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8月15日(日) 前進する市民と野党の共闘、待たれる野党連合政権(その2) [論攷]

〔以下の講演記録は川崎区革新懇の『第18回総会記録集 2021年6月12日』に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

2、カギは市民と野党の共闘

共闘はジグザグに前進
 「古い政治」を転換するカギは市民と野党の共闘にあります。前進はしているのですが、一直線でなくジグザクに進んでいる。しかも共闘の力が権力に近づけば近づくほど、支配勢力は脅威を感じて妨害しようとする動きを強める。昨日、国民投票法、改憲手続き法と言われていますけれども、これが成立しました。反対したのは共産党とれいわ新選組、あとは全部賛成です。
 立憲民主党も賛成しました。立憲民主党は付則でCM規制について3年以内に成案を得るとの条件をつけた。これによって改憲論議をストップさせる手がかりを残しておけると考えて妥協したんです。自民党の方は本体の改憲をすすめるための足がかりを作りたいということで受け入れた。これは「同床異夢」で、改憲条文の議論を始めるのか始めないのかをめぐって次の対決がおきることになります。
 ある意味で、これは立憲民主党の一定の弱さを示したということでもある。なんでそうなったのか。「国民」に対する配慮ということです。一つは「国民」世論。世論調査で9条改憲には反対が多いけれども改憲そのものへの賛成は多数ですから、これ以上は抵抗できないという判断があったんだろうと思います。
 もう一つは「国民」民主党です。立憲民主党は去年の9月以降、かなり変わったからです。どう変わったかというと、幅が広がり多様化した。去年の9月に立憲民主党と国民民主党はともに解散して新しい政党になった。衆参合わせて150人ぐらいの大きな政党になり、国民民主党は10人ぐらいに縮んだ。
 大半の人たちは立憲民主党に入り、残った国民民主党は自民党にすり寄るようになっている。入った人たちも元々立憲にいた人より野党共闘にそれほど積極的でない。労働組合の連合の影響力を受けやすい人たちで、連合はこういう人たちを通じて揺さぶりをかける。妨害工作をやっている。先の3つの選挙でも、連合がああだこうだと言うもんだから、すっきりした共闘にはならなかった。
 実は、もう一つの変化もありました、去年の秋に社会民主党が解散して3分の1ほどの地方組織・地方議員が立憲民主党に入った。立憲民主党は右側が広がったけれど左側も広がった。市民と野党の共闘との関係で言えば連合の反共主義の影響を受けやすくなったと同時に、「共産党と一緒にやるのは当たり前、そうでなければ勝てない」と、社民党から入った人たちは考えている。
 このように、一口に立憲民主党といっても幅が広くなった。それぞれの選挙区や地域・地方によってかなり違いが大きい。市民と野党の共闘に対する姿勢や対応の仕方は色々あり、変わりやすくなってきた。その結果、それぞれの選挙区や地域で我々がどういう働きかけをするかが極めて重要になってきている。

政権が交代した2009年の場合
 妨害工作が強まるもう一つの要因は、いよいよ政権交代が見えてきたということにあります。今度の選挙は衆院選ですから、野党が勝ったら一気に政権が変わっちゃう。政権交代に直結するんです。万一、そういうことになったら大変だということで、自民党だけでなく政・官・財の総体、今までの支配層全体がすさまじい危機感を高めている。だから妨害工作も、これまでになく強いものになっていく。
 こういうなかで、我々は市民と野党の共闘をさらに発展させなければならない。そうすれば変わるんですよ、政権は。2009年の例があります。8月の総選挙で自民党は歴史的惨敗を喫して民主党を中心とする政権が生まれた。この時は鳩山由紀夫さんが首相になりました。前の年にリーマンショックがあり、暮れから正月にかけて日比谷公園で年越し派遣村ができて食糧支援をやった。このときに連合傘下の組合の一部と全労連傘下の組合が一緒に取り組んだ。
 ここから異なる潮流の下における労働組合の共同行動が始まっているんです。それが脱原発運動に引き継がれ、さらに戦争法反対運動での総がかり行動、今日の市民と野党の共闘という流れになります。
 このリーマンショックが起きた2008年の翌年、09年9月に衆院議員の任期満了が予定され、7月に東京都議会議員選挙があった。この都議選で自民党が大敗する。任期満了の9月の前の8月に解散・総選挙が実施されますが、この選挙で自民党は歴史的惨敗に追い込まれ政権を失いました。
 今年も、昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大という大きな問題があった。青年・学生・ひとり親の女性など生活困窮者への食糧支援も取り組まれている。政権の無能さやスキャンダルに対する批判もドンドン広がっています。内閣支持率が下がって来ているなかで、7月に都議会議員選挙があり10月に衆院議員の任期満了が予定されている。おそらく9月に解散して10月に総選挙が実施されます。
 政治日程がよく似ているんですよ、政権が交代した2009年と。このよく似た政治日程の下で、よく似た政治的結果が生み出されるかどうかは分かりませんが、少なくともその可能性はある。その過程だけでなく、その結果も似たようなものになる可能性が高まっていると言えるのではないでしょうか。

