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3月28日(火) 森友学園問題で安倍首相を追い詰めている3つの誤算 [スキャンダル]

 これで「打ち止め」にしたいと思っていたことでしょう。そのための籠池理事長の証人喚問だったはずです。
 しかし、森友学園問題は沈静化するどころか、政権を揺るがすスキャンダルに発展しつつあります。まさに安倍首相と自民党にとっては大きな誤算であり、それは自らが掘ってしまった墓穴のようなものだったのではないでしょうか。

 第1の誤算は、2月17日の衆院予算委員会で、森友学園問題に「私や妻は一切関わっていない。もし関わっていたら間違いなく、首相も国会議員も辞任するということを、はっきり申し上げる」と明言してしまったことです。あんなこと言わなければよかったと、今では大いに後悔しているにちがいありません。
 森友学園への100万円の寄付は、たとえ事実だったとしても違法だというわけではありませんが、この発言があるために認めるわけにいかなくなってしまったのです。まして「総理大臣夫人付」の谷さんのファクスなど、「ゼロ回答」だとして全面否認するしかありません。
 そのために、説得力の無い言い訳を繰り返すしかなくなってしまいました。あの時のあの発言が、自縄自縛となって安倍首相をがんじがらめに縛りあげる形となったのです。

 第2の誤算は、籠池理事長の証人喚問を要求してしまったことです。「安倍晋三からです」と言って昭恵夫人から100万円を寄付されたという籠池さんの発言に逆上した安倍首相は、罰則付きの証人喚問に引きずり出して見せしめにしようと考えたのかもしれません。
 あわよくば、偽証罪で牢屋にぶち込んで口を封じ、「一件落着」に持ち込みたいと考えていたことでしょう。しかし、籠池さんの依頼を受けて昭恵夫人が「口利き」に動いていた疑いを示すファクスが公開されるなど新たな事実が飛び出し、これが逆効果になってしまいました。
 100万円の寄付については密室の中でのやり取りだから真相はやぶの中だと言われます。しかし、100万円を振り込んだ時の受け取りなどの物証はありますし、直後に昭恵さんからかかって来た「口止め」の電話についても着信履歴という物証が残っているはずですから、それが傍証になるでしょう。

 第3の誤算は、森友問題が他のスキャンダルへと飛び火してしまったことです。そのために学生時代以来の「腹心の友」である加計考太郎さんにまで疑惑が及ぶことになってしまいました。
 加計理事長の加計学園が国家戦略特区制度で愛媛県今治市に傘下の岡山理科大獣医学部を新設して公有地約37億円が無償譲渡され、昭恵夫人が系列の認可外保育施設「御影インターナショナル子ども園」の名誉園長を務めるなど「第2の森友学園問題」が国会でも問題にされています。この加計学園については、南あわじ市の吉備国際大学(加計幸太郎氏の姉の美也子さんが理事長)設立にかかわる疑惑や国家戦略特区制度を利用して水産・獣医学部を新設することを掲げている銚子市の千葉科学大学にかかわる疑惑なども浮上してきています。
 これ以外にも、ネット上では成田市国際医療福祉大学の医学部用地所得問題や全国高校生未来会議への後援など、安倍首相や昭恵夫人のお声がかりで便宜が図られたり、特別扱いされたりしたのではないかという疑惑が取りざたされています。これまで隠蔽されてきた多くの問題が、このような形で次々と明るみに出てくるようになってしまったのも、安倍首相にとっては大きな誤算だったでしょう。

 来年度予算が成立して、後半国会に入りました。これで森友問題などのスキャンダルについては幕引きを図るというのが、安倍首相や自民党の目論みだったにちがいありません。
 しかし、そうは問屋が卸すでしょうか。共同通信が実施した世論調査では、首相の説明に「納得できない」が62.6%で、「政府が払い下げの経緯などについて十分に説明していると思いますか」との問いには、「説明していると思わない」という回答が82.5%にもなっています。
 世論は、森友学園問題の幕引きを許さないでしょう。真相究明に向けての扉は、籠池理事長に対する証人喚問によって開いたばかりなのですから……。

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3月24日(金) 森友学園の籠池理事長に対する喚問によって「アッキード事件」の有力な証拠が示された [スキャンダル]

 注目の証人喚問が衆参両院で実施されました。喚問では森友学園の籠池理事長による逆襲に会い、火消しを急いだ自民党は水とガソリンを間違えてかけるというミスを犯したようです。
 「総理大臣への侮辱」への報復と懲罰として、自民党の方から実施を求めるという異例の展開でした。その結果、新たな事実が次々に飛び出し、「総理大臣夫人への疑惑」を証明する有力な証拠が示され、核心がアッキーであり昭恵夫人こそがキーマンだったことが判明するという皮肉な結果になりました。
 安倍首相は2月17日の衆院予算委員会で、森友学園問題に関して「私や妻は一切関わっていない。もし関わっていたら間違いなく、首相も国会議員も辞任するということを、はっきり申し上げる」と述べていました。昭恵夫人の関与が明らかになったのですから、その言葉通り、とっとと首相も議員も辞めるべきでしょう。

 森友学園事件が安倍昭恵総理大臣夫人に深くかかわる「アッキード事件」であることを示す有力な証拠の一つは籠池理事長の証言そのものです。籠池さんは国有地取得について政治的関与があったかどうか問われ、「あったのだろうと認識しております」と答え、昭恵夫人に“口利き”を依頼していたことを次のように述べています。

 「その土地は国有地ということで、平成27年5月29日に定期借地契約を締結しました。その土地の買い上げの条件として、10年だったものをもっと長い期間へ変更できないかとの思いから、私たちの教育理念に賛同している昭恵夫人に助けをいただこうと考えまして、昭恵夫人の携帯に電話をいたしました。平成27年の10月のことです。留守電でしたのでメッセージを残しました。すると後日、内閣総理大臣夫人付のタニサエコさんという方からご連絡いただき、『なかなか難しい』とのご返事をいただきました。平成27年11月17日に総理夫人付タニサエコさんからいただいたファクスでは、『大変恐縮ながら現状では希望に沿うことができない。なお、本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております』というお言葉をいただきましたが、お骨折りに感謝しておったところでございます」

 ここに出てくるタニサエコさんという人物は昭恵夫人が講演をした際に幼稚園にも同行していた「谷査恵子」さんのことで、経産省から内閣府に出向していたといいます。この人が昭恵夫人の意を受けて動いていたとすれば、関係する省庁が「籠池さんの背後には首相夫人がいる」と考え、その意を“忖度”して対応したとしても不思議ではありません。
 また、籠池理事長は小学校の開校予定地を昭恵夫人と訪れたことがあるかと問われ、「土地を見て『いい田んぼができそうですね』と昭恵夫人が話したことから、『瑞穂の國記念小學院』という名前にした」と明かしました。一緒に予定地を見に行っていていたんですね。
 先日のNNNテレビでは新設される小学校の内部の映像を放映していましたが、そこには全面ガラス張りの理事長室と共に「名誉校長室」も映し出されていました。昭恵さんの「名誉校長」は「名誉職」としての単なる肩書ではなく、専用の部屋を作るほどの実質的な意味を持っていたということになります。

