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12月29日(金) 2017年の仕事 [日常]

 2017年の仕事納めになりました。年初に『活路は共闘にあり―社会運動の力と「勝利の方程式」』という新著を刊行し、「共闘の伝道師」として、講演で全国を走り回った1年でした。
 北海道と沖縄以外の地方に、お邪魔させていただきました。この場を借りて、お世話になった皆さんにお礼申し上げます。ありがとうございました。
 夏の都議選での大波乱と突然の解散・総選挙に翻弄された年でもあります。その嵐のような2017年も、間もなく幕を閉じようとしています。

 さて、 例年のように、1年間の仕事をまとめさせていただきたいと思います。今年は例年にも増して執筆や講演の依頼が多く、拙著を1冊、論攷・インタビュー・談話・メッセージ・書評・講演記録などが38本、講演・報告などが73回、発言・街頭演説・あいさつなどは17回に上りました。
 総選挙直前に左腕の上腕骨最上部の丸くなっている大結節部をはく離骨折し、その下にも数本のヒビが入り、手首にもヒビが入ったために左腕が使えず、多くの方にご迷惑をおかけしてしまいました。この機会に、お詫びさせていただきます。
 とはいえ、それでも講演を休むことはありませんでしたが。

(1)論攷・インタビュー・談話・メッセージ・書評・講演記録など(38本)

・「メッセージ」『非核の政府を求める会ニュース』第315号、2016年12月15日・2017年1月15日合併号
・「見えた 勝利の方程式」『女性のひろば』No.455、2017年1月号
・「アメリカ大統領選挙でのトランプ当選をどう見るか」『はちおうじ革新懇話会』第72号、2016年12月25日付
・「2017年を飛躍の年に―アベ暴走政治の破綻と政治革新の展望」『学習の友』No.762、2017年2月号
・「政治転換の機は熟している」日本平和委員会『平和新聞』第2128号、2017年1月15・25日合併号
・「野党共闘の前進をめざす春闘」『季刊 金属労働研究』通巻第141号、2017年1月号
・「市民と野党の共闘でアベ政治の流れをかえよう!」川崎区革新懇「11.2講演と交流のつどい」記録集
・「安全保障法制・憲法改正・外交・基地問題」『大原社会問題研究所雑誌』No.700、2017年2月号
・「『勝利の方程式』を解く」『全国革新懇ニュース』第387号、2017年3月号
・「野党共闘で『勝利の方程式』―新潟県革新懇全県のつどい」『三條新聞』2017年4月17日付
・「勝利の方程式学ぼう」『しんぶん赤旗』2017年4月17日付
・「法大名誉教授が政権交代を訴え」『山梨日日新聞』2017年4月23日付
・「『壊憲』より『活憲』を」『下野新聞』2017年5月4日
・「情勢の特徴と勝利の方程式」『全国革新懇第37回総会記録集』2017年5月20日・東京
・「ポピュリズム―民主主義の危機にどう向き合うか」『しんぶん赤旗』5月28日付
・「安倍暴走に審判の好機」『しんぶん赤旗』2017年6月27日
・「都議選結果 安倍政治への怒りの表れだ」『連合通信・隔日版』№9212、2017年7月4日付
・「いま闘うことは、いちばん良い時代を生きてきた人間の責任」『ねっとわーく京都』No.343、2017年8月号
・「「安倍一強」崩したマグマ」『東京民報』第1994号、7月9日付
・「都議選結果が示したもの アベ暴走政治は止められる」『全国商工新聞』第3273号、2017年7月24日付
・「共謀罪、「森友」「加計」学園疑惑国会の総括と今後の課題」『学習の友』No.768、8月号
・「「政治の劣化」「行政の劣化」とは何か―どこに問題があるのか、どうすべきか」『法と民主主義』No.520、2017年7月号
・「「こんな人たち」の怒りが噴出した都議選」『東京革新懇ニュース』第424号、2017年8月5日付
・「共闘のレベル上げてこそ」『しんぶん赤旗』8月24日付
・「「水に落ちた安倍は打て」―安倍内閣打倒に向けての追撃が始まった」『日本科学者会議東京支部つうしん』No.599、2017年9月10日号
・「対談 『安倍改憲』を阻む道と『なくす会』の運動」『NO消費税』第313号、2017年9月号
・「政治転換の機は熟した「勝利の方程式」で追撃開始」『神奈川革新懇ニュース』10月号
・「裏切らない党の真価」『しんぶん赤旗』10月6日付
・「「劇場」選挙に惑わされず、市民と立憲野党の力で歴史を変えよう」『全国革新懇ニュース』第393号、2017年10月号
・「活路は共闘にあり!」『しんぶん赤旗』2017年11月4日付
・「安倍政権ときっぱり対決 野党共闘 新段階」『しんぶん赤旗』日曜版2017年11月5日付
・「共産党の「犠牲バント」で「得点」を挙げた立憲民主党」『東京革新懇ニュース』第427号、2017年11月5日付
・「混乱のるつぼの中から沸き上がった希望と展望」日本科学者会議の『東京支部つうしん』No.601、2017年11月10日付
・「共闘こそが活路」『平和新聞』2017年11月5・15日合併号
・「衆院選を教訓に、市民と立憲野党の共闘の深化を」『法と民主主義』No.523、2017年11月号
・「総選挙の結果と安倍9条改憲をめぐる新たな攻防」『月刊 憲法運動』通巻466号、2017年12月号
・「試練を乗り越えて刷新された野党共闘」2017年・勤労者通信大学・通信『知は力 基礎コース6』
・「逆流を乗り越え試練に耐えて真価を発揮した『勝利の方程式』」『地域・職場・青年革新懇全国交流集会㏌愛知 記録集 いま、わたしたちが政治を変える』

(2)講演・報告など(73回)

・1月20日:新婦人町田支部「市民と野党の共闘で政治を変えよう」
・1月27日:八王子労連春闘学習会「17春闘をめぐる情勢と課題」
・2月4日:世田谷区職労春闘学習会「17春闘の情勢・特徴と課題」
・2月11日:宮崎第81回憲法と平和を考えるつどい「暴走の政治からどう抜け出すか―憲法と平和を守るために」
・2月18日:政治を変えよう!いなぎ市民の会「市民と野党共闘の到達点と政策づくり」
・2月21日:戦争させない江戸川の会「日本と今を縦横に語る―トランプと安倍政治・安保&日米同盟・野党共闘」
・2月22日:川越地方・地域総行動「暮らしと憲法を守るために野党共闘の前進を」
・3月7日:神奈川県労働者学習協会「緊迫する情勢と学習活動の重要性―「勝利の方程式」を正しく解くために」
・3月16日:鹿児島県春闘共闘委員会「17春闘をめぐる情勢の特徴と課題」
・3月19日:三多摩青年合唱団「歌声は平和の力―危機の時代を生き抜くために」
・3月20日:東京憲法会議憲法施行70年・憲法講座「市民と「立憲野党」の共闘で憲法が活きる日本に!!―社会運動の力と「勝利の方程式」」
・3月27日:大田革新懇「区民と野党の共闘めざす春を呼ぶつどい―激動する日本、希望の道、勝利の方程式を語る」
・4月1日:選挙で変える4区船橋市民の会・発足集会「アベ政治の行き詰まりと「市民連合」への期待」
・4月13日:多摩区革新懇・麻生区革新懇「政治の危機と「勝利の方程式」」
・4月14日:渋谷9条の会「トランプ・安倍 同盟にNOを!―貧しいものから死んでゆく」
・4月16日:新潟県革新懇「新しい変革の波と「勝利の方程式」―草の根からの革新運動に触れながら」
・4月22日:山梨革新懇「”勝利の方程式”が見えてきた―市民と野党の共闘で希望ある政治の実現を」
・4月28日:八王子合同法律事務所「憲法施行70年・憲法の輝く明日へ―これまでの運動と今後の展望」
・5月3日:栃木革新懇5・3憲法記念日集会「安倍政権にさよならを!―市民と野党の共闘で勝利の方程式を解く」
・5月6日:山梨県北杜市地域で人権・『共謀罪』を考える会「『共謀罪』……憲法が危ない!―狙われているのはあなたの良心」
・5月13日:全日空職場革新懇「8時間働いて普通に暮らしたい―労働時間規制の法制化の実現を」
・5月14日府中革新懇「激動の情勢切り開く市民と野党の共闘」
・5月25日:世田谷革新懇「世界を変える草の根からの共同―日本の運動はどこまできているか」
・5月28:革新の会しが「政治の混迷と危機打開への道―活路は共闘にあり」
・6月7日:年金者組合八王子支部「豊洲移転計画の闇―見直しへ動かした市民運動」
・6月9日:鎌倉・市民アカデミア「日本政治の表と裏」
・6月10日:岩槻革新懇「憲法とくらしを守る市民と野党の共同を」
・6月12日:戦争法の廃止を求める宗教者の会「国政を変えるカギはどこにあるか」
・6月17日:京都革新懇「安倍政権打倒の「勝利の方程式」―革新懇運動の役割とは何か」
・6月24日:埼玉15区市民の会「市民と野党の共闘で 安倍政権の憲法改悪を許さない」
・7月8日:山梨革新懇郡内連絡会「勝利の方程式”が見えてきた―市民と野党の共闘で希望ある政治の実現を」
・7月9日:練馬革新懇「許してなるものか!アベ“壊”憲―施行70年 日本国憲法を今こそ生かそう!」
・7月15日:東京都障害児学校教職員組合「私たちは戦争へのいかなる道も許さない―活路は共闘にあり」
・7月16日:新潟市秋葉区9条の会「市民と野党の共同で 憲法9条を守りぬこう」
・7月17日:許さない!戦争法 オール板橋行動「都議選結果と市民運動の課題」
・7月18日:三多摩革新懇世話人会「都議選後の情勢をどうとらえるか―安倍政権打倒に向けての追撃戦が始まった」
・7月22日:島根革新懇「見えてきた「勝利の方程式」―市民と野党の共闘の新たな一歩を」
・7月23日:鳥取県革新懇・鳥取市革新懇「見えた!「勝利の方程式」―市民と野党の共闘で新たな一歩を」
・7月25日:兵商連「激動の情勢にどう立ち向かうか」
・7月29日:徳島革新懇「活路は共闘にあり―市民と野党の共同で希望ある政治の実現を」
・7月30日:愛媛革新懇「活路は共闘にあり―市民と野党の共同で希望ある政治の実現を」
・8月5日:新座革新懇「活路は共闘にあり―市民と野党の共同で政治を変えよう」
・8月26日:京建労主婦の会「市民と野党の力で歴史を変えよう」
・8月30日:東京土建調布支部「憲法9条を守るには 護憲と活憲の両方が必要だ」
・9月2日:神奈川革新懇「激動の情勢と革新懇運動の役割」
・9月3日:横浜市中区革新懇「激動の政治情勢と市民・野党共闘の役割」
・9月9日:北九州革新懇「市民と野党の共闘で政治革新の道を切り開こう」
・9月10日:船橋革新懇「市民の行動+野党の共闘は 勝利の方程式」
・9月23日:東京自治労連「安倍9条改憲No! 「憲法を活かす全国統一署名」の意義と課題」
・9月24日:なかいた・ときわ台9条の会「安倍9条改憲の狙いとその背景」
・10月1日:群馬革新懇「活路は市民と野党との共闘―政治の現状と打開への展望」
・10月8日:小金井革新懇「10月解散・総選挙を読み解く!―解散・総選挙に関する諸問題と市民・野党の共闘の課題」
・10月9日:みずほ革新懇「〝本気の共闘〟に未来」
・10月11日:神奈川県学習協会「安倍「改憲」はどこまできているか」
・10月26日:市民連合あだち「総選挙の結果と市民連合の課題」
・10月30日:私鉄「連帯する会」「総選挙の結果と野党共闘の課題」
・11月4日:神奈川県レッド・パージ反対同盟「レッド・パージと日本の民主主義」
・11月4日:中原革新懇「政治的暴風の中でも前進した「市民と野党の共闘」」
・11月8日:三多摩法律事務所「総選挙後の改憲をめぐる情勢と私たちの課題」
・11月11日:労働者教育協会「今日の政党・政治運動―ポピュリズムとの関連をめぐって」
・11月12日:赤塚・成増九条の会「2020年の9条改憲施行を許さず―憲法の平和主義と立憲主義を守るたたかい」
・11月15日:三多摩革新懇世話人会「総選挙の結果と今後の展望について」
・11月19日:全国革新懇全国交流集会「逆流を乗り越え試練に耐えて真価を発揮した『勝利の方程式』」
・11月23日:鷺宮反核・平和のつどい「憲法9条に自衛隊を 書きこむって??―私たちはどうする?」
・11月25日:安倍9条改憲NO!上田地域市民アクション「安倍9条改憲の危険と止める力」
・11月26日:山形県革新懇「総選挙の結果と革新懇の課題」
・11月30日:自治労連2018年国民春闘討論集会「総選挙の結果と安倍9条改憲をめぐる闘いの展望」
・12月1日:9条の会八王子市内連絡会「9条改憲NO!の国民大運動を」
・12月3日:越谷革新懇「総選挙の結果と今後の市民運動の役割」
・12月5日:スイートピーお喋り会「第2次世界大戦の歴史から何を学ぶか―アジア・太平洋地域における戦争の教訓」
・12月10日:保団連東海ブロック「総選挙結果を受けて、日本社会の行方を考える―今後の市民運動の役割に触れて
・12月15日:千葉市革新懇「安倍9条改憲阻止に向けての革新懇運動の役割」
・12月16日:富山革新懇「総選挙の結果とこれからの革新懇の課題」

