9月17日(日) 〝タガ〟が外れた岸田政権で日本はどうなる?(前半部分の1) [論攷]
〔以下の講演記録は『東京非核政府の会ニュース』No.424 、8月20日付に掲載されたものです。前半部分を2回に分けてアップさせていただきます。〕
7月1日に開催した東京非核政府の会第36回総会での記念講演を本号から2回に分けて紹介します。(編集部文責)
〝タガ〟が外れてしまった
今度の通常国会は惨たんたるものだった。主なものだけでも原発推進、マイナンバーカードの強要、軍事産業を支援、軍拡財源確保があげられるが、負担を国民に強制する悪法だ。そして、入管難民法の改悪、LGBTQという性的少数者への理解を増進する目的で提出されたのにねじ曲げられてしまう。次から次へと悪法が成立していった。
岸田政権の〝タガ〟が外れ、戦後最悪の暴走政権になった。あの安倍政権を上回る暴走ぶりはかなりのものだ。どうしてそうなったのか。ウクライナ戦争が深く影響を及ぼしている。
昨年2月24日、ロシアのプーチン政権が突如としてウクライナに侵略戦争を仕掛けた。これを利用して大軍拡・大増税の方向にかじを切ったのが岸田政権だ。
安全保障環境の厳しさを理由に負担を国民に強い、命と健康、生業など、生活のあらゆる面で国民を危険にさらす事態を生み出している。性的少数者の人権、環境問題。原発の新増設・再稼働の動きなどの点で、民主主義や人権をめぐっても後ろ向きの対応をとり続けている。
今の日本は大きな曲がり角に差し掛かっていると言える。戦争か平和か、貧困か富国か、暴走か民主主義か。こういう曲がり角で岸田政権はどの方向に向かうのか、きわめて危険な方向が示されている。ウクライナでの戦争を利用した「惨事便乗型」の大軍拡・大増税で、全般的な軍事化の始まりだ。あらゆる国民生活、公的業務が軍事のために総動員されるという傾向が強まっている。そのために国民生活が犠牲にされる。「新しい戦前」といわれているが、「いつか来た道」を再びたどり始めているとの懸念や危惧が強まっているのが現状だ。
非核の政府を求める運動の出番
非核の政府を求めるということで皆さんは活動を続けてきた。その出番がやってきたということだ。これまでの日本は非核三原則を掲げ、少なくとも「持ち込ませず」ということで核を国内に存在させてこなかった。
今はどうか。ウクライナ戦争の影響で、核を使用する、核を抑止力として国内に持ち込む危険性が強まっている。核に頼らない、核兵器を国内に持ち込ませない、こういう運動がますます重要になっていることを最初に強調しておきたい。
戦争の準備 急速に
「戦争か平和か」という問題でも、「安保三文書」が発表され、急速に危機が高まっている。岸田首相は安全保障政策の基本は変わらないと言っているが、変わったからこそ新しい文書を出したのだ。変わらないのであれば、わざわざ新しい文書を出す必要はなかったはずだ。
岸田首相はまず有識者で会議を開き、閣議決定を行い、「安保三文書」に基づいて国会に法案を出してきた。本来は逆でなければならない。国民の反対運動を引き起こさないために、あらかじめ内容を決めてしまったのだ。ただし、岸田首相の「変わらない」という発言は、半分はウソで半分は本当だ。ウソの部分は大きな政策転換があったということ。
本当の部分は、集団的自衛権の一部はすでに行使できるようになっていて、今回初めて変わったわけではないということ。
2015年の安保法制(戦争法)の成立によって、存立危機事態と認定すれば米軍防護という名目で一緒に戦争できる法的・制度的枠組みがすでにできていた。だが、それを実行する実際の力を自衛隊は持っていなかった。それを実際に行使できるような力を身につけようというのが、今回の「安保三文書」なのだ。これが大きな政策転換ということの意味にほかならない。
ウソばかりの政策転換
今回の政策転換はウソばかりだ。ごまかされてはならない。「敵基地攻撃能力」の保有というのはウソ。攻撃するのは「敵の基地」だけではない。敵の領土や中枢部分、指揮統制機能を攻撃する。これは「敵基地」ではなく「敵地」だ。相手国の領土全体を攻撃できる能力を身に付ける。
しかも、これを「反撃能力」と言い換えているが、これもウソ。「反撃」は、攻撃されてからするもので、攻撃される前の「着手」した段階での攻撃は反撃ではない。国際社会からすれば明らかな先制攻撃だ。
「軍事大国にならない」というのもウソ。軍事費をこれから5年間で43兆円に増やす。実際には60兆円に膨らむ。これをどんどん軍事につぎ込んでいく。世界第3位の軍事大国になることは明白だ。
「国を守るため」というのもウソ、存立危機事態だと認定すれば日本が攻撃されていなくてもアメリカと一緒に戦うことができる。これが今回の新たな政策転換の内容だ。そのために日米が軍事的に一体化する。今、自衛隊は三つに分かれているが、これを統合して一つの司令部を置く。この統合司令部はアメリカ軍と一体化する計画だ。
アメリカの方もインド太平洋軍の司令部は現在ハワイにあるが、これを横田に移す。横田のアメリカのインド太平洋軍の司令部と日本の統合司令部が融合して「防空戦略ミサイル防衛」の体制を確立しようという構想だ。自衛隊の最高指揮権は首相にあるが、その指揮権も日本の主権も失われてしまうだろう。
