SSブログ

11月10日(木) 岸田政権を覆う統一協会の闇 癒着議員抜きでは組閣できず(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『治安維持法と現代』No.44、2022年秋季号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

なぜ自民党と統一協会との癒着が生じたのか

 霊感商法や洗脳による巨額献金などを繰り返してきた反社会的カルト団体と自民党との癒着がなぜ生じ、これほど深く幅広いものになったのでしょうか。その最大の理由は、双方に利用価値があったからです。
 そして、その土台となっていたのが、反共主義というイデオロギーであり、家父長的な家族主義に基づく古臭い政策や主張です。このような時代の趨勢に反する考え方が共通していたからこそ、改憲案が似通っていたり、その実態への警戒心や違和感を抱くことのない自然な接近が可能となったのです。
 自民党議員の側からすれば、選挙での票とマンパワーの提供は魅力的であり、集会へのメッセージや挨拶、会費の支払い、イベントへの名義貸しや参加などは「お安い御用」だったでしょう。協会のメンバーは熱心でまじめに活動する支持者であり、まとまって支援を期待できる重要な戦力だったのです。
 統一協会の側からすれば、詐欺的犯罪によって失墜している社会的信用を回復し、「信者」獲得のための「広告塔」や当局の取り締まりへの防波堤として、あるいは自らが掲げている「勝共主義」や「家庭」政策の実現のために政治家を利用しようとしたのです。
 しかし、虚偽や恫喝によって高額な壺や印鑑などを売りつけ、法外な巨額献金を強要するなどの犯罪行為が多くの被害者を生み、裁判でも有罪判決などが出るに及んで大きな障害に直面します。この壁を乗り越えるための打開策が名称変更であり、取り締まり当局への働きかけだったと思われます。
 この点で、第2次安倍内閣時代の2015年の名称変更の認証は大きな意味を持ちました。名前が変わったために統一協会とは知らずに、あるいは関連団体とは気づかずに関係を持ったり協力したりした人もいたでしょう。
 この名称変更に対する下村博文文科相の関与、オウム真理教の後に最重要監視対象から外された経緯、公安調査庁の報告書から「統一協会」が消えた事情、子ども庁が子ども家庭庁に変更された背景など、政治が歪められたのではないかという数々の疑惑が生じており、その解明が待たれます。

極右勢力に取り込まれた岸田改造内閣

 8月10日に発足した第2次岸田改造内閣は、自民党を取り巻く極右靖国派との癒着の深さを改めて示すものとなりました。統一協会とその関連団体との接点のある議員が8人もいたのをはじめ、岸田首相以下19人の自民党議員全員が日本会議国会議員懇談会(日本会議議連)と神道政治連盟(神政連)国会議員懇談会のいずれかに加盟していたからです。統一協会と接点のある大臣・副大臣と政務官は33人もおり、改造内閣の43%を占めていました。
 また、8月31日に決められた自民党の新しい役員や部会長らにも会合への参加や祝電の送付など統一協会との接点のある国会議員が少なくとも18人が確認されています。74人のうちの24%に当たることになります。
 岸田内閣はまさに極右勢力に取り込まれた形になっています。統一協会や日本会議、神政連などと関係のない議員だけで組閣することも、自民党の役員を選任することも不可能であることが改めて明確になりました。
 当初、実態の解明に消極的だった自民党は、批判の高まりに押されて所属国会議員へのアンケートを実施し、その結果を発表しました。「調査」ではなく自主申告による「点検」ですからどこまで正直に答えているかは疑問ですが、それでも379人のうちの179人(その後、180人)、半分近い47%が接点を持っていることが明らかになっています。選挙で支援を受けたり会合に出席したりした121人の実名も公表されました。
 そればかりではありません。このような統一協会との癒着は中央だけでなく地方政界にも広く深く浸透しています。『朝日新聞』の調査では、都道府県議、知事のうち統一協会と接点があったことを認めた都道府県議は290人で8割が自民党だったといいます。知事は宮城、秋田、富山、福井、徳島、鹿児島の7県が接点を認めていました。予想を上回るほどの幅広さだというべきでしょう。

