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12月7日(火) 総選挙の結果と野党共闘の課題 [論攷]

〔以下の論攷は、安保破棄中央実行委員会の機関紙『安保廃棄』第487号、2021年12月号、に掲載されたものです。〕

 総選挙は大変残念な結果となりました。自民党は15議席減となったものの261議席を獲得し、単独で多数を得たばかりか、常任委員会に委員長を出しても多数を維持できる絶対安定多数を獲得しました。公明党は3議席増でしたから、与党は12議席減の293議席となって政権を維持しています。
 これに対して、政権交代を迫った共闘勢力は、立憲が14議席減の96議席、共産が2議席減の10議席、れいわが2議席増の3議席、社民は増減なしで1議席となりました。注目されるのは、立憲が小選挙区で11議席を増やしているのに比例代表では23議席も減らしたことで、共闘の効果と立憲自体の「自力」の無さが端的に示されています。
 このどちらにも加わらなかった「第三極」の維新は30議席増の41議席、国民民主は3増で11議席となっています。この結果、与党に維新を加えた改憲勢力は334議席で発議に必要な3分の2の310議席を大きく超え、改憲の危機が高まりました。
 どうして、このような結果になったのでしょうか。

 結果を生み出した背景と理由

 その第1の理由は、自民党による「奇襲攻撃」が成功したことにあります。菅義偉前首相の不出馬表明による「敵失」の消滅、総裁選によるメディアジャックと野田聖子立候補によるイメージアップ、宏池会出身の岸田文雄新首相の選出などによって好印象を強め、自民党はその効果があるうちに解散・総選挙を仕掛けました。コロナ感染の収束とも相まって、この自民党の作戦が功を奏したと思われます。
 第2には、政権選択選挙固有の困難性が存在したということです。参院選とは異なって衆院選で多数を失えば直ちに政権を去らなければなりません。「一票による革命」ともいえる大転換によって権力を失うことを恐れた支配層は警戒感を高めて反撃に転じ、野党共闘の側が一時的に押し返されたというのが今の局面になります。
 それだけ野党共闘が効果的な戦術だったということです。甘利明幹事長や石原伸晃元幹事長など自民党の重鎮が落選し、統一候補の当選が62、接戦区は54など、次につながる成果があったからこそ、全力を挙げて共闘を破壊しようとしているのです。
 第3に、国民の側からすれば、直ちに政権が変わることへの不安やためらいがあったように見えます。一方では、アベスガ政治やコロナ失政に対する怒りや失望は大きく、自民に「お灸」を据えたいと思っていても、他方で、コロナ禍によって政治と生活との関りを痛感し、野党連合政権に任せて大丈夫かという懸念もありました。
 民主党政権時代の忌まわしいイメージを払しょくし、不安よりも期待感を抱いてもらうという点で十分ではなかったということです。その結果、国民は政権交代なしで与党に「ノー」を突きつけるために「第三極」を選んだように見えます。政権批判票が「途中下車」して維新や国民民主にとどまったということになります。

 野党共闘の課題

 来年夏には参院選があります。それに向けて捲土重来(けんどちょうらい)を期すためには何が必要なのでしょうか。今後の闘いにおいて留意すべき点や野党共闘の課題はどこにあるのでしょうか。
 第1に、野党共闘の成果を確かめ、その維持・強化を図ることです。与党の奇襲に対して、共闘側は9月8日に政策合意を行い、30日に立共党首会談で部分的な閣外協力についても合意しました。これ自体は重要な前進でしたが、遅すぎました。衆院議員の任期は決まっていましたから、もっと早く政権交代によって実現可能な「新しい政治」のビジョンを示し、国民の期待感を高める必要があったのではないでしょうか。
 第2に、共闘に取り組む各政党の本気度を目に見える形で示すことが必要です。問題は共闘したことにあったのではなく、それが十分に機能しなかったところにありました。特に、反共主義の連合が横やりを入れ、それに遠慮した立憲の枝野代表は共産との同席を避けていました。このような「ガラスの共闘」ではなく「鋼鉄の共闘」へと鍛え直すことが必要です。
 第3に、今後も逆流は強まることが予想されます。すでに、連合と国民民主による立憲への揺さぶりや維新による攻撃、共産排除など共闘破壊の動きが強まっています。反共攻撃など根拠のない誹謗や中傷に的確に反論し、統一の歴史と連合政権の政策についてのきちんとした学習と情報発信が重要です。無きに等しい政治教育や与党に忖度したメデイアによる歪んだ報道と偏見も正さなければなりません。

 特別の役割への期待

 国民の誤解を晴らすという点では、安保破棄中央実行委員会には特別の役割が期待されます。安保・自衛隊について立憲と共産の間に大きな隔たりがあるかのように報じられているからです。実際には、安保破棄は軍事同盟をなくして日米間の平和友好関係を強め、軍事的従属状態から対等・平等な関係に変えることで、それは将来の目標であって直ちに実行されるわけではありません。急迫不正の侵害に対しては自衛隊を活用して反撃するということですから、当面の政策では立憲と共産の間にそれほど大きな違いはありません。
 だからといって、安保の現状を容認するのではなく、安保破棄の国民的合意を目指して安保そのものを正面から取り上げて活動しなければなりません。同時に、憲法に基づいた厳格な運用に努め、安保破棄を可能にするような環境整備に努めていくことが、連合政権の外交・安保政策の基本になります。具体的には、戦争法の違憲部分の廃止、日米地位協定の改定、米製兵器の爆買いの中止、防衛費の削減、核兵器禁止条約への参加、北朝鮮との国交回復と拉致問題の解決、韓国との関係改善を始めとした周辺諸国との緊張緩和と友好促進などです。
 安保破棄を要求する団体がこのような展望を示し情報発信を行ってこそ、大きな説得力が生まれるのではないでしょうか。それは政権交代への国民の不安を払拭し、新しい「希望の政治」への期待を高めるにちがいありません。

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