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12月9日(日) 臨時国会と安倍改憲阻止の展望と課題(その1) [論攷]

 〔以下の論攷は、北海道憲法改悪反対共同センター学習交流集会での講演の記録で、北海道経済研究所発行の『北海道経済』No.592、2018年11月号、に掲載されました。かなり長いので、6回に分けてアップさせていただきます。〕

 (紹介)北海道憲法改悪反対共同センター主催で11月5日、札幌市内で開催された講演会での法政大学名誉教授五十嵐仁氏の講演の大要を紹介します。(共催は、北海道革新懇、北海道安保破棄実行委員会、北海道平和委員会、9条ネット北海道有志の会)―文責は編集部

 はじめに

 みなさん、こんばんは、ただいまご紹介いただきました五十嵐仁でございます。はじめに、先般の地震について、一言お見舞いを申し上げたいと思います。私も新潟生まれで新潟地震、それから2011年の3・11東日本大震災を経験しております。たいへんな思いをされたのではないかと思います。最初に、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げさせていただきます。
 臨時国会が開かれました。いま審議がおこなわれております。まず補正予算が大きな課題としてあったわけですけれども、すでに衆議院を通過して参議院での審議が始まっています。災害対策は非常に重要なテーマでございまして、これは早急に成立するだろうと思います。
 引き続いて入国管理法の改正問題、新しい移民政策になるのではないかと考えられているような、外国人労働者の日本への入国を拡大するという問題が国会で取り上げられます。この国会の直前に安倍首相が表明した来年10月1日からの消費税10%への引き上げ問題も取り上げられなければなりません。
 それ以外に、社会保障の問題、「全世代型社会保障」といっております。実質は「全世代社会不安」といっていいんじゃないか。あるいは沖縄での辺野古新基地建設の問題、さらには閣僚の資質。国会で片山さつき地方創生担当相が追及されていました。滞貨一掃といわれますけれども、何回も当選してきたにもかかわらず、なかなか大臣になれなかった人たちが今回12人も入った。なんでなれなかったかというと、大臣にしたらあぶない人たちだったからです(笑い)。
 桜田義孝五輪相もオリンピックの理念を問われて答えられないというような、ていたらくでした。これから次々にこういう人たちが登場してくる。前の金田法相みたいな人たちがずらっと並んでいるわけですから、楽しみですね(笑い)。
 さらには外交・貿易。アメリカでトランプ大統領が登場し、いま貿易戦争を仕掛けている。中国だけではない、日本も二国間交渉に引きずり込むということで、いよいよ攻勢がかけられてくる。「イランから原油を輸入するな」と各国に圧力をかける。日本には例外措置をとるといっていますが、最長で180日間ですから半年間です。半年後には日本もイランからの原油輸入ストップとなる。
アメリカもたいへんな人を大統領に選んだものだなあと思いますね。トランプなのにハートがない(笑い)。めくってみたら出てくるのはジョーカーばっかりです。ジョーカーだけで新しいゲームをやろうというのがトランプさんなんです。
 戦後の世界政治、秩序が大きくいま変わりつつあります。悪いことばかりじゃない。北朝鮮との和解、非核・平和体制構築ということで。これはトランプさんの性格が幸いした唯一の例ですね。あの人は他人の話を聞かないですから。だから周りの人がいろいろ言っても、俺はやるんだということで北朝鮮との米朝首脳会談を強行したわけですね。
 相手の金正恩さんも、他人の話を聞く必要のない国で最高権力者ですから。他人の話に左右されない二人が勝手にやったわけですけれども、しかしそれが世界平和にとってはプラスになるような前進的、巨大な変化を生み出している。
 いずれにしましても、こういう世界政治、あるいは貿易の変化の中でどう対応していくのか。これも臨時国会の中で議論されなければならない非常に重要なポイントになっていくのではないかと思います。
 この臨時国会の中でも、とりわけ安倍首相が力を込めて所信表明演説で強調していたのが改憲問題です。憲法を変える時がやってきたと、安倍さんは考えているのではないか。ガチンコ勝負が始まった。せめぎ合いです。安倍首相は本腰を入れて改憲に取り組もうとしている。