 さらに、籠池理事長の妻と昭恵夫人はこの問題が明らかになってからも「2月中に22回、3月中は15〜6回」もメールをやりとりしていました。2人の関係が実に密接であったことが分かります。
 昭恵夫人からのメールのなかには「御夫妻が大変なことは想像がつきますが、主人も大変なことに巻き込まれたということも理解頂きたい」「私が関わったと言うことは裏で何かあったと思われる」など、「口止めともとれるメール」もあったといいます。このメールについては、昭恵さんサイドも籠池理事長も公開してもいいと言っていますから、どういったやりとりがなされていたのか、明らかにしていただきたいものです。
 これ以外にも、稲田防衛相とは「今回の土地の事柄につきましても、稲田龍示事務所に平成28年の1月にはご相談にいっております」という証言があり、海陽学園の推薦枠の問題に関連してJR東海の葛西敬之名誉会長(海陽学園理事長)の名前も出てきました。大阪維新の会所属の大阪府議の畠成章氏(2015年9月に死去)、日本維新の会所属の東徹参院議員、自民党の北川イッセイ元国土交通省副大臣、柳本卓治参院議員の名前も出てきており、こうした政治家たちへの追及も不可欠でしょう。

 今回の事件が「アッキード事件」であったことを示す第2の証拠は、「平成27年11月17日に総理夫人付タニサエコさんからいただいた」というファクスです。その文面は、以下のようなものでした。

 「時間がかかってしまい申し訳ございませんが、財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得ました。
 大変恐縮ながら、国側の事情もあり、現状ではご希望に沿うことはできないようでございますが、引き続き、当方としても見守ってまいりたいと思いますので、何かございましたらご教示ください。
 なお、本件は昭恵夫人にもすでにご報告させていただいております。
(中略)
4)工事費の立て替え払いの予算化について

 一般には工事終了時に精算払いが基本であるが、学校法人森友学園と国土交通省航空局との調整にあたり、「予算措置がつき次第、返金する」旨の了解であったと承知している。平成27年度の予算での措置ができなかったため、平成28年度での予算措置を行う方向で調整中

 これは“口利き”を断ったファクスであるから、無関係を証明するものだと菅官房長官は説明しています。このやり取りは安倍夫人とではなく「夫人付き」の谷さんとのやり取りだったから、夫人は無関係だとの弁護論もあります。
 しかし、一民間人から依頼されて「財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得」るということ自体が極めて異例です。しかも、その回答の内容は詳細で、国有財産審理室長が「現状ではご希望に沿うことはできない」という「国側の事情」を懇切丁寧に説明していることが分かります。
 なぜ谷さんがこのようなやり取りにかかわったのかと言えば、それは「昭恵夫人付き」であったからであり、その方に籠池さんから資料が送られたのは谷さん個人ではなく「昭恵夫人付き」の方だったからであり、国有財産審理室長が丁寧な説明を行ったのも、問い合わせをしたのが「昭恵夫人付き」の役人だったからです。その背後に、「内閣総理大臣夫人」という威光が光り輝いていたことは否定できず、まさに「安倍昭恵」という名前は「水戸黄門の印籠」のように、決定的な意味を持っていました。

 しかも、ここには「引き続き、当方としても見守ってまいりたい」と書かれています。もし、断りのファクスであれば、ただ一言、「ご期待には添えかねます」とだけ書いて送ればよかったはずです。
 ファクスの文面からは、「できれば要望に沿いたい、役に立ちたい」という気持ちがにじみ出ています。それは谷さんも籠池理事長と昭恵さんとの親密な関係を知っているからであり、昭恵さんからも「力になって欲しい」と依頼されていたからでしょう。
 このような事情は、わざわざ「なお、本件は昭恵夫人にもすでにご報告させていただいております」と書き添えてあることからも分かります。そして最後に、「平成27年度の予算での措置ができなかったため、平成28年度での予算措置を行う方向で調整中」と書かれていますが、その通りになりました。「引き続き」「見守った」成果が出たということではないでしょうか。

 第3の証拠は、安倍首相夫人である昭恵さんによる反論の書き込みです。昭恵夫人は籠池証人喚問がなされた3月23日の夜、自身のフェイスブックを更新して参院予算委員会の証人喚問での発言に反論しました。以下は、その書き込みの全文です。
 
 本日の国会における籠池さんの証言に関して、私からコメントさせていただきます。

1寄付金と講演料について

 私は、籠池さんに100万円の寄付金をお渡ししたことも、講演料を頂いたこともありません。この点について、籠池夫人と今年2月から何度もメールのやりとりをさせていただきましたが、寄付金があったですとか、講演料を受け取ったというご指摘はありませんでした。私からも、その旨の記憶がないことをはっきりとお伝えしております。
 本日、籠池さんは、平成27年9月5日に塚本幼稚園を訪問した際、私が、秘書に「席を外すように言った」とおっしゃいました。しかしながら、私は、講演などの際に、秘書に席を外してほしいというようなことは言いませんし、そのようなことは行いません。この日も、そのようなことを行っていない旨、秘書2名にも確認しました。
 また、「講演の控室として利用していた園長室」とのお話がありましたが、その控室は「玉座の間」であったと思います。内装がとても特徴的でしたので、控室としてこの部屋を利用させていただいたことは、秘書も記憶しており、事実と異なります。

2携帯への電話について

 次に、籠池さんから、定期借地契約について何らか、私の「携帯へ電話」をいただき、「留守電だったのでメッセージを残した」とのお話がありました。籠池さんから何度か短いメッセージをいただいた記憶はありますが、土地の契約に関して、10年かどうかといった具体的な内容については、まったくお聞きしていません。
 籠池さん側から、秘書に対して書面でお問い合わせいただいた件については、それについて回答する旨、当該秘書から報告をもらったことは覚えています。その時、籠池さん側に対し、要望に「沿うことはできない」と、お断りの回答をする内容であったと記憶しています。その内容について、私は関与しておりません。
 以上、コメントさせて頂きます。
平成29年3月23日
 安倍 昭恵 

 昭恵さんは籠池さんの証言を全面的に否認しています。まさに「ガチンコ対決」であり、どちらかが嘘を言っていることになります。
 もし昭恵さんが嘘を言っているとしたら、それには「昭恵夫人付き」の2人の公務員も加担していることになります。籠池さんと昭恵さんの証言のどちらが信用できるのでしょうか。
 一方の籠池さんは、嘘をついたら逮捕されるという条件の下で証言しており、他方の昭恵さんはそのような制約や条件の無いフェイスブックでの私的な書き込みにすぎません。どちらの発言に重みがあるかは明らかです。

 籠池さんの証言を否定したいのであれば、同じ条件と誓約の下で本当のことを話すべきでしょう。フェイスブックという私的な空間での放言ではなく、国会という公的な場で籠池さんと同等の条件を付けて証言していただく必要があります。
 籠池さんの証人喚問の結果、昭恵夫人の証人喚問も不可欠になりました。嘘をついたら罰せられるという同等の条件の下で、ぜひ真実を語っていただきたいものです。

 また、この書き込みで、総務省から派遣されている公務員を「秘書」と呼んでいることにも驚きました。政府は3月14日に昭恵さんは「公人ではなく私人であると認識している」との答弁書を閣議決定したばかりではありませんか。
 その「私人」が公費で派遣されている役人を「秘書」として使っていたということになります。このような「私人」の存在が認められるのかという新たな問題も出てきます。

