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9月3日(木) 「二大政党制」の実現なのか、それとも「一党優位政党制」の再版なのか [政党]

 かつて政治改革が叫ばれたとき、それは「二大政党制」を実現するためであり、そのためには小選挙区制を導入しなければならないと説明されました。今回の選挙で、このような「二代政党制」は実現したのでしょうか。

 マスコミなどでは、総選挙の結果「二大政党制」ができあがったかのような論評があります。確かに、自民党と民主党という与党第一党と野党第一党が激突し、前者が敗れて後者が政権を奪い取ったという点では、二つの大政党の闘いが軸であったことは確かです。
 しかし、それによってできあがった政党制はどうでしょうか。「二大政党制」というべきものになったのでしょうか。
 「二大政党制」とは、ほぼ勢力が似通った二つの大政党が対峙するような政党のあり方を指します。しかし、先の総選挙の結果、できあがった政党の配置図は、ほぼ勢力が似通った政党の対峙という形にはなっていません。

 総選挙の結果、民主党は308議席(実際には、比例代表の候補者が2人足りなかったので310議席)に対して、自民党は119議席(実際には、民主党の比例代表から1議席回ってきたので118議席)となっています。民主党の議席に対する自民党の議席の割合は38.6%(実際には38.0%)でした。
 かつて、自民党と社会党が対抗していたときには、「疑似二大政党制」と言われていました。自民党の議席に対する社会党の議席の割合はほぼ半分であり、実際には「二大」政党ではなかったから「疑似」が付けられたのです。
 あるいは「一と二分の一政党制」などとも言われました。いずれにしても、本物の「二大政党制」ではなく、事実上は自民党だけが常に優勢な勢力を維持している「一党優勢政党制」あるいは「一党優位政党制」だったのです。

 今回の結果は、民主党と自民党の勢力比だけに注目すれば、ほぼ「一と三分の一政党制」になっています。かつての自民党対社会党の「疑似二大政党制」以上に、「二大政党」という姿からは遠ざかっていると言うべきでしょう。
 これを、「二大政党制」などと言うことができるのでしょうか。どうしてもそう言いたければ、「疑似疑似二大政党制」とでも呼ぶべきものではないでしょうか。
 というよりも、かつての自民党以上に優勢な民主党の登場によって、実際には「一党優勢政党制」または「一党優位政党制」が甦ったのではないでしょうか。小選挙区制による勝利のかさ上げは、その意図していたところとは異なって、「一党優位政党制」の再版を生み出してしまったのかもしれません。

 「二大政党制」であれば、政権交代は日常化します。与党が失敗すれば、勢力関係の接近した野党が取って代わる可能性があるからです。
 しかし、「一党優位政党制」であれば、かつての自民党がそうであったように、長期にわたる政権維持が可能になります。そうなれば、民主党の独裁的な長期政権が続く可能性も出てきます。
 果たして、これからの日本はどちらの道を歩むことになるのでしょうか。

 なお、昨日の「自民党が仕掛けた罠にはまってはならない」というブログに対して、コメントがありました。これについて、若干説明させていただきます。
 この時期に駆け込みで消費者庁を発足させたのは、自公政権による“イタチの最後っ屁”のような嫌がらせです。したがって、これにこだわって足並みの乱れを生じたり、政権運営に躓いたりするようなことがあってはならないというのが、私の言いたかったことです。
 官僚の天下りではないかとか色々と問題があるのは事実ですから、それを批判することは必要でしょう。もし可能であれば、官僚OBのトップを交代させることも考えられますが、それにこだわるあまり大局を見失って足を掬われることがないようにしなければならないということです。
 この問題の処理に手を焼けば焼くほど、自公両党を喜ばせることになるでしょうから……。