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1月9日(月) 改憲・大軍拡を阻止し9条を守り活かすための課題(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、自治労連・地方自治問題研究機構が発行する『季刊 自治と分権』No.90、2023年冬号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 安倍元首相銃撃死の衝撃と統一協会の闇

 〇憲法をめぐる情勢にも大きな影響

 参院選最終盤に、奈良県の近鉄西大寺駅前で驚天動地の銃撃事件が発生しました。候補者の応援のために街頭演説を行っていた安倍元首相が山上徹也容疑者によって手製の銃で襲われ、命を落としたのです。選挙中の事件であり、許されざる重大犯罪でした。
 この安倍銃撃事件は岸田内閣を窮地に追い込み、憲法をめぐる情勢にも大きな影響を及ぼすことになりました。銃撃の背景には世界平和統一家庭連合(世界基督教統一神霊協会=統一協会)に対する個人的な恨みがあったからです。統一協会に家庭を破壊された山上容疑者は恨みを晴らすために広告塔であった安倍元首相を狙ったと供述しています。
 この事件によって改憲発議に執念を燃やしていた安倍元首相はこの世を去りました。最大の旗振り役が姿を消したことになります。岸田首相にとっては大きな圧力を感じていた存在の消滅でした。安倍元首相に気を使っての「忖度(そんたく)改憲」の重しが取れたことになります。
 事件をきっかけに統一協会と自民党との関係をめぐる政治の闇に光があたり、驚くような癒着ぶりが次々と明らかになりました。岸信介元首相以来という期間の長さ、選挙でのボランティアや応援、行事への出席やあいさつなどの関係の深さ、自民党国会議員の約4割から地方議員にまで及ぶ幅の広さは想像を絶するものでした。とりわけ、選挙にあたって署名を求められた「推薦確認書」の存在とその内容は、大きな問題を投げかけています。
 統一協会の本質は宗教の仮面をかぶった反社会的カルト集団であり、反共・改憲団体です。韓国に本部があり、日本人を洗脳して高額な商品を売りつけ、集団結婚によって日本人妻1万6000人を韓国に連れ出してきました。信者の家庭を破壊して宗教2世の人生を狂わすだけでなく、巨額な資金を集めて韓国に送り豪華な宮殿を建て一部は北朝鮮にも流れていました。
 そのような団体と密接なかかわりを持ち、広告塔の役割を演じて政策実現の確認書を結んでいたというのです。外国勢力による内政干渉であり、国民主権と政教分離に反する政治への関与ではありませんか。自民党はどこの国の政党かと言いたくなります。本気でこの国と国民を守る気があったのかが疑われるのも当然でしょう。

 〇統一協会との「政策協定」と改憲論の共通性

 統一協会の友好団体である「世界平和連合」や「平和大使協議会」が自民党議員に提示して署名を求めていた「推薦確認書」の内容はさらに大きな問題を投げかけています。これは選挙で支援する見返りに協会側が掲げる政策への取り組みを求めたもので、「政策協定」ともいえる内容でした。
 それは憲法改正、安全保障体制の強化、家庭教育支援法および青少年健全育成基本法の制定、LGBT 問題や同性婚合法化の慎重な扱い、「日韓トンネル」の推進、国内外の共産主義勢力の攻勢の阻止などが柱になっています。友好団体である国際勝共連合の改憲案はもっと露骨です。内閣専制の緊急事態の創設、個人無視の家族条項、強い国家をめざす自衛隊明記などは、2012年発表の自民党改憲案とウリ二つでした。
 自民党は政策への影響はなかったと弁明していますが、主張が同じだったから変える必要がなかったにすぎません。統一協会や勝共連合が接近してきたのは考え方が同じだったからです。外国にルーツを持ち、法の支配と人権、平和主義を守る気のない反社会的改憲集団と考え方や政策が同じだということのほうが大きな問題ではないでしょうか。
 統一協会との深いかかわりは憲法審査会のメンバーにも及んでいました。東京憲法会議の調査によれば、衆議院では自民党の委員28人のうち18人(64%)が選挙協力や講演などで関係があり、維新の会の馬場伸幸代表、国民民主党の玉木雄一代表も関係者です。参議院では自民党委員22人中8人で、維新の会の音喜多駿幹事も関係がありました。このような人たちが改憲の旗を振っているということを忘れてはなりません。まさに、「推薦確認書」の求めるままの行動ではありませんか。

 〇国葬政治利用の失敗と内閣支持率の急落

 安倍元首相の銃撃死に衝撃を受けた岸田首相は、6日後に「国葬儀」として弔うことを発表しました。戦後の国葬は吉田茂元首相しか前例がなかったにもかかわらず、自民党内の最大派閥である清和政策研究会(安倍派)に配慮しての決断でした。それが政権基盤の安定に資するという計算もあったにちがいありません。
 しかし、これは大きな誤算でした。戦後、憲法の趣旨に反するとして国葬は廃され、法的根拠を失っていたからです。岸田首相は国政選挙のない「黄金の3年間」を盤石のものとして、改憲などの重要課題にじっくり腰を据えて取り組むつもりだったかもしれません。しかし、そのような思惑とは裏腹に、国葬の強行は岸田政権にとって「躓(つまづ)きの石」となりました。
 報道各社の世論調査では反対が6割を超えました。「終わったら反対していた人たちも、必ずよかったと思うはず」(二階俊博元自民党幹事長)との期待に反し、国葬後も評価しないという世論は61.9%(共同通信10月調査)と6割を超えています。
 岸田首相は厳しい声に慌て、9月に予定していた内閣の改造を8月に前倒ししましたが、その効果は限定的でした。改造直後から内閣支持率は下がり続け、時事通信の10月調査では27.4%となって3割を切りました。
 民意は岸田政権に対して「ノー」を突き付けています。物価高対策やコロナ対策でも効果的な手を打てず、国民生活も日本経済も危機的な状況に陥りました。政権の「体力」は低下し続け、改憲どころではありません。緊急に取り組むべき生活支援の課題に全力を尽くすべきでしょう。そのためにこそ、政府はあるのですから。

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