 さらに、「籠池さん側から、秘書に対して書面でお問い合わせいただいた件については、それについて回答する旨、当該秘書から報告をもらったことは覚えています」と述べています。「回答する」との報告があったのは、「当該秘書」がその必要性を感じたからであり、秘書の個人的な行動ではなかったからです。
 籠池さんと秘書との間には昭恵さんが介在していました。どのような指示や依頼があったのかは分かりませんが、昭恵さんには事後報告しておく必要性があると「秘書」が認識していたことは明らかです。
 さらに、「その内容について、私は関与して」いないと言いながら、「お断りの回答をする内容であった」ということだけは「記憶して」います。つまり、回答された内容について知っていたことになります。

 このような形で昭恵夫人の関与が明らかになった以上、安倍首相の責任は免れません。「私や妻は一切関わっていない。もし関わっていたら間違いなく、首相も国会議員も辞任するということを、はっきり申し上げる」という断言を撤回して陳謝するか、前言通りに潔く辞めるか、どちらかでしょう。
 そのどちらも避けるために、偽証罪で籠池さんを監獄にぶち込んで口封じし、事態の鎮静化を図るかもしれません。しかし、世論がそれを許すでしょうか。
 安倍首相は第2次安倍政権発足以来、最大の窮地に立たされてしまいました。その原因が、最も近くにいて「家庭内野党」として陰ながら首相を支えてきた昭恵さんだったというのは、まことに皮肉なことだと言わなければなりません。

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3月22日(水) 安倍政権の「狂暴化」を示す「何もしなくても捕まる」共謀罪の国会提出 [国会]

 悪いことをすれば捕まるというのが、これまでの犯罪でした。これからは、悪いことを共謀、つまり、考えたり計画したり相談したり合意したりすれば捕まるという時代になりそうです。
 テロ等準備罪という名前ですが、テロの取り締まりとは無関係です。「狂暴」な人を取り締まる法律なのでは、という誤解もありますが、安倍政権の凶暴化を示す新しい法律だというのが正解でしょう。

 政府は昨日、安倍首相が外遊中で不在であるにもかかわらず、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法案を閣議決定し、国会に提出しました。「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案という名前になっていますが、共謀罪としての本質に変わりありません。
 この法案では2人以上の計画と準備行為の段階で摘発できます。実際に犯罪が実行される以前の段階での処罰です。準備行為とは何かについて明確な定義はなく、捜査当局にどのように解釈されるか分からない心配があります。
 改正法案の目的は国連の組織犯罪防止条約の締結にあるとされています。この条約はマフィアなどの経済的利益を目的にした犯罪を対象としており、イデオロギーや民族、宗教などを背景としたテロを対象にしたものではありません。

 しかし、安倍首相は国会答弁で「東京五輪のために必要な法案だ」という趣旨の発言をしました。五輪招致の演説で、「世界で最も安全だ」と売り込んでいたのは誰だったのでしょうか。
 すでに、日本はテロ対策のために13もの国際条約を締結しており、国内法も整備されています。事実、今世紀に入って日本でのテロ事件は起きていません。
 逆に、テロ防止のためとされている国際組織犯罪防止条約を締結しているアメリカ、イギリス、フランスなどでは、いずれも大きなテロ事件が発生しています。この逆転現象を、安倍首相はどう説明するのでしょうか。

 この法案はテロ防止とは関係なく、この法案が成立しなくても組織犯罪防止条約を締結することは可能だというのが多くの法律関係者の意見です。テロ防止を看板にしたのは国民を騙して共謀罪を新設するための誤魔化しだというべきでしょう。
 実際、「テロ等準備罪」の名前でありながら、条文の中にテロの定義も文字もありませんでした。批判されてからあわてて法案の中に「テロリズム集団」という文字を入れましたが、条文の目的にはテロという言葉は入っていません。
 しかも、この条約を結んでもテロを防止することはできません。テロの根本原因である差別や貧困、格差や憎悪などを解決することができないからです。

 それなのに何故、今になってこのような「心を取り締まる」法案を提出してきたのでしょうか。何もしなくても、目くばせしたりメールが送られてきたりしただけで犯罪に合意したことになり、実際には何も悪いことをしなくても共謀の片棒を担いだことになって捕まってしまう懸念のある法律を。
 取り締まる側の拡大解釈によって内心が取り締まりの対象となり、思想弾圧の手段として用いられるのではないかとの心配もあります。これによって正当な市民活動が委縮し、政治的社会的な運動の自主規制が始まるのではないかという懸念もあります。
 実は、ここにこそ、この法案の真の狙いがあるのではないでしょうか。これまでは不可能であった捜査対象の拡大をちらつかせながら、普通の市民を威嚇して市民活動の足を鈍らせ、運動が発展する前に芽を摘むことができるような取り締まりのための手段を整備することに。

 共謀罪は別名「平成の治安維持法」と呼ばれています。反政府的な思想や運動を取り締まった戦前の悪法の再来という本質を持っているからです。
 再びこのような法律が登場しようとしているのは、反政府的な思想や運動へと発展する可能性のある市民活動が高まってきたからではないでしょうか。派遣村の運動から始まって、脱原発運動、特定秘密保護法案反対運動、安保法制(戦争法)反対運動を経て、昨年の参院選での市民と野党の共闘など、段階を踏んで市民活動は発展を遂げてきました。
 これに待ったをかけ委縮させるための手段として共謀罪のお出ましを願おうとしているのではないでしょうか。国会では与党多数の「一強」体制で、東京五輪やテロ対策を名目にすれば成立させることは可能だと考えたのかもしれません。

 しかし、森友学園にかかわる「アッキード事件」や南スーダンの自衛隊PKOでの日報隠蔽問題などで潮目が変わりました。与党が多数に任せて強行できるような状況ではなくなってきています。
 加えて、法案自体が説得力を持たず、公明党は腰が引けており、金田法相はまともな答弁ができず、都議選を控えていて会期延長や強行採決をやりにくいという4つの弱点を抱えています。強行採決を繰り返してカジノ法案など問題法案の成立を図った昨年の臨時国会とは勝手が違います。
 審議未了・廃案に追い込むことは十分に可能です。反対運動によってどれだけ世論を変え、与党を追い込むことができるかにかかっていると言って良いでしょう。

 この法案は一般市民を対象にしていないと説明されています。ここで言う「一般市民」とは物言わぬ「従順な」市民たちであり、物言う「反抗的な」(と目される)市民たちは除外されています。
 一般市民であっても、「従順」でなくなり「反抗的」に「一変」したとみなされれば、ただちに取り締まりの対象とされるでしょう。「一変」したかどうかは、当局の判断に任されているのです。
 この法律によって、権力者にとって都合の良い「不穏な」ことは考えない市民が増え、政府に楯突けず異論も言いにくい戦前のような「治安維持」社会が実現するかもしれません。そしてそのとき民主主義は死滅し、戦争へのブレーキも失われてしまうのではないでしょうか。まさに戦前がそうであったように……。


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3月20日(月) 『勝利の方程式』を解く [論攷]

〔以下の論攷は、『全国革新懇ニュース』第387号、2017年3月号、に掲載されたものです。〕

 「勝利の方程式」という言葉が注目を集めています。最近出版された拙著『活路は共闘にあり』という本にも「社会運動の力と『勝利の方程式』」という副題を付けました。
 「勝利の方程式」という言葉はプロ野球などで用いられてきたもので、序盤でのリードを最後まで守るためにとられる継投策などのことです。その言葉が何故、市民と野党の共闘を求める人々の共通語となったのでしょうか。

