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7月9日(火) 決戦・参院選―安倍改憲に終止符を(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、社会主義協会が発行する『研究資料』No.43、2019年7月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます〕

 はじめに

 4月1日に新しい元号「令和」が発表され、5月1日には新天皇が即位しました。あたかも新しい時代が始まったかのような「奉祝ムード」が醸し出され、「改元・代替わりフィーバー」がはやし立てられました。「新時代」が始まったのだと。
 しかし、政治のあり方も私たちの生活も、何も変わっていません。確かに元号と天皇は変わりました。この際、一緒に総理大臣も変えようじゃありませんか。安倍首相が引っ込めば、それは大いにめでたい。政治のあり方も私たちの生活も大きく変わるにちがいありません。
 その道筋をつけるチャンスがすぐにやってきます。それが参院選です。この選挙で自民党を過半数以下に追い込み、自民・公明・維新・希望の改憲4党の合計議席が3分の2を下回るようにすれば、安倍首相の改憲への野望を打ち砕くことができます。
 すでに、3000万人署名運動によって、今日まで改憲発議を阻止するという大きな成果を上げてきました。追い込まれた安倍首相は参院選で改憲議席を維持し、その後の国会で改憲発議を狙うという長期戦略に転換せざるを得なくなっています。安倍改憲論に終止符を打てるかどうかは、選挙結果にかかっています。
 いよいよ決戦の時が迫ってきました。日本の政治の将来と私たちの生活の行く末を左右する選挙です。民主主義を踏みにじり、ファッショ化を進めて政治を私物化する安倍首相に引導を渡すために、選挙による「一票革命」を起こそうではありませんか。

1、ファッショ化と腐敗が進む安倍政権

 安倍政権の異質のあくどさ

 安倍政権の最大の特徴は、過去の自民党政権とは異なる異質のあくどさにあります。この点で、安倍首相は戦後最低で最悪の首相です。とりわけ、従米・軍拡と改憲志向、国会審議での嘘とごまかし、政治・行政の私物化と公私混同が際立っています。
 憲法と議会制民主主義の破壊も、過去のどの政権よりもひどいものでした。審議打ち切りによって強行採決された法案には、特定秘密保護法、安全保障関連法、共謀罪法などの違憲立法がありました。いずれも世論調査では7~8割が反対しています。これ以外にも、TPP関連法、働き方改革法、カジノ法、改正入管法、水道民営化法、改正漁業法などが強行可決されています。
 どの法案も世論調査では半数以上が反対していました。その世論を無視して審議を打ち切り、採決を強行したのです。安倍政権のファッショ化を如実に示す事例だと言えるでしょう。
 審議内容や政策の中身で与野党が対抗するというのが議会政治の基本です。そのために、野党の質問に真摯に対応し誠実に答え、公文書などの資料を提出する必要があります。立案と検証のためのデータなども正確でなければなりません。
 ところが、森友・加計学園疑惑や自衛隊日報隠蔽問題、裁量労働のデータ改ざん、統計不正、年金問題などで示されたのは全く逆の姿でした。安倍首相や麻生副総理は野党の質問にまともに答えず、公文書を隠したり改ざん・ねつ造したり、データが誤りだったりしました。沖縄の辺野古では県民の意向を無視して基地建設工事が強行されています。
 強行に次ぐ強行で民主主義の基本が歪み、土台が腐ってきているのです。政治と行政への信頼がこれほど失われたことがあったでしょうか。2年前には憲法の手続きに従って野党が求めた臨時国会召集を無視して解散・総選挙を強行し、今度は予算委員会開催の要求を放置しています。憲法や法律を無視し国会審議から逃げ回る姿は醜悪で、断じて許されるものではありません。

