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7月7日(日) 統一地方選後の情勢と参院選の展望─「市民と野党の共闘」と憲法闘争の前進にむけて(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、2019年・勤労者通信大学・通信『活かそう憲法②』に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 ダブル選挙でも怖くない

 改憲をめぐる決戦が夏の参院選に先送りされる可能性が強まっています。安倍9条改憲を阻止するうえで、夏の選挙の意義はますます大きなものになりました。この選挙が衆参両院のダブル選挙になるかもしれないという報道もあります。
 しかし、消費税の増税を先送りし、改憲を争点としてダブル選挙になったとしても、恐れることはありません。衆参ともに前回の選挙(参院の場合は6年前の改選議席)で自公両党はかなりの好成績を収めており、今度の選挙で再現することはほとんど不可能だからです。実際には「減少幅をどれだけ減らせるか」ということになるでしょう。
 消費税再増税の先延ばしは歓迎すべきことですが、それは「アベノミクス」の失敗を公言することになり、野党の得点になっても与党にとって有利になるとは限りません。増税の準備や景気対策を組み込んだ今年度予算が可決されていますから、安倍政権への批判を招いて逆風となるリスクもあります。
 参院選での改憲の争点化も逆効果になる可能性があります。安倍首相の下での改憲には反対世論の方が多く保守勢力内にも改憲反対論が存在していますから、野党ではなく与党を分断して無党派層の反発を招くかもしれません。
 ダブルにすれば野党共闘を分断できると言われています。しかし、参院選1人区と衆院選小選挙区で与党との間で1対1の構図を作ることになれば、譲り合う選挙区の数が増えますから、かえって共闘に向けての話し合いがやりやすくなるという面もあります。

 カギは市民と野党との共闘

 ダブル選挙は生き残りを模索する安倍首相の自己都合から発していることで、解散の大義はなく二院制の趣旨にも反し、国民にとっては大きな迷惑で解散権の乱用は許されません。しかもダブルなら有利になるかといえば、衆参両院で改憲勢力が3分の2の多数を下回る可能性の方が大きいのです。
 今回、改選されるのは2013年に当選した参院議員です。この時は自民党が現行制度下で最多の65議席を獲得して6年ぶりに参院第1党に復帰し、自公両党は過半数を上回る135議席となりました。31あった1人区では29選挙区で議席を獲得するなど、望みうる最高の成績を収めています。しかし、3年前の参院選では32の1人区で野党統一候補は11人当選しています。
 参院の「会派別」では自民+公明+維新+希望の党で163となって定数242の3分の2を1議席上回っているにすぎません。参院選1人区ではほぼ全選挙区での統一候補の擁立に目途が立ちました。『東京新聞』3月15日付は17年の衆院比例得票を元に「16激戦区、野党一本化なら勝機」と報じています。
 2年前の衆院選は自民党にとって極めて有利な状況の下での選挙となり、選挙前と同じ284議席を獲得しました。衆議院解散前後に野党第一党の民進党が事実上分裂して希望の党と立憲民主党が結成され、野党勢力が分断されたからです。共闘は十分に機能せず、野党の自滅によって自民党が助けられたのです。
 3年前の参院選と2年前の衆院選は大きな教訓を残しています。1人区での統一候補を実現すれば与党を敗北させることができるということであり、分断を防いで市民と野党との共闘を実現すれば改憲勢力3分の2を阻止することは十分に可能だということです。

 ダブルになっても返り討ち

 安倍首相は2016年参院選でもダブル選挙を検討しましたが、決断できませんでした。今回も、最後まで迷うにちがいありません。自民党の現有議席維持の見通しはなく、公明党が抵抗しているからです。
 どうなるかは不明ですが、準備は必要です。奇襲攻撃を許さないためには、油断せず備えなければなりません。野党側が統一候補を擁立して迎え撃つ準備が整えば、安倍首相が決断できなくなる可能性もあります。
 もし、ダブル選挙になったら、堂々と受けて立てばいいんです。ダブルで挑んできたら、ダブルで跳ね返す。衆参両院でいっぺんに自民党を敗北させることができれば、手間が省けていいじゃありませんか。その結果、改憲勢力を3分の2以下に追い込めれば、安倍首相の改憲野望を最終的に打ち破ることができるのですから……。
(いがらし・じん/法政大学名誉教授・勤通大基礎コース階級闘争論教科委員)

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