 市民と野党の共闘の到達点と課題

 明確な争点を掲げ、市民と野党が本気で共闘すれば勝てるということが、参院選や新潟県知事選で実証されました。それが必勝パターンとして認知されたために「勝利の方程式」という言葉が生まれたのです。
 しかし、それは「式」にすぎません。正しい答えを出すには、正しい数値(情報)を入れ、正確に計算(運動への取り組みや選挙での勝利)しなければなりません。そのための経験や教訓も、この間の取り組みによって蓄積されてきました。その意味でも、現時点における市民と野党の共闘の到達点と課題を確認することが重要です。
 まず、リスペクトが必要です。お互いを尊敬しあうというにとどまらず、相互の違いを認めたうえで立場や主張を尊重し、自らの考えを押し付けないということです。自分だけが正しく、相手はそれを受け入れるべきだという傲慢な態度は厳に慎まなければなりません。
 また、十分な議論を通じて共通点を拡大することも大切です。お互いにエールを交換して励ましあい、草の根での共同の土台作りを進めていくことです。これは将来の野党連合政権の基盤となる政治文化や社会関係を生み出すにちがいありません。
 異なるグループ間で壁を作るのではなく橋を架け、現状への怒りと共に笑いを、モノトーンではなく多様性を活かした多色刷りの運動を心掛けることも大切です。政策的な一致点を深め広げ、アベ暴走政治以前に戻したうえで憲法の理念を活かした新しい日本への希望を語りましょう。
 戦争法の廃止と専守防衛の徹底、防衛費の削減、武器輸出三原則と文官統制の回復、沖縄・辺野古での新基地建設の中止、オスプレイ配備・訓練の中止、原発再稼働の中止、命とくらしを守る経済政策への転換、保育園や奨学金、年金の充実など社会保障サービスの向上などについては、今すぐ一致できるはずです。もちろん、南スーダンPKOからの自衛隊撤退、テロ等防止罪と名前を変えた共謀罪の成立阻止という当面の課題でも共闘できるでしょう。

 革新懇には何ができるのか

 このようななかで期待されている革新懇の役割は、どのようなものでしょうか。
 まず第1に、事実を学び知らせることです。「ポスト真実」や「偽ニュース」によって政治が動かされている現状を打破するためには、正しい事実に基づいた情報発信が大切です。この「全国革新懇ニュース」も、その一端を担っていると言えるでしょう。
 第2に、行動の機会を提供することです。「黙っていられない」と思っていても、何をどうしたらよいのか、戸惑っている人は多いと思います。このような人に、その気持ちを効果的に示せるような手段と場を作ってあげることが大切です。
 第3に、政治を変える原動力となることです。そのためには過去のいきさつにとらわれず力を合わせること、選挙で勝利することの大切さを伝えなければなりません。地域連絡会や市民連合など共同組織結成の推進力、実務的な担い手、組織と人を結び付ける接着剤、経験の交流と情報の発信などの点で、革新懇は大きな役割を果たせるにちがいありません。
 革新懇、出番のときです。確信をもって出ていきましょう。

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3月19日(日) 森友学園の籠池理事長だけでなく関係者は進んで真相究明に協力するべきだ [スキャンダル]

 今週は日本の政治において更なる激動が訪れる大きな転換点になるかもしれません。注目の証言が二つ行われるからです。
 東の豊洲と西の豊中。この二つにかかわる重要な証言が……。

 20日(月)には、豊洲市場に関する東京都議会の調査特別委員会(百条委員会)で石原慎太郎元都知事が証言する予定です。偽証すれば罰せられますから嘘を言うわけにはいきません。
 また、23日(木)には、国会で森友学園の籠池理事長の証人喚問も実施されます。こちらの方も出頭を拒否できず、偽証すれば罪に問われますから、偽りを証言するわけにはいきません。
 いずれの場合も、真実のみを語ることが前提です。そこでどのような証言が飛び出すのか、国民的な関心が高まっています。

 とはいえ、石原元知事の場合には健康問題もあるということで、当初の3時間という予定が1時間に短縮されてしまいました。この時間内での質疑ですから、どこまで真相が明らかになるかは不明です。
 これまでの発言を見る限り、ほとんど新しいことは明らかにならず、責任逃れとなる可能性が高いように思われます。時間切れを狙って、ノラリクラリとやり過ごそうとするでしょう。
 具体的な事実を突きつけて、責任を明らかにするような追及を望みます。知らぬ存ぜぬで逃げを図るような対応を許してはなりません。

 他方、国会での籠池喚問の方は新しい衝撃的な事実が出てくる可能性があります。とりわけ、安倍首相夫妻についての爆弾発言があるのではないでしょうか。
 首相や昭恵夫人との関係はどのようなものだったのか、瑞穂の国記念小学院設立に首相夫妻はどうかかわっていたのか、政治家の関与はどうなのかなどについて明らかにしてもらいたいものです。とりわけ、「100万円の寄付」については、事実であったかどうかの究明は極めて重要です。
 籠池さんが何を言い出すのか。安倍首相も自民党も、戦々恐々の思いで見つめていることでしょう。

 いうまでもなく、証人喚問は懲罰や脅しのためではなく、真相を解明するために行われるものです。「首相を侮辱したから」という理由で籠池さんを呼び出し、懲罰付きの喚問で懲らしめてやろうというのではあまりにご都合主義的な対応であり、証人喚問の私物化にほかなりません。
 森友学園をめぐる疑惑の真相を究明するためには、籠池さんの証人喚問だけでは不十分です。国有地の売却交渉のときに理財局長で疑惑をもたれている中心人物の迫田英典国税局長官や当時の近畿財務局長、松井大阪府知事などの喚問も必要でしょう。
 「私人だから」という理由で渋っていた籠池さんの喚問を認めながら、「公人」である官僚などの喚問に応じないというのでは筋が通りません。完全な「私人」とは言えず、「準公人」で「100万円」を渡したとされる昭恵さんの証人喚問も不可欠です。

 国会による国政調査権が正常に機能するかどうかが問われています。疑惑をもたれている関係者は全て、自らの潔白を証明するためにも真相究明に協力するべきでしょう。
 逃げ隠れすればするほど疑惑は深まり、潔白を信じてもらえなくなります。安倍首相夫妻には、そのことが分かっているのでしょうか。

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3月15日(水) 稲田防衛大臣の実の父親は森友学園の籠池理事長の知人だった [スキャンダル]

 稲田防衛相の国会での虚偽答弁が批判を浴びています。森友学園の籠池理事長から法律相談を受けたり裁判を担当したりしたことはないと断定していたのに、裁判資料を突きつけられ、一転して森友学園が起こした民事訴訟の口頭弁論に原告側代理人弁護士として出廷していたことを認め、前言を撤回して謝罪したからです。
 また、政治献金を受けたことはないというのも嘘でした。資金管理 団体が2007年、森友学園の籠池泰典理事長夫妻から1万2000円の寄付を受けてい た事実を示され、これを認めたからです。

 稲田さんは顧問弁護士だったことや裁判を担当したこと、献金を受けたことなどを否定し続け、10年前からは会ったこともないと籠池さんとの関係断絶を示唆してきました。このように、ことさら籠池さんとの関係を否定しようとしていたのは何かあるからではないか、と誰もが不審に思ったことでしょう。
 そうです。何かあるからなのです。
 その何かというのは、稲田さんの実の父親と籠池さんとの関係だったのではないでしょうか。このことを知られれば、稲田さんはこれまで考えられていた以上に籠池さんと深いかかわりがあったということが分かってしまうからです。

