10月20日(日) 自民党の総裁選と立憲民主党の代表選の結果をどう見るか(その1) [論攷]
〔以下の論攷は『学習の友』No.855 、2024年11月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕
自民党の総裁選は9月27日に実施され、決選投票の結果、高市早苗経済安保相を破って石破茂元幹事長が選出されました。9人もが立候補し、15日間にわたって展開された異例の総裁選でしたが、投票の結果は別表(省略)のようになっています。
石破候補にとっては「五度目の正直」となったわけですが、「昔の名前」であることは否めず、女性初の総理になったかもしれない高市候補に比べれば話題性に欠け、「刷新感」もありません。五度目ということは、過去4回も総裁にふさわしくないと判断されたわけです。
今回は「消去法」で選ばれたように見えます。そんな人しか残っていなかったのか、と言いたくなります。自民党の人材の欠乏であり、行き詰まりの一例にほかなりません。
他方、自民党の総裁選より4日早い9月23日に実施された立憲民主党の代表選は、決選投票の結果、枝野幸男元代表を破った野田佳彦元首相が新しい代表に選ばれました。第1回投票と決選投票の結果は、別表(省略)のとおりになっています。
政権与党である自民党の総裁選と野党第1党である立憲民主党の代表選の結果をどう見たら良いのでしょうか。その背景や要因、今後の課題などについて検討したいと思います。
選挙の顔より安定感と論戦力
自民党総裁選で注目されるのは、最も有力とみられていた小泉進次郎元環境相が第1回投票で3位となり、決選投票に残れなかったことです。総選挙に向けて画策されていた「小泉劇場」の再現という狙いは頓挫し、小泉新総裁の登場で「ブーム」を起こし、「ご祝儀相場」で支持率の高いうちに解散・総選挙になだれ込むという策謀は不発に終わりました。
小泉候補が失速した最大の要因は、選挙中の発言や候補者同士の受け答えにありました。その言動によって早々とメッキが剥げてしまったからです。主要な政策として掲げた労働規制の緩和など「聖域なき規制改革」は、父親の純一郎元首相による「聖域なき構造改革」の二番煎じで、他の候補者からも批判されました。
総裁選出の基準は二通りあり、一般の党員は「事実上の首相」を選ぶつもりで、国会議員は「選挙の看板」を選ぼうとしたのです。総裁選後ただちに選挙に直面する可能性のある衆院議員にとっては、「次の首相より次の選挙」という意識が働きました。議員票で小泉候補は最多の75票、高市候補も72票と善戦し、石破候補が46票にすぎなかったのはこのためです。
しかし、もともと経験不足や能力が疑問視されていた小泉氏は、次の首相としては頼りなく、立憲民主党の代表に野田元首相が選出されたため、論戦で対抗できるのかという不安感が高まり、選挙の顔としても見放されたのではないでしょうか。
決選投票での攻防
総裁選でのもう一つの注目点は、高市候補が猛追して第1回投票でトップに立ったことです。高市候補は議員票で小泉候補とわずか3票の差にすぎず、党員票では石破候補を1票上回る109票を得ました。麻生派の会長である麻生太郎副総裁が一回目から高市氏に投票するよう指示したためです。
この結果、高市候補は石破候補とともに決選投票に進み、21票の僅差で敗れました。その勝因も敗因も、旧安倍派との密接なつながりにあったと思われます。安倍政治の後継者を自認し、保守的な岩盤層の支持を得たことが、第1回投票でトップになり、決選投票では敗れた要因です。
推薦人の多くを旧安倍派に頼った結果、13人の裏金議員が名を連ねることになり、首相になってからも靖国神社への参拝を続ける意向を示していました。安倍首相の参拝にアメリカが失望したとの声明を出したことを忘れたのでしょうか。このような政策や姿勢が、安定性を欠くと警戒されたように思われます。
決選投票では石破氏が逆転勝利しました。石破候補の議員票は143票も増え、高市候補の得票は101票の増加にとどまりました。国会議員票が石破候補に雪崩を打って集まったことがわかります。
世論調査をすれば「次の首相」として常にトップになり、知名度と「国民的人気」があるとみられたことが、総選挙の看板としても役に立つと感じさせたのでしょう。来年7月の選挙を控えている参院議員も、それまでの国会審議での論戦力への期待感を高めたのかもしれません。
小泉・石破・河野という3人の「小石河連合」、同じ神奈川県選出で小泉氏や河野氏とつながりの深い菅前首相、高市氏を警戒した岸田首相の支援も大きな意味を持ったと思われます。石破氏は前回の総裁選で立候補せず、河野太郎支持に回りました。その借りを返してもらったのかもしれません。
