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5月23日(月) 岸田政権の性格と参院選の争点―何が問われ、何が訴えられるべきか(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.826 、2022年6月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

3, 危機便乗型改憲論と憲法の危機

 侵略に悪乗りした改憲論

 ロシアのウクライナ侵略に悪乗りして、軍備拡大や日米軍事同盟のさらなる強化、自衛隊の海外での武力行使を可能にする改憲を主張する動きが強まっています。岸田首相は自民党大会で日米軍事同盟と防衛体制の強化を強調するなど、改憲姿勢では前任者以上の積極姿勢を示しました。
 自民党や日本維新の会などからも、中国の脅威を強調し、核兵器共有や非核三原則の廃止、専守防衛の見直しなど、憲法9条を大きく逸脱する主張が出てきています。自民党の安全保障調査会の提言は、敵基地攻撃能力の名称を「反撃能力」と変え、攻撃対象に「指揮統制機能等」も含めることを求めています。
 防衛費についても、国内総生産(GDP)比2%以上をめざすとしています。現状は約1%で5.4兆円ですから、11兆円もの巨額になります。この提言を受けて、岸田政権は年内に改定する外交・防衛の基本方針「国家安全保障戦略」など3文書の検討を開始しました。
 専守防衛の国是を踏みにじり、全面戦争を想定した無謀な大軍拡に突き進もうというわけです。そのために、歯止めになっている9条の縛りを解こうというのが惨事便乗型改憲論の狙いです。戦争か平和かをめぐる激動の情勢のもとで迎える参院選は、東アジアと日本の命運がかかった重大な選択が問われることになります。

 新たな局面の展開

 岸田首相は、自民党の「憲法改正推進本部」を「実現本部」に改め、タスクフォースを立ち上げて全都道府県連で少なくとも1回の集会を開くことを打ち出しました。憲法審査会を舞台にした発議に向けての準備だけでなく、本腰を入れて世論工作を始めています。
 総選挙の結果、日本維新の会と国民民主党が議席を増やして改憲に前のめりとなり、国民投票の手続きを定めた国民投票法が改定され、立憲民主党が妥協的な対応を示し始めました。改憲発議に向けて、これまでにない危険な局面が訪れています。
 しかし、このような動きは国民の意識を反映していません。NHKが昨年の衆院選に際して調査した最も重視する選択肢は「経済・財政政策」が34%、「新型コロナ対策」が22%などで、「憲法改正」は最も少ない3%にすぎませんでした。国民は「憲法改正」を望んでいるわけではないのです。
 参院選で、自民党は憲法を主要な争点の一つにしようとしています。「改憲ノー」の世論を高めて改憲勢力を3分の2以下に減らすことは差し迫った課題になっています。

4, 危機の克服と野党共闘

 活憲の政府に向けて

 参院選では、生命と生活の危機、平和と安全の危機、大軍拡と憲法の危機をどのようにして克服するのかが正面から問われることになります。気候危機打開に向けての取り組みやジェンダー平等の実現なども重要な争点になるでしょう。昨年秋に発足した岸田政権に対する中間評価の機会でもあります。
 岸田首相はリベラルで軽武装、経済主義という衣をまとって登場しましたが、単なる幻想にすぎません。違って見えても、安倍・菅政治と中身は同じだからです。改憲・軍拡路線を一段と強め、異なったやり方で実行しようとしているだけです。
 岸田政権の本質を明らかにし、憲法の理念や原則に沿った活憲政治を実現しなければなりません。このような新しい希望の政治を生み出すことができる唯一の手段が、野党連合政権の樹立です。
 昨年の総選挙では共産党を含む野党が市民と手を結び、初めて政権にチャレンジする選挙を闘いました。野党共闘は59選挙区で勝利し、33選挙区で接戦に持ち込むなどの成果を上げましたが、全体として前進できませんでした。共産党を含む共闘の力に恐れをなした自公政権が反共攻撃などによって必至に巻き返し、一部の補完勢力が加担したからです。
 野党共闘を破壊し、その力を弱めようとする分断攻撃は総選挙後も続いています。連合政権樹立への道を切り開くためには、参院選でそれを打ち破り、立憲野党の勝利を確かなものとしなければなりません。国政選挙のない「黄金の3年間」での改憲発議を抑え込むためにも。

 野党共闘の再構築

 野党の勝利にとって不可欠な条件は、1人区での一本化です。32ある1人区のうち10以上で野党が競合している現状を打開し、共闘を実現する必要があります。野党の分断と競合は自民党を利するだけだということは明らかなのですから。
 総選挙の結果、立憲民主党の党首が交代し、国民民主党が改憲論議に積極的になって政府予算案に賛成するなど、野党共闘に新たな困難が生じました。また、労働組合の連合が自民党との接近を強めるという変化も起きています。
 そのようななか、立憲民主党の泉代表が共産党、社民党、れいわ新選組に対して1人区での候補者調整の申し入れをおこない、市民連合は「政策調整と候補者一本化」などを求める要望を5党(立憲、国民、共産、社民、れいわ)2会派(沖縄の風、碧水会)に行っています。
 立憲野党は政策の面でも自公政権とは異なる明確な選択肢を提供する必要があります。自民党にすり寄る維新の会や国民民主党には、そのような選択肢を示すことはできません。新自由主義的なタカ派路線は同じですから。
 さまざまな困難や障害をのりこえ、候補者と政策の両面で与野党対決の構図を作り出し、共闘の力で立憲野党の勝利をめざさなければなりません。一致した政策の実現を追求する共闘の前進こそが、参院選後の解散・総選挙を実現し、連合政権樹立の足掛かりをつくり出すにちがいないのですから。

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