(3)発言・街頭演説・あいさつなど(17回)

・1月13日:八王子労連新年のつどいあいさつ
・1月17日:農民連第22回大会へのあいさつ
・1月21日:東京革新懇総会での発言・新春のつどいで乾杯の音頭
・2月26日:鈴木ゆうじ新春のつどいでのあいさつ
・3月4日:東京革新懇事務局(室)長会議でのあいさつ
・5月19日:都議選支援グループへのお礼のあいさつ
・5月20日:全国革新懇総会での発言
・5月23日:都議選決起集会での清水ひで子候補への激励のあいさつ
・5月27日:労働者教育協会総会での発言
・6月11日:ノーウォー八王子アクションでのスピーチ
・6月25日:都議選での清水候補応援演説
・8月13日: 都議選での清水候補の当選を祝う会でのあいさつと乾杯の音頭
・9月16日:ノーウォー八王子アクションでのスピーチ
・10月15日:浦和で街頭演説
・11月3日:国会前包囲集会で演説
・12月8日:民主青年同盟第41回大会へのあいさつ
・12月23日:西東京市民パレード・特別発言

 週末の土日は、現役時代より忙しいほどでした。その代わり、平日は休んでおりましたが。
 憲法9条を守り、戦争への道を阻止し、平和で安心して暮らせる国にしたい。普通に働けばまともな暮らしができる当たり前の社会にしたい。セクハラやパワハラに苦しむ人、米軍機からの落下物などの被害者、在日の方やLGBTなどの少数者・弱いものがバッシングされたりいじめられたりしない世の中にしたい。
 そのためには、政治を変えて社会を立て直すことが必要です。各地で芽を出してきた草の根からの多様な共闘と統一の力を育て、実らせていくことこそ、唯一の活路ではないでしょうか。
 来る2018年こそ、新しい日本への扉を開く1年にしたいものです。皆様、良いお年をお迎えください。

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12月27日(水) 試練を乗り越えて刷新された野党共闘 [論攷]

〔以下の論攷は、2017年・勤労者通信大学・通信『知は力 基礎コース6』に掲載されたものです。〕

 はじめに

 10月22日投票の総選挙は自民党が過半数を制し、自公の連立政権の継続と安倍首相の続投が決まりました。その特徴を一言で言えば、「大義なき解散」と「信義なき再編」です。解散に当たって、安倍首相は明確な「大義」を掲げることができず、野党は小池百合子東京都知事による新党「希望の党」の立ち上げによって翻弄され、「信義なき再編」による大混乱に陥りました。
 今回の総選挙の最大の教訓は、「活路は共闘にあり」ということがまたもや証明されたということにあります。民進党が分裂して新党「立憲民主党」が登場し、大きく躍進して唯一の勝者となりましたが、それは市民と立憲野党との共闘の蓄積がなければ不可能でした。そのあおりを食う形で共産党が埋没することになり、議席を減らして後退したのは残念でしたが、野党共闘の維持と刷新のための「生みの苦しみ」だったのではないでしょうか。
 総選挙直前に野党第一党が姿を消すという逆流が発生したにもかかわらず立憲勢力全体が前進できたのは、共闘に向けての市民と立憲野党との地道な努力と、そのために候補者を降ろした共産党の自己犠牲的な対応のお陰でした。共闘せずバラバラでたたかえば負けるけれども、共闘すれば勝つ展望を切り開くことができるのです。
 野党共闘への逆流が発生し、混乱のるつぼの中から新たな共闘の姿が浮かび上がった総選挙でした。その意味と教訓を明らかにし、今後の展望を探ってみたいと思います。

 維持された政権基盤

 まず自民党です。今回の総選挙で自民党が獲得したのは284議席で、単独過半数を維持しました。ただし、これは比例代表東海ブロックで立憲民主党の候補者が足りなかったために1議席加算されたものです。本当であれば283議席で、改選を1議席下回っています。前回の14年総選挙で獲得した291議席と比べれば、8議席減となります。定数が10削減されていますから、ほぼ現状維持です。
 自民党の有権者対比での得票率(絶対得票率)は小選挙区で約25%、比例代表でも約17%と横ばいになっており、微増したにすぎません。小選挙区で有権者の4分の1ほどの支持しかないのに4割台の得票率で6割台の議席を獲得したのは、野党がバラバラであるために「漁夫の利」を占めることができたからです。
 このような小選挙区制のカラクリを打ち破るために野党は共闘を模索してきましたが、選挙直前の希望の党結成を契機に共闘が分断されてしまいました。いわば野党は「オウンゴール」を繰り返し、自民党はこの「敵失」に助けられて「得点」を重ねることができたのです。
 また、北朝鮮危機への国民の不安、外見上の実感なき景気回復、野党の混乱への嫌気と不信、教育費の無償化や子育て支援という「疑似餌」への期待感などもあって、自民党は比例代表でも票を伸ばしています。この結果、政権基盤は維持されました。安倍首相がめざす9条に自衛隊を明記する改憲(安倍9条改憲)路線がリセットされ、容易ならざる危険水域に入ったことは明らかです。
 他方、もう一つの与党である公明党はかつてない敗北を喫しました。当選は29議席にとどまり、与党の地位を失った2009年総選挙以来の少なさです。改選議席から5議席減ですが、公示直前に1人離党していますから、事実上6議席の減少です。小選挙区で1人落選させ、比例代表でも初めて700万票を割り、2000年以来の最低となっています。
 この結果について公明党は、十分に存在感を示せなかったからだと総括しています。党内や支持団体である創価学会内では、安倍首相に追随しすぎたのではないかとして、「ブレーキ役」を果たしてこなかったことへの不満や反省があると言われています。

 明暗を分けた野党

 これに対して、野党は明暗を分けました。民進党は4つに分裂し、衆院議員は希望の党・立憲民主党・無所属の会に分かれ、参院議員と地方議員は民進党に残留しています。このうち、枝野幸男民進党代表代行が立ち上げた立憲民主党は改選15議席を3倍以上に増やして55議席と大きく躍進しました。
 他方、小池都知事が結成して「台風の目」と見られた希望の党は、改選57議席を下回る50議席にとどまりました。都議選の再現を恐れた前原誠司民進党代表による「なだれ込み」路線が小池都知事による「排除の論理」によって不発に終わり、それまで吹いていた「追い風」が「逆風」に変わってしまったからです。
 小池都知事による「劇場型選挙」の混乱と立憲民主党の結成によって大きな影響を受けたのは他の野党も同様です。日本維新の会代表の松井大阪府知事は大村愛知県知事や小池都知事地ともに「三都物語」を演出して小池人気への便乗を図ろうとしました。しかし、これは不発に終わり、改選14議席に対して11議席にとどまっています。
 野党の中でも、特に大きな打撃を受けたのは共産党です。改選21議席を9議席下回る12議席となって、大きく後退しました。旧民主党の裏切りに失望して離れた支持者や革新系無党派層の支持を集め、共産党は2013年以降、都議選と参院選、14年の衆院選、15年の参院選、そして先の都議選と、大型選挙での5連勝を続けてきました。しかし今回、これらの支持者は共産党を離れて立憲民主党になだれ込んだように見えます。
 加えて、67小選挙区で候補者を取り下げて83小選挙区で候補者を擁立しなかったために、政見放送や選挙カーの運行台数などで制約が生まれました。選挙戦の序盤で市民と野党の共闘の立て直しのために小選挙区対応に追われ249選挙区で一本化しましたが、他方で比例代表での取り組みが手薄になったかもしれません。公示以降、比例代表に力を入れるようになりましたが、遅きに失したようです。

 野党共闘の再生と刷新

 こうして、野党内の状況は大きく変わりました。しかし同時に、そのことによって新たな局面が切り開かれ、市民と立憲野党との共闘も大きく刷新されています。これは今後に望みを託すことのできる重要な成果でした。
 第1に、立憲民主党の立ち上げと躍進、希望の党に参加しなかった無所属候補などの当選のために、市民と立憲野党との共闘の経験と蓄積が大きな威力を発揮したことです。新党の立ち上げは「枝野立て」という市民の声に押されてのものでした。それを支え、躍進を実現したのも共闘の力です。とりわけ、沖縄、北海道、新潟、岩手、長野、佐賀などでは、市民と立憲野党の共闘が維持され、重要な成果を上げました。
 第2に、このような形で登場した立憲民主党が野党第一党になったことです。一連の再編劇によって立憲民主党は旧民主党や民進党にへばりついていた「負のイメージ」を払拭し、政策を前進させることに成功しました。市民や他の立憲野党と共に歩むことのできる新たな野党第一党が登場し、「反安倍」の有力な「受け皿」となる可能性が出てきたのです。安倍首相が「信任された」とばかりに強引な政治運営を続ければ、「他よりはよさそう」という消極的な支持が離れ、立憲民主党に吸収されていくにちがいありません。
 そして第3に、共闘立て直しの過程で相手とのリスペクトや信頼、新たな人間関係や深い付き合いが生まれたことです。逆流に直面した市民は直ぐに態勢を立て直して政策合意や可能な形での共闘の実現に努めました。自分の頭で考えて事態の変化に対応し、新しい経験と実績を積み重ねてきたのです。その経験と教訓を大切にし、国政選挙だけでなく地方選挙や安倍9条改憲阻止などの大衆運動においても共闘を広げ、活かしていくことが重要です。

