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1月17日(水) 改憲 2018年は正念場 [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、農民運動全国連合会(農民連)の機関紙『農民』第1293号、2018年1月1日・8日合併号、に掲載されたものです。〕

 「戦争できる国」づくりの総仕上げ
 9条改憲を本気で狙う安倍首相

 安倍首相が改憲策動を強めるもとで、2018年は、日本国憲法にとって正念場の年です。憲法をめぐる今の状況と2018年の展望について、全国革新懇代表世話人で法政大学名誉教授の五十嵐仁さん(政治学)に聞きました。

 野党の一部に受け入れやすい案に

 安倍首相は昨年5月3日、憲法9条に自衛隊を明記し、2020年に施行するという改憲案を打ち出しました。
 その後、森友・加計疑惑で追いつめられ、7月の都議選で自民党が惨敗して内閣支持率も3割を切るなど、改憲への動きは一時より後退したかのようにみえました。
しかし、10月の総選挙の結果、「改憲勢力」が8割を占めたため再びギアを入れ替え、攻勢にでようとしています。
 安倍首相は公明党や維新、民進党など野党の一部も受け入れられやすいようにと、4項目を打ち出してきました。自民党の改憲案より実現可能性を優先し、本気で変えようとしているからです。
 その内容は、①9条への自衛隊の明記、②緊急事態条項の創設、③「合区解消」論、④高等教育の無償化――です。その中心は9条改憲論にあります。
 総選挙の結果、「改憲勢力」が衆参両院で3分の2以上を占め、改正発議が可能な、きわめて危険な状況になりました。危機感を高めている方も多いと思います。

 一枚岩ではない改憲勢力の中身

 しかし、次の点をみておく必要があります。
 第一に、改憲勢力といってもその中身はバラバラで、一枚岩ではない。安倍首相のいう9条改憲論を支持している人は決して多くはありません。
 憲法は「不磨の大典」ではなく、96条に改憲手続きの規定がありますから、改正が許されないわけではない。しかし、それには限界があり、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3大理念を破壊するような改正は許されません。
 「改憲勢力」のなかには、平和主義を破壊する9条改憲論者もいる一方、高等教育無償化や地方自治の充実など、理念に抵触しない改正を主張する論者もいます。安倍首相がめざしているのは、憲法の平和主義理念を壊す“壊憲”です。この安倍9条改憲論を支持する最も危険な勢力を、他の「改憲勢力」から切り離して孤立させ、その狙いと危険性を暴露しながら攻撃を集中することが大事です。

 改憲が緊急に取り組む課題か

 第二に、憲法を今変えることが、日本が直面している最大の政治課題なのかということです。取り組むべき緊急にして最重要な課題は景気の回復であり、貧困と格差の是正、社会保障の充実、少子・高齢化の解決、くらしと営業を守り平和と安全を確保することです。決して、憲法改正ではありません。
 憲法を変えれば、これらの問題が解決するのでしょうか。憲法に自衛隊を明記すれば従米・軍事大国をめざすかのような誤ったメッセージを世界に発信し、かえって日本の平和と安全を脅かすことになるでしょう。

 具体的な現れにすべて反撃して

 第三に、9条改憲の問題を、これだけ取り出して単独でとらえてはならないということです。これは、一連の「戦争できる国」作りプロジェクトの総仕上げという位置づけになっているからです。安倍首相は、そのための法律や制度の整備を着々と進めてきました。
 国民の言論の自由や知る権利を脅かし軍事機密を守るための特定秘密保護法、集団的自衛権行使を一部容認する安保法制、戦争反対の市民・社会運動も規制できる共謀罪法などです。国家安全保障会議(日本版NSC)も設立しました。
 そして今度こそ、9条という「本丸」に手をつけ、「戦争できる国」に変えていくことを本気でねらっています。こうした具体的な現れ一つ一つへの反撃が必要です。(つづく)

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