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6月14日(木) 戦後政治をぶっこわしてしまった安倍政権の5年間(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、全農協労連の機関誌『労農のなかま』No.572、2018年5月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 最近の政治・行政の姿を見て、「全般的危機」という言葉を思い出しました。国有財産の不当廉売と国の根幹を揺るがせるような公文書改竄、「お友達」の優遇と行政の私物化、文民統制に反する自衛隊の日報隠蔽、女性の人権を踏みにじるセクハラ・スキャンダルと財務次官の辞任。これらの大罪を嘘で誤魔化し、言い逃れようとする醜態の数々。
 政治の土台がひび割れてしまったのです。政治への信頼が崩れ、行政の前提となる土台は亀裂だらけになってしまいました。戦後最低最悪の安倍首相が発する毒が、少しずつしみ込んで政治の土壌を汚染させてきたということでもあります。
 森友・加計学園疑惑など安倍夫妻をめぐる疑惑やスキャンダルよりも重要な問題があるのではないか、国会はもっと法案や政策の議論をするべきではないかという意見があります。しかし、土台が安定していなければ、その上にどんな家を建てても崩れてしまいます。土壌が毒に汚染されていれば、どのような作物や花を植えても育ちません。
 国政の重要問題を議論するためには、その土台となっている信頼を取り戻す必要があります。政策という作物を植えるためには、土壌を改良しなければなりません。丈夫に育てて花を咲かせ実らせるためには、まず土から毒を取り除き、立憲主義や民主主義という肥料をやらなければならないのです。
 振り返ってみれば、安倍政権の5年間は憲法を踏みにじる暴走政治の連続でした。「石流れ木の葉沈む」理不尽な日々がつづき、行き着いた先が安倍首相夫妻による政治の私物化であり、それを取り巻く政治家や官僚、「お友達」などによる「忖度政治」でした。世論を恐れず反知性と非常識が大手を振るような時代になってしまいました。
 安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を唱え、「日本を取り戻す」というスローガンを掲げてきました。その主張通り、安倍暴走政治の5年間は、平和憲法に基づく軽武装国家としての「戦後レジーム」を掘り崩し、戦前の「日本を取り戻す」歩みにほかならなかったのではないでしょうか。

 暴走政治の害悪を象徴する森友・加計学園疑惑

 安倍暴走政治の害悪を象徴するのが、森友・加計学園疑惑です。安倍首相だけでなくその妻である昭恵氏の関与が疑われ、首相夫妻の意向を忖度して政治が歪められ私物化されたのではないかとの不信を招きました。これに対して「おかしい」と異議を唱えれば、前川喜平前文科次官のように私生活をリークされ授業にまで介入されてしまいます。
 森友学園疑惑は籠池泰典前理事長の時代錯誤な教育理念と、教育勅語を園児に暗唱させるような国粋主義的な愛国教育の実践に安倍首相夫人の昭恵氏が共感し感銘したことが発端でした。森友学園の小学校新設を応援しようとして100万円を寄付するとともに設立認可と土地取得、建設費用の融資に便宜を図ったというのが真相だったのではないでしょうか。
 2017年2月17日の「私や妻が関係していたら首相も議員も辞める」という安倍答弁の3日後の20日に「口裏合わせ」の電話があり、その2日後の2月22日に、官邸側の関与を全面的に否定している佐川宣寿前理財局長と太田充現局長(当時財務省大臣官房総括審議官)が菅義偉官房長官から官邸に呼ばれ、国有地売却の経緯などについて説明していたこと、ここには国土交通省航空局次長も出席し、国有地から出たごみの撤去処分費用の見積もりなどを説明したことが判明しています。当然、この場でも決裁文書の改ざんなどの善後策が相談されたものと思われます。
 こうして、森友学園への破格の安値での国有地売却、その経緯を書いた決裁文書の改ざんという前代未聞の「国家犯罪」が実行されたのです。その背後には安倍夫妻の存在があり、とりわけ森友学園が経営する塚本幼稚園で3回も講演し、ホームページに推薦文を書き、一時は新設予定の小学校の「名誉校長」まで引き受けていた昭恵氏の関りは極めて大きなものだったと思われます。
 その後、当時の佐川理財局長が「ない」と答弁していた財務省と森友学園との交渉記録が500ページ以上も残っていたことが新たに分かりました。なかには昭恵氏と密接に連絡を取り合っていた記録も残っています。
 昭恵氏の存在と働きかけがなければ、「良い土地ですから進めてください」と昭恵氏が言ったなどと護池氏が圧力をかけることも、建設予定地前で撮った写真を見せることも、それを見た官僚が籠池氏のために便宜を図ることも、慌てて公文書を改ざんすることもなかったはずです。安倍首相夫妻が「関係」していたことは明らかであり、安倍首相は自らの言葉に従って首相も国会議員も辞任するべきでしょう。

 決定的な証拠が出てきた加計学園疑惑

 加計学園疑惑についても決定的な証拠が出てきて、国家戦略特区での獣医学部の新設計画は最初から「加計学園ありき」だったことが明確になりました。というより、安倍首相の親友である加計考太郎氏が経営する岡山理科大に獣医学部を新設するために国家戦略特区が利用され様々な便宜が図られたというのが真相であると思われます。
 愛媛県や今治市の職員、加計学園事務局長らが2015年4月2日に首相官邸で柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面会したとする文書には、内閣府の藤原豊地方創生推進室次長(当時)とも会ったことが書かれていました。柳瀬氏が「本件は、首相案件」と述べ、藤原氏が「内容は総理官邸から聞いている」「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」と発言したなどと記されています。
 すでに昨年のうちに、「総理のご意向」や「官邸の最高レベル」という文言のある文書が発見されていました。これらの異なった性質の文書の全てが偽りでない限り、この問題に安倍首相や官邸が深くかかわっていたことは完全に裏付けられたと言えるでしょう。
 4月10日の中村愛媛県知事の記者会見では、もう一つの重要な事実が語られていました。問題の土地にはサッカースタジアムを作るプランだったのに、途中で内閣府から助言があって獣医学部の新設計画を国家戦略特区に申請することになったというのです。岡山理科大に獣医学部を新設する計画は内閣府から持ち込まれたということであり、初めから「首相案件」だったということになります。
 柳瀬元秘書官の参考人聴取でも、首相官邸で加計学園関係者と3回も面会していたこと、特区関係者で面会したのは加計学園だけだったことなど、「加計ありき」を示す新たな事実が明らかになりました。
 加計学園疑惑はクリスマスイヴにワイングラス片手で相談された安倍首相や加計氏による「男たちの悪だくみ」の一つだったと思われます。そのような形で政治・行政を私物化し国会と国民を欺いてきたというのであれば、許されざる背信であり、安倍首相に国政を担当する資格はなく、ただちにその座を去るべきです。

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