 安倍9条改憲阻止に向けて

 総選挙の結果、「改憲勢力」とされる議員は3分の2を超えました。安倍首相も改憲発議に向けて「合意形成をするよう努力」する考えを打ち出しています。自民党は党内での改憲論議を再開しました。今後、安倍首相のめざす9条への自衛隊明記をめぐって、激しい攻防が展開されることになるでしょう。
 この点で重要なことは、第1に、「改憲勢力」は3分の2を越えていても、安倍9条改憲論は必ずしもそうではないということです。憲法96条に基づく通常の改憲論と、憲法の平和主義原理を破壊する安倍9条改憲論を区別し、後者を孤立させて改憲発議の断念に追い込んでいかなければなりません。これが当面の目標です。
 第2に、「改憲勢力」とは言っても中身は多様で、安倍9条改憲の前途にはいくつものハードルがあるということです。まず、自民党内がまとまるのかという問題があります。次に、与党の公明党が同調するかという壁もあります。さらに、野党第1党の立憲民主党をはじめ、希望の党や維新の会を巻き込めるのかという障害もあります。これらのハードルを引き上げることができれば、安倍9条改憲を阻止することができます。
 そのためには第3に、9条改憲に反対する世論を広げ、それを目に見えるようにしていくことが重要です。改憲のピンチはチャンスでもあります。憲法にたいする報道が増え、国民の関心が高まるからです。このチャンスをとらえて国民的な学習運動を組織し、現行憲法の意義や重要性、安倍9条改憲の問題点や危険性を明らかにしなければなりません。安倍9条改憲NO!市民アクションが提起している3000万人署名の意義と重要性はますます高まりました。これを核に国民的な運動を盛り上げれば、改憲に向けての安倍首相の野望を打ち砕くことは十分に可能です。

 野党共闘の弁証的発展

 今回の総選挙は政権を争う衆院選で市民と立憲野党の共闘が試された初めてのケースになりました。しかし、民進党の前原代表の「なだれ込み」路線によって、思いもかけぬ逆流に直面し、かつてない試練にさらされることにもなりました。この逆流と試練によって、野党共闘はさらに質の高いものとして再生しただけでなく、弁証法的な発展を遂げ刷新されたように思われます。
 そもそも選挙での野党共闘は、70年代に革新自治体を生み出した社共共闘として出発しました。その後、1980年の「社公合意」という形で共産党が外されることになります。これは一種の「アンチ・テーゼ」でしたが、それを乗り越えて「ジン・テーゼ」の段階が始まります。
 2015年安保法制反対運動での「野党は共闘」という声に押され、2016年の「5党合意」によって野党共闘が再生・復活するからです。ただし、それは市民と立憲野党との合意によるものでした。社共共闘の単純な復活ではなく、発展した内容を含んでいたのです。
 このような共闘は、その後、参院選1人区での共闘によって試行され、新潟県知事選や仙台市長選など首長選挙にも拡大されていきます。そして、今回の逆流と試練によって、総選挙直前にまたもや一種の「アンチ・テーゼ」に直面しました。
 それを乗り越えての「ジン・テーゼ」が、総選挙での野党共闘の再生と刷新です。共闘に消極的で安倍9条改憲に妥協的な民進党から共闘に積極的で安倍9条改憲に反対する立憲民主党へと、野党第1党が変わりました。量的に減少しましたが、質的には強化されたと言えます。
 実は、量的にも強化された面があります。旧民主党との比較では、立憲民主党と希望の党とを合わせた得票は、14年総選挙より小選挙区で425万票増、比例代表で1098万票増となっています。民進党は分裂することで得票を増やしたのです。また、比例代表の得票数で比べれば、自民・公明・日本のこころの合計得票は2563万票ですが、立憲・希望・共産・社民では2610万票になっています。
 総選挙後、朝日新聞は立憲・希望・共産・社民・無所属が共闘すれば63選挙区で逆転すると試算し、毎日新聞も野党候補が一本化すれば84選挙区で逆転する可能性があると報じました。これらの予測は、今回の選挙でも与党より野党の合計得票の方が多くなっていた事実を背景にしたものです。

 むすび

 野党は共闘すれば勝つことができるのです。まさに「活路は共闘にあり」ということです。同時に、共闘して活路を模索することでしか、勝利への展望はひらけません。
 歴史は一直線ではなく、ジグザグに進みます。ときには逆流が生じ、試練にさらされることもあるでしょう。問題は、この逆流に流され諦めてしまうのか、という点にあります。それを乗り越えれば、鍛えられ新たな力を得ることができます。
 今回の選挙で市民と立憲野党の共闘は大きな逆流に見舞われました。共産党の議席減という犠牲を払いながら、それを何とか乗り越えて立憲野党全体の前進を勝ち取ることができました。
 そのことに確信を持ち、歴史を作るという主体的で能動的な視点から共闘の教訓を学ぶことが必要です。そのような学習を通じて、共闘の意義と重要性を心に刻み実践していきましょう。このようにして「知」を「力」とすれば、新たな展望を切り開くことができるにちがいありません。

*テーゼ(正)、アンチ・テーゼ(反)、ジン・テーゼ(合)は弁証法の言葉で、これらの言葉を組み合わせて、発展の過程を表現しています。テーゼがあると、そこにはかならず対立物であるアンチ・テーゼ(反)がでてきます。発展とは、この対立・葛藤を乗り越えて、両者の内容をふくみつつ、より高い質をもったテーゼ――これが「ジン・テーゼ(合)」――があらわれることです。テキスト(56~68ページ)では、これらの概念を使わずに、同じ発展の過程を説明しています。

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12月26日(火) 安倍9条改憲の前にすでに生じているこれだけの実害 [憲法]

 安倍9条改憲は極東の平和と日本の安全にとってプラスになるどころか大きな脅威となり、外交・安全保障の面でも重大な失敗をもたらすことになるでしょう。それは憲法理念を破壊する百害あって一利なしの「壊憲」にほかなりませんが、実行される前にすでに多くの実害が生じています。

 第1に、安全に対する脅威の拡大と国民の不安の増大です。政治の要諦は人々の暮らしを守り、安心して毎日を送ることができるようにすることですが、安倍政権はこの最も重要な責任を果たしていません。
 安保法制の制定に際して、安倍首相は日米同盟の絆が強まれば日本周辺の安全保障環境が改善されると請合いましたが、実態は全く逆になっています。かえって、核・ミサイル実験の回数は増えるなど北朝鮮による反発と日本への敵視が強まり、国民の不安は高まるばかりではありませんか。
 安倍首相は米朝対立の激化を弱めるために説得や仲介の労をとろうとしないばかりか、「対話よりも圧力」を主張して北朝鮮との不和と対立を煽り立てています。今日の『毎日新聞』に、「戦前のような怖さを感じる」として、「安倍さんはできれば戦える自衛隊にしたいのだろう」という田原総一朗さんの言葉が出ていましたが、このような「怖さ」は国民の多くが感じていることではないでしょうか。

 内政面では将来への不安を高め、対外政策では戦争への不安を強めてきたのが安倍政権の5年間でした。このように、国民を安心させるのではなく不安に陥れてきたという点だけでも、安倍首相には為政者としての根本的な資質が欠落していると言わなければなりません。
 しかも、安倍政権の下で米軍との軍事的一体化が進み、在日米軍の訓練や集団的自衛権の行使のための日米合同軍事演習が拡大してきました。今日の『しんぶん赤旗』には、「今年国内で実施された陸上自衛隊と米軍による共同演習は、米軍参加が大幅に拡大し、海兵隊のMV22オスプレイが列島全域を飛行するなど、実戦を想定したものへ激化し……演習の拡大が地域の緊張を一層高めてい」ると指摘しています。
 ここで注目されるのは、航空自衛隊による米戦略爆撃機との共同訓練や海上自衛隊と原子力空母との米艦防護訓練などだけでなく、「陸上自衛隊」と「海兵隊」や「陸軍」との訓練も行われていたことです。演習に参加した主力部隊は「第4海兵連隊に配属された歩兵大隊」であり、それは「アジアでの緊急事態に対応する陸上戦闘部隊司令部」で、実施されたのは「長距離機動展開訓練」だったといいますから、日本に対する着上陸型侵攻への防御ではなく朝鮮半島などのアジア諸国での「陸上」戦闘を想定していることは明らかです。

 第2に、このような米軍と米軍基地の存在は基地周辺の地域、とりわけ沖縄での具体的な被害を生み出してきたという事実です。最近でも、オスプレイやヘリコプターの墜落、保育園や小学校への部品や窓の落下など、大事故に結びつく可能性のある事件が発生しました。
 2016年4月には沖縄県うるま市で元米海兵隊員の軍属が女性を殺害するなど、米軍人や軍属による犯罪も後を絶ちません。このような事件や事故こそ米軍の存在によって発生している現実であり、具体的な実害そのものではありませんか。
 日本共産党の赤嶺衆院議員の要求で防衛省が提出した資料によれば、在日米軍の兵士や軍属らによる事件・事故の総数は、旧日米安保条約が発効した1952年度から2017年9月末までで21万1104件、日本人の死者は1092人に上っています。この数は日米地位協定18条に基づく損害賠償のために防衛省が把握しているものです。

 1952年度以前と本土復帰前の沖縄は含まれず、被害者が損害賠償を請求しなかった事件も多数ありますから、実際にははるかに多いとみられています。在日米軍の存在によってこれだけの被害が生じてきたということを、どれだけの日本人が知っているでしょうか。
 また、地位協定18条に基づいて公務中の事件・事故に対して日本側が支払った賠償額は累計約92億円に上ります。実際の金額はさらに多いと見られていますが、このような費用も、思いやり予算と言われる米軍駐留経費ともに国民の税金から支払われているものです。
 1000人を上回る死者も約100億円に上る費用も、米軍基地がなく米軍が存在していなければ発生しなかったものです。これこそ、日米安保体制によって生み出されている実害そのものではありませんか。

 第3に、この間の安倍政権が進めてきた軍事力の拡大による国民生活の破壊という大きな問題もあります。第2次安倍政権になってから、武器輸出を解禁し、ODAの軍事転用を認め、民間企業の武器輸出の窓口を担う防衛装備庁を発足させ、大学や研究者を軍事研究に動員するために防衛省ひも付きの研究を募集するなど軍事体制づくりが進められてきましたが、そのための財政負担は全て国民に押し付けられてきました。
 安倍政権になってから防衛予算という名前の軍事費は毎年増え続け、買いこまれる装備などの内容も「防衛」にとどまるのかという疑念を強め、周辺諸国の反発と警戒心を高めるものになっています。主な装備では、F35 42機=100億㌦(1兆2000億円)、オスプレイ17機=30億㌦(3600億円)、ホークアイ早期警戒機4機=17億㌦(2040億円)、イージス艦2隻=15億㌦(1800億円)、グローバルホーク3機=12億㌦(1440億円)、KC46Aペガサス3機=5・18億㌦(621億円)などの購入計画が明らかになっています。
 来年度予算案では前年度比1.3%増の5兆1911億円(在日米軍再編関連経費などを含む)が計上され、6年連続の増額で過去最高になりました。地上配備型の弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の設計費(7億円)、戦闘機用の長射程巡航ミサイル導入(22億円)、新型の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の取得に440億円、警戒管制システムを47億円で改修、巡航ミサイルを迎撃できる「SM6」ミサイルの試験弾21億円、新型護衛艦2隻の建造に922億円。最新鋭ステルス戦闘機F35Aを6機(785億円)、輸送機V22オスプレイを4機(393億円)などが主な内容です。

 しかも、大きな問題はこうした米国製兵器購入がFMS(対外有償軍事援助)方式で買わされていることです。これは軍事同盟国に巨額の資金を支払わせて武器を買わせるシステムで、価格も取引条件もすべてアメリカの都合で決まり、その条件をのまない国に武器売却はしない制度なのです。
 予算案は総額が決まっていますから、どこかを増やせばどこかを削らなければなりません。生活保護の支給額から食費や光熱費や母子加算費などを削って3年間で160億円を削減する計画が大きな批判を浴びていますが、211億円のオスプレイを一機減らせば十分に賄える金額ではありませんか。
 こうして国民の生活が脅かされ、生活支援のためのお金が軍事によって食いつぶされていくことになります。北朝鮮はミサイルなど打ち込まなくても、その脅威を煽り立てて安倍首相が軍事費を増やし続けていけば、日本の社会と国民の生活を破壊することができるというわけです。

