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7月4日(火) 驚天動地の結果を生み出した都議選によって動き始めた政治の地殻変動 [選挙]

 都議選では「都民ファーストの会」が追加公認を含めて55人を当選させました。他方で、これまで都議会第1党だった自民党は23議席というかつてない歴史的大惨敗に終わりました。
 この結果はかつてないもので、まさに驚天動地ともいうべき出来事だったと言わなければなりません。この激震によって、日本政治の地殻変動が始まろうとしています。

 大勝利を手にした小池都知事は、「都民ファーストの会」の代表を辞任しました。後任には野田数知事特別秘書が復帰し、小池さんは以前務めていた特別顧問に戻りました。
 「選挙のためだけに代表になったのかと思う。(前任の代表だった)野田数氏が代表のままでは、大勝はできなかっただろう」と、自民党の都議が批判する通り(『朝日新聞』7月4日付)、小池さんの代表就任は小池人気を議席に結びつけるための方策でした。選挙が終わり、当初の目的を達成したために、代表を交代したのでしょう。
 また、「二元代表制」を損なうとの批判を避けるためでもあり、玉石混交の「小池チルドレン」が問題を起こした場合、そのとばっちりを避けるための措置でもあります。さらには、来る衆院選で「日本ファーストの会?」を立ち上げて国政に進出できるようにするための布石という可能性もあります。

 今回の都議選ほど自民党が選挙の恐ろしさを実感したことはなかったにちがいありません。地殻変動によって地割れが生じ、奈落の底に落ち込んでいくような恐怖を味わったのではないでしょうか。
 「THISイズ敗因」という言葉が飛び交っていますが、正確には「THISイズA敗因」と言うべきでしょう。敗因を生み出した「戦犯」はT(豊田真由子)、H(萩生田光一)、I(稲田朋美)、S(下村博文)の4人だけではなく、何よりも、A(安倍晋三)という「大戦犯」がいるからです。
 今回の歴史的惨敗は、政治の私物化や憲法無視の国政運営、疑惑隠しや暴言などの自民党全体に対する断罪、疑惑の中心にいて強権的な政治運営を行ってきた安倍首相に対する不信任、それに昨年の都知事選から小池知事と対立し続けてきた自民党都連への批判という三つの敗因が積み重なって生じました。今日の『朝日新聞』の多摩版には、「自民支持者の静かな怒りを感じた」「(相次ぐ不祥事や疑惑に)静かにあきれていたということだろう」という自民党とその支持者の声が紹介されていますが、怒ったりあきれたりした対象は、先ずは東京都連、そして自民党、さらには安倍首相だったのではないでしょうか。

 これに加えて、自民党の歴史的惨敗を生み出したもう一つの重要な敗因があります。それは公明党の裏切りでした。
 通常国会最終盤に、会期を延長せず参院法務委員会での採決を省略して「中間報告」という禁じ手を用いて共謀罪法案を強行採決したことが安倍政権の強権的な国会運営を象徴するものとして大きな批判を呼びましたが、会期延長の断念も公明党が委員長だった委員会での採決省略も、いずれも公明党への配慮でした。つまり、自民党は公明党に配慮したために批判の矢面に立つことになったのです。
 選挙本番では、公明党は自民党ではなく「都民ファーストの会」を支援し、公明党の支えを失たった自民党は1人区や2人区だけでなく、3~5人区でも苦戦することになりました。『毎日新聞』が報ずるところによれば、「自民は共産や民進と最下位当選を争うケースが目立」ち、「3~5人区の15選挙区での自民の当選者は7人で、13人が次点、当選者は共産の13人を下回」り、「都民ファーストの会」とともに上位当選した公明党に蹴落とされてしまったということです。

 これに対して、共産党は最後の1議席に滑り込むという形で17議席から19議席に増やしました。前回の都議選では8議席から17議席に倍増していますから2回連続での増加であり、これは32年ぶりのことになります。
 「都民ファーストの会」が大量当選するというポピュリズム選挙の嵐が吹き荒れたにもかかわらず、その大風に吹き飛ばされることなくこれだけの成果を上げたことは大きな成功でした。これは公明党と同様、強固な組織的基盤を持っている共産党の強みが発揮されたためですが、無党派層の投票先でも「都民ファーストの会」に次ぐ2位ですから、組織の力だけではない幅広い支持層を獲得した結果でもあります。
 共産党が成功したのは、地域などに根を張った強固な組織力だけでなく、「森友」「加計」問題などでの調査と追及、アベ政治に対峙し続けてきたブレナイ政治姿勢などの実績、9条改憲阻止やアベ政治への批判などの国政上の争点も掲げた選挙戦術、都政の重要課題では豊洲移転に反対して築地再整備を掲げる唯一の政党だったという政策的な立場などが積み重なったためであると思われます。このような、国政上の実績、選挙戦術、都政政策などの点で独自の優位性を発揮し、同時に安倍首相に反発し最もきついお灸を据えたいと思っている都民の支持を集めることにも成功したということでしょう。

 共産党ほどきつくはないけれど軽いペナルティを科したいと考えた自民党支持者や無党派層も沢山いたはずです。これらの人たちにとって、恰好の「受け皿」となったのが「都民ファーストの会」でした。
 このような「受け皿」を提供することができれば、今回と同様の地殻変動を国政レベルでも引き起こすことができるにちがいありません。それを、どのような形で提起し、国民に認知してもらうかが、これからの課題になります。
 強固だと見られていた安倍内閣支持の地盤が崩れ始めました。今後も支持率の低下が続けば、遅かれ早かれ日本政治全体の変動を引き起こすことになるでしょう。

 安倍首相は「反省」を口にしながら、臨時国会を早く開いて疑惑を説明する姿勢も示さず、稲田防衛相に責任を取らせることもなく、なお強気で改憲スケジュールを強行しようとしています。この程度では、まだ足りないということなのでしょうか。
 いつも通り「経済最優先」をアピールして政権の再浮揚を図ろうとしていますが、そう簡単にはいかないでしょう。都議選で問われたのは安倍首相自身の政治姿勢であり、政治手法そのものなのですから。
 安倍首相の「反省」を実際の行動によって示し、国民に納得し理解してもらうことでしか、信頼を回復することはできません。国民の不信に真正面から答えようとしない限り、さらなる逆風に超面するだけではないでしょうか。

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