 ただ、ここですぐ言わなきゃならないことは、安倍さんが前のめりになればなるほど国民や野党は腰が引けてしまうという関係にあります。はたしてこのガチンコ勝負、安倍さんがうまくやれるか。なかなか難しいのではないかと思います。
 マスコミも大きく変わってきた。安倍首相の応援団になるような新聞やとりわけテレビ。NHKも安倍首相を応援するような報道姿勢に変わってきている。フェイクニュース、ポスト真実の時代。ウソか本当かわからないどころか、フェイクというのは虚偽ですから、平気でウソがふりまかれる時代になってしまった。
 いちばん極端なのは国会の中での質疑です。安倍首相の答弁を聞いてごらんなさい、ウソばっかりじゃないですか。安倍首相の3原則というのがありまして、「隠す、ごまかす、ウソをつく」。あの人はフェイクが背広を着て歩いているような人でして、だまされてはいけません。真実を見抜く目を私たちはもたなきゃならない。何が本当であるかということを、日々のニュースの中からしっかりつかんでいく。
 そのためには正しい地図と羅針盤をもたなければならない。そして情報を受け取るだけではなく、私たちの側からも積極的に事実や情報を発信していく。そのためにも学ぶ、学習する。これが非常に重要になってきているのではないかと思います。きょうの私の話が多少ともそれに役立てば幸いです。
 最初に、改憲問題を考えるうえで重要な3つのポイントを言っておきたいと思います。1つは憲法を変えるといった場合、改憲の限界があるということです。憲法の理念に反する、あるいは理念を壊すような憲法の条文の書き換えはゆるされない。これが憲法改定の限界というものです。
 いまの憲法の理念は3大理念と言われています。「国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義」。これに地方自治、議会制民主主義を加えてもいいと思います。これに反するような、あるいはこれを破壊するような条文の書き換え、改める「改憲」ではなく、破壊する「壊憲」はゆるされないということを、憲法の改定にあたってまず確認しておかなければなりません。
 2つ目は、「後法優位の原則」というのがあります。前にあった条文と後から新たに付け加えられた条文とが矛盾している場合は、あとから付け加えられた条文が優位するということです。
 安倍首相は、いまある憲法の9条1項、2項はそのままに、自衛隊の存在を書き加えようとしています。これをおこなっても自衛隊の機能や役割は変化しない、だから国民のみなさん、心配しなくていいですよと、こういう話をされるわけです。おかしいじゃありませんか。変わらないんだったら変える必要はないでしょう。変わるから変えようとしているわけですね。なぜ変わるのかといったら、いまいったようにあとから付け加える、自衛隊を書き加えたことのほうが9条1項、2項よりも優越する。
 「日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇、又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」。これが9条ですね。
 このあとに自衛隊の存在を書き加える。そうすると、自衛隊が憲法上の位置づけを与えられ、正当化される。そして集団的自衛権など、部分的ではなく全面的に、フルスペックといっていますけれども、完全に集団的自衛権行使が認められるような、戦争する国、戦争できる国に変わってしまう。これが2つ目の点です。
 3つ目は、憲法というのは最高法規ですから、いちばん上にある。あらゆる法律を規制する役割を持っている法律の中の法律ですね。ですから、ギリギリ賛成が多いということで変えられるようなことであってはなりません。「国民的合意」の下で、大半の国民が、こういう内容であれば変えてもいいだろうという納得の下に改憲される。これが原則です。分断や対立の中で、激しい争いを経て憲法が変われば、その後の憲法の正当性や権威にかかわるということになってしまいます。
 以上3点からいって、いまの安倍首相がやろうとしている9条改憲は断固としてゆるされない。このことをまず明らかにしておかなければならないと思います。

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