 来年度予算で設計費が計上されている「イージス・アショア」は完成まで5年かかり、総額は2000億円にも上ります。これからまだ5年間も、このような対立と緊張の関係を続けていくというのでしょうか。
 そのような関係を改善し緊張を緩和することによって、このような軍事対応の費用を節約し、国民の福祉と生活支援に回すことができるような国際環境を作らなければなりません。それが憲法9条の指し示す道であり、最優先で取り組まなければならない課題でしょう。
 それとは逆に、安倍9条改憲は周辺諸国にとって大きな脅威となり、誤ったメッセージを発して極東の平和と日本の安全を危機に陥れることになります。そのような選択が実行される前にも、すでに多くの実害が現に生じていることを改めて直視することが必要になっているのではないでしょうか。

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12月25日(月) 急速に進みつつある国際社会における日本の地位の低下 [国際]

 間もなく激動の2017年も暮れようとしています。アメリカのトランプ大統領とそれに追随する安倍首相の暴走によって、世界と日本が大混乱に陥った1年でした。
 その中でも目立ったのは国際社会における日本の地位の低下です。これは安倍政権の下で急速に進みつつありますが、日米同盟の強化をめざしてアメリカへの隷属状態を深めてきたことの当然の結果でした。

 これには二つの面があります。一つは安倍・トランプ関係の親密さから生じてきている悪影響であり、もう一つは唯一の核被爆国でありながら核廃絶の動き背を向けてきたことによる国際的な地位の低下です。
 トランプ米大統領は地球温暖化防止のための「パリ協定」からの離脱を宣言し、10月にユネスコ脱退を表明したばかりか12月には「エルサレムをイスラエルの首都と認める」と宣言しました。このエルサレム首都化を支持したのは世界でイスラエルただ1国にすぎず、16億人のイスラム教徒を敵に回し国連臨時総会では128ヵ国が反対決議に賛成しています。
 この決議には、日本も賛成に回りました。中東の原油に依存している日本は、アラブ諸国を敵に回すわけにはいかなかったからです。

 この決議案が提出されたとき、トランプ大統領は賛成すれば援助を打ちきると述べて国威社会を恫喝しました。札束でほっぺたをひっぱたくような脅しをかけて決議案を葬り去ろうとしたことも、トランプ政権への国際社会の反感を強めています。
 このようなトランプ大統領の一連の言動によって、アメリカは世界から孤立して影響力を低下させ、覇権を失いつつあります。第2次世界大戦後に確立してきた国際秩序の創造者・維持者としての立場から国際秩序の破壊者になってしまったからです。
 これは「アメリカファースト」というトランプ大統領の哲学からすれば、当然の結果だったと言うべきでしょう。こうして、アメリカがこれまで国際社会で築いてきた威信や信用、影響力などの「ソフトパワー」が失われ、国際的な地位を急速に低下させています。

 この孤立し落ち目になっているトランプ大統領と手に手を取り、同じような外交的影響力の低下に直面しているのが日本の安倍首相です。安倍首相はトランプ大統領と最も親しく強い関係を持っていると見られ、安倍首相自身はその良好な関係と親密さを誇っていますが、それは国際社会における日本の強みではなく弱みになっているのではないでしょうか。
 トランプ大統領の訪日に際して一緒にゴルフに興じたことも、「こんな時に、一体何をやっているのか」と国際社会の顰蹙を買ったにちがいありません。この時、バンカーに球を打ち込んだ安倍首相は、さっさと歩き始めたトランプ大統領を追いかけようとして、その最上部でバランスを崩して転び一回転してしまいましたが、これこそ安倍政権の姿を象徴するものでした。
 この映像はたまたま上空を飛行していたテレビ東京のヘリコプターから撮影され、それを入手したイギリスのBBCによって世界中に配信されました。慌ててアメリカに追従する日本の姿として、嘲笑の的になってしまったというわけです。

 もう一つの核兵器禁止条約への不参加は、より一層、国際社会での日本の立場を弱めるものでした。戦争で核兵器の被害を受け、その悲惨で残酷な現実をどの国よりも良く知る唯一の被爆国である日本こそが、このような条約の発効に向けてイニシアチブを発揮するべき国際的な責務を負っていると考えられているからです。
 国連総会は7月に人類史上初めて核兵器の使用や威嚇などを違法化した核兵器禁止条約を採択しました。12月にはこの採択を歓迎する一連の決議案を賛成多数で採択しています。
 全加盟国に条約への早期署名・批准を求めた決議案「多国間核軍縮交渉の前進」は賛成125、反対39、棄権14となりました。日本が背を向けていたにもかかわらず、122カ国の賛成多数で採択された7月の条約交渉会議の時点から賛成国が3カ国増えており、この条約の方向こそが国際世論になりつつあることが示されました。

 日本政府はこの決議にも7月の核兵器禁止条約にも反対しました。それはアメリカの「核の傘」の下にあるからです。この条約の制定に貢献した国際NGOネットワーク「ICAN」はノーベル平和賞を受賞しましたが、これについても日本政府は冷淡な対応を示し、被爆者の失望を買いました。
 他方で、日本政府は国連総会第1委員会(軍縮)に核兵器全廃を目指す決議案を提出しています。この決議案は、日本が1994年から毎年提出し、採択されてきたものです。
 しかし、これに対しては核兵器禁止条約に触れておらず、核廃絶に関する文言も弱まっていました。例えば、「核兵器のあらゆる使用」が壊滅的な人道上の結末をもたらすと明記していた昨年の文言から「あらゆる」が削除され、「核兵器のない世界を『達成するための』決意を再確認する」という文言が「核兵器のない世界に『向けた』決意」という表現に変わっています。

 核軍縮に向けて活動するNGOの関係者からは「日本は米国の圧力に屈して核廃絶への訴えを弱めたとしか思えない」として「日本は核保有国と非核保有国の橋渡しをしたいと言っていたが、米国側に立ってその橋を焼き払っているようにみえる」と非難される始末です。昨年12月の国連総会に提出された条約は加盟193カ国中、167カ国が賛成していましたが、今年の条約については賛成156、反対4、棄権24となっており、昨年から賛成が11票減り、棄権が8票増えました。
 このように、この間、核兵器の禁止や廃絶に向けての訴えや動きハ弱まってきており、国際社会の支持も失ってきています。そればかりか、かえって「核の傘」への依存を強めてきているのが現状です。
 その格好の口実として利用されているのが、北朝鮮の核・ミサイル開発による緊張感が高まりです。安倍首相は「対話よりも圧力だ」と言って朝鮮半島危機を煽り、国民の不安感を高め、それを「核の傘」への依存と軍事力の増強に利用してきました。

 例えば、2017年8月には核搭載可能な戦略爆撃機B52が飛来して日本海上空での空自戦闘機との共同訓練を行い、10月末の航空機観閲式では核兵器を搭載できる米戦略爆撃機B2の参加が検討されています。北朝鮮の核開発に対して、一方で「朝鮮半島の非核化」を主張しながら、他方では「核の傘」に依存し、核搭載の戦略爆撃機の飛来や自衛隊との共同訓練に道を開いているのです。
 自らはアメリカの核に頼りながら北朝鮮には「核に頼るな」と言っているようなものです。このようなダブルスタンダードによって日本の国際的信用はがた落ちになっているということが、安倍首相には分かっているのでしょうか。

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12月21日(木) 安倍9条改憲を考える際に忘れてはならない3つの視点 [憲法]

 自民党は20日の党憲法改正推進本部で論点整理を行い、それを了承しました。形の上では「一歩前進」のように見えますが、必ずしもそうではありません。
 改憲の焦点になっている自衛隊の存在明記について、年内の意見集約を見送ったからです。議論が進んでいるような「体裁」はつくろいましたが、党内での論議自体はかなり遅れており、「視界良好とはいえないようだ」と評されています(『毎日新聞』12月21日付)。

 もともと自民党が掲げていた12年の改憲草案は現行の9条第2項(戦力不保持)を削除して第1項(戦争放棄)が「自衛権の発動を妨げるものではない」と新たに規定し、それによって「国防軍の保持」(草案9条の2)を可能にするというものでした。自民党内では、これを支持する意見が14%存在しています。
 代表的なのが石破茂元幹事長で、この日の憲法改正推進本部の全体会合でも、「安全保障環境がものすごく変わったから9条を改正するというのなら、今までとほとんど(自衛隊の)中身は変わらないというのは論理が一貫しない」と主張し、第1項と第2項を維持したまま自衛隊を明記する首相の考え方を重ねて批判しました。
 これに対して、山本一太元沖縄・北方担当相は「2項を削除した方が分かりやすいに決まっているが、やはり(国会を)通さないといけない」と反論しました。自民党の改憲草案と安倍9条改憲論の両案をめぐって賛否が飛び交う形となっています。

 このような見解の相違は、今も埋められていないということになります。無理にまとめて自民党内外を過度に刺激しないことを優先したからです。
 時間をかければ、石破さんらの「2項削除」論はいずれ少数派になるという期待があるといいます。自民党の執行部は年明け早々に議論を再開する方針で、党幹部は「石破さんの言うことは分かるが、その通りに進めたらなかなか難しくなる」と漏らしたそうです。
 私は安倍9条改憲に向けての第1のハードルとして「自民党はまとまるのか」という問題を提起しましたが、このハードルを自民党は年内に越えることができませんでした。安倍9条改憲論との激突における緒戦での「戦闘」で、ひとまず防衛戦を突破されなかったということになります。

 しかし、自民党内での期待通り、来年に入れば改憲論議は進み、さらに攻勢は強まるでしょう。安倍首相は自民党内をまとめるために指示を出すにちがいありません。
 急がず慎重になっているのは、「今度こそ、確実に変えたい」と考えているからです。「本当は石破さんの言う通りなのだが、それでは国民の合意が得られないから、さし当り通りやすい案で妥協してもらいたい」ということなのでしょう。
 しかし、自民党改憲草案よりも妥協的だからと言って危険ではないというわけではありません。今後、安倍9条改憲論に意見集約が図られようとするでしょうが、その際に忘れてはならない3つの視点をここで指摘しておきたいと思います。

 第1に、安倍9条改憲によって平和と安全を強めることになるのか、という点です。そうはならないということについて、すでに多くの論者が指摘していますし、私もこれまでの論攷で繰り返し問題点を明らかにしてきました。
 その一つは「後法優位の原則」によって9条の2項が空文化されること、二つ目には書き込まれる自衛隊は集団的自衛権を一部行使容認となった新たな自衛隊であること、三つ目には朝鮮半島危機が高まっている中での変更は、自衛隊のみならず日本国民全体が戦争に巻き込まれるリスクを高めることなどです。
 安倍首相は「何かあったら、命を懸けられるようにする」と、改憲の目的を述べました。つまり、何かあったら米軍と共に戦争できるようにするためであり、それを憲法に明記すれば歯止めが失われ、北朝鮮の敵意を強めて国際テロの標的とされるリスクを高め、極東の平和と日本の安全を損なうことになるでしょう。