 稲田さんの実の父親は椿原康夫さんと言って関西の草の根保守運動では有名人だったようです。インタビューされている映像がユーチューブにアップされています。
https://www.youtube.com/watch?v=SKCP-tmbmWY&feature=youtu.be
 「チャンネル桜」では最初に「このたび発足した『頑張れ日本全国行動委員会・京都』の代表を引き受けてくださった氏に、発足までの経緯や、草の根保守活動についてお聞きするとともに、ご息女である稲田朋美議員への教育方針や人柄などについてもお聞きしていきます」と紹介されています。この椿原さんについて、『週刊文春』3月16日号の記事で「籠池理事長は、小誌の2月13日のインタビューで、『(稲田氏の父である)椿原(泰夫)先生とは親しくさせていただきました』と話しており、稲田氏と森友学園との関係が改めて注目を集めそうだ」との記述があります。
 また、「稲田氏が衆院議員になる前の2003年ごろ、学園が運営する保育園が、乗っ取りにあいました。その時、学園側の弁護人だったのが龍示氏でした。私は龍示氏から『弁護士にならないか?』と言われ、『そんな頭ないからいいです』と答えたことを覚えています」という籠池さんの息子さんの証言も掲載されています。さらに、テレビ東京の「ゆうがたサテライト」では、「稲田大臣とは父親の代からの付き合い」 「教育関係の人間ですから、お嬢さん(稲田大臣)より、椿原泰夫先生(稲田大臣の父)の方が昵懇。ある時期までは」という籠池さんの映像が流されていました。
 つまり、稲田さんのお父さんと籠池さんとは「親しく」していた関係であり、稲田さんも籠池夫妻とずっと以前からの知り合いだったのです。夫の龍示さんを含めて家族ぐるみの付き合いをしていたということでしょう。

 それを今さら、汚いものを振り払うようにして無関係を装っているわけです。そこから無理が生じたのが、一連の嘘の背景だったのではないでしょうか。
 そもそも、稲田さんが「百人切り」裁判などにかかわったきっかけはこの父である椿原さんの人脈によるものだったようですし、安倍さんに見いだされて議員になるきっかけはこの裁判の弁護人として講演を行ったことだったと言われています。いわば、お父さんとの縁がなければ議員になっていなかったということでしょう。
 また、先の「チャンネル桜」の映像でも、「この親にしてこの子あり」「どんな教育をしたんだろう」と言われているように、お父さんから右翼思想を叩き込まれて育ったのが稲田さんでした。お父さんは昨年亡くなっていますが、元高校教諭・校長で日教組のメンバーと激しく対立してきた方ですし、晩年は生長の家の「頑張れ日本全国行動委員会」の京都本部代表をされていました。この父親の薫陶の下、塚本幼稚園で行われたような「愛国教育」を受けて人格を形成し、成長してきたのが稲田さんだったのです。

 このような背景からすれば、稲田夫妻が籠池さんに依頼されて顧問弁護士をしていたことも、裁判に出廷していたことも、何回も会っていたことも、政治献金を受けていたことも、防衛相として感謝状を出していたことも、全て当然のことだったのです。それを今になって、手のひらを返したように否定し、証拠を突きつけられて渋々認めるという醜態を演じています。
 このような人物が防衛大臣にふさわしくないこと、その資質を完全に欠いていることは明らかではありませんか。すでに、南スーダンPKOの日報隠蔽の責任を問われて辞任要求が出され、教育勅語の容認という点でも強い批判を浴びています。
 イエローカードを2枚出されていることろに、今回またレッドカードを出されたようなものです。これ以上の居座りは許されず、稲田防衛相が大臣の椅子を防衛するのは困難になっていると言うべきでしょう。

 ところが、これまで稲田さんをかわいがり優遇してきた安倍首相は、この期に及んでもまだ責任を取らせようとしていません。稲田さんを安倍首相がかばえばかばうほど、首相のダメージが大きくなるということが分かっているのでしょうか。
 籠池さんなどの参考人招致を拒んで稲田さんの居座りを許している自民党や安倍首相の対応を見て、マスメディアや野党は内心でニンマリしていることでしょう。解明が遅れて問題が長引けば長引くほど国民の怒りと関心は高まり、安倍政権に対する攻撃材料としての使用価値も大きくなるのですから……。
 こうして、安倍首相は大きなジレンマに直面することになりました。稲田さんを守っても首を取っても安倍政権に対するダメージは避けられず、グズグズすればするほど解決の道は遠ざかってしまうのですから……。

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3月14日(火) 記憶はなくても記録があった稲田防衛相 [スキャンダル]

 これはもう「アウト」でしょう。稲田朋美防衛相です。
 森友学園の籠池さんとの関係を否定していた稲田さんですが、動かぬ証拠が出てきました。裁判所の記録に書かれていたのです。
 国会で嘘を言ったのですから、虚偽答弁そのものです。責任を取って辞任するしかないでしょう。

 13日の参院予算委員会で、稲田さんは「籠池氏や森友の事件を受任したことも、裁判も、法律相談も受けたことはない」と、はっきりと関係を否定する答弁をしていました。しかし、当の籠池さんは稲田夫妻が顧問弁護士だったことを証言しています。
 さらに、この証言を裏付けるような出廷を示す裁判所作成の記録が見つかりました。動かぬ証拠が出てきたのです。
 窮した稲田さんは居直り、「自分の記憶に基づき答弁した。虚偽の答弁をしたことはない」と弁明しています。また、「この件について、責任を取るということではないと思う」と述べていますが、「虚偽の答弁」であったことは塚本幼稚園の園児にだって分かるにちがいありません。

 いよいよ、安倍首相は追い込まれてきました。こうなることは分かっていたのかもしれません。
 報道各社の官邸キャップを中華料理屋に招待して事前工作をしていたからです。しかし、その効果は次第に薄れてきているようです。
 当初、報道に及び腰だった読売や産経だけでなく、NHKも昨日の夜9時のニュースなどで詳しく取り上げるようになりました。それに上塗りするような稲田さんの虚偽答弁であり、責任逃れです。

 安倍首相は瑞穂の国記念小学院の設立申請の取り下げで「一件落着」を図ろうとし、籠池理事長の記者会見に南スーダンからの自衛隊の撤退発表をぶつけてきました。両方が互いに打ち消しあう形になり、印象が薄れることを望んだのでしょう。
 しかし、その後の各社の世論調査でも、この問題への関心の高さがうかがわれます。国民は真相究明を望んでおり、逃げの姿勢を示している安倍内閣への批判を強めているようです。
 安倍内閣の支持率は軒並み低下傾向を示し始めました。このまま、稲田さんの居直りを許して参考人招致を拒み続ければ、ますます内閣支持率は下がっていくにちがいありません。

 それに、「もう一つの森友学園」と言われている「加計学園」の問題もあります。愛媛県今治市での岡山理科大学の獣医学部新設をめぐる疑惑です。
 国会での追及も始まりました。国家戦略特区にすることで新学部の設置が可能になり、加計学園だけが申請して認められ、様々な便宜が図られているという構図は森友学園の場合とよく似ています。
 しかし、無償譲渡の額は37億円弱で建設への補助は64億円だといいますから、けた違いに大きな金額になります。さらに、安倍首相と加計理事長とは学生時代からの「腹心の友」でゴルフ仲間ですから、籠池さんとは比べ物にならないくらい親密な関係です。

