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8月12日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』7月26日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「汚れた東京五輪開会式 実況生中継するテレビ局の正体」

 そもそも、4時間もかけて、開会式をやるべきだったのかどうか。NHKは一言も触れなかったが、あの開会式は「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」などと、ホロコーストをコントの材料に使っていたことが発覚し、“ショーディレクター”を解任された男が総合演出したものだ。ホロコーストは600万人が犠牲になり、ドイツ人でも障害者は殺害の対象になった最悪の大量虐殺である。米国のユダヤ人人権団体が、「どんな人にもナチスによるジェノサイドの被害者をあざ笑う権利はない」と非難声明を出したのも当然だった。

 ところが、菅政権も大会組織委員会も、問題人物を解任しただけで、演出内容を変更することもなく、そのまま進めたのだから信じられない。

 問題の発覚後、さすがに組織委の理事20人が、「開会式の中止」か「簡素化への変更」を、組織委の武藤敏郎事務総長に申し入れたが、武藤事務総長は握り潰してしまった。菅政権も「予定通り実施する」と強行突破している。これでは、ホロコーストの揶揄は、無知な一個人の問題ではなく、日本の問題になりかねない。

 「もし、開会式を中止していたら世界へのメッセージになったはずです」と、法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。

 「ホロコーストを揶揄していた問題は、開会式が行われる前に発覚しています。中止することも演出を変更することも可能だったはず。なのに、そのまま突き進んでしまった。もし、菅首相が“わが国はホロコーストを許さない”と表明し、潔く開会式を中止していたら、日本を見る世界の目も変わったはずです。
 日本は絶好のチャンスを逃してしまった。それでなくても、あの開会式は、音楽を担当していた人物がイジメ自慢をしていたことが発覚するなど、問題だらけだった。それもこれも、五輪の理念を理解しようとせず、“楽しければいいんだろう”“受ければいいんだろう”という商業的な発想で担当者を選んだからです」

 NHKと民放各局は、これから連日「日本中が感動しました」「これこそ五輪の力です」と、あおってくるだろうが、もう国民は感動の押し売りにだまされない。

 「本来、スポーツは人を感動させる力があります。でも、この東京五輪は、素直に感動できないという人も多いでしょう。スポーツは公正公平でなければいけないが、コロナ禍の東京五輪は、日本人選手が圧倒的に有利だからです。本当は外国人選手も日本で合宿を行い、日本の蒸し暑い夏に体を慣らしたいはずですが、コロナ禍では難しい。コーチの帯同も人数制限されている。スポーツに詳しい日本人は、そうした事情も理解したうえで、日本人選手に声援を送るのだと思う。なのに、テレビが、“日本やった、やった”と騒いだら、逆にしらけさせるだけです」(五十嵐仁氏=前出)

 このまま無批判に五輪称賛報道を続けていたら、NHKも時代錯誤の組織だと国民に見放されるだけである。

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