 第2に、「改憲勢力」とは何か、という点です。その内容はバラバラであり、必ずしも安倍首相がめざしている9条改憲論で統一されているわけではないという点が重要です。
 一つには、憲法は「不磨の大典」ではなく、96条に改憲手続きが定められているように、条文の書き換えによる「改正」は否定されていないこと、第2に、その場合でも憲法理念を破壊する「壊憲」は許されず、国民主権を否定する天皇元首化や基本的人権の尊重に抵触する緊急事態条項の新設、平和主義を破壊する自衛隊の書き込みなどは、「改正」ではなく「新憲法の制定」を意味すること、第3に、安倍9条改憲はこのような「壊憲」であって断固阻止しなければならないことを明らかにしなければなりません。
 つまり、公明党の言う新しい人権などを付け加える加憲論、維新の会が求めている教育の完全無償化、希望の党などが主張している地方自治の拡充、立憲民主党が掲げている解散権の制限など立憲主義の強化などと、安倍首相がめざしている9条改憲や緊急事態条項、法の下の平等を掘り崩す参院での合区解消論などとは根本的に異なっており、これらをごっちゃにして「改選勢力」として位置付けることは間違いなのです。この違いを明らかにして、安倍首相のめざしている「壊憲」の危険性を示して孤立させる必要があります。

 そして第3に、通常の改憲についても、今日の政治が直面している最優先の課題なのか、が問われなければなりません。改憲には、政治のエネルギーも時間も必要であり、国民投票ということになれば、それを実施するための費用が何百億円もかかるからです。
 今日の『毎日新聞』には「日本の世論」についての調査結果が掲載されていますが、それによれば、「重視する政策」として回答が多かったのは、「年金・医療」74%、「景気対策」45%、「子育て支援」36%、「外交・安全保障」36%と続き、「憲法改正」21%は8つある選択肢の中で最低になっていました。「9条加憲」については、「反対」50%、「賛成」45%と、反対の方が多くなっています。
 つまり、国民は「憲法改正」や「9条加憲」を望んでいないということです。いま政治が取り組むべき課題として重視するべきは、年金・医療、景気対策、子育て支援、外交・安全保障などであり、ここにこそ政治のエネルギー、時間、資金を注ぎ込むべきなのです。

 安倍首相が考えているような形で憲法を変えれば、自衛隊が憲法に位置付けられますから違憲ではなくなります。しかし、それで国民が重視している年金・医療、景気対策、子育て支援、外交・安全保障などの問題が解決されるのでしょうか。
 政治が本来取り組むべき重要な課題が別にあるのに、どうして今、改憲なのか。国民が感じているこのような疑問に、改憲を主張する人々は何よりもまず答えるべきなのではないでしょうか。

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12月20日(水) 安倍9条改憲が狙っている本当の目的と理由 [憲法]

 安倍首相が憲法9条に自衛隊を明記するための改憲論を提起してから、半年以上が経過しました。いよいよ、来年が正念場になりそうです。

 安倍首相は、これまで改憲に向けての強い意向を示してきましたが、今年の5月になるまで9条改憲を正面から打ち出したことはありませんでした。当初は、改憲手続きを定めた96条を標的にして「裏口入学」などと批判されたものです。
 憲法のどこを変えるのか、衆参両院の憲法審査会において与野党で相談してほしいとまで言ったことがあります。この段階では改憲自体が自己目的化されており、どこをどのように変えるべきか、差し迫った改憲目的が明確に意識されていたわけではなかったようです。
 ところが、ここに来て、改憲の焦点が9条に絞られてきました。それは何故でしょうか。

 安倍首相は9条改憲の理由として、「多くの憲法学者や政党の中には自衛隊を違憲だとする議論が、今なお存在している。『自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張ってくれ』というのは、余りにも無責任だ」との見解を示しています。つまり、「命を張ってくれ」と言わなければならない「何か」が、近い将来、勃発するかもしれない危機が近づいているから、急いで9条に自衛隊の存在を書き込んで、「違憲だとする議論」を封じておく必要があると考えたにちがいありません。
 では、その「何か」とは何でしょうか。安倍首相の言う「国難」がそれに当たるということではないでしょうか。つまり、第2次朝鮮戦争の勃発であり中東での戦乱です。

 安倍首相の言う「何か」とは、朝鮮半島で起きるかもしれない武力衝突であり、トランプ米大統領によるエルサレムのイスラエル首都化発言によってにわかに高まっている中東地域での混乱などへの対処を意味しているのです。どちらにしても、日本の防衛を意味する個別的自衛権だけでなく、米軍とともに集団的自衛権を行使して戦闘に加わる局面が現実になろうとしているから、急いで9条に手を入れる必要が生まれたということでしょう。
 もし米朝間の軍事衝突が始まり、日本周辺での戦闘が個別的自衛権の範囲に収まらず朝鮮半島にまで拡大した場合、自衛隊は米軍や韓国軍とともに朝鮮半島でも戦闘に参加する必要が生ずると判断しているにちがいありません。そうなった場合、今のままでは多くの問題が生じます。
 つまり、第2次朝鮮戦争など他国での戦闘への参加を視野に据えての新たな提起こそが安倍首相による9条改憲論なのです。それは「(個別的自衛権の範囲を超えた朝鮮戦争などで)何かあれば、命を張ってくれ」と言えるようにするためのものであり、あらかじめ9条に自衛隊の存在を書き込むことで、そうなった場合に生ずる問題を未然に防ごうとしているのでしょう。

 具体的には、どのような不都合が生ずるのでしょうか。

 それは第1に、今のままでは自衛隊員に戦争で死ぬことを強要できないという点にあります。憲法9条には「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」とあり、自衛隊は「戦力」でも「軍隊」でもないとされてきました。また、「国の交戦権はこれを認めない」とされていますから、「交戦」したら憲法違反になります。
 そのために、「何かあれば、命を張ってくれ」と強いることができるような仕組みが欠落しています。戦闘に際しての規律を維持するためには憲兵や軍法会議が必要ですが、このような組織が存在していないからです。
 今のままでは、自衛隊員による交戦の拒否や命令違反、戦場からの逃亡や離脱を厳しく罰することができません。安倍首相が「何かあれば、命を張ってくれ」と言うのは、それを拒むことも逃げ出すこともできないようにして、確実に戦場に送って「命を張」ることを命じたいと考えているからです。

 第2に、将来あり得る海外での戦争参加に際しての違憲訴訟のリスクを避けたいという狙いがあります。今のままでは、9条を盾に取った裁判の提起が頻発し、違憲の判決が出る可能性があるからです。
 これまでも自衛隊については、1959年3月30日の砂川事件での伊達判決、1967年3月29日の恵庭事件札幌地裁判決、1973年9月7日の長沼訴訟札幌地裁判決、2008年4月14日の自衛隊イラク派兵違憲訴訟の名古屋高裁判決などが出ています。これらはいずれも個別的自衛権についての違憲判決で、集団的自衛権は対象になっていません。
 しかし、今の自衛隊は集団的自衛権を部分的に容認され、その機能と役割が大きく変わってきています。安倍首相は、民進党の大塚耕平代表の質問に答えて、9条に自衛隊を書き加えても「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と強調しましたが、それは安保法によってすでに「任務や権限に変更が生じ」た自衛隊だからです。
 安保法によって自衛隊が変わったのに憲法は変わっていません。憲法がこのままであれば、朝鮮半島や中東地域への自衛隊派遣や米軍の後方支援、すでに日米合同演習で実施されている米艦防護など、集団的自衛権の行使にかかわる「任務や権限」と憲法解釈との矛盾が拡大します。
 そうなれば自衛隊と憲法とのかかわりを問う訴訟も増えるにちがいありません。このような違憲訴訟が頻発する事態を避けるために、安倍首相はあらかじめ9条に自衛隊の存在を書き込むことが必要だと考えているのでしょう。

 第3に、戦争で戦死者が出た場合の扱いを変えたいという狙いもあると思われます。今のままでは、戦闘で亡くなった人でも靖国神社に葬ることは難しいからです。
 これまで、自衛隊の戦死者はいません。しかし、イラクなどへの海外派遣後のPTSD(心理的外傷後ストレス障害)による自殺、車両や航空機、艦船による訓練など任務中の事故や過剰業務による病気などで亡くなった殉職者は1800人以上に上ります。
 これらの殉職者は靖国神社ではなく、通常の埋葬と同じように各家の墓所に葬られ、防衛省内のメモリアルゾーンにある殉職者慰霊碑に名前が刻まれて年に1回慰霊祭が行われています。昔は、隊友会が護国神社に祭る手続きをしましたが、最高裁で違法とされ現在は行われていません。

 これについては、安保法の審議の際に亀井静香元政調会長から、以下のような批判がありました。
「この法案の一番の問題は国ために闘う自衛隊員の命を軽視していることだ。晋三君は正面から憲法を改正して自衛隊を軍隊と位置付けるのではなく、この安保法案だけで自衛隊を海外に派遣しようとしている。
 ……
 安倍総理は『首相が英霊に尊崇の念を表すことは当然だ』と靖国神社を参拝したが、自分の命令で国のために闘った自衛隊員が死んでも、靖国神社の英霊として祀られない矛盾をどう考えるのか」(『週刊ポスト』2015年8月14日号)。

 今回の9条改憲論こそ、この亀井さんの批判に対する安倍首相の回答にほかなりません。「自分の命令で国ために闘った自衛隊員が死ん」だ場合、「靖国の英霊として祀られ」るようにするために、「正面から憲法を改正して自衛隊を軍隊と位置付け」ようとしているのではないでしょうか。
 自衛隊の存在を憲法に書き込んできちんと憲法上の位置づけを与えれば、裁判で違法とされることもなくなり、以前と同じように隊友会が護国神社に祀る手続きをすることができるようになるからです。
 
 安倍首相は昨日、都内で講演して自衛隊の存在を明記する5月の憲法改正提案について「停滞した議論を後押しするために一石を投じた。ただ、その石があまりにも大き過ぎ、その後が大変だった」と述べました。突然の表明に野党からだけでなく「国防軍」明記などの改憲案を策定した自民党からも反発が出たため、根回し不足を「反省」した形だと報じられています。
 しかし、改憲について「スケジュールありきでない」としつつも、2020年の東京五輪開催を挙げ「新時代の幕開けへ機運が高まる時期だからこそ、憲法の議論を深め、国のあり方を大いに論じるべきだ」と述べ、20年の新憲法施行に期待感をにじませています。できれば、当初の目論見通りに実行したいということでしょう。
 安倍9条改憲論は自民党の本来の改憲草案からすれば公明党の加憲論などに譲歩しているため、自民党内からも反発が出ました。それへの反省などを表明し、スケジュールありきではないと一歩後退したようなそぶりを見せていますが、これらの譲歩も反省も、後退のそぶりも、全て9条改憲を確実に実現したいがための対応です。

 それだけ、本気だということなのではないでしょうか。実現が難しい自民党の改憲草案よりも他党の賛同などが得られやすい改憲案を提示することで、世論の賛成を得たいということでしょう。
 教育無償化や緊急事態条項の新設、合区解消論を抱き合わせにしているのも、維新の会を引き入れ、自民党内の反対論をなだめるための「疑似餌」だと思われます。本当は、戦争で死ぬことを自衛隊員に強要できるようにし、違憲訴訟のリスクを避けられるようにし、戦死者を靖国神社に祀ることができるようにするための9条改憲なのです。
 安倍9条改憲論に隠されている本当の理由と狙いを、正確に見抜くことが必要です。その真の危険性を幅広く知らせていくことこそ、今、緊急に求められているのではないでしょうか。

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12月15日(金) 総選挙の結果と安倍9条改憲をめぐる新たな攻防(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、憲法会議発行の『月刊 憲法運動』通巻466号、2017年12月号、に掲載されたものです。3回に分けて、アップさせていただきます。〕

3、安倍9条改憲阻止のために

 (1)2019年夏の参院選までがヤマ場?

