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9月26日(木) 政権担当能力を失った自民党にさらなる追撃を(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No. 854、2024年10月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 全国戦没者追悼式が開かれる「終戦の日」の前日、8月14日の午前に岸田文雄首相は急きょ記者会見を開いて、9月の自民党総裁選挙に立候補しないことを表明しました。突然の退陣表明は驚きをもって迎えられましたが、むしろ遅きに失したと言うべきでしょう。
 岸田内閣の支持率は昨年末に3割を下回って以降、一度も回復しませんでした。国民の2割しか支持せず、6割以上が不支持を表明している内閣が半年以上も居座ってきたことの方が異常です。政権担当能力を失った岸田首相の退陣表明は当然でした。
 これによって、自民党大軍拡・腐敗政治に対する追撃戦は、新たな局面に突入することになりました。岸田首相の出馬断念は、総裁選で勝利できても総選挙で勝てる展望を見いだせなかったからです。首相は側近に電話をかけ、「総裁選で勝っても、衆院選で勝つのは難しい」と説明していたそうですから。
 これで安倍晋三元首相、菅義偉前首相、岸田文雄首相と、3代続いて政権投げ出しになりました。安倍元首相の場合は持病の悪化を理由としていましたが、新型コロナウイルス対策やアベノミクスの失敗による政権批判の高まりも背景にありました。菅前首相と岸田首相の場合は明らかに政権の行き詰まりと内閣支持率の低下によるものです。
 岸田首相が総裁選立候補を断念した背景には何があったのでしょうか。自民党はどのような延命策を講じようとしているのでしょうか。それに対して私たちはどう対応し、自民党政治への追撃戦をどのように展開したらよいのでしょうか。岸田不出馬の背景と自公政権打倒の課題について検討したいと思います。

 岸田首相はなぜ行き詰まったのか

 岸田首相が続投断念を決断した最大の理由は、国民の信頼を失って行き詰ったからです。なぜ、政権を放り出すほどに信頼を失ってしまったのでしょうか。その最大の理由は、裏金事件への対応と処理にあります。
 この事件に対する岸田首相の対応は小出しで後手に回り、実態解明は不十分、関係者の責任追及も処分も中途半端でした。政治改革規正法の改正も抜け道だらけで、肝心の企業・団体献金や政治資金パーティー、政策活動費は温存されたままです。これでは国民の理解が得られるはずがありません。
 岸田政権では裏金事件以外にも政治スキャンダルが相次ぎました。不祥事などの問題が発覚した政務三役や議員は約30人に上ります。最近でも、勤務実態のない公設秘書給与を詐取した広瀬めぐみ参院議員や有権者に香典を違法に配ったりした堀井学衆院議員が辞職しています。このような政治腐敗事件が相次いだのも、岸田首相が「政治とカネ」の問題に真剣に取り組まなかったことの反映でしょう。
 安倍晋三元首相の銃撃事件を契機に注目された統一協会と自民党との長年にわたる腐れ縁についても、岸田首相は真正面から向き合いませんでした。統一協会との癒着は岸田政権と自民党への不信をかきたて、その実態と責任を明らかにしないまま逃げ切ろうとしたのは裏金事件への対応と同様の問題をはらんでいます。

 岸田退陣は世論と民主主義の勝利

 岸田首相は前任の安倍・菅政権との違いを際立たせるために「聞く力」をアピールし、「民主主義の危機」や「新しい資本主義」を強調しました。しかし、これらは単なるポーズにすぎませんでした。安倍元首相の「国葬」の強行にみられるように、民意を軽視し、反対意見に耳を傾けず、数の力で押し通すやり方は変わらなかったからです。閣議決定の多用という国会無視の政治運営、力づくでの安倍的政治手法も踏襲されました。
 このような強権的姿勢は国の根本にかかわる重要政策で顕著です。専守防衛政策を空洞化させる「敵基地攻撃(反撃)能力」の保有、殺傷兵器の輸出や攻撃的兵器の取得、防衛費の倍増を盛り込んだ安保三文書の策定などによって安全保障政策を大転換してきました、
 また、宏池会の会長だった岸田首相はハト派でリベラルという印象を悪用して大軍拡に着手し、「拡大抑止」によって核の傘への依存度を高め、グローバルパートナーシップを宣言して日米同盟の強化と米軍との軍事的一体化を進めてきました。保守派に取り入るために憲法の条文を書き換えることに執念を燃やし、実質改憲の具体化との「二刀流」による憲法破壊(壊憲)に狂奔してきたのです。
 原発の最大限活用への転換、「処理水」の海洋放出、辺野古新基地建設の大浦湾側での着工、マイナ保険証の強制などは安倍政権以上の悪政の連続です。アベノミクスの失敗と増税による国民生活の破壊、2年連続の実質賃金の低下と物価高、生活苦の増大と人口減少なども大きな問題になりました。このような政権が国民から見放されるのは当然です。岸田首相を退陣に追い込んだのは世論と民主主義の勝利だというべきでしょう。

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