7月1日に開催した東京非核政府の会第36回総会での記念講演を本号から2回に分けて紹介します。(編集部文責)
〝タガ〟が外れてしまった
今度の通常国会は惨たんたるものだった。主なものだけでも原発推進、マイナンバーカードの強要、軍事産業を支援、軍拡財源確保があげられるが、負担を国民に強制する悪法だ。そして、入管難民法の改悪、LGBTQという性的少数者への理解を増進する目的で提出されたのにねじ曲げられてしまう。次から次へと悪法が成立していった。
岸田政権の〝タガ〟が外れ、戦後最悪の暴走政権になった。あの安倍政権を上回る暴走ぶりはかなりのものだ。どうしてそうなったのか。ウクライナ戦争が深く影響を及ぼしている。
昨年2月24日、ロシアのプーチン政権が突如としてウクライナに侵略戦争を仕掛けた。これを利用して大軍拡・大増税の方向にかじを切ったのが岸田政権だ。
安全保障環境の厳しさを理由に負担を国民に強い、命と健康、生業など、生活のあらゆる面で国民を危険にさらす事態を生み出している。性的少数者の人権、環境問題。原発の新増設・再稼働の動きなどの点で、民主主義や人権をめぐっても後ろ向きの対応をとり続けている。
今の日本は大きな曲がり角に差し掛かっていると言える。戦争か平和か、貧困か富国か、暴走か民主主義か。こういう曲がり角で岸田政権はどの方向に向かうのか、きわめて危険な方向が示されている。ウクライナでの戦争を利用した「惨事便乗型」の大軍拡・大増税で、全般的な軍事化の始まりだ。あらゆる国民生活、公的業務が軍事のために総動員されるという傾向が強まっている。そのために国民生活が犠牲にされる。「新しい戦前」といわれているが、「いつか来た道」を再びたどり始めているとの懸念や危惧が強まっているのが現状だ。
非核の政府を求める運動の出番
非核の政府を求めるということで皆さんは活動を続けてきた。その出番がやってきたということだ。これまでの日本は非核三原則を掲げ、少なくとも「持ち込ませず」ということで核を国内に存在させてこなかった。
今はどうか。ウクライナ戦争の影響で、核を使用する、核を抑止力として国内に持ち込む危険性が強まっている。核に頼らない、核兵器を国内に持ち込ませない、こういう運動がますます重要になっていることを最初に強調しておきたい。
戦争の準備 急速に
「戦争か平和か」という問題でも、「安保三文書」が発表され、急速に危機が高まっている。岸田首相は安全保障政策の基本は変わらないと言っているが、変わったからこそ新しい文書を出したのだ。変わらないのであれば、わざわざ新しい文書を出す必要はなかったはずだ。
岸田首相はまず有識者で会議を開き、閣議決定を行い、「安保三文書」に基づいて国会に法案を出してきた。本来は逆でなければならない。国民の反対運動を引き起こさないために、あらかじめ内容を決めてしまったのだ。ただし、岸田首相の「変わらない」という発言は、半分はウソで半分は本当だ。ウソの部分は大きな政策転換があったということ。
本当の部分は、集団的自衛権の一部はすでに行使できるようになっていて、今回初めて変わったわけではないということ。
2015年の安保法制(戦争法)の成立によって、存立危機事態と認定すれば米軍防護という名目で一緒に戦争できる法的・制度的枠組みがすでにできていた。だが、それを実行する実際の力を自衛隊は持っていなかった。それを実際に行使できるような力を身につけようというのが、今回の「安保三文書」なのだ。これが大きな政策転換ということの意味にほかならない。
ウソばかりの政策転換
今回の政策転換はウソばかりだ。ごまかされてはならない。「敵基地攻撃能力」の保有というのはウソ。攻撃するのは「敵の基地」だけではない。敵の領土や中枢部分、指揮統制機能を攻撃する。これは「敵基地」ではなく「敵地」だ。相手国の領土全体を攻撃できる能力を身に付ける。
しかも、これを「反撃能力」と言い換えているが、これもウソ。「反撃」は、攻撃されてからするもので、攻撃される前の「着手」した段階での攻撃は反撃ではない。国際社会からすれば明らかな先制攻撃だ。
「軍事大国にならない」というのもウソ。軍事費をこれから5年間で43兆円に増やす。実際には60兆円に膨らむ。これをどんどん軍事につぎ込んでいく。世界第3位の軍事大国になることは明白だ。
「国を守るため」というのもウソ、存立危機事態だと認定すれば日本が攻撃されていなくてもアメリカと一緒に戦うことができる。これが今回の新たな政策転換の内容だ。そのために日米が軍事的に一体化する。今、自衛隊は三つに分かれているが、これを統合して一つの司令部を置く。この統合司令部はアメリカ軍と一体化する計画だ。
アメリカの方もインド太平洋軍の司令部は現在ハワイにあるが、これを横田に移す。横田のアメリカのインド太平洋軍の司令部と日本の統合司令部が融合して「防空戦略ミサイル防衛」の体制を確立しようという構想だ。自衛隊の最高指揮権は首相にあるが、その指揮権も日本の主権も失われてしまうだろう。
2023-09-17 06:34
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