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10月24日(土) ポスト安倍時代における憲法闘争の課題(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、2020年9月18日に開催された「「安倍政治」の継続許さない!―九条の会東京連絡会9・18大集会」での講演の記録です。『生きいき憲法』No.69、2020年10月14日付に掲載されました。3回に分けてアップさせていただきます。〕

2. 憲法闘争の新段階

 日本国憲法は9条を含めた全体が非常に先進的でした。時代を先取りする内容で、生命力が長い。いよいよこの憲法を現実の政治に活かすことのできる時代がやってくる。コロナ禍の下で、現代社会の脆弱性や新自由主義の問題点、限界が明らかになりました。これを克服してこれからのあるべき社会の方向性を示しているのが、この日本国憲法と言っていいのではないかと思います。

■ 安倍首相が抱えてきたジレンマと挫折の背景

 安倍さんは憲法を変えることを一つの大きな目標として、画策してきた。しかし、結局挫折しました。なぜかというと、安倍改憲路線には大きなジレンマがあったからです。変えようと無理強いしたり、急いでやろうとしたりすれば批判と反発が強まって時間がかかってしまう。丁寧にやろうとすると、やはりこれも時間がかかる。急ぐことも時間をかけることもできない。安倍さん自身に強い思い入れがあるだけでなく、支持者からも大きな期待があった。ですから、改憲の可能性が薄れてきた状況でも、憲法を変えると言い続けなければならなかった。これがかえって国民の反発、批判、警戒感を高めて、改憲を困難にした。
 しかも、集団的自衛権行使一部容認の閣議決定から、安保法が制定され、9条改憲の必要性が薄れてしまった。最近もアメリカがこの法律を評価する公電を送っていたことが明らかになりました。アメリカにとって、もうこれでいいと思われるような、一緒に戦争がやれるような、そういう法的枠組みができた。これが9条改憲に向けての勢いを弱めることになった一つの大きな背景だと言えます。
 もちろん、9条を巡る世論が転換したということもあります。安倍さんが強引にやろうとすると、世論が警戒感を高め、反発を強める。そういう中で、皆さんが大きく取り組んだ3000万人署名が、一人ひとりの国民の意識を変え、世論を転換するうえで、非常に大きな力を発揮しました。憲法を変えるのではなく、壊すのではないか、それが安倍改憲の本質ではないかということを、国民はしだいに気がついてきたということではないかと思います。

■ 憲法改正の三つの限界

 憲法は不磨の大典ではありませんから、変えることは禁じられていない。96条には明文を書き換えるための手続きが定められている。だから、変えてもいい。しかし、三つの限界がある。
 一つは、憲法三原則といわれている「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「恒久平和主義」、この三つの原理は転換してはならない。これを変えると改正ではなく、新しい憲法の制定になってしまう。「議会制民主主義」や「地方自治」の原則に反するような書き換えも、壊す改憲です。「改憲の限界」と言っています。このような変更は許されません。
 二つ目は、首相が先頭に立って改憲の旗を振る。これも憲法によって禁じられていると理解するべきです。憲法99条には、「天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と書いてある。国務大臣のトップ、国会議員の先頭に立つような人が憲法を尊重し擁護をしないで、一体誰がするのか。改憲の旗を振りたいなら、安倍さん、首相を辞めなさいと、私はかねがね言ってきました。
 三つ目は、憲法は国の基本法であり、あらゆる法律の基になるものです。従って、世論を分断するような形での成立はあってはならない。みんなが合意し、納得し、そして、与党を支持する人も野党を支持する人も、みんなの共同作業として憲法を書き換えるという形で改定がなされなければなりません。国民投票で一方が他方を僅差で上回るというような形では、基本法の改正としての正当性に大きな問題が残るということです。

■ 安全・平和はハードではなく、ソフトパワーで

 最近、9条を巡る状況が大きく変化してきました。もはや国の安全・平和が軍事力によって守られるような時代ではなくなってきたということです。ハードパワーではなくソフトパワーで、軍隊、基地、兵器によってではなく、話し合いと外交交渉によってしか、平和と安全は守られません。それでしか守ることのできない時代に入ってきたということをはっきりと認識しなければならない。ミサイル防衛などと言っていますが、ミサイルでミサイルを撃ち落とすなど、もう夢物語です。音速を超えるミサイルが開発されている今、撃ち落とすなんてことは技術的に不可能です。
 イージス・アショアが頓挫したことによって、敵基地攻撃論が浮上してきました。先制攻撃は国際法に違反し専守防衛の国是にも反します。膨大なお金がかかり、しかも技術的には不可能なことをやろうとしている。腰を据えて、軍事ではなく外交で、ソフトパワーこそが平和と安全を守る、そういう路線に本格的に転換しなければ、東アジアで日本は生きていくことができません。

■ 危機は国内にこそ――防衛省は防災省へ

 しかも、毎年、大洪水に見舞われ、地震、火山の噴火、台風と、いろんな災害が起き、犠牲者が出ている。これこそ日本という国が直面している「今そこにある危機」です、これこそが「自衛」しなければならない日本社会の脅威ではないか。
 今度の総裁選で立候補した石破さんは防災省をつくるべきだと言いましたが、新しくつくる必要はない。防衛省の「衛」の字を「災」に書き換えればいい。今の自衛隊の主たる任務は外敵の侵略に対する自衛で、副次的任務が災害対応です。主と副を入れ替えればいいんです。自衛隊の任務と訓練、役割、内容を変えれば、十分対応することができるし、実態はすでに防災への自衛部隊になっている。その実態をそのまま生かすような再編・改造を行うべきだと思います。


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