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10月17日(日) 政権を変えるしかない 政策担当者として反省必要 [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、『連合通信・隔日版』No,9686、2021年10月14日付、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

〈五十嵐仁法政大学名誉教授に聞く〉下

――所信表明演説を見た感想は?

 私は「3ない演説」だと言っている。一つ目が、コロナ失政やモリカケ桜の問題、経済政策への反省がない。「新しい資本主義」と言いながら、格差を拡大させた「アベノミクス」と同じことをやると言っている。二つ目が、これらの「負の遺産」を変える覚悟がない。三つ目は具体策がない。演説では岸田色を出そうとする意図がうかがえるが、地金は安倍カラーだった。
 岸田色を出すのは簡単。「憲法9条を守る」と言えばいい。宏池会元会長だった古賀誠自民党元幹事長は「憲法9条は世界遺産」という本を出した。そこまでしろとは言わないが、「同感だ」くらい言えばいい。岸田氏自身6年前に「9条を変えない」と述べていたのだから。
 森友学園問題の公文書偽造を再調査する、核兵器禁止条約にオブザーバー参加する、日本学術会議会員への任命を拒否された6人を再任命するといえば、さらに岸田色が出るはずだった。
 だが、今の自民党ではそれは言えない。総裁選で高市早苗氏が河野太郎氏より多くの国会議員票を得るなんて、かつての自民党ではあり得なかった。自民党がいかに右傾化し、戦前回帰的な安倍カラーに染まっているかを良く示している。
 改憲問題でいえば、岸田氏はポストを得るために魂を売った。安倍政権で政調会長に就任してから改憲の地方行脚を始め、総裁選では「任期中に改憲のめどをつける」と述べた。
 今の政治を変える力は自民党から生まれてこないということが、総裁選と組閣人事で明らかになった。もはや腐りきった政権を丸ごと変えるしかない。

――岸田首相はコロナ対策の給付金の支給や、賃上げ促進を掲げています

 選挙を乗り切るための「まき餌」だろう。岸田氏は安倍政権の下で政調会長を務めていた。政策担当の責任者だった時に、なぜそれをしなかったのか。給付金の拡充を求めていた野党の要請を無視し続けていたではないか。
 賃上げ促進も同じ。選挙向けの餌だ。所信表明では最低賃金に一言も触れなかった。その点では安倍以下だ。本気なら覚悟を示すべき。これまでの政策的な失敗についての反省がないと説得力もない。
 安全保障についてはさらにひどい。総裁選では専守防衛の国是を踏みにじる「敵基地攻撃能力の保有」を主張していたし、米国からの「武器爆買い」も容認していた。軍事大国路線はそのまま維持する。どこがハト派か。「カーキ色」のハトに、幻想を抱いてはいけない。

 安倍氏らを喜ばせるな

――野党共闘と連合の動きについてはどう見られていますか?

 連合の新会長が、就任会見で野党共闘に水を差す発言をしていた。野党がまとまって「さぁ政権をとるぞ」と意気を挙げようとしている時に、水をぶっかけているのだから困ったものだ。
 女性で、中小企業労組であるJAMを基盤として抜てきされ、期待していただけに残念だ。民間大単産の顔色をうかがってポストを手に入れ、喝采を得たいための忖度(そんたく)発言だったとすれば、岸田氏と同じ構図ではないか。
 4月の3選挙、東京都議選、横浜市長選で連合は足を引っ張ったが、野党共闘の候補が勝利した。そんなことをしなければもっと容易に勝てたし、総選挙に向けても期待が高まっていただろう。
 政治を私物化し、憲法と民主主義を踏みにじって来たアベスガ政権の前・元首相や、その周りで甘い汁を吸ってきた連中を喜ばせてはだめだ。今回の総選挙の基準はそこにある。少なくとも、それくらいの判断ができる見識が必要ではないか。(おわり)

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