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11月21日(水) 国民の支持なき安倍政権―暗雲漂う3選後の船出(その3) [論攷]

 〔以下の論攷は、社会主義協会が発行する『研究資料』No.39、2018年11月号、に掲載されたものです。3回に分けて、アップさせていただきます。〕

3、改憲阻止と安倍政権打倒に向けて

 改憲ガチンコ勝負の始まり

 安倍首相による改憲強行の狙いは「改憲シフト」人事に示されています。司令塔である党の憲法改正推進本部長を穏健派とされる細田博之氏から強引なやり方をためらわない腹心の下村博文氏に変え、これをバックアップするために重鎮でもない加藤勝信前厚労相を総務会長に抜擢しました。早速、下村本部長は自民党の小選挙区支部に改憲本部の設置を指示しています。
 同時に、改憲論議の主戦場となる衆院憲法審査会の幹事を入れ替え、野党との交渉を担う与党の筆頭幹事に首相に近く超タカ派の新藤義孝氏を起用し、下村本部長が自ら幹事に就任しました。これまで与野党の協調路線を進めてきた中谷元与党筆頭幹事と野党人脈の強い船田元幹事は外されています。
 また、これまで公明党とのパイプ役を果たしてきた高村正彦前副総裁を後ろに引っ込め、必ずしも公明党との了解を前提としないという姿勢を示しました。自民党だけでも改憲に向けて突っ走ることができるような態勢を、とりあえず人事面で固めておいたというのが今回の改造が示しているポイントです。
 安倍首相はこれまで臨時国会での条文案の「提出」に意欲を示してきましたが、最近になって「説明」するだけでも構わないと言い出しました。総裁選後は思い通りにいかなくなったため、「提出」から「説明」へとトーンダウンしたと伝えられています。
 しかし、騙されてはなりません。このような形で印象を操作することが、安倍首相一流の「高等作戦」である可能性が高いからです。当面、「説明」だからと言って世論と野党を油断させ、維新などの一部の野党を巻き込んで憲法審査会を開き、改憲発議を強行するチャンスをうかがうということが十分にあり得るからです。こんなことは常識的には考えられませんが、そのような常識の通用しないのが安倍首相です。
 抵抗や批判もいとわず強行すれば、野党や世論の大きな反発を買うことは目に見えています。統一地方選を控えている地方議員や参院選で立候補を予定している候補者も動揺するでしょう。
 そこで意味を持ってくるのが「選挙シフト」です。今回の改造で選挙に向けての体制を格段に強化したからです。選対委員長に総裁選で選対事務総長を務めた甘利明氏、総裁特別補佐兼筆頭副幹事長に安倍首相の秘蔵っ子と言われている稲田朋美氏を起用し、幹事長代行には総裁特別補佐や官房副長官として仕えてきた側近の萩生田光一氏を再任するなど、安倍首相の盟友や側近を起用して万全の構えが取られました。
 安倍首相は、この改造によって大きな賭けに出たということでしょう。改憲を自分の手でやり遂げるために参院選の前に隙あらば改憲発議を強行したい、それで混乱しても参院選で勝てるようにしたい、発議に失敗しても参院選で何としても勝ち抜きたいという執念がにじみ出ているような布陣です。
 このような執念をしっかりと見抜き、油断することなく対応しなければなりません。トーンダウンしたとされている首相の「死んだふり」に騙されてはいけません。さし当り、「説明」のための憲法審査会の開催には断固として反対する必要があります。
 同時に、閣僚の資質・適格性や消費増税、捏造したとされる「TAG」問題をはじめ日米貿易交渉などについての追及を強めることが必要です。安倍政権の「死に体(レームダック)」化を促進することによって改憲発議の余裕を与えないようにすることが、臨時国会での獲得目標となるでしょう。

