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11月7日(火) 安倍政権ときっぱり対決 野党共闘 新段階 [論攷]

〔以下のインタビューは、『しんぶん赤旗』日曜版2017年11月5日付、に掲載されたものです。〕

 総選挙では安倍政権与党の自民、公明両党が300議席を超える一方、立憲野党が前進しました。総選挙結果をどう見て、「改憲」の動きにどうたいじするのか―。政治学者で法政大学名誉教授の五十嵐仁さんに聞きました。     
田中倫夫記者

 総選挙 市民の自発的参加広がる
 世論で改憲勢力を少数に追い込む

 自公が300以上の議席を再び得たことは非常に残念で警戒すべきことです。同時に、立憲民主党の躍進など、立憲野党勢力が全体として前進したことに注目する必要があります。
 これは本格的な市民政治の台頭で、市民と野党の共闘が新たな段階に達し、戦後日本政治の新しい局面を切り開いたと言えます。

 生みの苦しみ

 日本共産党を含む野党が総選挙で選挙協力をしたのは史上初でした。自らの候補者を降ろしてまで、野党共闘を追求した共産党は議席を減らしたものの、激動の中で新局面を開くための「生みの苦しみ」であり、次に必ずつながると思います。
 2015年の安保法制=戦争法の強行に対し、市民と野党の連携が始まりました。16年参院選では32の1人区全てで野党統一候補ができ、11選挙区で勝利しました。
 今回は野党第一党が公示日直前に「消滅」するという政党政治の危機の中、市民の声に押されて立憲民主党が結成されました。市民連合が政策合意を仲立ちし野党共闘を後押しします。共産党も積極的に対応し、短期間に67選挙区で候補者を取り下げ、249の小選挙区で候補者を一本化してたたかいました。
 選挙の結果、与野党の力関係には大きな変動がありませんでしたが、野党第一党が立憲民主党になったのは重要な変化です。
 これは、良い意味での「左派ポピュリズム(大衆主義、人民主義)」の発生で、既存の政党・政治家に政治を任せてはいられないという人々の自発的政治参加の動きです。共産党の献身的な候補者調整や市民と野党の共闘の蓄積がなければ起きなかったと思います。
 こうした動きは、米大統領選でのサンダース現象や、英総選挙でコービン氏が率いる労働党が躍進したことなどとも共通するものがあります。
 
 「希望」の失速

 もうひとつ重要なのは、希望の党が失速し、自民党と希望の党による「保守二大政党制」が破たんしたことです。この2党には、外交や安全保障では基本的な違いがありません。
 しかも、もともと保守二大政党が成立するほど、日本社会の保守の基盤は広くない。有権者の民意はもっと多様です。従来の支持層に無党派層を積み増さないと勝利できません。希望の党の小池百合子代表は、時代の流れと政治意識の分布を見誤りました。
 
 自公も希望も一枚岩ではない

 総選挙の街頭演説で、安倍首相はほとんど「憲法改正」に触れませんでした。にもかかわらず選挙に勝ったら、改憲への動きを加速させる構えです。
 選挙の結果、改憲勢力は国会の8割を占めたといわれますが、ことはそう単純ではありません。共同通信の当選者アンケートでは、安倍9条改憲に公明党では賛成、反対がいずれも24%。希望の党では63・2%が反対、20年の改正憲法施行にも71・1%が「反対」と答えています。世論調査でも国民の多数は「安倍9条改憲」には否定的です。
 安倍改憲は憲法理念を破壊する「壊憲」です。「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」という3大理念を変更することは「新憲法の制定」を意味するからです。
 新たに自衛隊の存在を加えたら、「後法優先の原則」から、9条1項(戦争の放棄)、2項(戦力の不保持、交戦権の否認)は空文化することになります。しかも、ここで書きこまれる「自衛隊」は集団的自衛権行使が容認された自衛隊です。朝鮮半島危機に日本が巻き込まれる危険性が高まる。絶対に許してはなりません。
 改憲勢力の中にある違いと矛盾に目を向け、「安倍9条改憲」反対の一点で世論を広げ、彼らを孤立させて少数派に追い込んでいくことが必要です。

 勝利の方程式

 野党はバラバラでは負け、統一すれば勝てる。活路は共闘にしかありません。これが「勝利の方程式」です。
 「見返りは民主主義」(日本共産党の志位和夫委員長)、「草の根から」(立憲民主党の枝野幸男代表)というキーワードを生かしながら、下からの新たな統一戦線の基盤づくりに努め、民主主義を活性化することが大切です。
 共闘の信義を捨てるのか、犠牲をいとわず共闘の信義を守りぬくのかが問われた総選挙でした。どの政党が歴史の試練に耐え、合格したかは明らかでしょう。

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