自民党の総裁選は9月27日に実施され、決選投票の結果、高市早苗経済安保相を破って石破茂元幹事長が選出されました。9人もが立候補し、15日間にわたって展開された異例の総裁選でしたが、投票の結果は別表(省略)のようになっています。
石破候補にとっては「五度目の正直」となったわけですが、「昔の名前」であることは否めず、女性初の総理になったかもしれない高市候補に比べれば話題性に欠け、「刷新感」もありません。五度目ということは、過去4回も総裁にふさわしくないと判断されたわけです。
今回は「消去法」で選ばれたように見えます。そんな人しか残っていなかったのか、と言いたくなります。自民党の人材の欠乏であり、行き詰まりの一例にほかなりません。
他方、自民党の総裁選より4日早い9月23日に実施された立憲民主党の代表選は、決選投票の結果、枝野幸男元代表を破った野田佳彦元首相が新しい代表に選ばれました。第1回投票と決選投票の結果は、別表(省略)のとおりになっています。
政権与党である自民党の総裁選と野党第1党である立憲民主党の代表選の結果をどう見たら良いのでしょうか。その背景や要因、今後の課題などについて検討したいと思います。
選挙の顔より安定感と論戦力
自民党総裁選で注目されるのは、最も有力とみられていた小泉進次郎元環境相が第1回投票で3位となり、決選投票に残れなかったことです。総選挙に向けて画策されていた「小泉劇場」の再現という狙いは頓挫し、小泉新総裁の登場で「ブーム」を起こし、「ご祝儀相場」で支持率の高いうちに解散・総選挙になだれ込むという策謀は不発に終わりました。
小泉候補が失速した最大の要因は、選挙中の発言や候補者同士の受け答えにありました。その言動によって早々とメッキが剥げてしまったからです。主要な政策として掲げた労働規制の緩和など「聖域なき規制改革」は、父親の純一郎元首相による「聖域なき構造改革」の二番煎じで、他の候補者からも批判されました。
総裁選出の基準は二通りあり、一般の党員は「事実上の首相」を選ぶつもりで、国会議員は「選挙の看板」を選ぼうとしたのです。総裁選後ただちに選挙に直面する可能性のある衆院議員にとっては、「次の首相より次の選挙」という意識が働きました。議員票で小泉候補は最多の75票、高市候補も72票と善戦し、石破候補が46票にすぎなかったのはこのためです。
しかし、もともと経験不足や能力が疑問視されていた小泉氏は、次の首相としては頼りなく、立憲民主党の代表に野田元首相が選出されたため、論戦で対抗できるのかという不安感が高まり、選挙の顔としても見放されたのではないでしょうか。
決選投票での攻防
総裁選でのもう一つの注目点は、高市候補が猛追して第1回投票でトップに立ったことです。高市候補は議員票で小泉候補とわずか3票の差にすぎず、党員票では石破候補を1票上回る109票を得ました。麻生派の会長である麻生太郎副総裁が一回目から高市氏に投票するよう指示したためです。
この結果、高市候補は石破候補とともに決選投票に進み、21票の僅差で敗れました。その勝因も敗因も、旧安倍派との密接なつながりにあったと思われます。安倍政治の後継者を自認し、保守的な岩盤層の支持を得たことが、第1回投票でトップになり、決選投票では敗れた要因です。
推薦人の多くを旧安倍派に頼った結果、13人の裏金議員が名を連ねることになり、首相になってからも靖国神社への参拝を続ける意向を示していました。安倍首相の参拝にアメリカが失望したとの声明を出したことを忘れたのでしょうか。このような政策や姿勢が、安定性を欠くと警戒されたように思われます。
決選投票では石破氏が逆転勝利しました。石破候補の議員票は143票も増え、高市候補の得票は101票の増加にとどまりました。国会議員票が石破候補に雪崩を打って集まったことがわかります。
世論調査をすれば「次の首相」として常にトップになり、知名度と「国民的人気」があるとみられたことが、総選挙の看板としても役に立つと感じさせたのでしょう。来年7月の選挙を控えている参院議員も、それまでの国会審議での論戦力への期待感を高めたのかもしれません。
小泉・石破・河野という3人の「小石河連合」、同じ神奈川県選出で小泉氏や河野氏とつながりの深い菅前首相、高市氏を警戒した岸田首相の支援も大きな意味を持ったと思われます。石破氏は前回の総裁選で立候補せず、河野太郎支持に回りました。その借りを返してもらったのかもしれません。
2024-10-20 09:35
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