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7月11日(木) 決戦・参院選―安倍改憲に終止符を(その3) [論攷]

〔下記の論攷は、社会主義協会が発行する『研究資料』No.43、2019年7月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます〕

3、野党共闘こそ選挙勝利のカギ

 自民党の現状維持は至難の業

 自民党の甘利明選対委員長は5月16日のテレビ番組の収録で、夏の参院選で自民党が単独過半数を維持することは「不可能だ」と語り、今回改選される13年参院選で獲得した65議席について「これ以上、取れないぐらいの数字だ」と指摘し、「不謹慎な言い方だが、どこまでの議席減で食い止めるかだ」と述べました。改選される124議席の過半数に当たる63議席の確保も「至難の業」だと言っています。
 つまり、自民党が今度の選挙で6年前の成績を再現することは不可能で、実際にはどれだけ「減るのを減らす」かが課題だということなのです。7月の参院選では自公が議席を減らし、自民党が過半数を割ってしまう可能性が十分にあります。改憲勢力は非改選77、改選87議席と3分の2の164議席ちょうどですから、それを下回る可能性も小さくありません。
 今回、改選されるのは6年前の2013年に当選した議員です。この時は自民党が現行制度下で最多の65議席を獲得して6年ぶりに参院第1党に復帰し、公明党は11議席でした。この結果、与党は76議席で非改選の59議席と合わせて過半数を上回る135議席となりました。とりわけ31あった1人区では、岩手と沖縄を除く29選挙区で議席を獲得しています。
 参院での改選議席を維持するためには、この6年前の選挙を再現しなければならず、極めて困難です。甘利選対委員長は3年前に獲得した56議席以上という目標を掲げていますが、それでも大きな議席減になります。
 2年前の17年衆院選の比例代表では、立民・旧希望・共産・社民の合計は約2610万票で、自民・公明両党を約60万票上回りました。これを見ても、与党の現状維持は至難の業であることは明らかでしょう。

 スピードアップした野党共闘

 統一地方選挙が実施された4月の段階では、野党共闘の動きはそれほど進んでいませんでした。野党第一党の立憲民主党の枝野代表が地方組織の再建を優先し、統一地方選挙での県議などの当選に力を入れたからです。
 しかし、統一地方選挙での旧民主党の県議の当選者は、立憲民主党(118議席)と国民民主党(83議席)の両者を合計しても201議席で、63議席も減ってしまいました。これが枝野代表の危機感を高めたのではないでしょうか。
 統一地方選挙後半戦が終わった段階で、枝野代表が野党各党に共闘の申し入れを行ったのはそのためだと思われます。国民民主党の玉木代表が自由党との合流を決め、小沢氏を受け入れたのも同様の危機感からだったでしょう。
 こうして、5月の連休後に野党共闘に向けての話し合いがスピードアップしました。野党への牽制として流され始めた「ダブル選挙」の噂も危機感を強め、かえって共闘に向けての追い風になったように見えます。
 参院での立候補を予定していた候補者が辞退する際、代わりに衆院での立候補を視野に入れて譲歩するという例も生まれました。鹿児島で社民党の候補者が辞退して国民民主党に譲るとき、社民党は衆院鹿児島4区での立候補に配慮することを条件としたからです。
 統一のために立候補を取りやめた共産党候補が衆院の小選挙区に回るという例も生まれました。このような形で、ダブル選挙になった方が野党共闘を促進する面もありました。

 当たり前になりバージョンアップされた

 3年前に比べれば、市民と野党の共闘は特別なことではなく、当たり前になったのも大きな前進です。この共闘で市民連合が大きな役割を果たし、共産党が含まれるのも当たり前の光景になりました。
 その共産党の候補者が統一候補になるのも、3年前には香川の1選挙区だけでしたが、今回は、福井、徳島・高知、鳥取・島根の3選挙区になっています。しかも、後の二つ選挙区では、衆院補選の大阪12区での「宮本方式」を踏襲して無所属で立候補することになりました。
 前述のように政策合意も項目が増えて幅が広がり内容が豊かになっただけでなく、作成のプロセスも大きく前進しました。これを基に、それぞれの選挙区でさらに内容を発展させ豊かにした政策協定を結ぶ動きが続いています。
 3年前の参院選での野党共闘は初めての試みでした。市民と野党、野党各党の間でも初対面であったり、初めてメール・アドレスを交換したりということで、しっくりこない場面も多かったと思います。
 しかし、それから3年の間に、共同行動や連携は当たり前のことになりました。衆院小選挙区レベルで市民連合が結成されたり、集会で相互のあいさつやエールの交換がなされたりする中で、顔見知りになって仲良くなり、人間関係ができて信頼も強まるなど、草の根での共闘は大きく発展しています。
 市民と野党の共闘は、人間的なコミュニケーションとネットワークの形成という大きな成果に支えられて成長してきました。草の根での実績を積み重ねてきたのです。これが3年前との大きな違いであり、このような経験の蓄積こそが、市民と野党の共闘がバージョンアップされたということの意味にほかなりません。

 むすび

 5月末に「潮目」が変わりました。それまで吹いていた安倍政権への「追い風」は逆風に転じ、内閣支持率も軒並み低下を始めています。その頃から「解散風」がやみ始めましたが、その理由は大きく変わりました。「ダブルでなくても勝てる」から、「ダブルで負けるかもしれない」へと。
 いずれにしても、間もなく選挙がやってきます。結局、ダブルはできず改憲発議に失敗し、内閣支持層でさえ46%と半数近くが反対している(『朝日新聞』5月調査)10%への消費増税を掲げ、年金問題などの逆風の中で選挙を闘わざるを得なくなりました。野党の側からすれば、大きなチャンスです。
 安倍政権の暴走政治は、その暴走のひどさゆえに市民と野党の共闘を生み出し、鍛え育てる役割を果たしてきました。このようにして成長した野党共闘がどれほどの威力を発揮できるのか、目にものを見せるチャンスでもあります。
 7月の参院選は、歴史を変えた「関ケ原の闘い」にも匹敵する大きな決戦の場となるにちがいありません。安倍首相に痛打を与え、改憲の野望を打ち砕く最終決戦とするべく勝利をめざしましょう。
 難しいことではありません。この選挙で、怒りを込めて一票を投じさえすればよいのです。怒りの「受け皿」として、市民と野党の共闘、立憲野党が国民に認知されれば、自公の与党や改憲勢力を敗北させることは十分に可能なのですから。

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