 森友学園に加計学園。その優遇と特別扱いにはどのような背景があったのでしょうか。思想的なシンパシーと人間的なつながりによって行政の公平・公正が歪められるようなことはなかったのでしょうか。
 いずれの場合にも安倍首相の名前が見え隠れし、昭恵さんは関連教育機関の名誉校長や名誉園長に名前を出していました。政治への信頼を回復するうえで、政治家の関与や介入はなかったのかを究明し、安倍夫妻の政治的道義的責任を明らかにすることは不可欠です。

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3月11日(土) 「安倍夫妻と不愉快な仲間たち」に対する責任追及の手を緩めてはならない [スキャンダル]

 注目を集めていた「アッキード事件」ですが、急転直下の展開を示しました。森友学園の小学校設立認可の申請が取り下げられ、籠池理事長が辞任したのです。
 これまで森友学園を応援し、数々の疑惑をもたれていた「安倍夫妻と不愉快な仲間たち」は、これで幕引きを図ろうとするでしょう。しかし、「瑞穂の国記念小学院」とのかかわりや設立認可、格安での用地売却、加えて加計学院の岡山理科医大学獣医学部設立にかかわる問題など疑惑は多く、引き続き国会への参考人招致をはじめとした真相解明に努め、安倍夫妻などの責任追及の手を緩めてはなりません。

 今の時点で籠池さんが設立申請を取り下げて辞任したのは、これ以上問題を長引かせたくなかったからでしょう。同時に、疑惑が疑惑にとどまらず、具体的な犯罪行為が明らかになってしまったからです。
 それは、建設費の見積もりが3種類もあるという事実です。これ自体異常なことですが、実際よりも高い見積もりを政府に出して補助金を騙し取っていたわけですから、詐欺罪に当たります。
 多すぎた分を後から返すと言っているようですが、騙し取ってから見つかって返すと言っている「オレオレ詐欺」のようなものです。お金を返したからといって、騙した罪が消えるわけではありません。

 籠池前理事長に対して野党は参考人招致を求めてきました。これに対して与党は「違法性が明らかではないから民間人の招致は慎重でなければならない」との理由で拒んできました。
 そもそも国会に参考人を呼ぶのは国政調査権の一環であり、国政にかかわる疑惑を解明するためです。違法性がまだ明らかになっていないから、参考人を招致して違法性があるかどうかを正すということでしょう。
 違法性が明らかであれば、国会ではなく警察に呼ぶべきです。しかも、今回の申請取り下げと理事長辞任によって籠池氏自身が違法性を認めて責任を取ったわけですから、与党の拒否理由は崩れたことになります。

 今回の問題の「違法性」については、引き続き全容の解明が待たれます。しかし、責任追及を、このレベルにとどめてはなりません。
 「安倍夫妻と不愉快な仲間たち」の政治的道義的責任の問題は残るからです。これらの人々は森友学園やその傘下にある塚本幼稚園での教育実践を高く評価して応援し、様々な形で人集めや金集めに協力してきました。
 その学園が新しい小学校を設立しようとして問題を起こし、結局はその申請を取り下げて理事長が責任を取っしたわけです。森友学園と理事長に問題があったことは明らかであり、それを評価して応援し協力してきた人びとについても責任は免れません。

 すでにこのブログで明らかにしたように、塚本幼稚園で開催されてきた「教育講演会」には、百田尚樹、曽野綾子、平沼赳夫、青山繁晴、竹田恒泰、渡部昇一、中西輝政、櫻井よしこ、田母神俊雄、中山成彬、米長邦雄などの「不愉快な仲間たち」がずらりと登場していました。ホームページに推薦の言葉を寄せていたのは、中山成彬衆議院議員(元文部科学大臣)、軍事評論家の田母神俊雄第29代航空幕僚長、西村眞悟衆議院議員(元防衛政務次官)、竹田恒泰慶應義塾大学大学院法学研究科講師の4人でした。
 森友学園からの陳情を受けていた鴻池祥肇さんも塚本幼稚園で開かれた「教育再生地方議員百人と市民の会」第10回定期総会で基調講演をしていました。また、NHKの経営委員である長谷川三千子埼玉大学名誉教授(日本会議代表委員)も昨年4月29日の『第11回「昭和の日」記念式典』で基調講演を引き受けています。
 これ以外にも、籠池さんの長男である佳茂さんは稲田朋美防衛相や山谷えり子元拉致担当相と関係があり、山谷さんとは「椛島有三日本会議事務総長に東京の事務所で紹介され」、事務所で半年ほどカバン持ちを担当していたこと、「職歴」に維新の足立康史議員の「私設秘書」と明記していること、籠池さんが橋下徹さんの選挙を応援して宣伝カーの上に並んでいる写真があること、松原仁議員(民進)が森友学園理事長や元在特会支部長に平沼赳夫議員(自民)を紹介した際の写真もあることなどが明らかになっています。また、塚本幼稚園に感謝状を贈ったり、文科省に「教育勅語のどこがいけないのか」と圧力をかけたりしていた稲田防衛相に至っては、初出馬の時から籠池理事長が応援し、稲田さんの夫は森友学園の塚本幼稚園で顧問弁護士をやっていた疑いがあります。

 なかでも、安倍総理大臣夫人の昭恵さんは分かっているだけでも3回も講演しています。その回数の多さはとびぬけており、この幼稚園に対する昭恵さんの思い入れの深さがうかがえます。
 だからこそ、新たに設立される小学校へも期待し、その名誉校長を進んで引き受けたのです。幼稚園で注入された戦前型の「愛国教育」が小学校で継続されるために「役に立ちたい」と考えたからです。
 しかも、3回の塚本幼稚園への訪問にはいずれも夫人付きの公務員が同行していたこと、そのことがばれては困ると思ったのでしょうか、事前の出張計画が提出されていなかったこと、講演料も40万円支出されていたと受け取られるような会計記録が残っていることも明らかになっています。昭恵さんは講演料の受け取りを否定していますが、講演してその料金を受け取らなかったとすれば、その分の利益を塚本幼稚園に供与したという新たな問題が生ずることになります。

 安倍首相自身も、2012年9月16日に塚本幼稚園での「教育講演会」で講演する予定でした。これは自民党総裁選に立候補することになったために中止されましたが、今となっては「危ないところだった。やらなくて良かった」とホッとしていることでしょう。
 しかし、講演をいったん引き受けたという事実は残りますし、籠池さんの息子さんは父親の名代として安倍首相に会ったことがあり、そのとき渡した名刺を傍にいた秘書に預け、後に講演を断るときに間違えて電話をかけてきたと証言しています。籠池さん自身も安倍首相からもらったという年賀状の文面を読み上げていました。
 つまり、安倍首相と籠池さんは直接電話をしたり、年賀状をやり取りしたりするような親密な関係にあったということです。ほとんど籠池さんを知らないかのような答弁をした国会での安倍首相の発言は真っ赤な嘘でした。

 昨日の記者会見で籠池さんは「安倍夫妻と不愉快な仲間たち」について、「何もしてもらわなかった」と発言していますが、これも嘘です。分かっているだけでも、小学校設立の資格に欠け、戦後教育の理念を否定する極めていかがわしい教育団体を権威付けで信用させ、持ち上げて宣伝する「広告塔」になり、学校の設立認可や国有地の格安取得、生徒の募集や募金・寄付金集めがやりやすくなるように様々な形でバックアップしていました。
 森友学園の特別扱いには、周囲がそれを信用したり忖度したり、共鳴したりして形成された「共通の思想空間」が大きく影響しています。度の形成において、安倍郁恵さんが果たした役割は大きく、安倍首相やその「不愉快な仲間たち」の責任も極めて大きいと言わなければなりません。
 だからこそ、責任逃れのための手段を取ったのでしょう。籠池前理事長の記者会見と小学校設立申請の取り下げ、森友学園の理事長の辞任は、まさに「トカゲのしっぽ切り」そのものです。