政治・行政の歪みを正すために

 反社会的犯罪集団の広告塔となり、その社会的信用の回復に手を貸し、政治的な影響力によって間接的に加担する結果になった罪は、どのように言い逃れしても消えることはありません。統一協会との関与が深かった議員は責任を明らかにして辞職すべきです。
 数々の疑惑に対しても事実を解明することが必要です。宗教を隠れ蓑として反社会的活動や犯罪に手を染めていた統一協会に対しては、宗教法人としての認可を取り消すべきでしょう。違法行為に対して行政処分を行い、行き過ぎた場合に解散命令を出し、カルト団体に対する法的規制も検討すべきです。
 地方自治体レベルでの統一協会の暗躍に対しても光を当て、その実態を解明して政治・行政の歪みを正すことが急務です。自治体の首長や議員と統一協会との接点を明らかにし、関係議員を一掃しなければなりません。来年4月の統一地方選を、そのための機会として活用すべきです。
 地方行政が統一協会によって歪められていないかという検証も欠かせません。その働きかけによって家庭教育支援条例や青少年健全育成条例などが制定され、関係者が学校教育にかかわっている例も判明しています。ロードレースなどのイベント後援や社会保障協議会への寄付などで関係を結んでいる例もあります。
 地方の自治体や首長、議員などと統一協会及び関連団体との関りを徹底的に調査し、それを逐一切断していかなければなりません。国政と地方政治の裏面で暗躍していた統一協会や国際勝共連合などの関連団体の活動の実態を明るみに出し、中央と地方の政治・行政の歪みを正すことが緊急にして重要な課題となっています。

厳しい対応を迫られる自民党

 統一協会との関りにおいて、もっとも大きな責任を問われているのが自民党です。反社会的カルト団体との接点があっただけでなく、党ぐるみで協力関係を持ち、社会的信用の回復と犯罪行為の隠ぺい、影響力の拡大に手を貸してきたからです。
 自民党はまず第1に、時代遅れの反共主義から脱皮し、伝統的家族観や反夫婦別姓・反LGBTQ(性的少数者)など協会と同様の考えを変え、ジェンダー平等や少数者の人権を認めるまともな政党へと生まれ変わらなければなりません。政治的な立場や考え方の共通性を改めなければ、統一協会との親和性を拭い去ることができないからです。
 第2に、統一協会とどのような関係にあったかについて、事実を明らかにしなければなりません。アンケートによる「点検」だけでは不十分です。中立的な第三者機関による客観的な事実に基づく調査を行い、洗いざらい明らかにして膿を出し切る必要があります。清和会の会長として中心的な位置にいた細田博之衆院議長や安倍元首相についての調査も欠かせません。
 第3に、統一協会による高額な物品購入や寄付、集団結婚や洗脳によって家族を崩壊させられ、人生を狂わされた被害者に対する謝罪と救済が必要です。自民党の政治家が関わることによって生じた被害者に対して、加担し「お墨付き」を与えた立場から謝罪することは当然でしょう。
 第4に、統一協会との関りの深さに応じて処分することが必要です。実質的に活動を支援し支援されていた議員に対しては、役職からの解任、党からの除名、議員辞職の勧告や次の選挙では候補者としないことなどの厳しい対応が求められます。このような形で責任を明らかにし、反社会的なカルト団体と完全に絶縁しないかぎり、自民党に明日はありません。
 岸田首相は「旧統一教会との関係を断つ」と国民に約束しました。それならまず、井上義行議員のように統一協会の組織票で当選した議員に辞職を促し、山際大志郎経済再生相と萩生田光一政調会長を罷免し、下村博文議員らのように深く癒着している議員を処分するべきです。そうしなければ、国民の信頼を取り戻すことはとうてい不可能でしょう。


nice!(0) 

nice! 0