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9月27日(金) 政権担当能力を失った自民党にさらなる追撃を(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No. 854、2024年10月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 自民党は何を狙っているのか

 岸田政権の行き詰まりによって自民党は窮地に追い込まれました。裏金事件や統一協会との癒着は岸田政権になってからのものではなく、長年にわたる自民党政治によってもたらされたからです。端的に言えば、金権化という宿痾を治癒できず、憲法の国民主権や平和主義原則を軽んじ、基本的人権を踏みにじってきた歴代自民党政権による反憲法政治の行き着いた先にほかなりません。
 私は27年前に『徹底検証 政治改革神話』(労働旬報社、1997年)という本を出しました。その帯には、「『政治改革』やり直しの提言」と書かれています。この「提言」は実行されませんでした。今回の裏金事件は、そのツケが回って来たということです。
 その結果、政治的危機に直面した自民党は岸田首相を切り捨て、危機を乗り切ってきた「成功体験」に学ぼうとしました。たとえばロッキード事件での「ダーティー田中」から「クリーン三木」への転換、森喜朗首相から小泉純一郎首相への交代という「小泉劇場」による幻惑、そして、直近ではコロナ対策の失敗から政権を投げ出した菅義偉首相から岸田首相への交代による総選挙での勝利です。
 いずれも「振り子の論理」による「疑似政権交代」を演出することで支持を回復しましたが、実際には自民党政治の枠内での政権たらいまわしにすぎません。今回も同様の狙いの下に、総裁選挙に国民の目を引き付け、報道機関を利用したメディアジャックによって支持率の回復を図ろうとしました。
 総裁選の期間は過去最長となり、石破茂元幹事長など過去最多の10人以上もの議員が立候補の意思を表明しました。いずれも総裁選への注目を高めるための策謀です。多数の出馬表明は派閥の縛りがなくなったからではなく、派閥の縛りがなくなったかのように装うためでした。旧派閥の領袖の支持を取り付けるために躍起となり、水面下での合従連衡によって多数派工作がなされたのはこれまでと変わりません。
 候補者が多くなれば、それだけメディアの注目を浴び、露出度も高まります。こうして国民の関心や興味を引き付けようというのが、自民党の狙いでした。それを知ってか知らずか、テレビなどは完全にハイ・ジャックされ広告塔状態に陥ってしまいました。NHKが高校野球を中断して小林鷹之議員の出馬表明を生中継したのは象徴的な事例です。

 解散・総選挙のプロセスはすでに始まっている

 岸田退陣は総選挙での敗北を避けるためのものでした。自民党の狙いは、総裁選への注目度を高めて危機を乗り切ろうというものです。いずれも、焦点は総選挙に向けて結ばれています。岸田退陣表明以降、すでに総選挙への取り組みは始まっており、総裁選はそのプロセスの一環にすぎません。
 立候補の意思を表明した12人は、いずれも世論の反応を見るための「観測気球」でした。「選挙の顔」選びですから、政治家としての力量などの中身ではなく、選挙で票を集められる人気のある人が選ばれるでしょう。拙著で指摘したように、小泉進次郎元環境相による「『小泉劇場』の再現を狙っている」(『追撃 自民党大軍拡・腐敗政治』学習の友社、115頁)ように見えます。
 10人以上も声を上げたのに、誰1人として憲法を守るという人はいませんでした。改憲論の大合唱です。憲法尊重養護義務を定めた99条に違反する人ばかりです。続投を断念した岸田首相が改憲の論点整 理を指示し、早期の発議に向けて縛りをかけたのも異常です。
 岸田首相退陣の理由が裏金事件や統一協会の問題であったにもかかわらず、その再調査や統一協会との絶縁を表明する人も、これらの問題に厳しい対応を打ち出す人もいません。みな「臭いものにふた」をする「同じ穴のムジナ」にすぎないのです。
 新総裁の選出と新内閣の成立によって「刷新感」を演出し、「ご祝儀相場」で支持率を引き上げ、ボロが出ないうちに解散を打って総選挙になだれ込む作戦だと思われます。それがどのような経過をたどるかは不明ですが、2021年の菅首相から岸田首相への交代が参考になります。
 菅首相は9月3日に退陣を表明し、総裁選は今回より2日遅い9月29日に実施されました。その後、10月4日の臨時国会召集、岸田内閣発足、所信表明演説と続き、解散は10月14日、総選挙の投票日は31日でした。「2匹目のドジョウ」を狙って似た経過をたどるとすれば、総選挙の投票日は早ければ10月27日、遅くても11月10日になる可能性が高いと思われます。

 追撃戦の課題と展望

 岸田首相の退陣によって、政権交代に向けての歴史的なチャンスが生まれました。解散・総選挙に向けての追撃戦を展開することで、このチャンスを活かさなければなりません。大軍拡・腐敗政治によってやりたい放題の悪政を押し付けてきた自民党に、その罪を自覚できるだけの強烈な罰を与えるには政権から追い出すのが最善です。
 とはいえ、それは簡単なことではありません。1割台にまで支持率を低下させた森元首相から政権を引き継いだ小泉首相が「自民党をぶっ壊す」と言って自民党を救った前例があります。3割台にまで支持率を減らして退陣せざるを得なくなった菅元首相から政権を引き継いだ岸田首相も、劇的に支持率を回復させて総選挙で勝利しました。この「成功体験」を繰り返そうとしているのが今の自民党です。
 この自民党の狙いを見破り、国民に幅広く知らせることが何よりも重要でしょう。情報戦で勝利しなければなりません、メディアに対する監視と批判を強め、私たち自身の情報リテラシーを高めてだまされないようにすることも大切です。SNSなどを通じた情報発信力や都知事選で注目を集めた「1人街宣」、集団でのスタンディングなども有効でしょう。
 また、野党には政権交代を視野に入れた幅広い連携を求めたいと思います。通常国会で実現した裏金事件での真相究明のための連携を総選挙でも継続してもらいたいものです。裏金事件や統一協会との腐れ縁に怒りを強めている保守層にも、今度だけは自民党にきついお灸をすえなければならないと訴えるべきでしょう。イギリスでの政権交代は、労働党への支持の高まりというより、保守党に対する失望によるものだったのですから。
 市民と共産党を含む野党の共闘を再建するための働きかけを強めることも必要です、立憲民主党には改憲と戦争法に反対した立党の原点を忘れず共闘の立場に立つ代表の選出を求め、各選挙区だけでなく可能な限り全国的な「連携と力合わせ」によって有権者の期待を高める必要があります。支持団体の連合には共闘を妨害したり足を引っ張ったりしないように働きかけ、選挙は政党に任せて余計な口出しはするなと言うべきです。
 たとえ自民党が議席を減らしても、維新の会のような「第2自民党」がすり寄るのでは政権交代を実現できません。議席の減らし方によっては国民民主党や前原グループ(教育無償化を実現する会)が加わる可能性もあります。このような形で自民・公明の連立政権を助けないようにけん制する必要もあります。
 絶好のチャンスをどう生かすかが問われています。腐れ切った自民党大軍拡・腐敗政治に対する追撃戦で勝利し、政権交代に向けて希望の扉を開かなければなりません。そのための決戦が間もなくやってくるにちがいないのですから。



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