 籠池さんは疑惑の幕引きを図るため、「しっぽ」として切り捨てられることを知っているのでしょうか。それとも、「安倍夫妻と不愉快な仲間たち」を守るために、自ら進んで「しっぽ」になろうとしているのでしょうか。
 いずれにせよ、「しっぽ」を切ったまま、トカゲ本体の逃走を許してはなりません。昭恵さんはじめ「安倍夫妻と不愉快な仲間たち」の本格的な責任追及は、これからなのですから……。

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3月7日(火) どうして一部のマスコミは森友学園の疑惑に対して及び腰だったのか [スキャンダル]

 何か、隠さなければならないものがあるのではないか。自民党の参考人招致拒否という報道を見て、そう感じました。
 国民の関心をそらし重大な事実を隠ぺいするために、書類を廃棄し、偽りの答弁を行い、参考人を拒み、報道に圧力を加え、安倍首相はひたすら「私と妻は無関係だ」と叫んで追及をやり過ごし、時間が過ぎていくのを待とうとしています。その片棒を、マスコミも担ごうとしていたところに深刻な問題があります。

 ということで、第7の疑惑は、マスコミの報道ぶりについてです。NHKは2月27日の国会中継を中止しました。その原因として「NHKも上層部で森友学園側と何らかの繋がりがあるのでは?」というような疑いがささやかれたことがあります。
 これについて、すでに私は塚本幼稚園で開催されたパネルディスカッションに、NHKの長谷川三千子経営委員が参加していたこと、元NHK経営委員の百田尚樹さんも塚本幼稚園で講演していた事実を指摘しました。これが何らかの形で影響していたのかもしれません。
 先日の日曜討論では、森友学園疑惑にも多くの時間が割かれていました。遅ればせながらNHKもこの問題を取り上げるようになってきていますが、それは社会の空気や他社の報道ぶりに押されてのことだと思われます。

 NHK以上に及び腰だったのは読売新聞と産経新聞でした。森友学園疑惑が初めて報じられたのは2月9日付の『朝日新聞』で、「学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か」という記事が出ています。
 他方、『読売新聞』が報じたのはその9日後の2月18日で、その次は6日後の2月24日でした。「国有地 8億円安く売却 評価額より 大阪の学校法人に」という記事で、国会で議論になったのでやむを得ず取り上げたという感じです。
 『産経新聞』はさらに遅れ、2月18日に「国有地売却 差額に波紋」と社会面で初めて報じました。できれば取り上げたくない、という気持ちがにじみ出てくるような報道ぶりです。

 このように、他の新聞と比べて読売や産経の報道姿勢が弱腰で記事の量が少ないということが、森友学園疑惑での大きな特徴でした。その両新聞も最近ではそれなりに報ずるようになってきたようですが、それも読者の関心の高まりや他社との競争に強いられてのことのように思われます。
 当初の及び腰の背景には、身内に疑惑の関係者がいるということが関連しているのではないでしょうか。すでに指摘したように、この二つの新聞社は森友学園疑惑と無関係ではありません。
 「瑞穂の国記念小学院」を森友学園の要求通りにスピード認可した大阪の私学審議会に委員として満田育子読売新聞大阪本社編集局世論調査部主任が参加し、森友学園への国有地払い下げについて審議・決定した国有財産近畿地方審議会には委員として平井道子読売新聞大阪本社編集局管理部長と産経新聞出身のフリー・ジャーナリストである細見三英子さんが加わっていました。当初の及び腰の報道姿勢がこれと関係があるのかという疑惑についても、ぜひ読売新聞や産経新聞や他の報道機関によって検証していただきたいところです。

 また、安倍首相自身が報道機関に直接圧力をかけたのではないかとの疑惑もあります。2月27日夜、安倍首相は内閣記者クラブのキャップたちと赤坂の高級中華料理店「赤坂飯店」でオフレコ懇談会を開いたからです。
 この懇談は2時間30分も続きました。異例の長さも話題になりましたが、この場で森友学園問題に関する報道についてアレコレと指示を出しお願いをしたと見られています。
 『日刊ゲンダイ』によれば、関係者は会議が突然に決まった物であると明らかにし、安倍晋三首相は森友学園問題で報道自粛を要請したとされています。はたして、そのような要請がなされたのかどうかは分かりません。

 しかし、このような時期に、このような場を設定したこと、そこにのこのこと出かけていったことが、不適切であったことは明らかです。「李下に冠を正さず」という言葉がありますが、安倍首相も内閣記者クラブのキャップたちも、衆人環視の下で堂々と「冠」を正してしまったのですから……。

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3月6日(月) 教育基本法の理念を否定して戦前回帰をめざす国粋主義的「愛国幼稚園」の実態 [スキャンダル]

 森友学園の深い闇について、ようやく光が当たるようになってきました。国会での追及などもあり、マスメディアやテレビのワイドショーも無視できなくなってきたのでしょう。
 この問題を国会で解明するべきだという意見は83%にも上っています。政治家の関与についても、監査委員をしていた大阪維新の会の伊藤隆弘府議などの名前が出てきました。真相解明に向けて、籠池理事長など関係者の証人喚問は不可欠です。

 さて、このブログでは一連の疑惑について検討してきましたが、そもそも森友学園が経営していた塚本幼稚園とはどのような幼稚園だったのか、その実態について見てみることにしましょう。そのような幼稚園がなぜ評価され、優遇されたのか、第6の疑惑は森友学園と国粋主義的な「愛国幼稚園」ともいうべき塚本幼稚園自体に関わるものです。
 ここで検討すべき問題の一つは戦前型の偏向教育の実態であり、第2は教育機関にあるまじき幼児虐待であり、第3は籠池理事長やその夫人のヘイト発言であり、第4は大阪維新の会や稲田朋美衆院議員との関係です。

 第1の戦前型の国粋主義的な偏向教育の実態については、すでに多くのビデオなどで国民の知るところとなっています。なかでも、大きな衝撃を持って受け止められたのが、2015年秋の運動会の映像でした。
 ここで映し出された異様な光景に、唖然とした人は多かったでしょう。「選手宣誓」を行った代表の園児4人は、次のように叫んでいました。

 「大人の人たちが他の国々に負けぬよう、北方領土、竹島、尖閣諸島を守り、日本を悪者として扱っている中国、韓国が心あらため、歴史教科書で嘘を教えないようお願いいたします。安倍首相がんばれ! 安倍首相がんばれ! 安保法制、国会通過、よかったです!」

 自民党議員の中には、このどこが問題なのかと考えている人もいるでしょう。しかし、もし「大人の人たちが戦争を始めないよう、私たちが戦争に行かされないようお願いいたします。岡田代表がんばれ! 岡田代表がんばれ! 安保法制、国会通過させないでください!」などと叫んでいたら、どうでしょうか。
 自民党議員の皆さんは黙っていなかったでしょう。国会で大問題になっていたにちがいありません。

