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10月16日(土) 安倍支配を継続する岸田政権 「ハト派」の幻想振りまく [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、『連合通信・隔日版』No,9686、2021年10月14日付、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 〈五十嵐仁法政大学名誉教授に聞く〉上

 安倍・菅の2代にわたる政権がコロナ対応への失政で退陣し、岸田政権が発足した。岸田文雄氏は、ハト派で保守本流と呼ばれる党内派閥「宏池会」の出身。説明責任を一切果たさなかった前政権と比べて、清新で穏健な印象が持たれがちだ。五十嵐仁法政大学名誉教授は「安倍支配は継続」と指摘し、「ハト派の幻想で、アベスガ政治の本質を隠す役割を担っている」との見方を示す。

――岸田政権発足後、安倍晋三元首相との距離感についてさまざまな見方が報じられています

 五十嵐 メディアの評価が分かれるのは、外見と中身が異なるから。岸田政権は基本的にアベスガ政権の路線を継承している。安倍元首相の影響力がより強まった面さえある。ただ、表面的にはこれまでと同じようにはできないというジレンマを抱えている。
 特に組閣から所信表明演説までは、アベスガ路線を引き継いでいるという本質を、見えにくくするためのコーティング(覆い隠す)作業が行われてきた。岸田氏自身、「保守本流」の宏池会出身でハト派・リベラルと見られていた人。そういう外見を利用する形で幻想を振りまいている。
 菅政権は違った。菅前首相は「アベ政治の継承」を堂々と公言していた。岸田首相はそうはせず、「人の話をよく聴く」「成長だけではなく分配を」「新しい資本主義をめざす」などと言う。宏池会的な幻想を生みだそうという意図が表れている。
 なぜ幻想が必要か。一つは、安倍政治が多くの問題を生み出してしまったからだ。説明しない、国会軽視など民主主義の破壊、批判に耳を傾けない、格差の拡大。岸田首相の主張は全て、安倍政治が生み出した問題の存在を暗に認めている。
 二つ目は菅政権の失敗。コロナ対応、「政治とカネ」、公文書改ざんや日本学術会議の問題など、説明責任を放棄していた。結果、世論の批判が高まり、退陣に追い込まれた。その轍(てつ)を踏みたくないのだろう。
 三つ目は、世論調査で明らかになったように、国民の多くがアベスガ政治を拒否していること。彼らの敷いた路線を「引き継がない方が良い」が多数だ。
これらの理由から、自民党は新政権でアベスガ政治の本質を覆い隠す作業が必要になったということだ。

 「安倍背後霊内閣」

 特に、党人事にその本質が表れている。甘利明幹事長、麻生太郎副総裁、安倍元首相の出身派閥である細田派の優遇など、「3A」が党人事を通じて党内を支配できる仕組みが出来上がった。
 岸田首相が本気で政策転換をめざすなら、党政調会長の高市早苗氏はあり得ない。タカ派で極右。私に言わせれば仮面をかぶった安倍晋三だ。その人物を、選挙公約をつくる政策責任者に据えるのは、政策転換の意思がないということ。安倍支配が今も隠然と続く「安倍背後霊内閣」だといえる。
 閣僚人事も見栄えと滞貨一掃重視の「粉飾内閣」だ。組閣から選挙終了まで27日しかない。野党の要請を無視し、予算委員会を開かないので、答弁に立たせる必要もない。
 仮に国会で多数派を維持すれば、選挙後には内閣改造がある。だから実際は仕事をする必要のない「看板だけ」の人たちを並べた。若手や入閣待機の古参・中堅議員。若手は外見をよくするための「食品サンプル」だ。おいしそうに見えるが、食べられない。
 この点を見ても、総選挙で票をかすめ取るためだけのコーティングされた内
閣だといえるだろう。(続く)

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