 総選挙後の10月23日、安倍首相は記者会見で改憲について言及し、「公約に沿って条文について党内で議論を深め、党としての案を国会の憲法審査会に提案したい」と語りました。「与党で3分の2をいただいたが、与党だけではなく幅広い合意形成が必要。国民投票で過半数を得るべく努力したい」とし、「スケジュールありきではない」とも述べています。
 同時に、野党第1党となった立憲民主党が自衛隊明記などの首相提案を厳しく批判している点について問われた首相は、「合意形成するための努力をしていく」としたものの、「政治であるから、皆さま全てにご理解をいただけるわけではない」と発言しました。これは「協議の行方次第では、合意できる党だけで発議をめざす可能性を想定した発言」だと報じられています(『朝日新聞』10月24日)。
 こうして、再び、安倍首相は改憲に向けてのアクセルを踏み込みました。このような首相の意向に沿った形で改憲論議は進むと見られています。この時点で想定されていた改憲日程は3つあります。
 まず、11月中旬に党内論議を再開し、12月中に改憲素案を取りまとめ、来年の1月以降に各党に案を提示するというものです。その後、通常国会で改憲を発議して来年中に国民投票を実施するというのが第1の想定で、最も早い日程になります。
 これに対して第2の想定は、来年の自民党総裁選で3選された後に臨時国会を開き、改憲を発議するというものです。国民投票は2019年の春ごろになります。最も遅い第3の想定では、2019年春の通常国会まで改憲発議がずれ込み、夏ごろの参院選と同時に国民投票を実施しようというものです。
 改憲に向けての国民投票は、早ければ来年の末、遅くても再来年夏の参院選までと想定されているわけです。この参院選まで発議も国民投票も実施させず、同日選を阻止して参院での改憲勢力を3分の2以下に減らせば、安倍9条改憲の危機を突破することができます。
 それ以前であっても、安倍首相を総理の椅子から引きずり下ろしたり3選を阻んだりすれば、改憲の危険水域から脱けだすことができます。2019年夏の参院選までが、改憲をめぐる「激突」の山場ということになるでしょう。

 (2)前途に横たわる4つのハードル

 このように安倍首相は改憲論議を急ぐ意向を示し、自民党は憲法改正推進本部を先頭に準備を進めています。しかし、そこには多くの弱点が存在しており、数々のハードルを越えていかなければなりません。
 改憲に向けての第1のハードルは自民党内にあります。自民党の憲法改正推進本部は11月8日に衆院解散で中断していた党内論議を再開すると決め、年内にも自衛隊の存在明記などをめぐる意見集約を図って、来年の通常国会で発議を目指す方針を確認しました。
 しかし、自衛隊の存在明記をはじめ党内で意見の隔たりが大きい項目もあるため、先行きは不透明です。自衛隊明記と教育無償化は安倍首相が提案したものですが、自衛隊明記には自民党議員の14%が反対だという調査もあります(『毎日新聞』10月24日付)。
 細田博之本部長は記者団に「国民全体、国家全体の問題だから、自民党主導でどうこうということではない。いろいろな協議を重ねないといけない」と語り、他党との合意形成に取り組む意向を示しています。何よりも、公明党の同意を得て与党の体制を整えることが必要ですが、その公明党は腰が引けています。
 つまり、第2のハードルは与党内に存在しているのです。改憲論議のカギを握る公明党は、山口那津男代表が11月7日の記者会見で「憲法は国会が舞台。与党間で何かやることを前提にしているわけではない」と指摘するなど、自民党が求めている与党協議に応じる気配はありません。
 しかも、山口さんは11月12日放送のラジオ番組で、改憲の国会発議には衆参両院の3分の2以上の賛成が必要となる点に触れ「それ以上の国民の支持がある状況が望ましい。国民投票でぎりぎり(改憲が承認される)過半数となれば、大きな反対勢力が残る」と述べ、国民の3分の2を超える賛同が前提となるという認識を示しました。
 8割の改憲勢力についても、「改憲を否定しない勢力とは言えるが、主張に相当な隔たりがあるし、議論も煮詰まっていない」と指摘しています。公明党にはもともと「野党第1党を巻き込むべきだ」だという考えが強く、自民党内にも憲法族を中心に同様の意見がありました。このような山口さんの発言は、これに加えてさらに改憲のハードルを引き上げることを意味しています。
 こうして、第3のハードルが登場します。野党の状況です。共産党や社民党ははっきりと改憲に反対しており、野党第一党の立憲民主党も安倍首相が進めようとしている9条改憲には反対の姿勢を示しています。
 維新の会や希望の党は改憲勢力とされていますが、9条改憲についての優先順位は高くありません。改憲への賛成と安保法の支持という「踏み絵」を踏んだはずの希望の党の当選議員も、安倍改憲には72.5%が反対し、2020年改正施行にも66.9%が反対しています(共同通信調査)。
 安倍9条改憲に反対している立憲民主党が野党第一党になったことも大きな壁となるでしょう。安倍首相は野党第一党が賛成することにはこだわらないことを示唆していますが、それでは公明党が納得しません。立憲民主党を巻き込まなければ第2のハードルを超えられないのです。
 そして、第4のハードルは世論の動向です。共同通信社による世論調査では、憲法に自衛隊を明記する安倍首相の提案に反対は52.6%で、賛成38.3%を上回っています。安倍首相の下での憲法改正には50.2%が反対で、賛成は39.4%と少数です。
 『毎日新聞』の世論調査でも、改憲発議について「急ぐべきだ」は24%にすぎず、「急ぐ必要はない」という回答が66%に上っています(『毎日新聞』11月14日付)。安倍首相は11月1日の記者会見で、自民党内で具体的な条文案の策定を急ぐ考えを示しましたが、国民の理解は広がっていません。

 (3)安倍9条改憲阻止に向けて

 総選挙の結果、憲法をめぐる情勢が危険水域に入ったことは明らかです。安倍9条改憲阻止をめぐって「激突」の時代が始まりました。これを阻止するにはどうしたらよいのでしょうか。
 そのためには、第1に、一般的な憲法の改正を意味する改憲と安倍9条改憲論を区別し、その間に楔を打ち込んで後者を孤立させることです。改憲にも、憲法96条で認められている統治ルールの変更などの改正を意味するものと、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義という3大原理を破壊し、事実上の新憲法の制定を意味する「壊憲」とがあります。平和主義を破壊する安倍9条改憲論は後者であり、断じて認められません。
 前者の改憲一般に賛成する議員は国会議員の8割を超えていますが、後者の安倍9条改憲論に賛成する議員は54%です(『毎日新聞』10月24日付)。過半数は越えていますが3分の2を占めているわけではありません。前述のように、国民世論でも安倍9条改憲論は少数派です。
 第2に、安倍9条改憲へのハードルをどんどん引き上げていくことです。私たちの運動で反対世論を増やしていけば、これらのハードルを高くすることができます。反対世論を目に見えるようにするという点では集会などの抗議行動や署名運動が有効です。官邸前や国会周辺だけでなく全国の津々浦々で、可能な形での安倍9条改憲に反対する集会やデモ、パレード、スタンディングなどに取り組むことです。安倍9条改憲NO!全国市民アクションが呼びかけている3000万人署名運動も、反対世論を具体的な数で示す点で大きな意義があります。
 第3に、現行憲法に対する国民的な学習運動を幅広く組織することです。改憲に向けての動きが強まり、国会内で憲法審査会での議論が始まれば、報道される機会が増え憲法に対する国民の関心も高まります。これは憲法の内容や意義、その重要性について学ぶ絶好のチャンスでもあります。こうして憲法に対する理解や認識が深まれば、改憲に反対する大きな力となることでしょう。
 第4に、市民と立憲野党との連携を深め、草の根での改憲反対の運動を広げていかなければなりません。市民と野党との共闘については、総選挙での経験や人的なネットワークの広がり、立憲民主党の結成などによって新たな可能性が生まれています。民進党から分かれた立憲民主・希望・民進・無所属の4党・会派と共産・社民・自由の各党は国会内での連携を図りつつあります。国会審議において力を合わせながら国会外での運動とも連携し、安倍9条改憲に反対する草の根の共同を幅広く追求していくことが重要です。
 これらの活動においては、いかに世論を変えていくかという視点を貫かなければなりません。当面は国会での改憲発議を阻止することですが、最終的には国民投票によって決着が付けられることになります。そこで多数を獲得できるという見通しが立たなければ、改憲への動きをストップさせることができます。各政党の対応を左右するという点でも、世論の動向は決定的な意味を持ちます。
 ヨーロッパ連合(EU)からの離脱か残留かを問うイギリスの国民投票では離脱賛成票が上回り、残留を主張していたキャメロン首相が辞任しました。イタリアでも上院の権限を大幅に縮小する憲法改正案についての国民投票が実施され、反対票が多かったためにレンツィ首相が辞任に追い込まれています。日本でも同様の結果が予想されるようになれば、安倍首相はこのようなリスクを避けるにちがいありません。

 むすび

 危機(ピンチ)は好機(チャンス)でもあります。安倍9条改憲に向けての危機の高まりを、憲法への理解を深め憲法を活かす政治を実現する好機としなければなりません。安倍首相が2020年までに改憲施行することをめざすというのであれば、たんに改憲を阻止するという受け身の運動にとどまらず、政治と生活に憲法の原理と条文を具体化できる政府の樹立に向けての攻勢的な運動の期間としようではありませんか。
 安倍首相は今後、ますます改憲に向けての攻勢を強めてくるにちがいありません。国民の関心が高まり、心ある人々の危機感も増大するでしょう。憲法はそれほど身近ではなく、とっつきにくいと思われることも少なくありません。しかし、国会の憲法審査会で議論が始まり、与野党の対立が強まったり反対運動が高揚したりすれば、身近な話題としてマスメデイアなどでも取り上げられるようになります。
 この機会をとらえて国民に幅広く訴えていくことができれば、今まで以上に憲法を身近に感じてもらえ理解を広げることができます。署名を中心にしながら、多様な運動の展開に努めることが重要です。その核として重視すべきは、憲法についての国民的な学習運動でしょう。
 このような取り組みを通じて国民の憲法への理解と認識が高まり、その結果として安倍9条改憲論が挫折するというのが最も望ましいシナリオです。そのシナリオが実現できるかどうかに、アジアの平和と日本の未来がかかっていると言っても過言ではありません。
 総選挙の結果生じた情勢に、恐れず、ひるまず、あきらめず、安倍9条改憲をめぐる新たな攻防に向けて立ち上がりましょう。「憲法は変えるのではなく活かす」という旗を掲げながら。(2016年11月16日/いがらし じん)

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12月14日(木) 総選挙の結果と安倍9条改憲をめぐる新たな攻防(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、憲法会議発行の『月刊 憲法運動』通巻466号、2017年12月号、に掲載されたものです。3回に分けて、アップさせていただきます。〕

2、憲法をめぐる激突の新段階

 (1)総仕上げとしての9条改憲

 総選挙の結果、安倍首相は再び改憲に向けての意欲を高めたように見えます。しかし、自民党は選挙公約で改憲を重点項目としたにもかかわらず、安倍首相は選挙中の街頭演説で憲法問題にはほとんど触れませんでした。与野党対立を引き起こすような政治的に微妙なテーマは隠しながら、アベノミクスなどの経済政策を前面に出して支持を訴えるというこれまでのやり方を踏襲したわけです。
 このような安倍首相のやり方からすれば、選挙で得た多数議席を背景に国民の「信任を得た」と強弁して9条改憲をスピードアップすることは目に見えています。憲法をめぐる激突の新段階が、こうして始まることになりました。
 この安倍9条改憲論については、これまで安倍首相が実施してきた一連の違憲立法との関連で、「戦争できる国」作りの一環として理解しなければなりません。自衛隊を海外に派兵してアメリカとともに「戦争できる国」とするために、安倍首相は一連のストーリーを描いてきたからです。
 それは、起(特定秘密保護法)、承(安保法制)、転(共謀罪法)という形ですでに具体化されました。いよいよこの物語は「結」の段階、すなわち「むすび」という形での総仕上げを迎えようとしているのです。
 戦争できる国を作るためには、システム、ハード、ソフトの各レベルにおける整備が必要です。システムというのは戦争準備と遂行のための法律や制度であり、一連の違憲立法とともに日本版NSC(国家安全保障会議)や安全保障局の設置などによっても実施されてきました。9条改憲はこのシステム整備の中核をなし、総仕上げの意味を持つものです。
 ちなみに、ハードとは戦争遂行のための軍事力の整備であり、軍事基地、兵器、弾薬、兵員の確保などがその内容です。ソフトとは戦争できる国を支える人材の育成と社会意識の形成を指しています。教育改革実行会議による道徳の教科化や教育内容への介入、マスメデイアの懐柔や統制による情報の操作などが具体的な内容になります。
 このような戦争できる国作りへの動きに対して、憲法はこれまで抵抗の拠点であり、異議申し立てのための武器となってきました。しかし、自衛隊が9条に明記され、その存在が正当化され憲法上の位置づけが与えられれば、その意味は大きく変容するでしょう。抵抗のため武器から支配のための手段へと変わるのです。
 
