SSブログ

1月11日(金) 安倍首相の「サンゴ移植」発言で注目される3つの論点 [沖縄]

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画に関連して、6日のNHKの番組で行った安倍首相の発言が大きな批判を招いています。この番組では、辺野古沿岸部での土砂投入開始を踏まえて、司会者が「沖縄県民の理解をどう得るか」と質問したのに対し、首相はサンゴの移植に言及しながら、次のように発言しました。

 「土砂を投入していくにあたって、あそこのサンゴは移している。また、絶滅危惧種が砂浜に存在していたが、これは砂をさらってしっかりと別の浜に移していくという環境の負担をなるべく抑える努力もしながら、行っているということだ。」

 しかし、「あそこのサンゴ」は移されていませんでした。沖縄県水産課などによれば、埋め立て予定海域全体では約7万4000群体のサンゴの移植が必要ですが、このうち沖縄防衛局が移植したのは絶滅危惧種のオキナワハマサンゴ9群体だけで、どれも今回の土砂投入区域にあったサンゴではなかったのです。
 この安倍首相の発言に対して、玉城デニー知事がツイッターで「現実はそうなっていない」と批判した通りです。事実とは異なる発言によって、土砂投入を正当化しようとしたことは明らかです。
 この首相の発言について注目すべき論点は、さし当り以下の3点です。

 第1に、この発言は辺野古新基地建設のための土砂投入を正当化するために、安倍首相がまたもやウソをついたということです。意識的についたウソであるかどうかははっきりしませんが、ある種の印象操作を行う結果となったことは明らかです。
 もし、意識的ではなかったとすれば、事実認識の誤りに基づく発言だったということになります。沖縄県民の多くが反対し、その意思が先の県知事選でも明らかにされた新基地建設に対して、安倍首相が状況を正しく認識してないということが、この発言で示されたことになります。
 そのような誤った認識の下で、希少サンゴや絶滅危惧種の破壊に直結する土砂投入が強行されているということです。事実誤認に基づいて強行されている土砂投入に正当性はなく、直ちに中止するべきです。

 第2に、この発言が「沖縄県民の理解をどう得るか」という質問への回答としてなされたという点も注目されます。つまり、安倍首相は土砂投入によって希少サンゴが失われ、環境が破壊されるという県民の危惧や批判を十分に分かっているということです。
 このような危惧や批判は当然だと考えているからこそ、それを払拭するための努力がなされていると強調したかったのでしょう。「あそこのサンゴは移植している」「環境の負担をなるべく抑える努力もしながら、行っている」から、土砂を投入しても心配ないのだと。
 このような保全措置を取っているから問題はないのだと、土砂投入を正当化したかったのではないでしょうか。しかし、そうではなかったのですから、土砂投入は到底「沖縄県民の理解」を得ることはできません。

 第3に、希少サンゴや絶滅危惧種を移植すれば、環境は保全されるのかということです。このような移植によって、希少サンゴが守られ環境の負担が抑えられる保証は全くありません。
 この問題を報じた今日の『毎日新聞』には、サンゴの生態に詳しい東京経済大の大久保奈弥准教授の発言が紹介されています。大久保准教授は「サンゴを移植しても長期生存率は低い。環境保全措置としては不十分だ」と、政府の対応を疑問視しているというのです。
 つまり、移植すれば問題ないように発言している安倍首相の認識はこの点でも誤っています。希少サンゴを守るためには移植ではなくそのままの形で存続させるべきであり、それを不可能にして環境を破壊する土砂投入は直ちに中止するべきです。

 必要でもない新基地建設のために沖縄の貴重な自然が破壊されようとしているということは世界中に知れ渡りつつあります。土砂投入の一時中止を求めるホワイトハウスへの要請署名は必要数の2倍以上に当たる20万筆を越えました。
 他方で、安倍政権の意向を忖度した沖縄県民投票への妨害工作も強まっています。世論の力を背景に県民投票を成功させて辺野古での新基地建設をストップさせることこそ、沖縄の美ら海と希少サンゴを守る唯一の道だということを改めて確認する必要があるでしょう。


nice!(1) 

nice! 1