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6月6日(月) 参院選の意義と民商・全商連への期待(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊民商』No.745 、2022年6月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

3, 生活と営業を守るのか壊すのか―命と暮らしをめぐる対決

 コロナ禍が露わにした新自由主義の害悪

 中小業者にとって参院選での最大の争点は、何といっても生活と営業を守るのか、壊してしまうのかという問題です。コロナ禍が明らかにしたことは、まともな政権でなければ命も商売も守られないということでした。まさに命と暮らしをめぐる対決が、真正面から問われることになります。
 感染拡大への対策の遅れが国民生活を深刻な状況に追い込んできました。今後も新たな感染拡大に備えての医療体制の確保と対策が必要です。そのためにも、安倍内閣以降の対策がきちんと検証されなければなりません。
 とりわけ第6波ではPCR検査やワクチン3回目接種の遅れなどが繰り返され、成り行き任せで後手に回った不手際が目立ちました。自宅療養者も急増し、「医療崩壊」が生じました。病気になっても入院できずに自宅で死を待つなどということがあってよいのでしょうか。
 新自由主義的な政策のもとで医療や公衆衛生が切り捨てられてきた害悪が露呈しました。地域医療構想によって急性期病床削減を進めようとしているのは本末転倒です。社会保障の改悪を防ぎ、医療・介護や保健所機能の強化など、感染症対策の拡充を迫っていかなければなりません。

 押し寄せてきた物価高騰と「四重苦」

 コロナ感染が収束しきらず経営危機が深まるなか、収入が増えない下での急激な物価高騰という新たな危機が押し寄せてきました。その背景にはコロナ禍による物流の混乱とその後の需要の高まり、ロシアのウクライナ侵略と経済制裁による資源不足などがあります。そして、もうひとつ重要な要因となっているのが、日銀の「異次元の金融緩和」による急激な円安です。
 東京外国為替市場で約20年ぶりの円安水準になりました。その原因は日米の金利差の拡大です。アメリカがインフレ対策のために金利の引き上げを行う一方で、日銀は超低金利政策を維持しているために円が売られやすくなっているからです。
 しかし、日銀の黒田総裁は安倍元首相に遠慮して、アベノミクスの3本柱の一つであった「異次元の金融緩和」を止めることができません。参院選では、このような政策を転換して経済と国民生活の危機をどう克服するのかが鋭く問われることになります。
 消費税の引き上げ、コロナ禍による経営危機、急激な物価高、そして来年秋からはインボイス制度が始まります。まるで「四重苦」ではありませんか。81の国と地域が「付加価値税」(消費税)の減税を実施または予定しています。日本でも消費税の減税、内部留保への課税、累進課税の強化などをめざさなければなりません。希望の持てる経済社会の実現に向けて、経済と暮らしの問題が参院選での重大な対決点になろうとしています。

4, 野党共闘の分断か再建か―危機打開に向けての対決

 翼賛体制の打破と野党共闘

 参院選は昨年秋に発足した岸田政権に対する中間評価の機会でもあります。岸田首相は「聞く耳」を売り物にリベラルな装いで登場しましたが、本質的には安倍・菅政権と変わりません。それどころか改憲・軍拡路線ではより積極的で、危険な姿勢を強めています。
 このような岸田政権の本質は十分に知られず、内閣支持率は比較的高いまま安定しています。維新の会は改憲を焚き付け、国民民主党は当初予算案に賛成するなど、自公政権にすり寄っています。労働組合の連合も反共姿勢を強めて自民党への接近を図ろうとしています。
 このような翼賛体制の形成を阻止し、野党共闘を再建する足掛かりを生み出すうえでも、参院選は重要な機会になります。昨年の総選挙では共産党を含む野党共闘が初めて政権にチャレンジして59選挙区で勝利し、33選挙区で接戦に持ち込むなどの成果を上げました。その教訓に学びながら、次の総選挙で政権交代に再挑戦できる条件を生み出すことが必要です。

 野党共闘の再構築を

 野党共闘を破壊し、その力を弱めようとする分断攻撃は総選挙後も続いています。連合政権樹立への道を切り開くためには参院選でそれを打ち破り、改憲派3分の2を阻止しなければなりません。国政選挙のない「黄金の3年間」での改憲発議を抑え込むためにも。
 野党の勝利にとって不可欠な条件は1人区での一本化です。32ある1人区で野党が競合している現状を打開し、共闘を実現する必要があります。野党の分断と競合は自民党を利するだけだということは明らかなのですから。
 立憲野党は政策の面でも自公政権とは異なる明確な選択肢を提供する必要があります。自民党にすり寄って翼賛体制づくりに手を貸している維新や国民民主党には、そのような選択肢を示すことはできません。新自由主義的なタカ派路線という本質では変わりありませんから。
 さまざまな障害をのりこえて候補者と政策の両面で与野党対決の構図を作り出し、共闘の力で立憲野党の勝利をめざすことが必要です。一致した政策の実現を追求する共闘の前進こそ、連合政権樹立の足掛かりをつくり出すにちがいないのですから。

 むすび――中小業者、民商・全商連への期待

 全商連は昨年、創立70周年を迎えました。コロナ禍で中小業者は事業継続の危機に瀕し、命と生活を守るために苦闘を重ねています。中小業者の社会的・経済的地位の向上を目指して活動してきた民商・全商連の存在意義と活動の重要性は、これまで以上に高まっています。
 民商・全商連は「平和でこそ商売繁盛」を信条として活動してきました。これはウクライナ侵略の下で一段と切実なものとなっています。ウクライナでの戦争とロシアに対する経済制裁によって原油や天然ガスなどのエネルギー資源、小麦や材木、希少鉱物などの原材料の輸入が途絶え、その影響もあって急激な物価高となっているからです。
 戦争が長引けば、このような資源不足や物価高はさらに深刻な悪影響をもたらすにちがいありません。まさに「平和でなければ商売ができない」ということが実感される事態となりました。
 平和と安全を守るためにも、改憲と軍拡をめざし国民の命と暮らしを危険にさらす岸田政権に「ノー」を突きつけなければなりません。中小業者の苦難に立ち向かってきた民商・全商連の70年に及ぶ経験と運動を継承・発展させ、皆さんが参院選で大きな役割を果たして野党連合政権に向けての展望を切り開かれることを期待しています。「平和でこそ商売繁盛」なのですから。


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