 参院選での自民党敗北と安倍政権打倒の展望

 来年の参院選で自民党を敗北させ、安倍政権打倒の可能性を切り開かなければなりません。それは十分に可能だと思います。
 第1は、自民党役員人事と内閣改造の失敗です。これによって内閣支持率を高め、勢いをつけて臨時国会を乗り切るという「スタートダッシュ」を決められず、国民の不信と自民党関係者の不安を引きずったまま政権運営を続けなければならなくなりました。
 しかも、安倍首相にとっては最後の任期で先がなく、後継者争いが始まって早晩「死に体(レームダック)」化することが避けられません。すでに、禅譲を狙う岸田政調会長が福井で後援会を立ち上げるなどの動きが始まっています。
 第2は、「公明党神話」の崩壊です。これまで自民党は連立相手である公明党やその支持基盤である創価学会に助けられて選挙を闘ってきましたが、公明党支持者の3割前後がデニー候補に投票した沖縄県知事選挙に見られたように、創価学会に対する締め付けが効かなくなってきました。
 『週刊ダイヤモンド』編集部の「『最強教団』創価学会の焦燥、進む内部崩壊の実態」というレポートは「実は全国各地で今、……幹部から『査問』を受けたり、役職を解かれたりする会員が急増している」と伝えています。公明党は昨年の総選挙において小選挙区で1人落選させ、比例代表で初めて700万票を下回るなど苦戦しました。来年の統一地方選挙や参院選を前に安倍首相に追随していると見られれば再び苦戦することは免れませんから、改憲問題で距離を取らざるを得ず自公の選挙協力にも陰りが生じています。
 第3は、「亥年現象」というジンクスです。12年に一度、統一地方選挙と一緒の年に戦われる参院選で、選挙を終えた地方議員の「選挙マシン」が作動せず自民党が苦戦するという結果が繰り返されてきました。1959年は唯一の例外ですが、71年、83年、95年に議席を減らしてきました。
 特に、第1次安倍政権の下で実施された2007年参院選では自民党の獲得議席が37議席の歴史的惨敗となり、60議席と躍進した民主党に初めて参院第1党の座を明け渡しました。このときの選挙では公明党も大敗し、神奈川県、埼玉県、愛知県で現職議員が落選しています。
 第4は、2016年参院選の実績です。3年前の参院選では32ある1人区で野党共闘が成立し、11選挙区で勝利しました。これが繰り返されれば、与党は3分の2の改憲発議可能な議席を失います。
 このときは改選121議席のうち自民党が56議席で公明党が14議席と、与党が過半数を上回りました。しかし、改選議席121の57.9%で3分の2を下回っています。自民党は3年前の2013年参院選での当選65を9議席も減らしたのです。

 むすびに代えて―活路は共闘にあり

 来年7月の参院選まで9カ月あります。その時間を無駄にしてはなりません。野党間の共闘をどう強め、参院選をどう闘うのか、前提条件なしで、相互支援に向けて具体的な協議を始めてもらいたいものです。
 国民民主党を含めて野党共闘に向けての態勢は整いつつあります。共産党の理論誌『前衛』の11月号に立憲民主、国民民主、衆院会派「無所属の会」、共産の野党4党派の国対委員長による座談会や臨時国会に向けての野党5党1会派の代表・委員長、幹事長・書紀局長会談など、共闘に向けての機運は高まってきています。
 内閣改造の不発と参院選での苦戦の予想が強まる中で、自民党内には来年の参院選で衆院選との「ダブル選挙」を行うべきだという声も出てきているようです。その可能性も視野に入れた準備を、今から始めなければなりません。
 前回16年参院選と同様に来年の参院選でも共闘を実現すれば、自民党の議席が減り与党全体として3分の2の改憲発議可能な議席に達しません。この時まで発議させなければ安倍首相の改憲野望を粉砕することができます。
 それだけでなく、与野党精力を逆転させて「ねじれ状態」を生み出すことができれば、安倍政権の命脈を断つことができます。解散・総選挙に追い込み、野党連合政権樹立への展望を切り開くことも可能になります。
 前回参院選での野党共闘は2月19日の「5党合意」から始まり、投票日まで40日しかない5月31日になってようやく1人区すべてで「1対1の構図」が確立しました。それよりもずっと早く準備が可能な今回は、さらに強力な野党共闘の力を発揮できるはずです。
 「活路は共闘にあり」ということは、この間の経験を通じてすでに明らかになっています。その活路を切り開くことによって、暗雲漂うなか船出した安倍首相に引導を渡し、国民の支持なき政権を打倒しようではありませんか。


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