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11月14日(水) 『日刊ゲンダイ』11月10日付巻頭特集「入管法改正紛糾 極右の首相が“移民”旗振りのいかがわしさ」へのコメントと若干の補足 [コメント]

 〔以下のコメントは、『日刊ゲンダイ』11月10日付巻頭特集「入管法改正紛糾 極右の首相が“移民”旗振りのいかがわしさ」内に掲載されたものです。〕

 「政府は来年4月から施行させたいと時限を区切り、今国会で必ず成立させる方針です。なぜ、そんなに急ぐ必要があるのか。まずは時間をかけて、外国人労働者の受け入れ体制を整備するべきです。すでに、技能実習生や留学生として来日し、就労している外国人労働者数は128万人に達していますが、その待遇はひどく、毎年、数千人の技能実習生が失踪している。こういう問題を放置したまま、新たな受け入れ制度を設けて、ダブルスタンダードでやっていくのか。制度設計が生煮えのまま、数の力にモノを言わせて強行採決すれば、将来に禍根を残すだけです」(政治学者の五十嵐仁氏)

 昨日から、改正入管法の審議が始まりました。現在、日本にはすでに実習生などとして働いている外国人が128万人おり、その家族などを含めた在留外国人は2倍の256万人に上ります。
 今後、望むと望まないとにかかわらず、これらの在留外国人は増え続けるでしょう。少子化が進んで日本人社会の縮小が避けられず、人手不足も深刻になるなかで現代の「鎖国」は不可能だからです。
 問題は、これらの人々をどのような形で受け入れ、共生していくかという点にあります。この問題を考えるうえで、さし当り以下のような点が重要ではないでしょうか。

 第1に、すでに受け入れてきた技能実習生の賃金や労働条件の改善です。野党による技能実習生を対象にした合同ヒアリングでは低賃金や長時間労働への不満が続出しました。
 この実態解明や待遇改善が、まず優先的になされる必要があります。すでに受け入れている労働者の待遇が貧弱なまま新たに多くの労働者を受け入れれば、問題や不満が拡大するばかりです。
 野党は審議の前提として、すでに就労している実習生や失踪した実習生の実態調査結果を示すよう求めていますが、それは当然の要求です。今回の改正内容が、これまで受け入れてこなかった、いわゆる単純労働者も対象としていますから、なおさら待遇改善に向けての具体的な方策が求められることになります。

 第2に、外国人労働者との共生に向けての制度設計が必要です。外国からやってくる労働者は人間であり、地域社会に居住し生活する構成員となるからです。
 日本で生活するための医療や年金、日本語教育や住環境の整備なども必要になります。入管法をちょっと直して、少し受け入れ枠を拡大するだけだから「移民」ではないと問題を矮小化することで、このような制度設計を回避しようとしてはなりません。
 拙速であってはならないというのは、このような制度設計をきちんと行わないで受け入れてはならないからです。これまでは受け入れ環境の整備を地方自治体やNPO法人などに丸投げしてきましたが、受け入れを大きく拡大する以上、各省庁の対策を総動員して国が責任を負う体制をきちんと整備しなければなりません。

 第3に、ヘイトスピーチやヘイトアクションなどに示されている排外主義の克服です。一方で外国人労働者の受け入れを拡大しながら、他方で「外国人は出ていけ」と叫ぶデモや集会を放置することは許されません。
 多くの外国人を隣人として受け入れ、共に人間とし尊重し助け合うことのできる多文化共生の開かれた社会になっていくことが必要です。そのために、政治がリーダーシップを取らなければなりません。
 ヘイトスピーチやヘイトアクションを取り締まるための法制度の整備だけでなく、排除ではなく共生や多様性を大切にする社会づくりに努力しなければなりません。民族や人種、宗教や文化の違いを尊重し、外国人を敵視したり排斥したりすることのない社会にならなければ、外国の人びとに選ばれる国になることは不可能なのですから。

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