 この「選手宣誓」について国会で質問された安倍首相は、さすがに肯定することができず「『安倍総理がんばれ』とか、園児に言ってもらいたいということはさらさらないし、私は適切でないと思う」と答弁しました。しかし、それが「学校は政治的活動をしてはならない」という教育基本法第14条に違反するというとことについては明言を避けています。

 この幼稚園では園児に教育勅語を暗唱させていたことでも知られており、幼稚園で講演したり推薦の言葉を寄せたりした右派知識人や議員の多くが、そのことを評価していました。国会で質問された稲田防衛相も個々の徳目には正しいものがあると答弁していましたが、問題は教育勅語が担っていた歴史的な役割にあります。
 それは「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」という内容を含んでおり、これこそが戦前の国粋主義と戦争遂行のための精神的な支柱とされ、軍国主義教育の手段となっていました。だからこそ、戦後、衆議院で「排除に関する決議」、参議院では「失効に関する決議」がなされているのです。
 教育勅語は戦前戦中の軍国主義教育の要であり、国民主権と対立し、教育基本法とも衝突します。その教育勅語を公教育に持ち込むことは「憲法違反だ」(小林節慶応大学名誉教授)との指摘があるのも当然でしょう。

 第2は、教育機関にあるまじき園児虐待の実態です。これについても、2月22日に民進党の玉木雄一郎議員が衆院予算委員会第4分科会で質問して以降、広く知られるようになりました。
 大阪府の公表する資料によると、大阪府下に305ある私立幼稚園全体の充足率は74%ですが、塚本幼稚園のそれは50%にすぎません。統計にも転園者続出が明らかに示されています。
 土地取引の闇よりもたくさんの転園者を生み出す「森友学園のあり方」そのものの方が、より深刻な問題だという指摘もあります。それは教育機関にあるまじき虐待ともいえるような事例が、以下のように数多く報告されているからです。

・トイレ禁止(水筒を飲まない子、帰り道で漏らす子続出)
・ウンコを丸ごと包んだパンツをそのまま鞄に入れられる
・漏らしたら下着を素手で持って帰らされるか、透明なビニール袋で見えるように鞄からぶら下げられる・犬臭いので犬を殺せと連絡
・犬の毛が入っていたからと弁当を捨てる
・子供に特定の子供を虐めさせるように教える
・先生も虐めに参加する
・通名で通っている子の本名をプリントで配布し晒す
・PTAの収支が不明なので入らないと言ったら強制退園
・二万円のアルバムを子供の人数分強制購入させる
・時間内に給食を食べきれなかった子供は廊下に正座で食べさせる

 このような事例の全てが本当なのか。あまりにも酷すぎて、にわかには信じがたい思いがします。
 しかし、塚本幼稚園を自主的に退園したり強制的に退園させられたりした保護者たちは沢山いるようで、「T(塚本)幼稚園退園者の会」を結成しているそうです。
 そのうちの1人がPTAの会計報告がめちゃくちゃだったので園に説明を求めたら、副園長から「いいかげんにしろ!!」で始まる毛筆の手紙が届いたといいます。このような事例を見るにつけても、なぜ大阪府はこれほど運営実態が酷い森友学園に小学校の設置認可を与えたのか、ますます疑問が大きくなります。

 第3の問題は、籠池理事長やその夫人のヘイト発言です。これまでも塚本幼稚園の退園保護者たちは、ネット上などで塚本幼稚園の実態を告発し続けてきました。
 しかし、こうした声に森友学園は真摯に対応するどころか、公式WEBサイトに「インターネット上での当園に対する誹謗・中傷記事について」と題した文章を掲載して「投稿者は、巧妙に潜り込んだ韓国・中華人民共和国人等の元不良保護者である」と反論してきました。
 籠池理事長の妻であり塚本幼稚園副園長でもある籠池諄子さんは保護者あての便りに、「邪な考えをもった(名前は日本人なのですが)在日韓国人である・支那人である…」と書いています。副園長は「私は差別はしませんが、韓国人・中国人は嫌いです」と書いた「直筆手紙」を元韓国籍の保護者に出していました。

 また、籠池理事長は沖縄の翁長知事に対して「現知事は親中華人民共和国派、娘婿も支那の人である。もともと中共に従いたいと心から思っているので、中共の手先かもしれない」などという全くデタラメな中傷を加えています。さらに、籠池理事長が経営していた別の幼稚園では、過去に尖閣諸島を守るための請願書名を保護者に提出するよう求めていました。提出先は立ち上がれ日本だったそうです。

 第4は大阪維新の会や稲田朋美衆院議員との関係です。以上に見たような問題がありながらも、塚本幼稚園に対する評価には高いものがありました。
 一部の右派論客や国会議員が絶賛し、講演したり推薦の言葉を述べたりしていたことは、すでに前回のブログで紹介しました。それだけではありません。
 塚本幼稚園で働いていた職員が表彰されたり、感謝状を贈られたりしていました。教育内容や実態からすれば信じられないことであり、表彰したり感謝したりした人は塚本幼稚園の実際の姿を知っていたのでしょうか。

 幼稚園の先生で「素晴らしい教育を行なっている教諭」に贈られる「文部科学大臣優秀教職員賞」を受賞したのは2013年2月の時点で全国に11人しかいません。それなのに、そのうち3人が塚本幼稚園の先生で、「大阪府の推薦」で受賞しています。
 2008年の大阪府知事は橋下徹さん、2012年の大阪府知事は松井一郎さんです。この2人の知事が塚本幼稚園の先生を推薦していたことになります。
 塚本幼稚園は特別に支援が必要な児童を受け入れる「要支援児受入促進指定園」にも指定され、大阪市と大阪府から補助金を受け取っていました。この補助金支出の決定も維新の市長や府知事によってなされています。

 大阪維新の会も塚本幼稚園の特別扱いや便宜供与にかかわっていた疑いが濃厚です。同様に、稲田朋美防衛相も塚本幼稚園とのかかわりを疑われる人物の一人です。
 稲田さんが過去に何度も参加したことがあり、顧問も担当していた「保守の会」の松山昭彦会長はフェイスブックで、「国会議員になる前の稲田朋美先生は塚本幼稚園の顧問弁護士だったそうです。驚きました」とコメントしています。これが事実だとすれば、まことに驚くべきことだというべきでしょう。
 その稲田さんは、防衛大臣に就任してから塚本幼稚園に表彰状を送っています。その実態や「瑞穂の国記念小学院」問題が明らかになってから取り消す意向を示していますが、このような幼稚園を表彰したこと自体が間違いなのです。

 このように、塚本幼稚園も森友学園も教育機関という資格がないほどの異様な教育を行い、理事長・園長の籠池さんとその妻の副園長は平気でヘイト発言をするような、教育者とはいいがたい差別思想に凝り固まった人物でした。それにもかかわらず、表彰されたり感謝されたり補助金をもらったりという厚遇を受けてきたのです。
 それは小学校設立のスピード認可、言い分通りでの建設予定地の取得と異常なディスカウントなどの厚遇に通じる特別扱いでした。このような厚遇と特別扱いには政治家や官僚の暗躍や画策が疑われますが、同時にその背景には日本会議を基盤にした籠池理事長の人脈と思想的な結びつきがあり、広告塔としての安倍首相夫妻の「御威光」があったのではないでしょうか。
 一連の経過を見れば、皆で力を合わせて安倍教育改革のモデルケースである森友学園を盛り立てていこうとする共通の意思を読み取ることができます。そしてこの共通の意思を、安倍夫妻も共有していたことは疑いありません。


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