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11 月15日(水) 混乱のるつぼの中から沸き上がった希望と展望 [論攷]

〔以下の論攷は、日本科学者会議の『東京支部つうしん』No.601、2017年11月10日付、に掲載されたものです。〕

 総選挙公示の直前に、野党第一党が突如として姿を消すという驚天動地の事態が生まれました。小池百合子東京都知事による新党の結成と前原誠司代表による「なだれ込み路線」による民進党の解体です。こうして「劇場型選挙」が始まり、安倍暴走政治への批判や野党共闘への模索が陰に隠れ、与党が漁夫の利を得て300議席を超えました。
 しかし、このような混乱のるつぼの中から一筋の光明が差し、新たな希望が生まれています。それは「希望の党」の結成ではなく、枝野幸男さんによる「立憲民主党」の立ち上げでした。市民による「枝野立て」という声に背中を押されての新党の誕生です。合従連衡や議員の生き残りのためでなく、市民に望まれて結成された政党がかつてあったでしょうか。
 街頭演説で枝野さんは「草の根からのまっとうな政治」を訴え、逆に「ありがとう」と感謝されたそうです。支持を「お願いします」と言うのではなく、支持者から「お願いします」と言われるような党首がこれまでいたでしょうか。政治を諦めていた大衆が選挙に参入し民主主義を活性化するという「左派ポピュリズム」が誕生した瞬間でした。
 突如として生じた政党政治の危機を救ったのは、安保法反対闘争以来の市民と立憲野党の共闘の蓄積です。立憲民主党の立ち上げを後押ししたのも、その後の急速な支持の拡大や政策合意と野党共闘の進展も、そして15議席から55議席への立憲民主党の躍進も選挙区レベルで拡大していた市民と立憲野党の共闘の蓄積なしにはあり得ませんでした。
 このような共闘の推進力となり、候補者の取り下げなどによって一本化を図ったのは日本共産党です。その共産党が21議席から12議席へと9議席減になったのは残念ですが、共産党のアシストによって立憲民主党が得点を挙げ、立憲野党のチーム全体としては38から69議席へと大きく躍進することができました。
 選挙の結果、自民党は改選前と同じ284議席で、有権者内での得票率(絶対得票率)も小選挙区で25%、比例代表で17%と変わっていません。それにもかかわらず「大勝」できたのは、小選挙区制という選挙制度のカラクリと野党の分裂に助けられたからです。非民主的な小選挙区制の弊害は大きく、その見直しは急務です。
 同時に、このような制度の下では、野党がバラバラでは勝てないこと、統一すれ勝てることがまたもや明らかになりました。沖縄、北海道、新潟、岩手、長野、佐賀などでは共闘の威力が実証されています。市民と立憲野党の共闘こそが「勝利の方程式」であることが、参院選1人区や地方選挙に続いて政権選択の衆院選でも立証されたことが、今回の総選挙の最大の教訓ではないでしょうか。
 選挙の結果、改憲に賛成する議員は349人となって3分の2の310議席を越えました。しかし、その全てが安倍首相の9条改憲を支持しているというわけではありません。自民党の中でも国防軍を明記する改憲草案に賛成する人が14%います。与党である公明党は消極的です。希望の党内でも6割が9条改憲に反対しています。
 安倍9条改憲には、自民党がまとまるのか、公明党を含む与党が一致できるのか、改憲志向の野党を巻き込めるのか、安倍9条改憲に反対している野党第1党の立憲民主党の了解が得られるのか、などのハードルがあります。しかも、最終的には国民投票というさらに高いハードルが存在しています。
 世論こそが安倍9条改憲を阻む力です。反対の世論を広げ、明示しなければなりません。これが3000万人署名の重要な意義です。そして、ここにこそ安倍9条改憲阻止に向けた希望と展望もあると言うべきでしょう。


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