SSブログ

8月3日(月) 自民党のマニフェストに対するコメント [論攷]

〔以下のコメントは、「識者によるマニフェスト点検」として共同通信社から寄稿を求められたものです。8月1日付の地方紙に掲載されたものと思われますが、今のところ、どこに掲載されたかは不明です〕

生活支援 今頃言っても……

 総選挙に向けて各党のマニフェストが出そろうなか、自民党のマニフェストが発表された。「後出しジャンケン」のような形になったのは、麻生降ろしもあって党内がまとまらなかったためである。
 内容はどうかといえば、貧困化と格差の拡大によって経済と社会をズタズタにし、地方を衰退させた小泉構造改革路線以来の失政への反省がなされていない。「安心な国民生活の構築」が最初に掲げられているが、「生活を破壊して不安を高めた自民党が良く言うよ」と思う国民も多いだろう。
 とはいえ、自民党らしさも出ている。自主憲法の制定、国際平和協力に関する一般法(国際協力基本法)の制定、次回の総選挙からの衆院議員総定数の1割以上の削減、道州制基本法の早期制定などである。
 また、財源問題で民主党を批判しているが、消費税については「経済状況の好転後遅滞なく実施」とするだけで、具体的な時期や引き上げ幅が明示されていない。将来的な増税を示唆するにとどまっている民主党とどこが違うのだろうか。
 他方で、民主党と競い合うような生活支援も掲げられている。子育て等に配慮した低所得者支援策(給付付き税額控除等)、3年目からの幼児教育無償化、就学援助制度の創設や新たな給付型奨学金の創設、低所得者の授業料無償化、雇用再生特別交付金や緊急雇用創出事業、「70歳はつらつ現役プラン」の実施などである。なるほど、その気になればすぐ実現できる政策に見える。
 ならば問いたい。どうして、今までそれらを実行しなかったのか、と。自民党はこれまで政権与党であり、そのチャンスはいくらでもあったはずなのに……。