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8月6日(木) 原爆症認定集団訴訟の全面解決に向けて大きな前進 [社会]

 今日は64回目の「ヒロシマ原爆の日」です。64年前のこの日、広島に原爆が投下され、沢山の人が命を失いました。
 1945年だけでも14万人の方が亡くなりました。その後、今日までの死没者数は、26万3945人になっています。

 しかし、今年の「原爆の日」は、これまでとは違った環境の下で開かれています。オバマ米大統領のプラハ演説によって、核廃絶の可能性が現実味を帯び始めたからです。
 そして、もう一つ、提訴から6年余にわたって争われてきた原爆症認定集団訴訟についても、大きく前進する可能性が生まれました。原告側の意向の大部分を国が受け入れ、全面解決への道筋が見えてきたからです。
 訴訟解決のための調印式は、平和記念公園での式典終了後に行われました。原告や支援者らが見守る中、麻生首相と日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の坪井直代表委員らが、1審勝訴原告の原爆症認定などを盛り込んだ確認書に署名しました。

 正午のNHKテレビのニュースを見ていたら、山本英典さんの姿が映っていました。山本さんは、都立大学塩田ゼミの私の大先輩にあたり、何度かお目にかかったことがあります。5月25日(月)の「塩田庄兵衛先生とお別れする会」でもお会いしました。
 山本先輩は、12歳の時、長崎市の爆心地から4.2キロ離れた自宅の裏庭で被爆され、爆心地付近を歩いて惨状を目撃されたそうです。集団訴訟の全国原告団の団長をされている関係で、この調印式に立ち会われたのでしょう。
 今日の『毎日新聞』には、「やっとここまで来たかと、泣きそうです」という山本さんの言葉が報じられています。調印式後の記者会見でも、「大きな勝利。原告はプライバシーをさらけ出し、闘い続けてきた。裁判途中で68人もの原告が亡くなっており、その犠牲によって成果が得られた」と喜びを語り、時折、涙で言葉を詰まらせたそうです。

 良かったですね、山本先輩。これまでの苦労が、ようやく報われましたね。

 麻生首相が、原爆症訴訟の原告全員を救済するという方向に大きく舵を切らざるを得なくなったのは、何よりも、被爆者自身の粘り強い運動があったからです。原爆症の認定と被爆者の救済を求めて提訴しなければ、このような形での解決の扉は開かれなかったでしょう。
 同時に、司法の力も大きかったと言えます。原爆症認定集団訴訟では、19回連続で原告側勝訴の判決が出ました。このような形で司法が解決を迫らなければ、行政や立法が重い腰を上げることはなかったでしょう。

 それにもう一つ、このような決断が、今、この時になされたという点にも注目する必要があります。それは、総選挙を目前に控え、自民党は敗北必至であると見られているからです。
 麻生さんは、劣勢を挽回するために役立つことなら何でもするつもりなのでしょう。その一つが、原爆症の認定と被爆者救済の問題だったのではないでしょうか。
 その意味では、これも「選挙目当て」の人気取りだという側面を持っています。しかし、それでも良いではありませんか。問題の解決に向けて前進し、被爆者が救済されるのであれば……。

 7月29日にアップした「私は「格差論壇」MAPをどう見たか」という『POSSE』第4号のインタビューの最後で、補正予算での雇用対策などについて「戦術というか、選挙を睨んでやっているように思えますが」という編集部の問いに、私は次のように答えました。

五十嵐:選挙目当てであっても、正しいことをやればそれでいいんですよ。ホワイトカラー・エグゼンプション導入の断念だって、安倍元首相からすれば選挙対策だったわけですから。夏に参議院選挙があるのに、こんな反対の多い法案を出して国会でガンガンやられたらたまらないということでやめちゃった。
 選挙対策ということは、有権者、ひいては国民の目を気にしているということですから、民意に従った選択ということになります。決して悪いことではないと思いますね。それだけ民意を気にかけ、それを尊重しようということになるのだから……。

 今回の、原爆症認定集団訴訟に対する政府側の態度変更も、同様に「選挙目当てであっても、正しいことをやればそれでいいんですよ」と、答えたいと思います。「選挙対策ということは、有権者、ひいては国民の目を気にしているということですから、民意に従った選択ということになります。決して悪いことではないと思いますね。それだけ民意を気にかけ、それを尊重しようということになるのだから」と……。

 明後日の8月8日(土)、私大教連の教研集会で講演するために札幌に行きます。このブログの読者の方も多く参加されることと思います。
 皆さんに、酪農学園大学でお目にかかれることを楽しみにしております。