで勝ったわけではありません。

 このように勢力比では与党と野党との関係に大きな変化はありませんでしたが、野党内では質的とも言えるような劇的な変化が生じました。立憲民主党は公示前の15議席から55議席に躍進して野党第1党になりました。議席を増やしたのは立憲民主党だけでしたから唯一の勝者だったということになります。
 これとは対照的に、希望の党は50議席で公示前の57議席には届きませんでした。他の野党も、共産党は21議席から12議席に減らし、維新の会は3議席減の11議席、社民党は変わらず2議席となっています。
 この結果、希望と維新の合計は71議席から61議席への10議席減となったのに、立憲3野党(立憲民主・共産・社民)の合計は38議席から69議席へと31議席も増えました。このような成果は共産党が67もの選挙区で候補者を取り下げた自己犠牲的な献身のお陰であったことを考えれば、まさに市民と立憲野党の協力・共闘のたまものであったということができます。

 結局、総選挙の前と後とで何が大きく変わったかと言えば、民進党という野党第1党が消え、希望の党と立憲民主党という新しい政党が誕生し、立憲民主党が躍進して野党第1党となり、市民と立憲野党の共闘の威力が改めて実証されたということになります。今回の選挙で野党全体の議席が増えたわけではありませんが、その内実が大きく変わったことによって、今後への新たな希望が、希望の党の外で生じたことは明らかです。
 旧民主党から民進党に至るまでしつこくまとわりついていた薄汚れた裏切り者のイメージは、前原さんと小池さんによって希望の党へと受け継がれることになりました。逆に、枝野さんはあたかも白馬に乗った正義の騎士のように登場し、立憲民主党という清新でまともな選択肢を提供することになりました。
 こうして、民主党以来のイメージと政策を一新し、負の遺産を償却することに成功したわけです。安倍首相による不意打ちの解散、小池都知事による希望の党の結成、前原民進党代表によるなだれ込み路線と小池さんの排除の論理による選別などがなければ、このような形で枝野さんが新党を立ち上げることもなく、民進党に変わってよりリベラルな政党が野党第1党になることもなかったでしょう。

 その結果、野党内に市民や他の立憲野党と共に歩むことが可能で魅力的な新たな選択肢が登場することになりました。それは安倍首相に対する不信や批判の受け皿になるにちがいありません。
 これまでは、「他よりも良さそうだから」という消極的な支持によって安倍内閣は支えられてきました。内閣支持率が下がっても自民党の支持率は下がらず、民進党の支持率が上がるということもありませんでした。
 しかし、これからは「良さそう」な「他」が存在することになり、総選挙の結果を過信して「信任された」とばかりに強権的な政治運営を続ければ消極的な支持が離れるかもしれません。内閣支持率の下落が自民党支持率の低下や立憲民主党の支持率上昇に連動する可能性が出てきたのです。

 そのことを知ってか知らずか、総選挙開票後の安倍首相の顔に笑顔はありませんでした。意表を突いた解散・総選挙によって野党をかく乱し、その混乱の中から思いもよらぬ敵手を生み出してしまったことに、安倍首相は気が付いていたのかもしれません。

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