菅首相のねらいと都議選の重要性
 こういう状況の下で、オリンピック・パラリンピックが開催されるわけです。菅首相は、何とかこれらを成功させ、「やったやった」と盛り上げて国民を熱狂の渦に巻き込み、解散・総選挙になだれ込んでいくという作戦を狙っているように見えます。そのためにはコロナ感染を下火にしなければなりません。
 そのカギはコロナ・ワクチンの接種です。ワクチン接種をシャカリキになってやろうとしているのは、ワクチン接種によって感染を下火にしてオリンピック・パラリンピックを成功させ、苦しい状況を何とか打開したいと考えているからです。
 しかし、解散できない可能性もあります。コロナ感染が下火にならずオリンピックも成功せず。内閣支持率が下がってしまった場合です。そうなれば、解散できずに任期満了選挙を迎えた1976年の時と同じになります。これは戦後唯一の任期満了選挙ですが、そうなるかどうか。一つのポイントは7月の東京都議会議員選挙の結果です。
 『東京新聞』の世論調査では、自民党が19・3%、公明党が3・4%、足して22・7%。立憲民主党が14・0%、共産党が12・9%、足して26・9%。都民ファーストが9・6%という支持率になっている。興味深いのは、自民党と公明党を足した支持率を立憲民主党と共産党を足した支持率が上回っていることです。1人区でもうまくすれば勝てる、そういう状況になっている。オリンピック・パラリンピック中止が60%、菅内閣の支持率が16・1%です。都民の2割も支持していません。

政権を共にする覚悟を迫る
 こういう状況の下で、どういう形で活路を開いていくかが問われています。定数1の小選挙区の場合、すみ分けや選挙共闘が必要です。お互いにバッティングしないようにし、選挙協定を結ぶ。さらに、エールを送るとか相互支援をする。総選挙の場合ですと、政策協定を結んで政権共闘、政権をともにすることをめざす。
 立憲民主党が腹を固めることが必要です。ただ選挙で応援してもらえればありがたいという程度の話では、国民に自公政権に対抗する受け皿を示す点で十分なものになりません。先ほど言いましたが、立憲民主党は選挙区や地域によって多種多様になっています。草の根でどう働きかけるかによって対応の仕方は千差万別です。
 党首の枝野さんが何か言っているからといって安心してはいけない。悲観してもいけない。それぞれの選挙区の中で立憲民主党という組織がどのような方針をもって、どう動こうとしているか。そのことをきちんと見極めて働きかけを行う。それぞれの選挙区での下からの働きかけ次第でいくらでも展望が開けてくるという状況になっています。
 とりわけ、政権共闘に共産党を入れることがポイントです。これは共産党のために必要なんじゃない。新しい政権がきっちりとしたものになるために、かつての民主党政権のような裏切りや自己崩壊を防ぐために、ああいう過ちを繰り返さないためには、きちんとした「つっかえ棒」が必要だからです。共産党という「鉄筋」を入れなきゃならない。コンクリートだけじゃ壁はもろい。鉄筋だけでは壁にならない。両方が組み合わさってはじめて、ガッチリとした鉄筋コンクリート製のビルができる。
 野党の連合政権ができても立憲民主党だけではもろい。そのもろさが、今回の国民投票法の改定をめぐる経緯の中で明らかになった。せっかく連合政権ができたのに、すぐに間違いを犯したり自己崩壊を遂げたり、期待を裏切ったりということにならないために、中にしっかりした「鉄筋」を入れる。同時に、草の根でそれを支える力が必要です。そして、これこそ革新懇の役割なんですね。

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