 (2)改憲の自己目的化

 これまで、憲法が変えられることはありませんでした。1947年の施行以来、70年にわたって一度も変えられずに維持されてきました。これほど長い間、変えられなかったことを問題視する意見もあります。だから、変えるべきだと。
 しかし、70年にもわたる期間、変えられずに来たのは変える必要がなかったからです。変える必要がなかったのは、これといって不都合がなかったからです。誰にでも了解されるような不都合があれば、国民の間から「ここを変えるべきだ」という声が上がってきたにちがいありません。しかし、具体的な条文や記述を示して国民の間から改憲要求が高まることは、これまでありませんでした。
 「押し付け憲法論」にしても、「占領軍によって押し付けられたものだから」というだけの理由です。これが改憲の根拠として主張されてきたのは、端的に指摘できる不都合がなく変えるべき条文などを具体的に明示することができなかったからです。
 今回の安倍9条改憲論も国民の間からではなく、突然、安倍首相が提起したものです。しかも、これまでの安倍首相も自民党も、このような改憲論を示すことはありませんでした。2012年に自民党は改憲草案を発表していますが、それは安倍首相の提案とは異なったものでした。だから、石破茂元防衛相は安倍9条改憲論に反対しているのです。
 今回、安倍首相がこのような改憲論を提案したのは、改憲自体を目的としているからです。変えやすい条項について、変えやすい方法で、とにかく変えたいというにすぎません。東日本大震災などでの災害救助の実績もあって自衛隊は国民に受け入れられるようになってきているから、憲法に書き込むという提案なら通るかもしれないと考えたのでしょう。
 しかし、書き加えられる自衛隊は、215年9月の安保法の成立によって集団的自衛権の行使が一部容認された自衛隊です。いつでも、どこでも、どのような形でも、日本の安全と存立が脅かされると判断されれば、米軍とともに国際紛争に武力介入することができるようになっています。
 しかも、法律には「後法優位の原則」があります。条文の内容が矛盾する場合には、後から制定された条文が優先されます。9条2項の戦力不保持の規定と自衛隊の存在の明記が矛盾する場合、2項が空文化されることになるでしょう。裁判などで争われれば、はっきりさせようということで9条2項の削除論が提起されるにちがいありません。
 しかし、このような形で憲法の平和主義原理を放棄するのは誤りです。というのは、国際紛争を武力の行使や武力による威嚇によって解決しないという9条の理念はますます重要な意味を持ってきているからです。北朝鮮危機は武力の行使によって解決してはならず、テロの脅威も武力を行使することによって根本的には解決できません。
 もし、北朝鮮危機に対して武力を行使すれば、報復攻撃によって甚大な被害が生じ、核戦争の危機に発展する恐れさえあります。テロの脅威は武力によって一時的に防止することができても、結局は憎しみの連鎖を生み、貧困や格差、憎悪などの原因を除去しなければ、最終的かつ根本的に解決することはできません。

 (3)9条を活かす将来ビジョンこそ

 憲法9条について、かつては理想論にすぎないし現実の問題解決には役立たないという批判がありました。しかし、パワーポリティクスや抑止力論による力の政策が間違っていることは、ベトナム戦争やイラク戦争、アフガニスタンへの武力介入の失敗などを通じて明らかになっています。
 戦後国際政治の現実は、武力などの力に頼らない地道で粘り強い交渉こそが真に問題を解決する手段であることを示してきました。9条の理念と平和主義は決して理想論ではなく、時代遅れでもなかったのです。
 それは国際政治を律するものとして国際連合の精神にも合致する基本原則であり、国家間の対立や地域紛争、民族紛争やテロを解決するための現実的で有効な方法なのです。だからこそ、9条は国際的な威信と説得力を高め、ノーベル平和賞の候補としてノミネートされるようになってきました。
 こうして、平和的生存権と戦争の放棄、戦力不保持と交戦権の否認を憲法に定めている日本は、「平和国家」としての「ブランド」を確立することに成功しました。それは、日本という国の「弱み」ではなく「強み」なのです。
 この「平和ブランド」という「強み」を生かして国際政治に関与し、武力によらない平和創出のビジョンを掲げ、そのイニシアチブをとることこそが、日本の外交・安全保障の基本でなければなりません。そうすることではじめて、「国際社会において、名誉ある地位を占め」(前文)ることができるでしょう。
 ここで問題になるのが、自衛隊という軍事力の存在と安保条約に基づく日米軍事同盟です。その存在を容認し、それを前提に平和と安全を確保することが現実的な安全保障政策であると、多くの人は「勘違い」してきました。実際には、現実的であるのではなく現実追随的な思考停止に陥っているにすぎません。
 憲法9条の規定からすれば自衛隊は違憲の存在ですが、直ぐに廃止して解散するというわけにはいかないでしょう。自衛隊違憲論に立つ共産党も、即時廃止を主張しているわけではありません。災害救助などでも大きな力を発揮していますから、当面存続させながら徐々に国境警備隊や災害救助隊などに改組・再編する条件を整備していくということになります。
 このような方針は軍事力に頼らない安全保障の確立という将来ビジョンを掲げるということであり、そのための国際環境づくりに努力するということでもあります。その達成にどれほどの時間がかかるかは分かりませんが、このようなビジョンを掲げて周辺諸国との関係改善と友好親善に努めることこそ、アジアの平和と日本の安全確保にとって有効かつ現実的な方策なのです。
 安保条約についても同様です。いずれは軍事同盟に頼らない平和の実現をめざすというビジョンを掲げなければなりません。アメリカとの軍事同盟ではなく平和友好条約への転換を図ることが前提です。それ以前であっても、対米隷属外交の是正、日米地位協定の改正、日米合同委員会の運用改善、在日米軍基地の負担軽減などを実現できるような条件整備に努めることが必要です。
 いずれにしても、カギになるのは世論と国際環境です。アメリカとの従属的な軍事同盟から抜け出すとともに、韓国・中国・ロシア・北朝鮮など周辺諸国との関係を改善し、外交や文化交流などの非軍事的な手段を通じて安全が確保されるようにすることが必要です。これこそが憲法の指し示す道であり、平和主義原理の具体化にほかなりません。必要なことは、9条を変えるのではなく、現実を変えて9条に近づけることです。

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12月13日(水) 総選挙の結果と安倍9条改憲をめぐる新たな攻防(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、憲法会議発行の『月刊 憲法運動』通巻466号、2017年12月号、に掲載されたものです。3回に分けて、アップさせていただきます。〕

 はじめに

 「憲法改正については、国民の幅広い理解を得つつ、衆議院・参議院の憲法審査会で議論を深め各党とも連携し、自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参議院の合区解消など4項目を中心に、党内外の十分な議論を踏まえ、憲法改正原案を国会で提案・発議し、国民投票を行い、初めての憲法改正を目指します。」

 今回の総選挙に際して、自民党は「憲法改正」についてこのような公約を掲げました。これは5つの重点項目のうちの最後に当たるものです。これまでの国政選挙でも、自民党は改憲について公約していましたが、その扱いは控えめで目立たないものでした。
 今回は「重点項目」としての登場です。改憲に向けて、本腰を入れてきたということを示しています。その背後には、安倍首相の意向があります。5月3日の憲法記念日に、現行憲法9条の1項と2項をそのままにして自衛隊の存在を書き込むという新たな改憲方針(安倍9条改憲論)を明らかにしたからです。
 これによって、憲法をめぐる情勢は急展開しました。改憲に向けての動きが政治の焦点に浮かび上がってきただけではありません。9条に手を加えて自衛隊の存在を正当化し、憲法上の位置づけを与えようという狙いが、はっきりと示されたからです。
 こうして、9条改憲をめぐる激突での新たな段階が幕を開けました。その緒戦となったのが、今回の総選挙です。自民党が初めて「自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参議院の合区解消など4項目」を重点項目に掲げて信を問うことになった総選挙で、国民はどのような回答を示したのでしょうか。
 以下、総選挙の結果をどう見るか、各党の消長はどのような意味を持っているのか、その結果、いかなる政治状況が生まれたのか、とりわけ安倍9条改憲論をめぐる各党の立場と今後の展望や課題はどのようなものなのか、などの点について検討してみることにしましょう。

1、総選挙の結果をどう見るか

(1)与党の状況

 与党では、自民党の議席に変化がありませんでした。自民党は改選284議席に対して、当選284と同数になりました。定数が10議席削減されていますから、占有議席の比率は上がりましたが微増にすぎません。
 有権者内での得票率(絶対得票率)でも、小選挙区では24.98%と有権者全体の4分の1です。比例代表にいたっては17.49%ですから、約6分の1にすぎません。しかも、この比率は政権を失った2009年総選挙時の18.1%を下回り、12年総選挙時の15.99%、14年総選挙時の16.99%と過去3回の選挙でほとんど変化なしです。
 自民党が議席を減らさなかったのは、小選挙区制のカラクリがあったからです。小選挙区制は大政党に有利な制度で、各選挙区で最多得票をした候補者が当選します。今回もこのような有利さが最大限に発揮され、自民党は47.8%の得票率で、74.4%の議席を占めました。
 このような小選挙区制のカラクリの効果を強めたのが、総選挙直前での小池百合子東京都知事による「希望の党」という新党の結成でした。野党共闘が分断されるという逆流が生じたために漁夫の利をしめた自民党がますます有利になったからです。
 自民党は比例代表でも強さを発揮しました。これも新党結成による野党の混乱状況に有権者の嫌気がさし、不安を覚えたためだったと思われます。離合集散を繰り返す野党より、安倍首相に対する不信や自民党への不満はありながらも、安定した政権の方がまだましだと思ったのではないでしょうか。
 このような安定志向を強めたのが北朝鮮危機への不安感の増大でした。安倍首相が示した経済指標の好転や株高への期待感も一定の効果があったでしょう。安倍首相が解散の大義として掲げた消費税再増税による税収分を子育てや若者支援に回すという約束も若者や主婦の支持を高めたかもしれません。
 これらの要因によって、自民党は「勝利」しました。しかし、もう一つの与党である公明党は「敗北」したように思われます。公明党は改選前の34議席から5議席減となって29議席にとどまったからです。総選挙の直前、女性問題で樋口尚也前衆院議員が離党していますから、実際には6議席減です。
 小選挙区では神奈川6区に立候補した当選7回の前職が敗れて議席を失いました。政権が交代した2012年の衆院選以来の小選挙区全勝がストップするという思いもかけない結果です。比例代表でも前回は731万票だった得票数が今回は698万票となり、700万票を下回りました。公明党にとって、これは大きなショックだったでしょう。
 この結果について、公明党は総選挙総括の原案で、安倍首相を強く支持する姿勢や憲法論議での対応が支持者の不信感や混乱を招いたと指摘していました。このような反省を行わなければならないほど、安倍首相への追随に対する支持者の反発が強かったということでしょう。これは今後の改憲論議において、微妙な影響を与えることになります。