 「情報戦」による内閣支持率の維持

 安倍内閣の強みは内閣支持率の安定にあります。一時的に下がっても、また回復するという形で一定の水準を維持してきました。この安定感は歴代政権の中でも際立っており、憲政史上3位という長期政権を生み出した要因はここにあります。それは何故でしょうか。
 端的に言えば、「情報戦」において安倍首相が勝ちを収めているということです。グラムシは革命闘争の形態を「機動戦」や「陣地戦」という概念を用いてとらえていました。今日では「機動戦」から「陣地戦」へ、さらには「情報戦」へと変化してきています。情報をめぐる階級間の闘いに勝利したものが革命闘争においても優位に立つのです。
 もともと権力を持つ者は「情報戦」においても有利な立場にあります。安倍首相は第1次政権の失敗の教訓から、情報の発信と操作に腐心するようになりました。「ポスト真実の時代」になり、フェイクニュース(虚偽情報)があふれているような時代状況も首相に有利に働いています。
 権力による情報の支配・統制が強まり、教育とメディアへの介入も目立ちます。ジャーナリストの一部が変質しメディアが2分化して政権支持の風潮が生まれ、政権の応援団が形成されました。ジャーナリズムの一部は権力の批判・監視から迎合・追従へと変容しています。
 若者は新聞やテレビよりインターネットやSNSによって情報を入手する傾向があります。それに対応するために、ネットでの書き込みを監視する「自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)」などが暗躍しています。こうして報道の自由や発言の自由が抑制され、社会と若者の右傾化が進みました。
 国際NGOの「国境なき記者団」は5月16日に2019年の「報道の自由度ランキング」を発表しました。調査対象の180カ国・地域のうち、日本は前年と同じ67位です。「記者団」は日本では「メディアの多様性が尊重」されているものの、沖縄の米軍基地など「非愛国的な話題」を取材するジャーナリストがSNSで攻撃を受けていると指摘しています。
 菅官房長官が記者会見で、東京新聞の望月衣塑子記者の質問に対して「あなたに答える必要はない」と拒絶するなどの例も生まれています。特定の記者の質問を妨害したり答えなかったりするなど、従来は考えられなかったような異常事態です。政権が不都合な情報の発信や伝達をいかに恐れているかを示す好例だと言えるでしょう。

 政権の行き詰まりと腐敗

 情報の統制と操作による「虚偽環境」をつくり出すことによって国民を欺くというのが、情報戦における安倍首相の常套手段です。「隠す、ごまかす、嘘をつく」というのが、その「3原則」でした。これに、最近では「受け取らず」が付け加わったようです。しかし、そのようなやり方も現実によって裏切られ、いよいよ政権の行き詰まりが明らかになってきました。
 第1は、外交政策の破たんです。その象徴的な出来事が安倍首相のイラン訪問時のタンカー襲撃事件でした。アメリカはイランによるものだと主張していますが、真相は不明です。安倍首相のイラン訪問による「仲介外交」は失敗し、かえってアメリカとイランとの関係は悪化しました。
 韓国との関係は冷え切って北朝鮮とは接触できず、ロシアとの北方領土問題でも打開のめどは立たっていません。中国との関係では、一方で友好関係強化へと舵を切ったにもかかわらず、他方で「仮想敵」として軍備増強の口実にするというチグハグぶりです。
 第2は、国会審議での答弁や公文書、政策立案の土台となる数字やデータの誤り、隠蔽、改ざんやねつ造などの問題です。これらの問題は、すでに森友・加計学園疑惑で明らかになりました。前述のように、その後も不正や捏造が明らかになっています。
 通常国会では毎月勤労統計(毎勤)や家計調査などの政府基幹統計の誤りも発覚しました。アベノミクスの評価に関わる数字が変えられ、それに官邸が関与している疑いもあり、「アベノミクス偽装」ではないかとの批判を招いています。
 第3は、政治家や官僚の劣化です。安倍首相や麻生副総理の暴言や失言は言うに及ばず、塚田一郎国土交通副大臣と桜田義孝五輪担当大臣が辞任に追い込まれました。塚田氏は下関北九州道路について「私が忖度した」、桜田氏は「復興以上に大事なのは高橋さんです」という発言が問題とされました。いずれも失言というより本心を語ったのではないでしょうか。
 このような暴言は自民党だけではありません。維新の会の丸山穂高衆院議員は北方領土について「戦争しないとどうしようもなくないですか」等という発言によって国会初の糾弾決議を挙げられ、参院選比例区に立候補を予定していた維新の会の長谷川豊氏も被差別部落をめぐる差別発言によって公認停止の処分を受けました。
 このほか、経産省と文科省のキャリア官僚が覚せい剤を省内で使用していたことが発覚して逮捕されています。このような形での汚染や腐敗が高級官僚にまで広がっていたとは、まことに驚くべきことというほかありません。

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