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5月5日(火) 緊急事態宣言の延長で明らかになった愚かな政府の失敗と賢明な国民の対応 [首相]

 新型コロナウイルスへの対応を協議する政府対策本部が開かれ、緊急事態宣言の対象地域を全都道府県としたまま、5月31日まで延長することが決定されました。席上、安倍首相は「現時点ではかなりの数の新規感染者数を認め、感染者数の減少も十分なレベルではない。医療提供体制が逼迫している地域もみられる」と発言するとともに。「5月14日をめどに専門家に状況を改めて評価していただきたい」と述べ、期限内にも解除を検討する意向を示しています。

 4月7日の緊急事態宣言の発出自体、当初の新型コロナウイルス感染対策の失敗を示しています。初動の遅れがなく水際対策が成功していれば、韓国や台湾のように感染拡大を防げたかもしれないのですから。
 その水際対策に失敗し、「今が瀬戸際だ」と言い続けた挙句の不手際によって、緊急事態を招いてしまったというわけです。さらに、それを約1ヵ月も延長せざるを得なくなったということは、この緊急事態宣言によってもコロナ禍を抑え込むことができなかったということを示しています。
 緊急事態宣言という「劇薬」によって日本の社会経済生活は深刻な打撃を受け、「アベコロナ不況」は拡大を続けてきました。1ヵ月でも大変だったのに、2ヵ月など無理だと嘆いている商店や中小零細企業経営者、労働者は沢山いることでしょう。

 なぜこうなってしまったのか、は明らかです。安倍首相のコロナ対策が後手後手に回り失敗してしまったからです。インバウンドへの配慮や習近平主席の訪日予定もあって春節で大量にやってくる中国人旅行者の入国を止めず、クルーズ船の船内感染拡大を防げませんでした。
 安倍首相や小池都知事が新型コロナウイルスの感染対策に本腰を入れるようになったのはオリンピック・パラリンピックの1年延期が決まってからです。それでも安倍首相の状況認識は甘く政府の対策はその場しのぎのピント外れなもので、PCR検査の遅れによって感染者の正確な数の把握に失敗し、医療現場でのマスクや防護服さえ十分に行き渡らず、企業の資金繰り対策も手続きが煩雑で十分に行き渡っていません。
 コロナ禍に対する「目玉政策」として打ち出された「アベノマスク」2枚と国民1人10万円の給付は、いまだに届いていません。緊急事態宣言を出しながら、それに見合ったスピードで対策が実施されていないということです。

 他方で、新型コロナウイルスに感染した人の数は、政府の発表によれば減る傾向にあります。全国の感染者数のグラフは増加から減少に転じていますが、その減り方が緩やかなために緊急事態宣言を延長せざるを得なくなりました。
 日本ではまだオーバーシュート(爆発的な感染)は起きていないと評価されています。緩やかとはいえ、感染者の数も減少に転じました。
 新型コロナウイル対策で安倍政権が失敗を重ねてきたのに、なぜオーバーシュートを防ぎ、感染者の数を増加から減少に転ずることができたのでしょうか。それは国民が自ら進んで行動制限に取り組むという賢明な対応を行い、日本社会の生活習慣などが感染拡大の防止に効果があったからではないでしょうか。

 欧米諸国とは異なって緊急事態宣言では外出自粛や休業は要請にとどまっており、法的な強制力はありません。それでも、多くの国民や商店は。地方自治体などの要請に応じて自主的に外出を控え、休業に応じています。
 また、欧米とは異なる日本社会の生活スタイルや習慣も、新型コロナウイルスの感染防止に一定の効果を挙げているように見えます。あいさつでハグ(抱擁)や握手などの身体接触をせず、家に入る時には靴を脱いで靴底からの感染拡大を防ぎ、この時期には花粉症対策で普段からマスクをしている人も沢山います。
 南アフリカのように食糧暴動を起こしたり、アメリカのように自粛解除を求めてデモをしたりすることもなく、「上から」の指示に従順に従い横並びで行動するという特性もあります。今の時点ではこのような国民性は感染防止にプラスに作用していますが、これが「自粛警察」などによる同調の強要や無批判での過剰な同調になれば、市民生活を阻害し民主主義を棄損することに注意しなければなりません。

 しかし、このような国民の賢い対応も、「最低7割、極力8割」という接触機会削減の目標を達成できていません。それは安心して外出自粛や休業できるような枠組みができていないからです。
 自粛や休業の要請が緊急事態宣言のもとでの法に基づく要請である以上、それによって生ずる損害をきちんと補償する責任が要請する側に生ずるのは当然です。政府や自治体はそのような補償を行う責任があり、多くの自治体はそれなりの休業補償などを打ち出していますが、各自治体の財政力には格差があり、しかも延長ということなればいつまで可能なのかという問題が生じます。
 自粛や休業に実効性を持たせるためにも、国民が納得し安心して自粛や休業を受け入れられるようにしなければなりません。自粛や休業で利益や収入が失われ廃業したり失業したりするということになれば、生き延びるために従うことができなくなります。

 国民に行動変容を呼びかけるのであれば、それに見合った補償措置が必要です。自粛には補償するという具体策を打ち出すことによって、国民が納得し安心して自粛を受け入れ自らの行動を変えるようにしなければなりません。
 ドイツのメルケル首相の場合、それを言葉によって実現することができましたが、モリカケから桜を見る会に至るまで、国会で嘘をつき、公文書を隠したり書き換えたりして「偽装、捏造、安倍晋三」と言われ政治への信頼を踏みにじってきた安倍首相は、このような言葉の力を持ちあわせていません。言葉が信用されない安倍首相は、具体的な行動によってしか、国民を納得させることができません。
 一刻も早く、安心して自粛や休業ができるような補償を国民に示すべきです。十分な休業・自粛補償や雇用を維持するための施策、中小事業者への家賃補助や学生への支援策、防疫や医療に対する手厚い支援体制など、具体的な政策を打ち出すことによってしか、国民を安心させ信頼をつなぎとめることはできないのですから。

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