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10月24日(日) 市民と野党の共闘こそが「勝利の方程式」(その1) [論攷]

 〔以下の論攷は、五十嵐仁・小林節・高田健・竹信美恵子・前川喜平・孫崎享・西郷南海子『市民と野党の共闘で政権交代を』あけび書房、2021年、に収録された拙稿です。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 都議選の「教訓」は何だったのか

 7月4日の東京都議会議員選挙の最大の「教訓」は、ひとことで言えば「野党が共闘すれば勝てる」というモデルケースになったことにあります。市民と野党の共闘こそが「勝利の方程式」だということが実際の選挙で証明されました。総選挙での政権交代を願っている人々は、「こうすれば良いんだ」と思ったにちがいありません。
 政治を変えなければならない、変えたいという人たちにとって、非常に勇気が出る確信の持てる結果になりました。次の総選挙に結び付く大きな展望が開けるような経験です。今の国政や都政のあり方に対してナントカしなければ、変えなければという人びとや政党が互いに手を結び候補者を調整して取り組んだ成果です。

 他方で、今後検証すべきことの一つが、国民民主党(以下、国民)が当選者ゼロだったことでした。野党共闘、とりわけ日本共産党(以下、共産)との連携に背を向けた国民がこのような結果になったことも教訓的です。その理由を直視する必要があります。
 労働組合ナショナルセンターの日本労働組合総連合会(以下、連合)が全面的に支援した国民は0勝4敗で、共産と連携して支援してもらった立憲民主党(以下、立憲)は7勝2敗でした。つまり、連合の支援は効果がなかったということです。連合よりも共産と共闘したほうが力になるということが実証されたわけで、選挙後に立憲の安住淳国会対策委員長が「リアルパワー」だと言ったとおりです。
 立憲の枝野幸男党首は「共産との連立政権は考えていない」などと発言していますが、政権を共にする意思を明確にしたうえで、選挙での共闘をめざすべきです。連合の神津里季生会長に対しても、このような野党共闘の輪に加わってほしいと説得する必要があります。少なくとも、「選挙のことは政党に任せて欲しい、労働組合は口を出して共闘の足を引っ張るな」くらいのことを言うべきでしょう。
 労働組合としての連合も賃金・労働条件の改善を目指す以上、経営側に立つ自民党政権と労働側の共産が関与する政権のどちらが労働運動にとってプラスなのか、よくよく考えるべきです。そのような判断すらできないというのであれば、労働運動指導者としての資格はありません。共闘に横槍を入れて足を引っ張ることは、自民党を助け喜ばせるだけだということは明らかなのですから。

 自民党支持基盤の瓦解と流動化

 今回の都議選で自民・公明・都民ファーストを合わせた得票割合は前回と比べて6.81ポイント減っています。一方、立憲・共産・生活者ネットは合わせて5.49ポイント増えています。立憲・共産の両党の獲得議席を合計すれば34議席で第一党になります。「勝者なき都議選」と言われていますが、共産・立憲などの「野党連合軍」こそ勝者だったと言って良いのではないでしょうか。
 政権への不満票が都民ファ―ストに流れたと言われています。自民党が選挙前の予想ほどは回復せず、今回は苦戦すると見られていた都民ファーストが、予想されていたほど議席を減らしませんでした。自民は過去2番目の少なさで、自公を合わせても過半数を回復できませんでした。敗北したのが自民党だったことは明らかです。

 そうなった背景の1つは、自民党支持者の約43%が他の政党に投票したことです。なかでも一番多く流れたのが都民ファーストでしたが、立憲や共産にも流れています。自民に愛想をつかした都民の多くは都民ファーストを、きついお灸を据えたいと考えた人々は共産や立憲を支持したということです。
 このことは自民党支持基盤の瓦解が起きているということを示しています。すでに、千葉や山形、静岡県などの一連の首帳選挙や4月の3選挙(北海道2区での衆院補選、長野での参院補選、広島での参院再選挙)で野党は勝利し、広島では自民党支持者の約3割が野党に投票しました。今回の都議選で自民党に投票しなかった人が国政選挙で自民に戻るとは考えにくい。都民ファ―ストが踏みとどまれたのは、自民批判票の受け皿として利用されたからです。
 もう1つは、支持政党なし層の多くが自民ではなく、野党に投票したことにあります。従来から、この層の人々は野党を支持する傾向がありました。今回はさらにこの傾向が強まったようです。この人たちも、総選挙になれば野党に入れる可能性が高い。野党統一候補なら、なおさらです。
 国政には都民ファーストがないから、そちらに流れた票は総選挙になれば戻ってくると自民党の関係者は思っているかもしれませんが、その可能性は少ない。都議選での自民党の敗北の意味は深く、かつてなく大きいと言えます。

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