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1月5日(金) 安倍首相の年頭会見での改憲発言における3つの矛盾とジレンマ [憲法]

 4日は仕事始めのところも多かったと思います。私も昨日の夕方、故郷の新潟から帰ってきました。
 幸い雪は積もっていず、時折ちらつく程度の穏やかな正月でした。とはいえ、あい変わらずどんよりとした冬空で、雪が降って白くなったりたまに日がさしたりという変幻極まりない雪国特有の天気でした。まるで、今の日本の政治のような空模様です。

 安倍晋三首相は4日、三重県伊勢市の伊勢神宮を参拝後、現地で記者会見し、憲法改正について「戌(いぬ)年の今年こそ、新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかり提示し、憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく。自由民主党の総裁として私はそのような1年にしたい」と述べる一方、「スケジュールありきではない」として具体的な検討については党に任せる考えを強調したと報じられています。
 そもそも、「戌(いぬ)年」であることと改憲とは何の関係もありません。牽強付会の最たるものですが、この記者会見での発言には安倍首相がめざす9条を中心とした改憲論の矛盾とジレンマがはっきりと示されています。

 第1に、「新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかり提示」するという点です。今の時点で安倍首相が打ち出している改憲案はわずか4項目にすぎず、「新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿」と言えるような代物ではありません。
 それは、9条をそのままにして自衛隊の存在を書き込むこと、高等教育を無償化すること、参院の合区解消のために一票の価値の平等の例外を定めること、緊急事態における国会議員の任期を延長することの4点に限られています。これがどうして、「新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿」なのでしょうか。
 9条を除けばほんの部分的な手直しにすぎません。維新の会を「釣り上げる」ために付け加えた高等教育の完全無償化にしても、財政上の制約があるために「完全」を取り去って維新の会の反発を招いています。

 本当は、安倍首相も2012年に作成した自民党改憲草案をそのまま提案したいと思っているにちがいありません。その全面的な改悪案であれば、安倍首相が考える「新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿」を示すものだ言えるかもしれません。
 しかし、それでは国民の賛同を得られず、国民投票で否決される可能性が高いと判断したのでしょう。成立を優先して「迂回戦術」を取ったということです。
 北朝鮮危機を利用できる今なら、最も変えたい9条について手を付けても賛成が得られるという判断もあったにちがいありません。しかし、そのために部分的で中途半端なものになったという矛盾が生じ、石破さんなど自民党内からの反発を受けるというジレンマに直面しています。

 第2に、「自由民主党の総裁として私はそのような1年にしたい」と述べている点です。なぜ、首相なのに「内閣総理大臣として」と言わないのでしょうか。
 憲法99条の憲法尊重擁護義務が頭をかすめたにちがいありません。「国務大臣のトップである内閣総理大臣が改憲の旗を振るのは99条違反だ」という批判があるからです。
 だからわざわざ「自由民主党の総裁として」と言い変えたのだと思います。しかし、このような形で立場を使い分けなければならないところに矛盾があり、首相として旗を振るわけにはいかないというジレンマが示されています。

 とはいえ、このような形で立場を使い分けてみても、矛盾とジレンマは解消されません。憲法99条には「国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は憲法を尊重し擁護する義務を負う」と書かれているからです。
 安倍首相は「国務大臣」のトップとしてだけでなく、「国会議員」としても「公務員」としても憲法を尊重し擁護する義務を負っています。いわば3重の縛りがかけられていることになります。
 その人が先頭に立って「憲法を変えよう」と呼びかけるところに、大きな矛盾とジレンマがあると言うべきでしょう。言い変えたからといって立場が変わるわけではありませんし、それが解消されるわけではありませんが、安倍首相としてはそう言わざるを得ない程度の「気持ちの悪さ」を感じたのかもしれません。

 そして第3に、「スケジュールありきではない」としている点です。そう言いながら「今年こそ、……憲法のあるべき姿を国民にしっかり提示し、憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく」という「スケジュール」を「しっかり提示」しているところに、すでに矛盾が示されています。
 そして、ここにも安倍首相のジレンマがあります。自分の任期中に改憲したという実績を残して歴史に名を刻みたいという野望と、それにこだわるあまり「スケジュール」を前面に出すと大きな反発を買い、かえって改憲を遠ざけてしまうというジレンマがあるからです。
 この点で、慎重な手綱さばきが求められることになります。改憲の「押し付け」にならないように気を付けながら、2020年の改憲施行という当初の目標に近づけるという矛盾した対応を迫られるからです。

 とりわけ今年は、秋に自民党の総裁選挙があります。ここで3選されなければ、安倍首相の手による改憲という野望は水泡に帰します。
 そのうえ、9条改憲論をはじめとした4項目の改憲案については、自民党内でも異論が存在しており昨年中に党内をまとめることができませんでした。安倍首相からすれば「何をグズグズしているんだ」という思いで見ていたことでしょう。
 しかし、表立って尻を叩けば「スケジュールありきではないか」という批判を招き、さらに遅れてしまう可能性があります。少なくとも3選を確実にするまでは自民党内での反発を招かないような形での慎重運転に徹しなければなりませんが、そうすれば改憲「スケジュール」が大きく狂ってしまうかもしれないというジレンマが生まれます。 

 安倍9条改憲阻止をめざす側からすれば、これらの矛盾とジレンマにこそ、つけ入るスキがあるということになります。この「弱い環」を攻めていこうではありませんか。
 安倍首相が「憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく」と言っている点も重要です。このような「議論」を「国民的」に広めていくなかで、安倍9条改憲論の危険性を明らかにするだけでなく現行憲法のすばらしさを確認し、その憲法を守るだけでなく活かし具体化していくことのできる新しい政府の実現に結び付けていく必要があります。
 そのためにも、安倍首相の自民党総裁3選を何としても阻止しなければなりません。全ての攻撃をここに集中し、安倍首相をその地位から引きずりおろすことが、今年前半の獲得目標だということになります。

 なお、年明け早々、今月も以下のような講演が決まっています。お近くの方や関係者の方に沢山おいでいただければ幸いです。

1月20日(土)14時 産業文化センターホール:埼玉5区市民連合
1月21日(日)13時30分 つくば市ふれあいプラザ:安倍9条改憲NO!市民アクションつくば連絡会準備会
1月23日(火)10時30分 埼玉平和委員会
1月24日(水)19時 文京シビックセンター:出版共産党後援会
1月26日(金)14時 北多摩西教育会館:都教組
1月27日(土)13時30分 秋田県民会館ジョイナス:秋田9条の会
1月28日(日)14時 川崎市宮前市民館:宮前田園革新懇
1月30日(火)19時 吹田市職員会館:吹田市労連春闘学習会


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