(2)野党の状況

 このように、国会議席全体に対する与党の比率には大きな変化がありませんでした。衆院の3分の2議席以上を占める与党体制の期間が1年から最大4年に延長されたわけです。安定した政権基盤を維持するという安倍首相の目的は基本的に達せられました。
 しかし、今回の総選挙によって野党の状況は劇的に変化しています。最大の特徴は改選15議席から55議席へと3倍以上も議席を増やした立憲民主党の躍進にあります。
 総選挙直前に野党第一党の民進党が突如として希望の党への合流と解党を決め、姿を消してしまうという逆流が生じました。これに対して、枝野幸男さんを中心に立憲民主党が発足し、立憲・共産・社民の3野党が市民連合と政策合意を結んで野党共闘の体制を再確立します。
 こうして総選挙に臨んだ結果、立憲民主党が希望の党を上回りました。野党第一党の議員の数は減りましたが、イメージと政策が一新され、政党としての質が強化されたことになります。
 この立憲民主党の躍進のあおりを受ける形で、2議席を維持した社民党以外の野党はいずれも議席を減らしました。大きな影響を受けたのは小池さんが結成した希望の党です。政権交代をめざして衆院議席の過半数である233を上回る235人の候補者を擁立したにもかかわらず、改選議席57を7も下回って50議席にとどまりました。
 この希望の党と選挙協力を行ったのが日本維新の会です。しかし、小池人気の失速もあってほとんど効果なく、維新は改選14議席から3減らして11議席に留まりました。前回の衆院選では、小選挙区で11議席、比例代表で30議席、計41議席も獲得しています。その後の分裂などによって14議席に後退していたわけですが、今回はさらに3議席減らしたことになります。

 (3)共産党と立憲野党の共闘

 今回の選挙で、希望の党の結成、民進党の分裂、立憲民主党の登場と躍進という一連の野党再編の影響を最も強く受けたのは日本共産党でした。参院選1人区などでの共闘の経験を生かして衆院選でも小選挙区で1対1の対決構図を作ろうと積み重ねてきた努力が、一夜にして瓦解してしまう危機に直面したからです。
 これに対して、市民連合と共産党は素早く対応します。北海道や新潟では選挙区独自の共闘体制の構築をめざし、粘り強い協議を続けていました。全国的には、共闘維持のために新党を結成するべきだとの声が強まり、ネットやSNSなどに「枝野立て」という書き込みが溢れます。
 こうして、10月2日に立憲民主党の設立が発表されるわけですが、市民の声に押されての新党結成はかつてないことでした。これに対する共産党の対応は素早く、翌3日の中央委員会総会で志位委員長は「協力・連帯を追求していく」と表明し、「連帯のメッセージ」として枝野さんが立候補する埼玉5区で候補者を取り下げることを発表しました。この日、市民連合も立憲民主党と基本政策を合意します。
 7日には、立憲民主・共産・社民の3野党と市民連合が改めて政策合意を確認し、総選挙を連携して戦う体制ができました。このような動きをアシストして候補者を一本化するために、共産党は67の小選挙区で候補者を取り下げ、249の小選挙区で共闘勢力の一本化が実現します。
 このようなアシストが立憲民主党の躍進を生み出す大きな力となりましたが、共産党自身は埋没し大きな犠牲を払うことになりました。総選挙の結果、沖縄の小選挙区で1議席を獲得したものの比例代表で苦戦し、改選21議席を9下回る12議席にとどまったからです。比例代表の得票数も前回の606万票から440万票へと166万票の後退になりました。
 立憲野党の共闘を推進するために、83の小選挙区で候補者を立てないという犠牲を払い政見放送や選挙カーの運行などでの制約が生じたこと、民主党政権に失望して共産党に投票してきた旧民主党の支持者や無党派層が立憲民主党に回帰したこと、選挙戦序盤で共闘立て直しに忙殺され後半で比例重視に転じたものの手遅れになってしまったこと、などの事情が敗因であったと思われます。


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12月9日(土) 衆院選を教訓に、市民と立憲野党の共闘の深化を(その4) [論攷]

〔以下の論攷は、『法と民主主義』No.523、2017年11月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

四 安倍9条改憲の阻止に向けて

 83%の衝撃

 総選挙の結果、与党は衆院で3分の2以上の議席を確保しました。改憲勢力とされる議員の数は374議席で83%を占めるという報道があり、大きな衝撃を与えました。早速、安倍首相は憲法審査会での議論の促進を求め、野党第1党が賛成しなくても発議するかのようなそぶりを示しています。当面は自民党内で改憲案を取りまとめることに重点を置くでしょう。あわせて、同じ与党である公明党への働きかけを強めようとしています。改憲勢力と見られている維新の会や希望の党にも秋波を送るにちがいありません。
 これまでも安倍首相は、国政選挙で景気対策や経済問題などの「疑似餌」を前面に出して支持をかすめ取り、選挙が終わると「信任を得た」とばかりに与野党が対立する違憲法案の成立を強行するという「手口」を重ねてきました。2013年の参院選の後の特定秘密保護法、2014年衆院選の後の安保法制、2016年参院選の後の共謀罪法などがそうでした。今回も、同様の「手口」を用いようというのでしょう。衆院選で「信任された」と強弁しつつ、2020年改憲施行に向けての作業を強行しようとしているように見えます。
 「二度あることは三度ある」と言いますが、すでに三度もありました。今回は4度目になります。しかも、9条改憲は戦争できる国に向けての一連のストーリー(物語)での総仕上げを意味しています。これまで、特定秘密保護法(起)→安保法制(承)、共謀罪法(転)と引き継がれてきた物語は、いよいよ9条改憲(結)によって起承転結の完結編を迎えようとしているのです。

 改憲と安倍9条改憲の区別

 こうして、改憲をめぐる攻防はまさに「激突」の段階を迎えようとしています。「憲法をどうするのか」というテーマが、日本政治の主要な争点として浮かび上がってきました。
 ここで大切なことは、一般的な憲法の改正を意味する改憲と、現在の時点で安倍首相が行おうとしている9条の改憲(安倍9条改憲)を区別し、その間に楔を打ち込んで安倍9条改憲論を孤立させることです。
 国会議員の分布では、確かに改憲に賛成する議員は8割を超えていますが、9条の1項と2項をそのままにして新たに自衛隊の存在を書き込むという安倍首相の改憲案に賛成する議員は54%です(『毎日新聞』10月24日付)。過半数は越えていますが、改憲発議に必要な3分の2の多数を占めているわけではありません。世論調査では自衛隊の明記に52%が反対しており(共同通信調査)、国民の中では安倍9条改憲論は少数派です。
 したがって、安倍9条改憲の発議と国民投票には多くのハードルが存在しており、安倍首相の意図通りに進むとはかぎりません。足元の自民党内でさえ、自衛隊明記に75%が賛成していますが、12年の改憲草案で示した「国防軍の明記」を支持する意見も根強く存在しています。代表的なのは石破茂元防衛相ですが、同様の意見のも14%に上るという調査もあります(前景『毎日新聞』)。
 さらに大きなハードルになるのは、同じ与党の公明党でしょう。総選挙で不振だった公明党は、安倍首相を強く支持する姿勢や憲法論議での対応が支持者の不信感や混乱を招いたと総括文書の原案で指摘していました。今後は安倍政権に対するブレーキ役として存在感を示す必要性があるというわけです。安倍9条改憲についても「ブレーキ役」としての存在感を示せるかどうかが、注目されるところです。
 維新の会や希望の党も改憲勢力とされていますが、安倍9条改憲については積極的でなく、優先順位は低いとしています。改憲と安保法の支持という「踏み絵」を踏んだはずの希望の党の当選議員についても、安倍改憲に72.5%が反対し、2020年改正施行にも66.9%が反対しています(共同通信調査)。
 
 何をなすべきか

 安倍9条改憲阻止に向けてどうしたらよいのでしょうか。「激突」して相手を打ち破り、勝利する道はあるのでしょうか。
 そのためには、第1に、安倍9条改憲へのハードルを引き上げることが必要です。私たちの運動で反対世論を増やしていけば、これらのハードルを高くすることができるからです。世論を可視化するという点では集会やデモなどの抗議行動が有効です。官邸前や国会周辺だけでなく全国で、可能な形での安倍9条改憲に反対する集会やスタンディングなどに取り組むことです。安倍9条改憲NO!全国アクションから呼びかけられている3000万人署名運動も世論を具体的な数で示していくという点で大きな意義があります。
 第2に、現行憲法に対する国民的な学習運動を幅広く組織することです。安倍首相による改憲に向けての働きかけが強まり、国会で憲法審査会を舞台にした議論が始まれば、憲法に対する国民の関心は高まるにちがいありません。これは憲法の意義や重要性について学ぶ絶好のチャンスでもあります。憲法に対する理解が深まれば、改憲に反対する大きな力となるでしょう。
 第3に、市民と立憲野党との連携を深め、草の根の市民政治を広げていなければなりません。市民と野党との共闘は総選挙での経験と立憲民主党などの新党の結成によって新たな可能性が生まれてきています。民進党から分かれた立憲民主、希望、民進、無所属の4党・会派と共産、社民、自由の各党は国会内での連携を図りつつあります。国会審議において力を合わせながら国会外での運動とも連携し、草の根の共同を幅広く追求していくことが重要です。
 これらの活動を通じて、いかに世論を変えていくかという視点を貫かなければなりません。当面は国会での改憲発議を阻止することですが、最終的には国民投票で決着が付けられることになります。そこで多数を得る見通しが立たなければ、改憲への動きをストップさせることができます。この点で世論の動向は決定的な意味を持つことになるでしょう。
 ヨーロッパ連合(EU)からの脱退か残留かを問うイギリスの国民投票では脱退への賛成票が上回り、残留を主張していたキャメロン首相は辞任しました。イタリアでも上院の権限を大幅に縮小する憲法改正案についての国民投票が実施され、反対票が多かったためにレンツィ首相が辞任に追い込まれています。日本でも同様の結果が予想されるという状況になれば、安倍首相はあえて冒険を犯すことを避けるにちがいありません。

 むすび―歴史はジグザグに進む

 歴史はまっすぐではなく、ジグザグに進むものです。時には「後退」しているように見えることもあります。かつてレーニンは『一歩後退二歩前進』という論攷を書きました。それになぞらえて言えば、今回の総選挙は「一歩後退二歩前進」ということになるでしょう。いや、そうしなければなりません。
 市民と立憲野党の共闘という点では、「一歩後退」を強いられるような逆流や障害に直面しましたが、今後の発展につながる共闘勢力の誕生や経験の蓄積、そして何よりも共闘相手とのリスペクトや信頼、新たな人間関係や深い付き合いが生まれています。これらを大切にし、選挙だけでなく安倍9条改憲阻止の運動においても共闘を広げ、生かしていくことが大切です。
 このような日常的な活動の積み重ねによって、草の根から改憲阻止、立憲主義と民主主義を守る市民政治を生み出すことができれば、2019年の参院選に向けても、いつ解散・総選挙があっても、市民と立憲野党との共同の力によって対応することができるにちがいありません。それはまた、来るべき野党連合政権を草の根で支える市民の力を鍛え、統一戦線の結成に向けての歴史を切り開く作業となることでしょう。
 歴史は傍観者として「見ている」ものではありません。それは私たちの主体的な参加によって「つくるもの」です。いま私たちに問われているのは、どうなるかではなく、どうするかです。安倍9条改憲に向けての「激突」に勝利し改憲勢力3分の2体制を打破して戦争への道を阻むために、世論と政治を変えて新たな歴史をつくっていこうではありませんか。


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