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6月4日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月4日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「異次元の少子化対策 政治生命を賭すなら増税で信を問え」

 結論を先送りした財源の一部を賄う手段として、健康保険料の上乗せを念頭に「支援金制度」の創設を検討しているのも、お門違いだ。健康保険制度とは病気になった際の出費に備え、加入者全体で保険料をプールし、支え合う仕組み。受益者が万が一に備えて負担し合う健康保険料を、別の財源にすることは許されない。なぜ、誰も異を唱えないのか。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。

 「防衛予算倍増の財源捻出に復興特別所得税や、新型コロナ対策の予備費を転用するのと同じ。純然たる『流用』で完全にタガが外れています。国民も慣れっこになってはダメ。75歳以上の人が加入する後期高齢者医療の保険料からも上乗せ徴収し、児童手当の財源に充てることに、正当性はない。『支援金』なる名称で『孫のために小遣いをあげる』ような良い印象を植え付けようとしているのも、後ろめたさの表れです」

 保険料上乗せの「禁じ手」を繰り出しても捻出できる財源は1兆円程度。「加速化プラン」に必要な3.5兆円にはほど遠い。足りない分は当面、借金で賄うというが、少子化対策のツケを次世代に回すというのは大いなる矛盾だ。加えて素案には、岸田が目標に掲げた「子ども予算倍増」について、こども家庭庁の今年度予算(約4兆7000億円)をベースとし、30年代前半での達成を目指すことも盛り込まれた。

 どう考えても、安定財源の確保には将来の増税が不可避だ。それでも岸田は「国民に実質的な追加負担を求めることなく、少子化対策を進めていく」と言ってのける。当然、選挙に不利になるような材料を与えたくないだけ。逆に選挙に勝ちさえすれば、平気な顔して「大増税路線」に方針転換しかねない。

 「増税を避けて通れないのなら、選挙で民意を問うのが筋です。それを隠し通して勝とうとするのは、本来の選挙の在り方に反します。嘘と詭弁のゴマカシ政治には、もうこりごりです」(五十嵐仁氏=前出)

 岸田は少子化対策を「国の基本に関わる最重要政策課題」に位置づけた。政治生命を賭けたも同然で、選挙をしたくてムズムズしているのなら、堂々と「増税」で信を問うべきだ。


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